vsマルティナ
3月27日にコミックス版5巻が発売となります。
可愛いエステルとモフットが表紙となっております!
コミックス版オリジナルの展開もございますので、是非お読みいただけると嬉しいです。
ついに姿を現したマルティナ・エロディ。
不遜な笑みを浮かべる彼女は、唖然としている俺達を見下ろして満足げなご様子。
「クックック、どうやら最強ネクロマンサーたる僕を前にして声も出ないようだね。それも仕方がない、混沌の闇が支配する領域は汝らにはまだ早い」
中途半端に巻いた包帯がなびく片腕を俺達の方に向けながら、鎌を肩に担いでまた決めポーズを取っている。
それを見ていたノール達はハッとなって正気に戻り、何とも言えない表情をしている。
「これまた随分と個性的な方ですねぇ……。聞いてるだけで体がムズ痒くなってきますよ」
「そうね。驚いて言葉を失ってしまったわ。色々と間違えている気もするわね」
「めんどそうな奴だ」
「なかなかカッコいいでありますなぁ……ちょっと親近感が湧くのでありますよ」
カッコいい……気はするかもしれない。いわゆる思春期特有のあれですな。
鎮まれ、俺の腕が! 目が! とか言いながら何か意味深なことを言う感じの。
言動といい格好といい、その要素がふんだんに含まれているのがマルティナ・エロディだ。
本人は凄く満足げにポーズを決めていたが、フリージアはそんなマルティナを見て首を傾げながら残酷な質問をしていた。
「ねーねー、どうして包帯巻いてるの? 怪我してるの?」
「え? いや、怪我はしてないけど……」
「じゃあなんで包帯巻いてるの? 緩んでるからしっかり巻いた方がいいよ!」
「わざとだよ! カッコいいから巻いてるの!」
「そうなんだー、ならよかったんだよー」
「うぅ……何なんだこいつぅ……」
マルティナは今にも泣きそうな声をして、フリージアにしっしっと手で払っている。
ファッションとして身に着けているのに、本気で怪我の心配をされるのはどんな気分なのだろうか。
完全にペースを崩されていたマルティナだったが、気を取り直したのか咳払いをしてまたポーズを決めている。
「ごほん……では、さっそく狂乱の幕開けだ。僕と君達どちらが強いか、雌雄を決しようじゃないか!」
そう叫ぶと同時にマルティナが指を鳴らすと、周囲の土が盛り上がって剣を持つ骨の姿の魔物、スケルトンが出てきた。
全身紫色の光に包まれて、一際強い同じ色の眼光を宿している。
続々とスケルトンの数は増えていき、あっという間に数十体のスケルトンに俺達は包囲された。
「うおっ!? めちゃくちゃ出てきやがったぞ!」
「これだけの数のアンデッドを使役するとは、自信満々なだけはあるでありますね」
おいおい、GCじゃこんな数のアンデッド出してこなかったぞ!
精々10体ぐらいしか出せなかったはずだが……ただのスケルトンだからか?
俺の知るマルティナが使役するアンデッドは、デスナイトのような甲冑姿のメメントモリってスケルトンだ。
それに比べたらこのスケルトン達は圧倒的に貧弱。だが数が多い。
メメントモリを出していない時点でまだ本気じゃなさそうだけど……これ、結構不味いのでは?
スケルトンの大軍に驚く俺達の姿に、マルティナ腰に手を当てて嬉しそうにしている。
「クックック、この程度で驚かれては困る。僕の力はまだまだ――」
「せいや!」
シスハが雄叫びを上げて地面を殴りつけると、彼女を中心に光が放たれた。
スケルトン達がその光に触れた途端、ガラガラと音を立てて骨はバラバラに崩れ落ちる。
「ふっ、あの程度のアンデッド、私の祈りでイチコロですよ!」
「げげ、神官!? 神官を連れてるなんて卑怯だぞ!」
「卑怯ではない。ネクロマンサー相手なら連れてくるのは当然だ」
「ぐぐぐ……なーんちゃって」
マルティナがそう言うと同時に、バラバラになったはずの骨は再び紫色の光に包まれて浮かび上がり、元のスケルトンの形に組み上がった。
「クックッー、神官対策はバッチリなのさ! 友達はヤワじゃない。僕が健在の間は何度でも立ち上がってくれるよ」
何度も立ち上がる……だと!? 神官の力ならアンデッドは相手にならないんじゃなかったのかよ!
