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エルダープラント

 触手を操る元である複核を倒した俺達は、本体を見つけるべくさらに奥へと進み始めた。

 グラリエさんに誘導してもらいつつ、新たに4つの複核を見つけて全部処理。

 どれも貯め込んでいる精気の強さは同じのようで、本体がどれか判断するのが難しいようだ。

 今も5個目の複核を倒し終えたところで、グラリエさんが残った残骸に触れて精気の流れを辿っている。

 

「これで5個目か。どんだけ複核があるんだよ」


「この階層全体に広がっているみたいでありますなぁ。今までで1番巨大な魔物なのでありますよ」


「別物のように思えますけど、触手も複核も1体の魔物から発生しているとしたらとんでもないですね。町より大きいんじゃないですか?」


「もう迷宮その物が魔物と思えるぐらいだわ。だけどもう触手の襲撃にも慣れたし複核の処理も問題ないわね」


 ずっと襲ってきている触手も、いくつもある複核も元を辿れば1体のエルダープラントから発生してるんだもんなぁ。

 王都に比べればまだ小さいが、今まで移動した範囲を考えたらこの層はブルンネより確実に広い。

 エルダープラントがこの層全体に広がっているんだとしたら、とんでもない大きさになっているってことだ。

 迷宮の中だからまだいいけど、こんな魔物が外に出たらどうなっちまうんだ……考えただけでも恐ろしいぞ。


 そんな想像をしながらグラリエさんが探知するのを待っていると、ぐったりとしたルーナがマルティナの出している獣型のメメントモリの上で横たわっていた。

 完全に脱力しきって今にもとろけそうな顔をしている。


「はぁ……だるい。マルティナ、助かるぞ。負の力は癒される」


「これぐらいお安い御用さ! ヴァラドさん大活躍で羨ましいよ」


「ルーナちゃん凄い張り切ってるんだよー」


「迷宮さえ攻略できたら休みだ。そう思えば頑張れる」


 横になってだらけ切ったままの状態でルーナはキリっとした表情をしている。

 やる気があるのかないのかわからないんですが……。

 だけど今回は本当にルーナに大活躍してもらっている。

 ここまでカズィクルを連発することは今までなかった。

 この迷宮を攻略したら長期間ゆっくりと休んでもらうかな。


 なんて考えている間にグラリエさんは探知を終えたようで、複核の残骸に触るのを止めた。


「グラリエさん、本体まで辿れましたか?」


『……まだはっきりとした地点はわからないが、複数の核に触れたおかげで流れの方向性は見えてきた。恐らくその先に本体となるエルダープラントがいるはずだ』


「やっと本体と対面できそうね。けれどこんな強力な複核と触手を生み出せる相手だと考えたら、こっちも緊急時に備えて対策を立てた方がよさそうね」


 うーん、触手と複核でこんだけ苦戦させられるんだから、本体も間違いなく一筋縄じゃ行かない相手だよなぁ。

 かといって対策を立てるにしても、本体がどんな奴かすら今もわかっていない。

 現状で対策をするとして候補に挙げるとしたら……。


「本当に緊急事態に備えるとしたら、緊急召喚石と解放石を使うしかないな」


「緊急召喚石はカロンを呼んだアイテムでありますよね。解放石は私達の強化でありましたっけ?」


「ああ、使うとしたら誰にするか事前に決めておくか」


 もしエルダープラント本体がどうにもならない相手だった場合、確実にできる対策といえば緊急召喚石と解放石を使うことだ。

 緊急召喚石の方はランダムだからかなりギャンブル性があるけど、URユニットを呼び出せるのは心強いなんてもんじゃない。

