王国立図書館
明日5月31日に漫画版7巻が発売となりますので、是非よろしくお願いいたします!
今月のコミックライドの表紙にもなっておりますので、そちらも見ていただけると嬉しいです!
翌日、俺とエステルはさっそくマルティナを連れて王国立図書館に向かうため王都にやってきていた。
町に入るとマルティナは目を輝かせて周囲を見回して、まるでフリージアのように興味深そうにしている。
ちなみにフリージアも図書館に行きたいと言っていたが、あいつは騒がしくしそうなので大人しく留守番だ。
「ここがこの世界の王都なのか! 賑やかな町じゃないか!」
「随分とはしゃいでいるな。お前賑やかなところ意外に好きなのか?」
「ククッ、当然だろう! 僕は人とのコミュニケーションが好きなのさ!」
「へぇー、その割にはフリージアと会話してる時とか目を逸らしてるわよね」
「うっ……す、好きだからって得意な訳じゃないし……。ただ人が賑わっているのを見るのは好きだよ」
そう言ってマルティナはフードを深めに被って俺とエステルから目を逸らしつつも、町を行きかう人達をちらちらと見ている。
確かにこいつは人との交流に飢えている気がするけど、フリージア達との会話を聞いてると不慣れな感じもするもんなぁ。
楽しそうに会話してるのが聞こえて来たかと思えば、大体話し相手がゴースト達だったりするし。
ゴースト達のように友達って呼ばれるぐらいにならないと、あそこまでの会話はできないのかもしれない。
「というか町中だっていうのにそのローブ着なくてもいいんじゃないか? スゲー怪しい奴に見えるぞ」
「これは我が力を抑える為の戒めなる鎖、俗世に降り立つには必須なのだ」
「わかりやすく言ってもらっていい?」
「あっ、はい。ガイストクライトは認識阻害効果もあるんだけど、僕の力を抑える物でもあるんだ。これがないと町へ気軽に出かけられないんだよ」
いつも以上に顔や体が見えないようにすっぽりとローブを羽織っていて怪しさ満点なのだが、そんな理由があったのか。
怪しいには怪しいけど認識阻害のおかげなのか、町の人達は全く気が付いてなくて誰も見ていない。
俺はてっきり王都の人達にも僕のカッコよさを見せつけるんだ! とでも言うかと思っていたぞ。
「つまりそれがないとデバフを撒き散らすってことなのか?」
「今は自分で力を抑えられるんだけど、昔は君の言う通り垂れ流しだったからね。あと抑えていても感知してくる神官にもこのローブは対策になるんだよ。それにカッコいいだろう?」
「最後の一言はどうかと思うけれどマルティナにとっては必須の物なのね」
結局カッコいいのも理由の1つなのかよ!
だけど前はデバフを垂れ流しにしていたか……よく追いかけ回されていたとか言ってたけど、そういうのが原因だったのかもな。
しかも羽織ってないと神官が感知してくるとか、そりゃ気軽に町中歩けないわ。
こうやって聞くと戦闘用と思っていたガイストクライトは、普段使いするために認識阻害とかあるように思えてきたぞ。
マルティナにとっては大鎌よりもこのローブの方が重要そうだな。
このローブも死霊術師の力を使ってトレジャーハントしてきたのだろうか。
そんな会話をしながらも、昨日クリストフさんから貰った地図にしたがって王立図書館に到着した。
図書館は一目でここがそうだとわかるぐらい屋敷のように大きく長い壁に囲まれている。
立派な門も設けられていてその近くには数人の警備員の姿も確認できた。
本は貴重だってクリストフさんが言っていたけど、警備にかなり力を入れていそうだぞ。
どのぐらいの規模の図書館なのかと思っていたけど、俺が想像していた以上に大きいな。
さっそく入り口近くにある小屋の受付で手続きをして入館料を払い説明を聞く。
マルティナが金を払う時ガイストクライトの効果を切って突然現れたように見えたのか、受付の人がめちゃくちゃ驚いていたな。
入館料は1人5000Gとそこそこの料金だったから、本がそれだけ貴重な物なんだと実感させられる。
本の持ち出しは厳禁で写本やメモを取るのはいいけど、本を汚さないように注意してほしいと忠告された。
当然飲食物の持ち込みなども禁止だが、図書館の敷地内にある購買店で買ってその場で食べるのはいいようだ。
俺達は一般入場だから2階に入ってはいけないと言われた。
その2階とやらが許可が必要な特別な区画ってやつか。
そんな訳で図書館の中へと入ってみると、ズラリと並ぶ本棚が俺達を出迎える。
「おー、国が運営してる図書館だけあってやっぱ立派だな」
「本もかなりの数あるしお目当ての情報も探せばありそうね」
自宅にある図書館もかなりの大きさだと思っていたけど、この図書館も負けず劣らずの大きさだな。
……いや、この図書館並みの物が自宅にある俺達がおかしいのか。
