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図書館での出会い

いつもお読みくださりありがとうございます。

また宣伝になってしまいますが、コミックス7巻が発売中ですのでよろしくお願いします!

それとまたSSを書きましたので詳細を後書きに載せておきます。

 図書館をエステルと一緒にしばらく見て回り、いくつか本を選んで読書エリアの机に着いて中身を確認していく。

 が、何冊確認してもお目当ての情報はなく、何度も本棚と机を行き来して本を読んでもロクに成果がない。

 まず周辺地域の地図は見つかったのだが、詳細な地図じゃなくて町や村の位置とそこを繋ぐ道が大雑把に記載された物だった。

 地図アプリほど細かい地図じゃないにしても、もう少し地形などわかる物がいいんだが……まあ仕方ないか。

 そしてこの国の名前はイヴリス王国といい、その周辺には大きな空白地帯を挟んで帝国やら複数の国があるようだ。

 国同士は空白地帯の一部分にある小さな道で繋がっていて、各国と人の行き来や貿易をしている。

 この空白地帯というのは魔物が湧く場所でとても人が住める場所じゃないから、一応領土は決められているけど国境などの管理はされていない。

 次に亜人についてなのだが、耳が長かったり尻尾がある種族の特徴は区別されずに全て魔人と一括りされていた。

 魔人に関しての話も詳細がなくて、凶暴でかつ力を持った種族だったという記載のみだ。

 滅んだという魔人の国はアーウルムと呼ばれていて、王都から西に遠く離れた険しい山を越えた先にあったらしいけど正確な位置については書かれていない。

 と、現状はこういった感じだ。


「うーん、亜人に関しての本が全くないな……」


「歴史的な本だとどれも魔人で統一されているわね。ここまで見つからないのは意図的なものを感じるわ」


「魔人との戦争に関しても詳しい情報はなさそうだなぁ。普通こういう出来事って細かく書かれてるよな?」


「大まかなことは書かれているけれど、どんな戦いだったかまでは書かれていないわね。これだと魔人がどんな存在なのだか殆どわからないじゃない」


 亜人に関してだけの本は勿論のこと、魔人に関しての本も詳細な物はなくて歴史の本などの一部分に出てくるのみだ。

 詳細に書かれてはいないのだが、過去にある程度交流はあったものの最終的には魔人はとにかく危険な存在だと強調されている。

 200年前の大戦は末期人魔大戦と呼ばれていて、魔人から先制攻撃で開戦して最終的に周辺国が協力して首都に攻め込み完全に滅ぼしたそうだ。

 イヴリス王国以外の帝国などにいけば、違う魔人の情報なども見つかるかもしれない。


 大した成果も得られずにまた本を探して席に戻る途中、突然誰かが本棚の間の通路から出てきた。

 あまりに急で止まれずに俺はそのままぶつかって相手を弾き飛ばしてしまう。


「きゃっ!?」


 バサバサと凄い数の本が床に落ちていき、相手は軽く悲鳴を上げて尻もちを突いた。

 ぶつかった相手は大人の女性で、少し涙目になって尻を撫でて痛そうにしている。

 やべぇ! やっちまった! しかも相手女の人かよ!

 俺は慌てて謝りながら彼女に手を差し出した。


「す、すみません! 大丈夫ですか!」


「いたたたた……だ、大丈夫。私の方こそ不注意でごめんなさい」


 軽く笑いながら彼女は俺の手を握り返してきたので、力を入れて引っ張って立ち上がらせた。

 眼鏡をかけた女性は乱れたライトブラウンの長髪を整えて照れ臭そうにしていたが、落ちた本を慌てて拾い始めたので俺とエステルも一緒にそれを拾って彼女に渡す。


「拾うのを手伝ってくれてありがとうー」


「いえいえ、それよりも少しお持ちしましょうか?」


「大丈夫だよ! こう見えて結構力持ちなんだ!」


 そう言って彼女はひょいひょいと俺達の手元から本を取って、胸元辺りまで積み重ねて軽々と持ち上げていた。

 体も華奢で腕も細いのにこの人結構力持ちだぞ。しかも異世界の例に漏れずかなりの美人さんだ。

 白いシャツにピシッとした黒いスカート姿で大人の女って雰囲気がある。真面目な時のシスハに近いな。

 なんて思っているとツンツンと体を突っつかれたので振り向くと、そこには頬を膨らませて不満そうにしているエステルさん。


「むー、お兄さん」


「えっ!? な、何も思ってないぞ!」


「まだ何も言ってないのだけれど」


 ジト―としたエステルの目線に晒されて冷や汗を流しながら席に戻ると、先ほどの女性も近くに席に座って本を机の上に積み上げていた。

 相手もこっちに気が付いたのか気さくに声をかけてくる。


「あら、歴史の本を探してるのかな? さっきから色々な本を読んでるよね?」


「そうですけど……」


「それを知ってるなんて私達のこと見張りでもしていたのかしら?」


「あっ、そういう訳じゃないんだけどー。何度も本棚と机を行き来するのを見てたからね。君達見かけたことなかったからつい目で追っちゃったのさ」


「ふーん、そう。その言い振りだとお姉さんはこの図書館に入り浸っているのかしら?」


「ふふん、人は私のことを王立図書館の主と呼んでいるよ」


「そんな自慢げにされても反応に困るのだけれど……」


 女性はニッと歯を見せて親指を立てながら誇らしそうにしている。

 見た目ちょっとクールな人に思えたけどかなり陽気な人っぽいな。


「まあまあ、せっかくのご縁だしお詫びとお礼を兼ねてお姉さんが力になってあげよう。お探しの本は何なのかなー?」


「あー、えっと、その……」


 図書館の主と言うのが本当なのかわからないけど、かなりここにある本に関して詳しそうではあるなぁ。

 だけど俺達が調べているのは亜人や魔人のことだから不用意に言うのも危険があるかもしれない。

 そう思って口ごもりながらチラッとエステルを見ると、彼女と目があいパチリとウィンクを返してくれた。

 これはつまり私に任せてっていう合図だな。さすがエステルさん頼りになるぜ!

