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素材の行方

「はい!」


「えい!」


 俺が合図の声を出し、走っていたノールがこっちに戻ってくる。そして間髪入れずにエステルの魔法が、サソリ達を襲う。

 探索から数十日程経ち、俺達は今日までずっと北の洞窟で範囲狩りをしていた。


「ふぅ、これで本日35体目っと。ノール、毒針は大丈夫か?」


「大丈夫なのであります! だんだんとコツを掴んできたのでありますよん」


 ドロップアイテムを回収し、サソリの感知範囲外に移動し3人で座り込む。

 最初の方はノールがスティンガーの毒針に撃たれたりしたが、今では剣で撃ち落し回避するぐらいには慣れてきている。

 もはや慣れ過ぎて合図もさっきのように簡単な物になっている。慣れって怖い。


「はぁ、こうずっと洞窟の中にいるのもなんだか気が滅入るわね」


「そうだな。でも効率めっちゃいいから止められない。うへへ」


「画面見ながらにやけちゃって……しょうがないんだから」


 暗い場所でカサカサとサソリが徘徊する音が木霊するここは最悪だ。

 でも魔石と経験値効率は最高だ。

 スマホのGC画面を見てみると、魔石の数字は500個を超えている。

 へへ、見ているだけでも気分が良い。ガチャ回したくなってくる。


「むふふ、レベルもどんどん上がっているでありますよ! こうはっきりと体でわかると、なんだか楽しいのであります」


「魔法を使い続ける私の身にもなってほしいわね」


「本当にすみませんね、エステルさんにノールさん。あっ、お肩おもみしましょうか?」


 ここでの狩りはほぼエステルとノールによるものだ。俺は10%のバフと合図する為だけの存在となっている。もう頭が上がらない。

 狩りの方法は、エステルのMPが尽きる前に休憩して、回復してきたらまた狩りを再開するというのを繰り返している。賢者の石のMP回復速度上昇がなかったら、まともに狩りができなかったかもな。