だけどこっちはとんでもない数の本棚が並んでいて、どれも中身がぎっしりと詰まっている。
とてもじゃないが1階だけでも1日で全部確認できそうにないな。
これに加えて更に2階まであるんだからその規模も凄さがよくわかるぞ。
とりあえず手分けをして欲しい情報を探そうと思ったが、マルティナがフードを脱いでまた目を輝かせながらあっちこっち見ている。
王都に来た直後もそうだったけど、ホント興奮してるのが分かりやすいやつだな。
「おいおい、目立つしあんまりキョロキョロするなよ」
「あっ、こんな立派な図書館に来るのは久しぶりだったからつい。自宅の図書館もいつかこれぐらい冊数増やしたいなぁ」
「ふふ、ここまでの規模にするのは大変そうね。私も本を読むのは好きだから楽しみにしているわ」
「うん! 任せてよ!」
そう言うとマルティナはまたフードを被り直して、スゥーとその場から消えるように動き出した。
あいつに任せておけばお目当ての情報がある本を探し出してくれそうだな。
一応今回はゴーストを使うなどといった怪しい行動は控えて、図書館がどんな場所なのか偵察するのも目的だ。
「さて、俺達も本探ししつつ色々と探ってみるか」
「そうね。ちょっと見ただけでもこの図書館結構警備が厳しいのがわかるわ」
「警備員が何人もいるもんなぁ」
「ええ、それに門や図書館の入り口に魔法が施されていたわよ。本を持ちだしたらすぐわかるようになっているみたい」
なんだと!? いきなり魔法でセンサーみたいなのが設置してあるとは……。
どんな仕組みだかわからないけど、本を持ったままそこを通ったら受付に連絡がいくのだろうか。
図書館内にも警備員がそこそこ巡回しているし、ここまで防犯対策しているなんて本当に本って貴重なんだなぁ。
本を見て回りながら図書館内をうろついていると2階に上がる階段を発見した。
階段の前には警備員が椅子に座って待ち構えていて無断で入れそうにない。
「あそこが許可されないと入れない区域か。警備員もいるし誤魔化して入るのは無理そうだな」
「あの階段にも魔法がかかっているわね。許可証でも貰わないと通れないのかしら」
「どこもかしこも魔法ばかりだな……さすが魔導師の育成に力を入れてる国だな。ちなみにその魔法無効化とかできるのか?」
「それぐらいなら簡単にできるわ。だけど中に入った先がどうなっているかわからないから、下手に入らない方がよさそうね」
これだけ厳重な警備をしているんだから、2階に上がれたとしても更に色々と防犯設備がありそうだ。
図書館がここまで魔法を張り巡らせているなんて恐れ入ったぞ。
エステルなら上手く全部打ち破ってくれそうだけど、何が起きるかわからないから強行突破は考えないでおこう。
「にしても本当に沢山本があるな。これなら特別な区画入らなくてもお目当ての情報が見つかりそうじゃないか?」
「あの先にどんな本があるか気になるけれど、確かにここでも十分そうではあるわね」
図書館内部の構造把握はこの辺りにして、俺とエステルもお目当ての本を探し始めた。
今回探そうとしているのは亜人、魔人、それと周辺地域の地図などだ。
今まで必要なかったから協会長からその場で地図や情報を教えてもらったりしたけど、そろそろ自分でも情報を仕入れた方がいいだろう。
町の名前とかは聞いていたけど、この国がなんて名前なのかすらロクに調べていなかった。
……我ながらちょっと情報収集をしなさ過ぎたと反省したぞ。
というか目先の魔石目当てだったしこの国を出る気もなかったから、この世界の他の国とかなんも気にしてなかったからなぁ。
エステルと見て回りながらそれらしい本をいくつか見開いていくが、俺は手に取った本にちょっと違和感を覚えた。
「なんかこの本ザラザラしてるな。何でできてるんだこれ」
「動物や魔物の皮を使った羊皮紙だと思うわよ」
「へー、これが羊皮紙ってやつなんだな。普通の紙で作ったような本って珍しいのか?」
「お兄さんが馴染み深い自宅の図書館で生成されるような紙はないでしょうね。私が知っているのも動物や魔物の皮で作られた紙が一般的だったわ。植物で作った粗目の紙もあったけれど」
「そういうものなのか。作れないにしてもこの世界だったら、紙とかも魔物からドロップしそうなのにな」
「紙は落ちないけどこの羊皮紙を作るのに、ドロップした魔物の皮を使ってるんじゃない? 普通の紙より丈夫な物が作れそうだし」
昔は動物の皮を使って紙を作っていたと聞いたことがあるけど、これがその羊皮紙なのかぁ。
この世界だとエステルが言ったように、動物じゃなくて魔物の皮が使われていそうだな。
魔物の皮なら火とかでも簡単には燃えないだろうし、ある意味本にするのに適していそうだぞ。
羊皮紙で作られた本に歴史を感じつつも、俺達はお目当てである本を探し続けた。




