2人の強化
マルティナの召喚も無事に終わり、改めてガチャの排出物の確認を始めた。
「さーて、今回も色々と出てきたな」
「マルティナを迎え入れるのがメインの目的でありましたけど、初めて出たのがいくつかあるでありますね」
俺とノールが確認する物を実体化している中、エステル達は新たに仲間として迎えたマルティナに群がっていた。
フードを外された彼女は椅子に大人しく座って、エステルに髪を弄られている。
ボサボサのセミロングにピンと一部の髪が天に向かい逆立っていた。いわゆるアホ毛だ。
髪をブラシで丁寧に梳かされて、目元を隠していた前髪はヘアピンで左右に分かれていた。
紫色の目が露になったマルティナの素顔は、幼さを残しつつも美人さんだ。
「あら、やっぱりこっちの方が可愛いじゃない」
「そ、そうかい?」
「うん! 可愛いと思うよ! どうして目を隠していたの?」
「ククッ、その方がミステリアスな雰囲気がするだろう? たまに視界が悪い気はするけど……」
「呆れた奴だ」
「見た目にも拘る姿勢はいいんじゃありませんかねぇ。今の方がお似合いだと思いますが」
うーむ、やはりGCのキャラクターだけあって例外なく美少女なんだなぁ。
ノールと違って素顔を晒すと、別人のように口調が変わるってこともなさそうか。
強い拘りがあるようだけど、こっちの方が表情もよくわかるし今後はこのままでいてもらいたいものだ。
さて、マルティナもある程度馴染んでくれたようだし装備の確認といこう。
最初に見てみるのは、複数の玉が輪っか状に繋がれた数珠のようなブレスレットだ。
――――――
●身代わり玉
装備者が一定以上のダメージの攻撃を受けた際、それを無効化する。
発動後このアイテムは消滅する。
――――――
「このアイテムは皆1個は身に着けておきたいわね」
「ああ、不意打ちされて大ダメージを受けても回避できるからな。確定で発動してくれるのは助かるぞ」
「消耗品だから効果もその分強いんでありましょうね」
これさえあれば即死級の攻撃を受けても1度は防げるってことだな。
SRとなると数を揃えるのはそこそこハードルがあるけど、全員1個ずつ用意しておきたいぞ。
次は螺旋状になった厳つい見た目をした黒い腕輪だ。
――――――
●覇者の腕輪
攻撃力+800
致命的命中+25%
装備者より10レベル以上低い相手を一定確率で恐慌状態にする。
――――――
「クックック、覇者とは僕に相応しい腕輪だね! デザインもなかなかカッコいいじゃないか!」
「致命的命中が付いてるからフリージアに合いそうだな」
「えー、この腕輪可愛くないー。マルティナちゃんにあげるー」
「そういう理由で渡されるのはちょっと……君が身に着けなよ」
あっ、喜んで受け取るかと思ったらそこは辞退するんだな……。
実際マルティナが装備してもあまり効果的とは思えないから、これは是非フリージアに使ってもらいたい。
次は銃身が長く全体的にゴツイライフル銃。銃身の下にはさらにデカい刃が装着されている。
――――――
●ライフルソード
攻撃力+850/攻撃力+1000
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「銃と剣が一体型になった武器ですか。扱いは難しそうですけど、なかなか面白そうですね」
「魔力を注ぐと弾が補充されるみたい。剣ならノールが使うのがいいのかしら?」
「うー、剣は得意でありますけど、遠距離武器は苦手なのでありますよ。1発だけなら誤射でありますよね?」
「お前は絶対に使うんじゃないぞ!」
1発でも誤射する時点でアウトだろうが! それで致命傷受けたらどうするつもりだ!
うーん、この武器はちょっとロマンを感じるけど、俺が使うのは難しそうだぞ。
剣として使うならノールだし、射撃として使うならフリージアだろうなぁ。今度外で試してみるか。
お次は四角い土台にアームで長細い筒が付いた機械。
筒には6個の穴が空いていて、その見た目はいわゆるガトリングガンってやつだ。
――――――
●マジックタレット
魔力の弾丸を撃ち出す自動機関銃。
残存魔力で威力が変動。
スマホと連動させ、モード切り替えが可能。
――――――
「これまた物騒なアイテム……というか兵器だな」
「見たことない形状の銃ですが、なかなか強そうですね」
「自動ってことは魔石集めに利用できそうだわ。残存魔力っていうのが気になるところだけれど……」
今まで銃系統は出てこなかったけど、ライフルソードに続いてこんなのまで出てきたんだな。
威力がどんなものかわからないが、ガトリングガンって時点で恐ろしく思えるぞ。
スマホと繋いで見るとガトリングガンに付いているカメラの映像が映されて、自由に操作ができた。
360度上下左右自由に動かせて、無差別乱射、指定したターゲットのみ、指定されたターゲット以外、などの自動掃射モードが搭載されている。
勿論手動で撃つのも可能だ。当然怖いから撃つのは試していない。
こりゃぁとんでもない兵器が出て来ちまったぞ……。けど、これを使えば魔石集めが捗るかもしれない! これも後日外で試してみよう!
