スケルトン狩り
ガチャアイテムの性能とマルティナの実力を確かめるべく、俺達はゴブリンの森へやって来ている。
シスハとルーナも声を掛けたら興味があるということで、全員揃っての試し狩りだ。
何か試す時には大体この場所でやるからゴブリン達が気の毒な気もするが、ちょうどいいから仕方がない。
「よし、それじゃあ色々と試していくとするか」
「新しい装備の性能とマルティナの実力を見るのが楽しみだわ」
「やれやれ、この僕が初めて戦うのがゴブリンやオークとはね。ドラゴンぐらいは用意してもらわないと、役不足じゃあないかい?」
「おー! マルティナちゃん自信満々なんだよ! 期待してるからね!」
「ならリザードマン辺りに相手を変えましょうか。それ程自信があるならお一人でも倒せるでしょうし」
「……や、やっぱりこのままでいいです」
「自信があるのかないのかわからないでありますね……」
「面倒な奴だ」
マルティナは胸を張って鎌を構えたかと思えば、リザードマンに変えようかと言われた途端縮こまって頬を引きつらせている。
髪をヘアピンで止めた髪型にしているから、表情がよく見えてわかりやすい。
エステル達にやってもらったのを気に入っているのか?
そんなこんなでさっそく狩りを始めようとしたのだが……我慢できずに既に狩りを始めている人物が。
「ヒャッハー! やはりゴブリン相手でも狩りは気持ちがいいですねぇ!」
逃げ惑うゴブリン達を追いかけ回して、シスハは拳で次々と粉砕していく。
オークさえも軽めに見えるジャブのようなパンチで体が消し飛んでいる。
こういうのを見ると実感するが、俺達も随分と強化されてるんだなぁ。
ノール達もその光景を呆れ混じりに眺めている。
「シスハは相変わらずでありますなぁ」
「狩りをしてるとホント生き生きしているわね」
「……初めて見た時から思ってたけど、神官というよりは武闘家では?」
「なんだぁ? てめぇ……」
「ひぃ!? ご、ごめんなさい!」
シスハが切れた!?
狩りをしていたシスハが、ボソッと呟いたマルティナをギョロリと見ている。
睨まれたマルティナは青い顔で震えあがってフリージアの後ろに隠れた。
小声だったのに聞こえるとは、あいつもかなりの地獄耳だな……。
本気で怒っていた訳じゃなく悪ふざけだったようで事なきを終え、気を取り直して今回の目的を始める。
まず試すのはライフルソードだ。
「ノール、とりあえず使えるか試してみろよ」
「むむっ……弓みたいな武器は苦手でありますが、一応やってみるでありますか」
「頑張ってノールちゃん! もしダメでも私が教えてあげるんだよ!」
銃と剣が一体化した武器、果たしてノールは使いこなせるだろうか。
軽くブンブンと振ってからゴブリンに向かい駆け出し、剣の部分で斬り裂いていく。
そっちは全く問題ないようで、次に銃の方を試そうと両手で構えた。狙う先にいるのは2体のゴブリン。
引き金を引くと銃弾が発射されて、奥にいたゴブリンの頭部に命中し弾け飛んだ。
「おお! 当たったじゃないか!」
「苦手とか言っておいて正確に頭に命中させたわね。凄いじゃない」
「……手前のゴブリンを狙ったのでありますが」
ぽりぽりと頬を掻きながらノールはそう言い、それを聞いた俺達は無言で凄く気まずい雰囲気になった。
ダメだ、こいつは完全にクソエイムだ。銃を使わせるなんてとんでもない。エステル達の沈黙もそれを肯定している。
ノールにライフルソードを使わせるのは諦めて、次はフリージアに持たせてみた。
それで同じようにゴブリンを狩ってもらうと、剣でも問題なく斬り裂いて、銃モードに至っては飛び回りながら片手で次々と命中させている。
まさか近接戦闘もそこそここなせるとは……URは伊達じゃない。
「さすがフリージアだな。銃でも狙撃はお手の物か」
「君が弓使いなのは知っていたけど、百発百中とはなかなかやるじゃないか」
「ポンコツだが腕は確かだ」
「えへへー、それほどでもー。けど、これは使いづらいかも。弓と全然感覚が違うんだよ。それに真っ直ぐしか飛ばないし当てづらいー」
あの腕前で使いづらいだと……あっ、ノールが座り込んでいじけてやがる。
あんなのを見せつけられたら自信がなくなるよなぁ。
軽くノールを励ましてから、次はマジックタレットの性能を見ることにした。
「使い方次第で狩り効率を飛躍的に上げられそうだが……」
「まずは威力の確認かしら。魔力を注入するわね」
「おう、頼む」
エステルがマジックタレットに触れて魔力を注ぐと、脇にあるゲージが上がっていく。
そしてあっという間に充填完了し、ブーンと音を立ててマジックタレットが起動した。
同時にスマホに『マジックタレットと接続いたしますか?』と表示されたのでYesを選択。
マジックタレットに付いてるカメラの映像がスマホに表示されて、タップすると自由自在に動かせる。
主観の画面だからまるでFPSをやっているような感覚だな。
モード選択なども細かい設定もあって、障害物越しの対象も攻撃するかも選べる。
試しに画面を動かすと、木の向こう側にいて見えないゴブリンの姿も影みたいな感じで見えていた。
障害物の向こうにいる相手も見えるとか、こんなの完全に反則じゃないか……。
射撃に関しては手動とオートエイムも選べるみたいだが、とりあえず今回は手動でオークを狙ってみる。
……よし、目標をセンターに入れてスイッチだ!
