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東と西 狩場の選択

「うわぁ……もうマジ無理。帰ろう」


「ちょ、到着したばかりなのにどうしたのでありますか?」


「ノールは気持ち悪いとか思うこと無いのかしらね」


 北の洞窟から今度は西の森林へと来ている。森の付近にいる魔物は、1mを超える緑色をしたイモムシだった。黒い模様もあってか見てるだけでも鳥肌が止まらない。それが数十匹と徘徊している。

 やだ、こんなの相手するの嫌だ。攻撃したら絶対体液がぶちゅっと溢れ出てくるぞ。

 

「ん? 気持ち悪いでありますか? 可愛らしいと思うのでありますよ」


「お、おう。お前凄い奴だったんだな。心から尊敬する」


 普通の感性じゃないとは思っていたけど、ここまでとは思っていなかったぞ。なんだかノールが遠い存在になった気がする。


「なんだか納得いかないでありますが……どうするでありますか?」


「うーん、とりあえずステータスを見てみるか」


 ――――――

●種族:キャタピラー

 レベル:40

 HP:1万5000

 MP:0

 攻撃力:300

 防御力:100

 敏捷:5

 魔法耐性:0

 固有能力 無し

 スキル 粘着糸

―――――― 


 特に強くはないが、範囲狩りをするのなら駄目だな。それに粘着糸なんて厄介なスキルまである。


「ここも微妙かもしれない。敏捷が低すぎるから釣るのに時間がかかりそうだ。それにHPが高い」


「むぅ、それじゃここでの狩りは断念でありますな」


「とりあえず希少種だけでも確認しておくか」


「了解でありますよ!」


 ここは釣り範囲狩りには向かないと判断し、希少種とドロップアイテムの確認だけにしておくことにした。

 エステルから支援を貰い、ノールは勢いよく飛び出して行きバッサバッサとイモムシ達を切り裂く。

 可愛らしいとか言っていたのに、なんの躊躇も無く倒していく姿には身震いがするぞ。


「可愛らしいとか言っていたのに、あっさりと倒していくのね……」


「あぁ、まるで迷いの無い太刀筋だ」


 エステルや俺も参加し、森の付近にいたイモムシを倒し終わった。体にバール突き刺すたびに背筋がぞくぞくとして勘弁してほしかった。絶対ここでの狩りはもうしないぞ。

 落ちたドロップアイテムは繭だ。イモムシ見た後で気味が悪かったが、回収する為に触ると手触りがよかった。これはこの世界で服の材料になってそうだな。

 回収を終え、後は希少種が湧くのを待つだけ。

 そして待つこと数分。森の奥から木をなぎ倒しながら黒い5mほどのイモムシが出てきた。体のあっちこちからフサフサとした毛が生えている。


「うひゃぁ!? きっも、無理無理ここやばいって」


「もう大袈裟でありますな大倉殿。ほら、よく見てみるでありますよ。あのつぶらな瞳、やわらかそうな肉体。ね? 可愛らしいでありましょ?」


 彼女は俺に優しく語りかけてくる。

 こいつは何を言っているんだ。どこをどう見ても気持ち悪いわ! 


「エステルはわかってくれるでありますよね?」


「ふふ……」


「え、エステル? あれ、これ私がおかしいのでありますか? 大倉殿、エステル、返事をしてほしいのでありますよ!?」


 次に話を振られたエステルは少し笑い顔を逸らしている。

 ようやく自分の方が異常なのかと気が付いたようだが、触れたらめんどくさそうなのでスルーしておこう。

 とりあえずこの気持ち悪いイモムシのステータスを確認だ。


 ――――――

●ディガー 種族:キャタピラー

 レベル:60

 HP:5万6000

 MP:0

 攻撃力:400

 防御力:300

 敏捷:5

 魔法耐性:10

 固有能力 HP吸収

 スキル 粘着糸 自爆

―――――― 


 HP高いな。それにHP吸収とか嫌らしいの持ってる。あと自爆持ちかよ。

 GCでも自爆持ちのいたけど、倒した後に爆発して被害が出る嫌らしいスキルだったわ。


「さて、とりあえずあの希少種を狩るとするか。エステル、準備はいいか?」


「えぇ、大丈夫よお兄さん」


「ナチュラルに省かれているのであります!? お2人共、無視しないでくださいでありますよ~」


 後ろで喚くノールは無視し、こっちに向かってくるディガーを処理することにした。

 