次は全体的に赤と白が所々に入り塗れている数本の矢が入った筒。
矢を取り出してみると矢じりが付いていない。
あれ、これって武器じゃないのか?
――――――
●破魔矢
自動回収
負の力を持つ者を浄化し弱体化させる。
――――――
「負の力を持つ者ってなんか曖昧な表現だな。攻撃力がないけど本当に使えるのか?」
「私の矢の方が強いね! マルティナちゃんどう思う?」
「うっ、それを近づけないでくれ……。何かが浄化されて力が抜けていく……」
「私もだ……」
「そんな物さっさと仕舞ってください! ルーナさんが嫌がってるじゃないですか!」
シスハがルーナを抱き抱えて、破魔矢を持つフリージアをしっしっと手で払っている。
マルティナも青い顔をしてフリージアから離れて凄く嫌そうだ。
なるほど、吸血鬼と死霊術師は負の力を持つ者側ってことか。
結構幅広い相手に対して効果のありそうな矢だ。
これがマルティナと戦った時にあったらなぁ。
さて、目ぼしいアイテムの確認も終わっていよいよマルティナの専用装備だ。
さっそくダブった大鎌であるモルスファルクスを重ねて星2にしておいた。
――――――
●モルスファルクス☆2
攻撃力+1400
MP+800
攻撃した敵の全抵抗力を一定時間10%低下させる。
一定範囲内の死霊・アンデッド系の能力を10%上昇させる。
●ガイストクライト
防御力+500
魔法耐性+15
装備者に対する敵意を大幅に減少させる。
存在感を薄くし他者から認識しづらくする。
――――――
ガイストクライトはマルティナの羽織っている黒いローブだ。
ヘイト減少だけじゃなくて、認識阻害の効果も付いていたのか。
そりゃ戦った時にすぐ見失う訳だよなぁ。
マルティナは強化された大鎌を見て、頬を赤くしながら自慢げにしている。
「戦った時から思ってたけど、お前の武器めちゃくちゃ物騒だよなぁ」
「クックック、カッコいいだろう? この禍々しいフォルム、畏怖を与える煌めく刃、深淵の主たるこの僕に相応しい!」
「それはわからないでありますが、よくこんな扱い辛そうな武器を使いこなせるでありますね」
「使えるようになるまで凄く苦労したよ……。木や壁に何度引っかけたことか……持ち運ぶのも大変なんだよ」
「この子も色々と苦労していそうね」
大鎌なんて扱い辛そうだと思っていたが、武器までカッコいいからって理由で選んでたのかよ!
そりゃ命を刈り取るような形をしてて、見た目だけでも威圧感あるけどさぁ……。
戦闘職でもないマルティナが鎌であんなに戦えていたのは、地道な努力で頑張ったのかもなぁ。
専用装備の確認も終わり、次はもう1つのメインイベントであるルーナとマルティナの限凸だ。
まずはルーナの召喚石を選択して強化を始めた。
スマホから溢れ出した光がルーナに吸い込まれる。
全部吸収されると、彼女の瞳は真っ赤に輝いて圧倒的存在感を発していた。
――――――
●【怠惰な吸血鬼】ルーナ・ヴァラド
レベル:90
HP:1万200(1万2000)
MP:3500(4000)
攻撃力:3670(4000)
防御力:2700(3000)
敏捷:380(440)
魔法耐性:35(45)
コスト:22
固有能力
【深淵に潜む者】
夜間、能力値とHP、MPの自然回復力上昇。
【鮮血公】
敵からHP吸収時、攻撃力、防御力、敏捷を一定時間20%上昇させる。
スキル
【カズィクル☆2】
1撃のみ総攻撃力の4.2倍。防御力、魔法耐性を無視する。再使用時間:4分
――――――
「ふむ、馴染む、馴染むぞ。これが強化、気分がいい」
「ルーナさん! おめでとうございます!」
「うおお……めちゃくちゃ強化されているな。スキルは変わらないけど固有能力が追加されてるぞ」
「これでノールとルーナで前衛はバッチリだわ。単独での戦闘力も凄そうね」
ほぉ、限凸した時にスキルが別の物に変わるか固有能力が追加されるかは、個人個人で変わるのか。
固有能力はパッシブスキルみたいなもんだから、ブラドブルグで相手を攻撃すれば【鮮血公】の条件を満たすって訳だ。
実質戦闘時は常に20%のバフがかかると思えば、これはめちゃくちゃ強化だな。
元々持っていた固有スキルの【闇に潜む者】も【深淵に潜む者】に変化してHP、MPの自然回復力上昇が追加されている。
夜間の戦闘ならルーナは圧倒的に強くなっていそうだ。
そんなルーナが強化された様子を見て、マルティナは早く早くと急かすように目を輝かせて俺を見ていた。