「いくぞ、ファイア!」
画面の中央にオークを捉えたと同時に射撃ボタンをタップすると、ドリュリュリュリュ! と聞いたこともない轟音と共にマジックタレットが火を噴いた。
目標になっていたオークは、1秒も経たずに次の瞬間には上半身が弾け飛ぶ。
俺が驚きながら射撃ボタンを離すと銃撃も止み、マジックタレットの銃身は軽く回転しつつ各銃口から煙を上げて止まった。
ノール達はその光景を見て言葉を失ったように静止している。俺もめちゃくちゃビビった。
「オ、オークが一瞬で跡形もなく消し飛んだのでありますよ……」
「私達でもあれを食らったらひとたまりもないんだよ……」
「び、びっくりした……なんて音出す武器なんだ! 物騒過ぎるぞ!」
「うむ、だが狩りには使えそうだ」
「あの威力ならブラックオークも一瞬で仕留められそうね。問題は魔力の消費量かしら」
「同時に多方向からマジックタレットが襲撃された時にも問題がありそうですね。攻撃しない対象を選べるのも便利ですが、誤射がないとも限りませんし扱いは難しいですよ」
うーむ、威力は申し分なさそうだけど、マジックタレットだけ置いて魔物を処理させるのは難しそうだな。
シスハの言うように2体同時に壊そうとしてきたら防げないし、狩りの最中も注意しないと流れ弾が当たる可能性もある。
使うなら俺達がいる時に範囲をちゃんと決めて、狩りの補助的な役割をさせるしかないか。
それでもこの性能なら十分狩り効率を上げられそうだし、これは当たりアイテムだな。
銃系の試し撃ちも終わり、いよいよ本日のメインイベント、マルティナの実力確認だ。
マルティナは鎌を振り回して肩に乗せながら決めポーズをしていた。
「クックック、遂に僕の力を披露する時が来たか! 深淵を支配せし僕の力を思い知るといい!」
「おー! マルティナちゃん頑張れー!」
フリージアに拍手で応援されて、マルティナは嬉しそうに口端を釣り上げている。
オーバーな決めポーズに呆れたりせず、こういう時素直に声援が送れるのがフリージアの良さだな。
さっそくアンデッドを呼び出すためか、マルティナは鎌を地面に突き刺して両手をパンと合わせた。
そのまましゃがんで地面に両手を突くと、周囲に紫の光が漂い土が盛り上がりスケルトンが姿を現す。
その数5体。全て骨の剣や盾を持った戦士スケルトンのようだ。
「随分ド派手な現れ方だな。この前は何もせずに出してなかったか?」
「別に決めポーズをしなくても出せるさ。けど、この方がカッコいいだろう?」
そう言ってマルティナが指パッチンすると、また1体のスケルトンが地面から出てきた。
こいつ、何かする時に絶対動作を入れないと気が済まないのか?
「さあ行け、僕の友達よ! ゴブリンとオーク共を蹂躙するのだ!」
マルティナが大鎌をゴブリン達に向けると、スケルトン達は一斉に走り出して向かって行く。
ゴブリン達はその姿を見てギョッとしながら、逃げ惑ったり応戦したりしているが、スケルトン達の方が強いのかあっという間に殲滅。
ブラックオークも襲ってきていたが、ノール達と比べて少し時間がかかりつつも、問題なく1体の戦士スケルトンで倒し切った。
「クックック! どうだ僕の友達の力は! この程度の魔物は相手にすらならないね!」
「……お、スケルトンが倒しても魔石は手に入るのか。ぐふふ、確か戦士スケルトンは同時に10体出せるんだよな?」
「う、うん、そうだけどさ……。なんか不吉な笑みに見えるんだけど……」
この戦力を後4体も出せるとなれば、ゴブリンの森で狩りをするなら魔石取得効率が飛躍的に上がる。
やはりマルティナは俺が求めていた人材だったんだな!
