表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/408

神魔硬貨の交換条件

 マルティナが今の生活に馴染みつつある程度日数が経った頃、俺とエステルは冒険者協会へ向かうべく王都へ来ていた。


「うーん、協会長はもう神魔硬貨を譲ってくれそうな人と連絡取れてるかなぁ」


「どうかしら。墓地の発見で忙しそうだから、まだ手が回っていないんじゃない? 私としても神魔硬貨の有用性は十分に理解できたから、早めに沢山集めておきたいけどね」


 魔人の墓地の存在が判明してから調査をするって話だったから、しばらくはそっちに手がかかり切りになると思い協会へ足を運ばずにいた。

 俺達もマルティナが馴染むまではあまり慌ただしくしてなくて丁度よかったぞ。

 そろそろ調査も一段落してきただろうと予想し、今日は話を聞くためにエステルと2人で行くことになった。

 墓地についても少し気になるのと、神魔硬貨を譲渡してくれる人も見つかっていないかなーって思っていたが……あまり高望みはしない方がよさそうだな。

 マルティナのために死霊術師的な存在がいるかも聞いておかないとな。


 さっそく冒険者協会に到着して用件を伝えると、すぐにクリストフさんの部屋に通されて話を切り出された。


「まず墓地の件だが、魔人が関わっていたのは間違いないそうだ。現在は国が厳重に内部を調査しているよ」


「私達もある程度中の探索はしましたけど、そこまで調べるなんて最深部以外に気になる点でもあったんですか?」


「冒険者を派遣してこちらでも調査はしたが、特に不審な点は見当たらなかった。君達から伝えられた通り、魔物も一切出てこなかったそうだよ。しかし、国としては魔人が関わっていた場所は軽視できないようで騎士団が派遣されている。セヴァリアの異変を起こしていたのが魔人だったから、些細なことでも見逃せないのだろう」


「そうね。セヴァリアの時のように、あそこを拠点にしている魔人が潜んでいる可能性も否定はできないもの。私達よりも魔人に詳しそうな国に調査してもらうのが最良かもね」


 俺達も最深部まで行って実際に戦って慰霊碑も確認していたから、魔人の墓地だと確証があったけど改めて認定されたのか。

 慎重に調査もしているみたいだし、他にも俺達が知らない魔人の痕跡があるのかもな。

 確かにセヴァリアでマリグナントが暴れたばかりだ。仲間も魔人もどこに潜んでいるかわからないから、関りがありそうな場所は徹底的に調べておくべきだろうな。


「そういう訳で魔人の墓地に関しては、既に冒険者協会としてやることは少ない。……今回も君達が発見したことで、騎士団から多少注目をされていると噂されていたがね」


「俺達がですか!?」


「うむ、ただでさえセヴァリアの異変はこの国に衝撃を与える出来事だった。詳細は一部の者以外は伝えられていないそうだが、その時点で君達は国から注視されていたはずだ。もしかすると今後、王城へ呼び出される可能性もあるから心しておいてほしい」


 うへぇー、騎士団というか国から注目され始めるのは勘弁してほしいな。

 だけどセヴァリアの異変を解決して、さらに王都に比較的近い場所にあった魔人の隠された墓地まで見つけている。

 こんなことが続けて良い意味でも悪い意味でも注目されても仕方がない。

 でも王城に呼び出されるのはなぁ……そう思っていると、エステルが少し冷ややかな目をして口を開いた。


「ふーん……でも国から呼び出されたとしても、私達が絶対に応じなきゃいけない必要もないわよね」


「それはそうだが……可能な限り応じてもらえると助かる」


「情報提供をするだけならいいけど、もしそれ以上のことを求められたら嫌よ。冒険者協会を通して連絡や協力をすればいいだけじゃない。直接王城に呼び出されるなんて、無茶なことを強要されそうだもの」


「正直なところ、そのような話が絶対にないとは言い切れない。受けるか断るかは君達の意思次第だが、あまりに無茶なことであれば冒険者協会として抗議はさせてもらうから頼ってほしい。何か言われたら協会と相談すると言い、その場凌ぎをしてもらっても構わないよ。まあ、まだ呼ばれると決まった訳ではないがね」


 確かに冒険者協会経由で情報を伝えれば十分そうなのに、わざわざ王城に呼ばれたら何かあると勘ぐるのは当然だな。

 もしその場で直接何か頼まれでもしたら、断りづらいのは確実だ。

 協会を盾にして逃げてもいいって言質も貰えたし、もし呼ばれた時はそれで回避するとしよう。


 さて、これ以外にもまだまだ聞きたいことがあるぞ。


「墓地の話はわかりましたけど、それとは別に聞きたいことがあるんですが大丈夫ですか?」


「うん? もしかして神魔硬貨のことかな?」


「あっ、それもお聞きしたいんですけど別の話です。魔導師とはまた違うんですが、アンデッドを操れる人達っているんでしょうか?」


「アンデッドを操る……?」


「ええ、スケルトンとかを自由に作り出して、戦わせるような人っているのかしら」


 クリストフさんは眉をひそめながら顎に手を当てて悩む素振りをしている。

 協会長が即答しないってことは、やっぱり死霊術師はいないってことか?