 カロンちゃん級じゃないとしても、URユニットは誰でも一騎当千の強さを誇っていると思っていいからな。

 それとは別として、俺達が選んで使える対策はやはり解放石だろう。


 ――――――

●解放石

 ユニットと専用装備を一時的に☆5まで強化できる。使用後、このアイテムは消滅する。

 ――――――


「おお! 凄そうなアイテムだね! 強化されたらどうなるか気になるよ!」


「いいなぁー、いいなぁー。私は絶対強化してもらえないんだよー」


「私も対象外ですからねぇ……。フリージアさん、一緒に傷の舐め合いをしていましょう」


 よよよとウソ泣きをしながらシスハはフリージアの手を取って慰め合っている。

 確かにプラント系と相性の悪そうなフリージアと、回復役のシスハは候補から外れるんだけどさぁ。

 マルティナも期待満々な眼差しでこっちを見ているけど、デバフ要員だから今回は候補外だ。

 とりあえず反応せずにスルーして、エステル達に考えを聞いてみることにした。


「この中だったら誰がいいと思う?」


「うーん、そうね。エルダープラント本体のステータスとかを見ないと何とも言えないところだけれど、触手や複核を考えたらルーナが第一候補じゃない?」


「えっ?」


「凄く嫌そうな顔してるでありますよ……」


 なんで私? そう言いたそうにしかめっ面でルーナがこっちを見ている。

 そしてすかさず反論を言い始めた。


「エステルかノールの方が適任だ」


「攻撃役の方が適しているのは確かだけれど、エルダープラント相手ならルーナの方が強化を活かせると思うわ。触手や複核ですら魔法耐性が高いから私だと相性が元々悪いもの。その点ルーナはスキルを使えばダメージを確実に与えられるし、発動間隔も私達の中で圧倒的に短いわ」


「そうでありますなぁ。私やエステルが強化されたとしても、スキル発動時間に不安が残るでありますね」


「うぐぐ……あまり頼りにされても困る。だが、私がやるしかないなら努力しよう」


 エステルとノールに説得されて、渋々な様子ではあるが解放石の対象となるのを受け入れている。

 エルダープラントの触手とかの外皮をはがすのに、ルーナのカズィクルは必須と言ってもいいぐらいだからな。

 本体も同じような外皮に守られている可能性が高いとなれば、ルーナのスキルが1番効果がある可能性が高い。

 それに傷口を広げてくれればエステル達も攻撃を通しやすくなるから、ダメージを与えるきっかけ作りをするのに適任だ。

 星5まで強化されたルーナならスキルもかなりの頻度で連発できそうだし、威力だって桁違いに高くなるだろう。

 

 そんな訳でもしもの時はルーナに解放石を使うことで話もまとまり、本体を探すべくまた精気の貯まり場に向かって移動を始めた。

 グラリエさんの言う精気の流れとやらで本体のいそうな場所を予想し、またさっきと変わらない1体の複核が見えてきたのだが……その複核を見た途端、グラリエさんは大きく声を上げた。


『あれだ、あれがエルダープラントの本体だ! 一際強い力を感じる!』


 パッと見は巨大な黒い茎で今までの複核と違いがわからないけど、どうやらこれがエルダープラントの本体らしい。

 マルティナにゴーストで先行してもらって確認しても特に待ち伏せなどはなく、すんなりと近づくことができた。

 グラリエさんを信じていない訳じゃないけど、これが本当にエルダープラントの本体なのだろうか……ステータスを見てみよう。


 ――――――

●エルダープラント(第一形態) 種族:プラント

 レベル:100

 HP:60万

 MP:?