それからさらにスケルトン達を強化できないか試したところ、いくつかの事実が判明。
まずノールや俺のバフ、エステルとシスハの支援魔法をかけてみたところ、スケルトン達にも問題なく適用された。
それだけじゃなく、ガチャ産の装備を使えないか試してみると……防具は着用できなかったが武器は持つことができた。
守護の指輪やニケの靴を装備させようとすると謎の力で弾かれ、エクリプスソードやエクスカリバールなどは普通に使えるようだ。
「ガチャの装飾品や防具は装備できないけど、武器はある程度持てるみたいだな」
「それとアンデッドにも私達の支援が効果あるみたいね。これならかなりの強化ができるわ」
「私の支援魔法も問題ないようですね。一応浄化魔法とは別種なので当然ですか」
「これならゴブリンとオーク以外も普通に狩れそうでありますね」
「ふむ、だが少し狩る速度が鈍い気がする」
「言われてみるとそんな気がするね。マルティナちゃん、もっと動きを速くできたりするの?」
「む、無茶を言わないでくれ。君達と比べたらさすがに動きは遅いよ。能力を低下させればもう少し早いけど、僕から離れるとその力も弱まるんだ」
確かにスケルトン達の動きはそこまで速くなく、ゴブリン達が湧いてから反応するまで少しタイムラグがあった。
ノール達が10体ゴブリンを倒す時間で、4、5体倒せればいい具合だ。
スケルトンは骨だしマルティナがある程度操作しているからそれも仕方がない。
デバフ能力も本体であるマルティナの範囲内じゃないと、そこまで強力でもないようだ。
と、思っていたんだけど……スケルトンがゴブリン達を狩る姿を見て少し違和感を覚えた。
「なんかゴブリン達が逃げてる気がするんだが気のせいか?」
そう、湧いたゴブリン達はスケルトンに襲いかかることなく、基本的に姿を見た途端逃げようとしている。
かなり近い距離に湧いた場合は積極的に襲っているが、ちょっと距離があるとすぐに逃げ出していた。
それをスケルトンが反応して追いかけて倒している感じだ。
湧き場所で狩りをしているというのに、ゴブリン達が逃げ出すから倒すまで時間がかかっている。
俺がそれを指摘するとノール達も気が付いたのか、同じような感想を抱いたようだ。
「そういえば湧いた後も襲いかからずに、一目散に逃げているでありますな」
「もしかしてアンデッドだから、ゴブリン達も警戒して逃げちゃうのかしら?」
「私達から逃げるよりも行動が速い。アンデッド特有の負の力の影響か。漏れ出している」
「へー、そんなこともあるんだねぇ」
「クックック、僕の負の力を宿した友達だ! ゴブリンが裸足で逃げ出すのも当然のこと!」
「威張るんじゃあありませんよ。そのせいでバラけて狩り辛くなってるんですからね」
「す、すみません……」
おいおい、まさかの欠点があるじゃねーか!
負の力とやらのせいで魔物が逃げ出すのかよ!
もしゴブリン達が立ち向かってくるなら、湧き場所に配置して簡単に狩れると思ってたのに……。
ま、まあ仕方がない。そうだとしてもスケルトンがゴブリン達を狩れることに違いはない。
それにゴブリンやオーク以外の魔物で試したら、また結果が違ってくる可能性もある。
「これで人手が増えるのは確かだ。マルティナ、お前の力がこれからの俺達に必要になる。これからも狩りに協力してくれるかな?」
「僕の力が必要……ククッ、いいだろう! 僕の深淵の力を頼りにするといい!」
「完全に上手く乗せられているのでありますよ……」
「もうこの子の誘導の仕方を覚えたみたいね……」
マルティナはおだてればすぐ調子に乗って張り切ってくれるし、これから上手く誘導して狩りをしてもらうとしよう。
本領であるデバフ能力もあるから、俺達が狩りをする時にも上手く利用できるはず。
今は強力な戦力が手に入ったことを喜んでおこう。