 ディガーを無事処理した俺達は次の東の狩場へと向かっている。

 あいつは結局エステルの魔法で処理をした。あのフサフサした毛にも触れたくないので、全身を火の魔法でこんがりだ。

 最後には自爆して、酸性らしき液体を撒き散らし煙を上げながら息絶えた。

 あんなの普通に相手をするだけでも嫌だな。ドロップアイテムは普通のイモムシよりも大きな繭だった。


「むぅ……」


「ほら、いつまでも落ち込むなよ。俺達が悪かったって、な?」


「冗談よ、ね?」


 さっきスルーしたことをまだ根に持っているらしい。カーペットの後ろに乗っている彼女は、人差し指を合わせて胸の前でいじいじとしている。


「じゃあお2人はあの魔物可愛らしいと思ったでありますか?」


「……」


 俺は横にいるエステルと顔を見合わせる。そして互いに頷いて無言を貫くことにした。

 趣味は人それぞれだ。否定するのも良くないし、触れないであげるのが1番無難だと思う。


「あー、うん。とりあえず次の狩場に到着だ。注意して降りるんだぞ~」


「あー! 話流したでありますな! むぅ、じ~」


 目的の場所に到着したので話を切ることにした。

 ノールが俺の両肩を掴んで顔を覗き込んでくるがスルーだ。耳の横でずっとじ~とか言ってる。顔が近い。


「なんだか不気味な場所だな」


「そうね、あれがここの魔物かしら?」


 横に張り付いている彼女のことは一旦無視して狩場を確認してみる。

 無数の細長い石が地面に突き刺さり、緑が全く無いなんだか寂しい風景。まるで墓場のようだ。

 エステルが魔物じゃないかと指差す先には、白い人の形をした上半身だけののっぺらな顔をした何かが数十といた。

 あ、あれってまさか……。


「キャー!? 幽霊、幽霊が出たぞ!?」


「アイタ!? ちょ、大倉殿! いきなり抱き付かないでほしいのであります!」


 俺は悲鳴を上げて横にいたノールに飛び付いて抱き締め、一緒に転倒した。

 幽霊、幽霊だ。マジでこの世に存在したというのか。俺は幽霊とかが苦手なんだ。


「お兄さんどうしたの?」


「いや、だって、幽霊だぞ? お前ら怖くないのか?」


「今更幽霊を怖がるの?」


「……それもそうか」


「うぅ、そんなすぐに受け入れられるなら飛び付いてこないでほしいでありますよ」


「悪い悪い、丁度良い位置にいたから思わずな」


 よくよく考えたら魔物とかがいるんだし、幽霊がいてもおかしくはないか。

 それにこの世界の幽霊だったら倒せるだろうしな。

 とりあえずこいつもステータスを見ておこう。


 ――――――

●種族:ゴースト

 レベル:40

 HP:1万

 MP:500

 攻撃力:250

 防御力:100

 敏捷:50

 魔法耐性:60

 固有能力 無し

 スキル 念力

―――――― 


 こいつも相性が悪いな。HPもそこそこで魔法耐性60じゃ北の洞窟の効率と比べると全然駄目。

 念力っていうのも遠距離攻撃をしてきそうで微妙な感じだ。


「うーん、ここも微妙だな。魔法抵抗が高過ぎる」


「ということは、北の洞窟で狩ることになるのでありますか」


「そうなるな……ノール、本当にすまないが頼めるか?」


「ふっふー、任せてくださいなのでありますよ」


 結局最初の北の洞窟以外は効率的に駄目みたいだ。たまに気分転換として狩りに来る程度だな。

 ノールが釣り役を引き受けてくれる気になったのは本当にありがたい。今度お礼をしないといけないな。

 

 そういう訳でここも希少種の確認だけして今日はもう帰ることにした。

 この世界の幽霊は何故か物理で攻撃できるみたいで、バールもちゃんと突き刺さった。というよりも攻撃が当たった部分から消滅している。

 体全体を消滅させると、ビー玉程のサイズの白い玉を落とした。これがこいつのドロップアイテムか。

 