その期待に応えるようにマルティナの召喚石を選択する。
スマホから光が溢れ出すと、ルーナと同じようにマルティナに吸収されていく。
全て光を吸収し終えると同時に、彼女の体から黒いオーラが溢れ出した。
だが、そのオーラを打ち消すようにシスハがビビビッと光を放ってかき消している。
俺達に影響あるかわからないけど、興奮してデバフのオーラをばら撒かないでいただきたい。
――――――
●【自称最強死霊術師】マルティナ・エロディ
レベル:87
HP:3640
MP:6300
攻撃力:1950
防御力:1920
敏捷:105
魔法耐性:30
コスト:17
固有能力
【シュヴァルツ ハイリヒトゥーム】
一定範囲内にいる敵の攻撃力、防御力、敏捷を15%低下させる。
ダメージを与えた敵に対して追加で10%の低下を与える。
スキル
【アブグルント ライストゥング】
自身との範囲に応じて敵の攻撃力、防御力、敏捷、各抵抗能力を最大30%低下させ、操るアンデッドの各ステータスを30%アップさせる。再使用時間:半日
B:70 W:52 H:72 推定:Aカップ
――――――
おう……あんまり主張してないとは思っていたが、あれは控えめな方だったのか。
当然この情報を非表示にしてから、マルティナ達にステータスを見せておいた。
……というか、固有能力名とスキル名両方めっちゃ長いな。
強化された高揚感からか、マルティナは歯を見せて上機嫌で笑っている。
「クックック! この体に満ちる負の力。モルスファルクスに続いて僕の真なる力が解放された! 終焉へのカタストロフィは近い!」
「おー、マルティナちゃんも凄く強そうなんだよ! けど、名前に自称最強死霊術師とかついてるよ?」
「な、何だって!? 自称じゃないぞ! 僕は本当に最強なんだ!」
「最強かはわからないでありますが、十分に強いでありますよね」
「ああ、デバフ役としてはこれ以上ない人材だな。しかもアンデッドも使役できる……ぐへへ、これからが楽しみだぜ」
「お兄さん、またよからぬことを考えていそうね……」
思っていた以上にデバフの効果が凄まじいぞ。これなら今後の戦闘もかなり有利に戦えるはずだ。
それにデバフだけじゃなくて、マルティナはアンデッドを自在に操れる。
もしアンデッドを休まず戦わせたりできるとしたら……うほ、夢が広がるぜ!
マルティナ達の強化も終わり、最後は恒例のダブった装備の強化だ。
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●アダマントアーマー☆7
防御力+2700
防御速度+20%
●マジックブレード☆17
攻撃力+1000
攻撃速度+20%
防御無視攻撃付加
●エクスカリバール☆68
攻撃力+7090
行動速度+385%
スキル付加【黄金の一撃】
状態異常:毒(小)
木特効:ダメージ+10%
●鍋の蓋☆50
防御力+2950
防御速度+20%
スキル付加【ジャストガード】
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おお、鍋の蓋も星の数が50を超えたからスキルが追加されたのか。
一体どんなスキルなんじゃろなっと。
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【ジャストガード】
敵の攻撃が当たると同時に押し返すと、ダメージを30%減少させる。
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「遂に鍋の蓋にもスキルが追加されたな。タイミングよく攻撃を押し返したら、ダメージ30%減か。難しそうだな」
「敵の攻撃を見極めてちょうどよく押し返すのは難しいのでありますよ。けど、エクスカリバールだけじゃなくて、そっちも凄いことになってきたでありますなぁ」
「異空間とやらで戦っていた時も思ったけど、君って凄い恰好してるよね。鍋の蓋を盾代わりにして格好は不審者だったし、内心凄く動揺していたよ」
……こいつ、あの時そんなこと思ってやがったのかよ。
マルティナにまで不審者扱いされるのは何故か納得いかないぞ。
しかしこれで戦力も大幅に強化されて、やれそうなこともかなり増えたな。
新しく仲間になったマルティナと仲を深めつつも、今後のことを思い描いて俺は期待に胸を膨らませるのだった。