 でも、いないならいないですぐにそう言いそうだし、悩んでいるから心当たりがあるのかもしれない。

 そう期待しながら少し待つと、クリストフさんは思い出すかのように口にし始めた。


「私の知る限りアンデッドを作り操る人間は見たことはない。しかし文献で過去にそういう存在がいたのは目にしたことはある。魔人の中にも似たような力を使う者がいて、200年前の大戦で苦労させられたと聞く。今回の墓地がここまで国を警戒させたのも、恐らく関係があるだろう」


 あっ……よりにもよって魔人の中に死霊術師がいたのか。

 言い方からして人間でもいたっぽいけど、今はいない感じだよなぁ。

 そうなると1番近い時期にいた魔人の死霊術師が連想されるから、マルティナの力を公にして使わない方がいい。

 うん、マルティナもフリージア達と同じ留守番役決定だな。本人は悲しみながらも喜びそうだ。


 唐突にこんな質問をしたせいか、クリストフさんは訝しげな様子で問いかけてきた。


「そんな話を聞いてくるとは、もしや墓地でそのような魔人の存在の情報があったのかな?」


「いえ、そういう訳じゃないんですけど……」


「最深部にいたデスバーサーカーが、明らかに人工的なアンデッドだったから気になっただけよ。もしそういう魔人が今もいたら、また同じようなアンデッドと戦いになるかもしれないもの。同じ力を使える人がいたら対策法の話も聞きたかったからね」


 エステルの説明に納得したのか、クリストフさんは頷いている。

 ナイスエステル! 上手く誤魔化してくれて助かったぞ!

 

「なるほど、あの墓地での話を聞けばその懸念を持っても仕方がない。残念ながらアンデッドを使役できる人物を私は知らないが……王城か魔導都市クェレスに詳しい魔導師がいると噂を聞いたことがある。話を聞きたいのであれば、どの人物なのか私の方で調べておこう」


「わかりました、お願いします」


 ほお、死霊術師じゃないけど魔導士が調べているのか。

 マルティナの話を聞いているとアンデッドの動かす負の力は魔法と別って感じだが、他人からしたら全く違いがわからないからなぁ。

 もしかするとこの世界の死霊術師は別物の可能性もある。

 ぶっちゃけると対アンデッドならシスハさえいればほぼ勝ち確定ではあるが、情報を得ておくのは悪くない。

 

 そんな話も聞けていよいよ私的にメインである神魔硬貨の話題を、クリストフさんが口にし始めた。


「さて、先ほど私が言った神魔硬貨の話だが、何とか1人譲ってもいいという人物を見つけておいた。条件次第で13枚を譲渡するという話だ」


「本当ですか!?」


「13枚はかなり凄いわね。こんなに早く交渉してくれるなんて、さすが協会長だわ」


「ははは、お褒めの言葉をありがとう。……だが、条件というのがまた難儀でね」


「難儀……それ程高額を提示されたとかですか?」


「いや、どうも金銭で取引するつもりはないらしい」


「それじゃあ欲しい物でも提示されたの?」


「ある意味そうなんだが、思っている以上に厄介な代物だよ」


 うわぁ……これは1番最悪だって想定していた金銭取引拒否の物々交換か。

 しかもクリストフさんが厄介だという程の物。

 神魔硬貨13枚となれば金銭相場で考えただけでも1億3000万G。

 最低でもそれだけの価値がある物と交換ってことだ。

 だけどクリストフさんでも何とか見つけたって言うぐらいだから、譲渡に応じてくれる人自体がまず希少。

 つまり金銭的な相場以上の物との交換になる可能性は非常に高い。

 一体何を求めているのだろうか……と生唾を飲み込みながら、黙ってエステル顔を見合わせて頷き合いその条件を聞くことにした。


「神魔硬貨を譲渡する条件として、ある山脈にいる魔物から取れる幻の果実、プルスアルクスを採取してきてほしいそうだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ナイスエステル 最近シスハが目立ちすぎてエステル不足だったのを一気に解消 [一言] 僕っ子の厨二病盛りすぎだは? 次のURLユニットは高飛車オネー様か無口系か個人的には大人のお姉さん系が希…
[気になる点] 幻の果実クエはB級でも受けて大丈夫なのかな? かなり難易度が高そうです [一言] ルーナ、フリージアの目をかいくぐれるとは思いませんが、 国から何らかの監視が入っていそう
[一言] 更新お疲れ様です。 いいですね、次回はお使いクエストですね! 楽しみです。 間違えて食べてしまう…。なんてことが、ないよう祈っています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