 ゴーストを全滅させ、ドロップアイテムを回収し希少種を待つ。

 しばらくすると光が集まり、ゴーストが湧き始める。そしてそれに混じり、2m程はある黒い甲冑を着た骸骨が現れた。手には青みがある大剣と盾を持っている。


「あれがここの希少種か」


「立派な骨なのでありますよ。生前はかなりの使い手だったに違いないのであります」


「魔物なんだから生前もなにも最初からあれなんじゃないかしら?」


 うん、俺も生前とかは無いと思うな。とりあえずこいつも確認っと。

 

 ――――――

●デスナイト 種族:スケルトン

 レベル:60

 HP:3万

 MP:100

 攻撃力:2000

 防御力:500

 敏捷:30

 魔法耐性:90

 固有能力 屈強な魂

 スキル 孤軍奮闘

―――――― 


 うっわ、これ相手したくない。屈強な魂は確かどんな攻撃を食らってもHPが1残る能力だったはずだ。

 スキルの孤軍奮闘は、周りに味方がいない場合に全ダメージが50%カットされるスキル。こいつは釣り狩りには全く向かないな。

 

「うーん、そうだな。エステル、デスナイトとゴーストを1体ずつ釣れるか? それでゴーストの動きを止めてくれ」


「はーい、任せて」


「ノールはエステルがデスナイトを釣って近くに来たらすぐにブロックな」

「了解なのでありますよ!」


 そのまま狩りをしようとすると、デスナイトの周りには何匹かのゴーストがいるので複数相手にすることになる。なので孤軍奮闘を発動させないように1体ゴーストを近くに固定させ、倒しきることにした。

 

 エステルが魔法で2体を攻撃し誘導する。そして近づいた頃になってゴーストが攻撃する前に、昨日俺を動けなくさせた魔法でゴーストの動きを止める。

 すかさずノールがデスナイトの前に躍り出て斬り付け、行動速度を半分にする。これぞ黄金パターン。

 そしていつも通りにデスナイトをノールと俺でたこ殴りにし、1分程で光の粒子となりドロップアイテムとなった。なんだかこの倒し方魔物がかわいそうになってくるな。

 落としたのは人間サイズとなった甲冑だけ。

 むぅ、あの剣と盾も落ちそうだったのにな。レアドロップなのだろうか?



「ふぅ、なんだかんだで夕方になっちまったな」


「1日でこれだけ回って夕方なら良い方だと思うわよ」


「私もう、お腹がぺーこぺこなのであります」


「とりあえず討伐証明の確認だけしに冒険者協会に行かせてくれ」


 全ての狩場を回り終えた頃には、空はもう夕暮れに染まっていた。

 なんだかワシ戦士以外、ここの周辺の狩場は精神的にきつい所ばかりな気がするぞ。

 今日討伐した魔物達の討伐報酬を受け取る為に、さっさと冒険者協会行って宿へ帰ろう。明日からは北の洞窟での狩りを始めるしな。


「すいません、魔物の討伐証明を見ていただきたいのですが」


「あっ、大倉さんですか。それでは、討伐証明のご提示をお願いしますね」


 協会に入り、討伐証明をする為に受付へと行く。対応をしてくれたのは、巨乳のウィッジちゃんだ。ちらっちらっと思わず確認したくなる。

 さっそくドロップアイテムを受付の専用の場所へと置いていくと、ウィッジちゃんがなんだか驚いたような表情をしている。


「お、大倉さん!? こ、これどうしたんですか一体! スティンガーの甲殻、ディガーの繭、デスナイトの甲冑。全部Bランク冒険者の上位の方じゃないと狩れない魔物の物ですよ!」


「あー、ちょっと色々試してる間に狩っただけですよ」


「この魔物をついで扱いで倒すなんて……ディウス様に勝ったっていうのは本当だったんですね」


 あー、うん。そうだよね。あいつら全部ワシ戦士長クラスの魔物だったしな。

 それよりBランク内でも上位ランクとか分かれているのか。

 明日からスティンガーを大量に狩るつもりなのだが……討伐証明持ち込んだ時、どんな反応されるのかちょっと怖くなってきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりにノームが中心になりましたね 少し影が薄かったので安心
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