 攻撃力:0

 防御力:2万6000

 敏捷:0

 魔法耐性:250

 固有能力 超再生 防被膜 精気貯蓄 触手操作

 スキル プラント生成 複核生成

 ――――――


「思っていたより強くなさそうでありますね。これなら複核と同じように倒せそうなのでありますよ」


「いや待て、どう考えても不穏な物が名前に付いてるぞ……」


「第一形態……まだ変身を残しているってことですよね。本当に迷宮の魔物は特殊な相手ばかりで困りものです」


「うーん、変身する前に私達が到着できたってことなのかしら? それとも戦っている間に姿を変えるのか……何にせよ早めに倒しておいた方がよさそうね」


 ステータスが多少高いのもあるけど、俺としては名前に付いてる第一形態って言うのが怖過ぎるんですが。

 精気を吸収して成長している途中なのか、それとも攻撃をしたり何かアクションがあると進化するのか……どちらにしても嫌な予感しかしない。

 もし成長している最中だったとしたら、次の段階に移行する前に倒してしまえばこれで終わりだ。

 だけど他の条件で変身するんだとしたら……いや、何があるにしても倒さないって選択肢はないか。


 とにかくエルダープラントを倒そうとなり、本体のいるちょっと広めの空洞に足を踏み入れたのだが……それと同時にゴゴゴっと周囲が揺れ始める。

 すぐに壁や天井から3本の黒い触手が姿を現して俺達に向かってきた。


「うおっ!? 触手が3本も出てきやがったぞ!」


「本体だけあって操る数も多いみたいだね! 僕に任せてくれ!」


 マルティナは一歩前に躍り出ると、鎌を構えてメメントモリを3体呼び出した。

 向かってくる触手を迎え撃つように紫色のオーラを纏ったメメントモリ達は走り出し、それぞれ1本ずつ受け止めて抑え込んでいる。

 これは複核との戦いで既に流れ作業になっていて、複核を守る触手をマルティナのメメントモリが抑えてその間に倒すといった感じだ。

 今回もその流れでルーナがカズィクルを撃ち込むべく、前に出ようとしていた。

 だが、ルーナのブラドブルグだけじゃ本体に与えるダメージに少し不安がある。

 なので俺はエクスカリバールを使えとルーナに提案することにした。


「ルーナ、これを使ってカズィクルをぶち込んでくるんだ。黄金の一撃も使えば本体にも通るはずだ!」


「ふむ……あまり気乗りしないがいいだろう。マルティナ、貴様も一緒に来い」


「へっ――うわわわわ!?」


 俺からエクスカリバールを受け取ったルーナは、マルティナを脇に抱きかかえて飛び出していく。

 そして本体である黒い茎の傍まで行くと、マルティナが触れながら負の力でデバフを流し込む。

 エルダープラントの表皮はみるみると紫色のオーラに包まれていき、それを確認したルーナはエクスカリバールを片手に振り上げた。

 黄金の一撃を発動させたのかエクスカリバールは黄金に輝き、同時に赤いオーラも纏って混ざりあっていく。

 そうして振り下ろされたエクスカリバールによるカズィクルは、エルダープラントの茎に直撃すると表皮が大きく消し飛んで内部にあった赤黒い球体の核を露出させるだけじゃなく、その余波でヒビまで入っている。

 同時にメメントモリが抑えていた触手は激しく痙攣し、壁のあちこちに飛び跳ねるようにぶつかり暴れだした。


「え、エクスカリバールでのカズィクル、凄い威力でありますね……」


「黄金の一撃も加わっていますからね。さすがルーナさんです!」


「ゴーゴーなんだよルーナちゃん!」


 予想はしていたけどとんでもない威力になってやがるな……。

 やっぱりルーナのカズィクルとエクスカリバールの黄金の一撃は相性が抜群によさそうだな。

 問題があるとしたら、血を飲むだけじゃなくて、黄金の一撃で消費したMPを補給するのにマジックポーションも必要なところか。

 あまり連発させるとルーナの腹が液体でタプタプになっちまう。

 それにエクスカリバールを渡しちゃうと完全に俺が無力化しちまうが、エルダープラントと戦っている間は使ってもらった方がよさそうだな。


「エステル、止めを刺してくれ!」


「ええ、最初からそのつもりよ――えいっ!」


 完全に露出したエルダープラントの核に向かい、エステルがグリモワールを開いて3倍の威力に増した光球を放った。

 ルーナの一撃によって受けたダメージが大き過ぎるせいか、触手も制御できずに防ぐ手段もなくそのままエステルの魔法が炸裂。

 エルダープラント本体の赤黒い核は完全に消滅し、黒い茎はみるみると萎れていき暴れ狂っていた触手は壁の中へと引っ込んでいった。


 よっしゃ! これでエルダープラント討伐完了だ!

 なんだよ、結構あっけないじゃねぇーか。

 慎重になり過ぎて損して……ん? なんか揺れているような……。

 

 段々と揺れが大きくなっていき、それに反応するように萎れていたはずのエルダープラントの萎れた茎に黒い光が宿っていく。

 そして露出していた内部に真っ黒い核が形成されたかと思えば、瞬く間に開いた穴が塞がり茎に艶が出てきた。

 さらに引っ込んだはずの触手が五本に増えてまた出てきて、茎からも何本もの触手が生え始める。

 

 おいおい……まさか第一形態を倒したら第二形態になるパターンだったのか?

ウ〇娘でもう来ないだろうとタマモ貯金を使い切った途端にタマモが実装されてとんでもなく焦った年末でした……。


また掲示板回を書いてみましたので活動報告に投稿させていただきます。

今回から実験的に↓に掲示板回の各リンクを貼ってみましたので、そこから飛んでお読みいただければと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 残りの核が尽きたとき、残りの核に貯まってるMPが無くなって、MP:の数字が表示されるんだろうな
[一言] >なんだよ、結構あっけないじゃねぇーか。 人、これをフラグと呼ぶ。
[良い点] よよよ… しおらしくしていると、とても優雅で美人さんの神官さん(笑) 触手プレイの被害者に是非とも期待!(笑) [気になる点] 強力除草剤で枯れさせて、変身するスキも与えず速攻で倒すやり方…
2021/12/31 00:35 にゃんこ聖拳
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