「おい! 倒したんじゃないのか!」
「ぐっ……どうやら定着した魂を剥がすまでには至らなかったみたいです。ネクロマンサーの力で強化されているんですね。あれじゃ体ごと物理的に消滅させてからじゃないと浄化できませんよ」
「さすがURのネクロマンサーってところね。一筋縄じゃいきそうにないわ」
「ふむ……殺るか」
俺達が反応する間もなく、突然ルーナが槍を投擲した。
当然マルティナも反応できずに、へっ? っと間の抜けた声を出していたのだが……地面から手の形をした黒い骨が飛び出して槍を弾き飛ばす。
その手はまたすぐに地面の中へと戻っていった。やっぱりまだアンデッドが控えてるみたいだな。
ルーナは弾き飛ばされた槍をキャッチして舌打ちをしている。
「ちっ、防がれた」
「あっぶな!? 不意打ちまでしてきやがって! 正々堂々戦えないのか!」
「勝てばよかろうなのだ」
俺も不意打ちする機会を狙っていたが、まさかルーナの投擲まで防がれるとはな……シスハの力でもアンデッドを瞬殺できないようだし、こりゃ長引くかもしれないぞ。
不意打ちを受けたマルティナはかなり怒っているのか、大鎌を俺達に突き付けて声を張った。
「卑怯な輩はこのマルティナ・エロディが粛正してやる! 深淵の力の前に沈め! いざ参る!」
ついに本格的な戦いの始まりか!
マルティナが腰を低くして鎌を構えたので、俺達も臨戦態勢を取る。
そしてマルティナが向かってくるかと思ったのだが……彼女はその場から飛び退いてスケルトン達の中に紛れて姿を消した。
「いざ参るとか言っておきながら逃げたでありますよ!?」
「ネクロマンサーが正面から戦ってきたりしないわよね。使役しているアンデッドから片づけましょう」
「ちっ、面倒だ。今は私でも奴がどこにいるかわからん。フリージア、探して狙撃しろ」
「了解しましたなんだよ! 絶対見つけるもん!」
正々堂々とか口にしておきながら逃げやがったぞ!
あいつの纏ってるローブはUR装備で、確か敵からのヘイトを減らす効果があったはず。
つまり自分が目立つことなくデバフをかけられるということだ。
ルーナ達でさえすぐに見失ったのはその影響だろう。
フリージアはそういう相手に対して固有能力があるから、探すのは任せるとしよう。
本当に戦いが始まったからか、周囲に紫色の霧が立ち込め始め、ついに俺達を包囲していたスケルトン達が動き出した。
それに合わせてシスハが杖を前に突き出すと、先端の青い宝石が眩く発光し俺達を包み込む。
「皆さん、あまり私から離れないでくださいね。とてつもない負の力が辺りに漂っています」
「確かになんか陰気臭い雰囲気がするな……あれがマルティナのデバフってことか?」
「そうだと思います。多少でしたら私の支援魔法で対抗できますが、あの力の中にいたらすぐに効果が消えると思います」
「そうなったらあいつの思う壺だな。デバフで弱らせたところを襲う魂胆か。俺達と同じぐらいズル賢いじゃあないか」
あいつはデバフをまき散らしながらアンデッド達に戦わせて、俺達を疲労させるつもりだろうな。
本人は隠れて隙をうかがっているに違いない。そうじゃなくても疲れたところで、奥の手であるメメントモリを出せばいい。
なんて卑怯な奴なんだ! 正々堂々と戦いやがれ! ……まあ、戦いなんだから卑怯で上等だよな。
シスハから出来るだけ離れずに、向かってくるスケルトン達の相手をしていく。
マルティナからの強化なのか紫色のオーラを宿すスケルトンは手強い。
俺達がダメージを受けるほどではないが、代わりに攻撃しても骨がバラバラになっても、すぐに紫のオーラに包まれて元の形に戻ってなかなか倒れない。スケルトンがなんでこんなにもつんだ!
それでも繰り返し攻撃を続けて何度も全身を崩れさせると、瞳に宿っていた光が消えて動かなくなった。
だが、ようやく倒せたと安堵した瞬間、崩れた骨の中から紫色の光が溢れ出し頭蓋骨の形になって飛んできた。
防ごうと鍋の蓋を突き出して身構えると、光の頭蓋骨は蓋をすり抜けて俺の体に当たる。
「うげっ!?」
か、体が重い! まるで肩に誰かがのしかかっているみたいだ!
それに全身の力まで抜けて……まさか霊に乗り移られたっていうのか!