 大体三十体を超えたらいい時間になるので、それを目安に狩りは終了だ。




「すみません、討伐証明の確認をお願いしてもいいですか?」


「ひゃい!? ま、また大倉さんですか……今日もスティンガー狩ってきたんですか?」


「はい、いつもすみません」


 冒険者協会に到着し、今日もウィッジちゃんに受付をしてもらう。

 彼女は後ろを向いていたので、声を掛けてみると驚いたような声をあげる。

 毎日のようにスティンガーとさそりの討伐報酬を受け取りにきているが、日に日に顔が引きつってきている気がする。

 それでも最近は慣れてきたのか、口調も柔らかくなり話しやすい娘なので助かるわ。それに巨乳で目が安らぐ。


「はい、こちらが報酬でございます。今日も35体ですか……この協会で働き始めてから今まで、毎日こんなにスティンガー狩ってくる人初めてですよ……」


「そうなんですか?」


「あまりの硬さに倒すのが厳しいので、普通なら他の場所に行くんですよ」


 スティンガーの討伐報酬は5体で5万とかなり高額だ。本日は7回分の35万G。そして鎧サソリは20体で2万Gの18万Gだった。

 合計で52万Gの報酬。もう狩りをし始めてから軽く500万G以上と荒稼ぎをしている。

 ここまで頻繁にアホみたいな数を狩る人は今までいなかったみたいだ。


「でも魔導師有りなら行く人もいるんじゃないですか?」


「スティンガーの毒針は飛ばしたら追尾してくるじゃないですか。魔導師の方が、そんな危険を冒してまで倒す魔物じゃありません」


 そうか。エステルはURユニットでさらにUR装備までしている。だからこそあんな簡単に殲滅できるが、普通だったら倒しきれずに反撃の誘導毒針が飛んでくるのか。

 ノールが当たってもアイタ!? って言うだけで済んでいるが、あの一撃でも致命傷になりそうな攻撃力があるんだもんな。


「それにしても羨ましいですよ。スティンガーの甲殻をあんな量持ってるなんて……」


「羨ましい? これってそんなに良い物なんですか?」


「あれ、ご存知ありませんでしたか? スティンガーの甲殻は冒険者達の間じゃ人気の素材なんですよ。防具に混ぜ込むと飛躍的に頑丈になるんです」


 マジか。確かにあの魔物自体が硬いけど、装備に混ぜ込むとかできるのか。

 それに人気素材とか売ったら高くなりそうだな。


「本当は狩れる人が少なくて貴重な素材なんですが……大倉さん既に数百単位でお持ちですよね? 装備屋の人達がそれを聞いたら、殺到してくるかもしれませんよ」


 いくら人気素材だからと言っても、命の危険がある場所だから行く人も少ないのだろう。

 それにしても装備屋が殺到なんて大袈裟な気がする。



「ふむ、良いことを聞いたな」


「お、売りに行くのでありますか?」


「あぁ、とりあえず今日の分だけだけどな」


 宿へ向かう前に、ガンツさんの装備屋へ向かうことにした。

 あんなに人気ある物だって言われるとなんだか気になっちゃうから。


「いらっしゃいませ! ガンツの装備屋へ……あっ、大倉さんじゃないですか。今日はどうしたんですか?」


「えーと、素材の買取をお願いしようかと思いまして」


「本当ですか! 大倉さんが持ってくる素材だとなんだか期待しちゃいますよ。おとーさん! 大倉さんが来たよー!」


 店に入ると、ポーラさんが出迎えてくれた。いつも通りの元気な挨拶だ。

 買取をしてほしいというと、大声で店の奥へと叫びガンツさんを呼んでくれる。ガンツさんはいつ来ても店の奥の方に引っ込んでいるな。


 すぐに奥から歩いて来る音がする。そして奥の方からガンツさんと、金髪の青年が出てきた。

 あれ、こいつ……。


「まさかここで君と会うなんてな」


「おっ、なんだ? お2人さん知り合いか?」


「えぇ、少し縁がありましてね」


 げぇっ、ディウス!? なんでこいつがここにいるんだよ。

 あれ以来冒険者協会で見かけることはあったが、お互い干渉はしないようにしていた。

 うへー、なんだか気まずいわ。


「お、お久しぶりですね、ディウスさん」


「久しぶりだねエステルちゃん。調子はどうだい?」


「えぇ、すっごく良いわよ」


「そうか、それは良かった。いつでも僕達のパーティに来てくれてもいいんだからね」


「ふふ、遠慮しておくわ」


 こっちが挨拶をすると、俺を無視してエステルに声をかける。この野郎、ブレない奴だな。印象が360度変わってきたぞ。

 見ていたガンツさんとポーラさんが驚いている。


「そ、それで、大倉。今日はどんな用だ?」


「あっ、はい。最近北の洞窟で狩りをしていて、そこの魔物の素材が装備屋で人気があると聞いたので、買い取ってもらおうかと」


「北の洞窟……ま、まさかスティンガーの甲殻か!?」


「なっ、スティンガーの甲殻!?」


 北の洞窟のドロップアイテムだと言うと、ガンツさんがこれでもかって言うほどに俺に近づいてきた。近いっす。

 そして何故かディウスまでもが驚いた声をあげている。


「そ、そうですよ。これ今日狩ってきた分なんですけど買い取ってもらえますか?」


「おま、今日の分って……これ狩り過ぎだろ!? 何やってるんだよお前達!?」


「こ、これが今日の分だと……」


 スティンガーの甲殻は50cmほどの大きさだ。それを重ねて袋の中に入れてあった。

 入っている袋を彼に手渡すと、中身を見てその数に驚いている。隣にいるディウスまでもが驚いている。


「それでどうですか?」


「どうもなにも……全部買い取るぞ。えっーと……35個もあんのか。全部で105万Gでどうだ?」


 うっほ、105万とかやばいな。でもこれ残り500個以上あるんだよね。

 在庫が増えたら買取単価も下がるだろうし、その前にそれを言ってから値段を決めてもらおうか。

 後出しで言って嫌われるのも嫌だし。


「ちょっと待ってくれ!」


「な、なんですか?」


 口を開こうとした時、ディウスが突然ガンツさんとの話に割り込んできた。さっきからこいつはなんなんだ?


「大倉、いや、大倉さん! 是非その素材僕に売ってもらえないだろうか?」


「えっ、いや、はい?」


 突然丁寧な口調になり頭を下げてきた。

 うっわ、こいつが俺にそんな口調してくるとなんだか気味悪い。鳥肌が立つわ。


「実はな、今日こいつは防具についての相談に来ていたんだよ」


「そういうことなんだ。だから、是非頼む!」


 なるほど、防具の為にここに来ていたのか。

 俺だって鬼じゃないし、多分こいつもかなり無理をして俺に頭を下げているのだろう。

 

「あー、落ち着いてくださいよ。実はスティンガーの甲殻これ以外にも500個以上あるんですよ」


「は?」


「ですから、必要な分言っていただけたらお売りしますよ」


 500個以上あることを彼らに告げると、ポーラさんも含めて唖然と口を開いて固まっていた。

 あれ? なんか予想していた反応と違うのだが。



「うーむ、あそこまで驚かれるなんてな」


「いや、500個以上なんて聞いたら普通驚くと思うでありますよ?」


「お兄さんは数の感覚がおかしいみたいね」


 結局あの後ガンツさんに今日の分を買い取ってもらい、ディウスには必要な分を後日渡すことになった。

 他のパーティーメンバーの分も欲しいそうなので、まず必要な個数を確認するそうだ。

 それにしても俺の感覚がおかしいだなんて失礼だな。6000個超えてる牙に比べたら普通だろう。

 そういえばあの牙まだ売ってなかったし、後日まとめて売ってくるか。


「いや、俺は正常……ん?」


「どうしたのでありますか?」


 突然ポッケの中のスマホがバイブレーションし始めた。

 おっ、このパターンはもしかして……。


「きた、来たぞ! ガチャフェスが来たぞ!」


 スマホを確認すると、GCのトップ画面にデカデカと【装備フェスティバル開催。SR以上排出率3倍!】と表示されていた。

●ノール・ファニャ    

レベル 24→44       

HP 2260→2780

MP 310→640

攻撃力 530→860

防御力 355→525

敏捷 81→105

魔法耐性 30

コスト 15

●エステル

レベル 16→36

HP 610→870

MP 1520→1980

攻撃力 415→575

防御力 125→225

敏捷 12→18

魔法耐性 40

コスト 22

●【団長】大倉平八

レベル 23→ 43

HP 890→1220

MP 155→320

攻撃力 315→480

防御力 255→420

敏捷 47→80

魔法耐性 10


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― 新着の感想 ―
装備ガチャフェスかー 個人的にはキャラ優先の私には旨味のないフェスだから完全スルーですね!w
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