 という訳で俺に代わってエステルが女性に返事をしてくれた。


「それじゃあお言葉に甘えちゃうわね」


「おっ、そうこなくちゃ! そういえば自己紹介がまだだったね。私はレビィーリアって言うんだ。レビィと呼んでくれて構わないよ」


「ご丁寧にどうも。私は大倉平八です」


「エステルよ、よろしくね」


 お互いに軽く挨拶を終えると、レビィーリアさんは食い入り気味にエステルに質問をし始めた。


「で、で? 何の本をお探しだったのかな? かな?」


「歴史の本を探しているんだけどいい物が見つからなくて。200年前の戦争に関して詳しく書かれている物ってあるの?」


「200年前の戦争って言うと……末期人魔大戦の頃かな。あの辺は結構閲覧制限厳しいんだよねぇ」


 おお、戦争の話とは言ったけどすぐに末期人魔大戦が出てくるとはやはり知識のある人みたいだな。

 続けてエステルは巧みに本当の目的を誤魔化しつつレビィーリアさんと会話をしている。


「魔人と戦争したって話だけれど、どうしてこんなに詳細がないのか気になっちゃって。お姉さん何か知らない?」


「んんー、あの戦争は色々と複雑な事情があったらしいんだよねー。制限区域の方にもあんまり資料はないと思うよ」


「制限区域って許可が必要なところ? お姉さんあそこに入る許可を貰っているのね」


「ちっち、王立図書館の主は名ばかりって訳じゃないのだよお嬢さん」


 レビィーリアさんはそう言いながらニヤッと笑い模様の描かれた透明な札を取り出した。

 あれに描かれているのは魔法陣か?

 やっぱり特別な区画に入るにはただの許可じゃなくて許可証が必要みたいだな。

 そこに入れるなんてレビィーリアさんに上手く取り入れば俺らも入れてもらえて……でも制限区域にも資料がないとか言ってるぞ。

 エステルもそこが気になったのか首を傾げなら質問を投げかけた。


「だけどそこにも資料がないだなんて人魔戦争って何があったの?」


「それだけあの戦争が訳ありだってことさ。この国は周辺国の中でも特に激戦だったらしいからね。それに最近魔人の話題がまた……おっとと、今のは気にしないでくださいな」


 ……ん? 今最近魔人の話題がって……それって俺達が関連しているセヴァリアや魔人の墓地の話か?

 何にしろこの人は魔人関連の話が最近話題になっているのを知っているってことだ。

 この話は冒険者協会でも探索などに関わった一部の人と、報告を受けた国の関係者ぐらいしか知らない情報のはず。

 もしそうならレビィーリアさんは一体何者なのか、それとも俺達の知らない魔人の情報を入手しているのか。

 どちらにしろこの人から何か情報を引き出したいな。

 エステルはちらりと俺を見て何か許可が欲しそうにしていたので、ゴーサインを出すように首を縦に振る。

 多分彼女も俺と同じことを考えているはず、任せて問題ない。


「お姉さんもしかして魔人のこと詳しいの?」


「うーん、そんなに詳しい訳じゃないけど、人並み以上に知識はあるかな」


「実は私達も最近出ている魔人の話題に関わっているのよ。だから魔人について調べていたってところ」


「ははーん、なるほどなるほど。今動いているってことは……君達高位の冒険者って感じ?」


「よ、よくわかりましたね」


「ふっ、女の勘は鋭いってね! 本音を言えば君達国や軍の関係者に見えなかったから、1番可能性高そうな冒険者と言ってみただけだったり。エステルちゃんの方は何か凄そうな雰囲気あるけど、平八君は何だろう……冴えないね」


「……色々な人によくそう言われます」


 ぐっ、また冴えないとか言われたんですが……そりゃガチャのURユニットであるエステルとかと比べたら全く凄みないけどさ!

 でもそれを感じ取れるってことはレビィーリアさん、やはり只者じゃなさそうだぞ。

前書きで書いたように掲示板回の続きを活動報告に掲載いたしましたので、↓のリンクからお読みいただけると嬉しいです。

注意書きをご確認の上お読みいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 長音記号が一部、罫線になってる気がします。。。それかそこだけ字体が違う? わかりやすいのがレビィ“―”リア。普通に入力するとレビィーリア。 名前を名乗った最初の1回以降は次話に向けて…
[一言] 平八ェ… 最後の地の文でレビィさん只者じゃないって言ってるけど、そもそも高めの入館料が必要な施設に入り浸ってたり、特別なコネの要る制限区域に入れるって分かってる時点で少なくとも普通じゃないっ…
2022/06/07 17:42 退会済み
管理
[気になる点] マルティナが出て来ないが何か有力な本か情報を見つけたかな?
感想一覧
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