振り払おうとブンブンとエクスカリバールを振り回していると、シスハが俺の肩に手を置いた。
全身が白い光に覆われて、俺の体から紫色の光が弾け飛んで消えていく。
「何だったんだ今のは……一気に体の力が抜けたぞ」
「あれがアンデッドの本体です。どうやら取り付いて力を低下させるタイプもいるようですね」
「おいおい、使役するアンデッドからもデバフ撒いてくるのかよ! 滅茶苦茶強化されてるじゃねーか!」
「正直かなり不味いですね……。相当な勢いで力を消費させられていますよ。早くマルティナさんを見つけて倒さなければジリ貧です。アンデッドの残りも底が見えません」
ノール達もどんどん倒しているはずなのに、さっきから全く数が減っていない。
エステルの魔法で体ごと消し飛ばしても、さっき俺に取り付いた紫色の光る頭蓋骨が地面の中に飛んでいってまたスケルトンの体を形成している。
体に宿ってる紫色の光を、シスハの浄化の力で仕留めないと何度倒しても復活するみたいだ。
それだけじゃなく、完全に倒したとしても追加でスケルトンが地面から這い出して戦線に加わっている。
くぅ、戦闘力は全然大したことないんだが、単純にただひたすら邪魔をしてくるのがウザったいぞ。
無理やり突破して本体であるマルティナを探す手もあるけど、それはやったらあいつの思惑通りになってしまう。
アンデッドで上手く分断された上に逃げ道を塞がれて、デバフをかけたところを本人が仕留めに来るに決まっている。
できれば邪魔されずに本体だけを叩きたいのだが……。
そう思っているとどこかから、愉快そうなマルティナの笑い声が聞こえてきた。
『クックック、ジワジワと追い詰められる感覚はどうだい? まだ恐怖劇の幕は開けたばかり、僕の力はこんなものじゃ――』
「いた! 狙い撃つよ!」
壁の上に乗って辺りを見ていたフリージアがやっとマルティナを見つけたようだ。
即座に矢を撃ち始め、少し離れた場所にあった壁に命中して吹き飛ばすと、その中からマルティナが飛び出して来た。
「くっ、本気で隠れた僕を見つけるとはやるじゃな――」
「えいっ!」
間髪を入れずにエステルが杖を振ると、マルティナのいた場所が大爆発を起こす。
やったか! と思いきや、爆煙の中からゴロゴロと転がってマルティナが出てきて即座に立ち上がって叫び出す。
「ちょ、お前ら! 僕の話を遮るんじゃ――うわっ!?」
アンデッドの集団を飛び越えたノールが、喋る暇も与えずにマルティナへ斬りかかった。
慌てて鎌で反撃をしたが、やはり圧倒的に実力の差があるのかどんどんとノールに押されている。
よし! このまま止めをと期待を寄せたのだが……突然ノールの動きがガクッと鈍くなった。
よく見ると体に紫の靄がまとわりついている。マルティナのデバフ効果をもろに受けているのか!
その隙を突くようにマルティナは鎌の大振りでノールを弾き飛ばし、さらに地面から黒い骨の手が飛び出して彼女を狙う。
鋭く尖った指先でそのままノールを貫こうとしていたが、飛んできた赤い槍が攻撃を阻む。
それはルーナの槍で、彼女もアンデッドの集団を飛び越えると、ノールを持ち上げて俺達の方へ戻ってきた。
「無事か」
「ルーナ、助かったのでありますよ……。急に体が重くなってやられるところだったのであります……」
「やはり私の力の及ぶ範囲から離れると抵抗力が薄れますね。それにマルティナさんに近づくほど、負の力の影響が強まるようです」
ノールに纏わりついた紫の靄はシスハによってすぐに取り払われた。
やっぱりシスハから離れると、あの紫の霧によるデバフにかかっちまうのか。
さらには発生源であるマルティナに近づくせいで、さらに強力なデバフを食らう。
普通に戦えば間違いなくノールの圧勝だが、さっきのようにデバフを食らえば返り討ちにされる。
あいつを倒すにはシスハに負の力とやらを抑えてもらいつつ、速攻で総攻撃を仕掛けるしかないのか?
「マルティナの奴、想像以上に強いな……」
「私の魔法も防いだみたいだし、まだ謎のアンデッドも控えているようね。これで中級なんて凄い難易度だわ……」
「またマルティナちゃん隠れちゃったんだよー。隠れるの上手だね!」
既にマルティナの姿は見当たらず、またどこかに身を潜めたみたいだ。
ルーナの攻撃を防いでノールを貫こうとした黒い骨もまだいるし、簡単に倒せると思わない方がよさそうだ。
本当にこれのどこが中級だっていうんだよ! やはりURユニットってだけで一筋縄じゃいかないってことなのか……。
最近流行のウマのゲームを始めましたがなかなかに楽しいです。
未だに因子ガチャに勝てません……。




