PU・フェス発生クエスト
魔人の墓地を攻略した後、俺達はさっそく冒険者協会に報告へ向かった。
クリストフさんに墓地での出来事を話すと、凄く驚いていたが俺達ならそれぐらい見つけるだろうと達観した様子でもあった。
冒険者協会内で俺達の評価はどうなっているのだろうか……。
今回見つけた墓地は魔人に関わることだから国に報告して、冒険者協会でも調査をすることになりそうだって話だ。
俺達にとって1番重要であろう神魔硬貨に関しては、見つけた分は俺達の物にしていいと言われた。やったぜ。
そんなこんなで翌日、俺は居間でスマホを握り締めて悩んでいた。
「うーむ、どうしたものか……」
「お兄さん、スマホを見て何を悩んでいるの?」
「まさか魔石が手に入ったから、ガチャを回したいとか言うんじゃないでありますよね?」
「ははは……そのまさかさ!」
そう、俺がスマホを見て悩むことと言えばガチャしかない! ガチャしか勝たん!
ノール達は呆れたような雰囲気で俺を見てきたが、チッチッと口で鳴らして言葉を続ける。
「と言っても、今回はただガチャを回したい訳じゃあない。神魔硬貨と交換できるPU・フェス発生クエストを試してみようかと思ってさ」
「クリアすればガチャのイベントが発生するんでありましたっけ?」
「ああ、1枚で交換できるし試すならちょうどいいだろ。神魔硬貨も沢山手に入ったしな」
「そうやって安易に使うのはどうかと思うけれど……1回ぐらいは試しておきたいわね。どんなクエストが発生するのか気になるもの」
「魔石も1835個は貯まっている。これだけあればフェスURの1個ぐらいは手に入るだろう。進化したモフットの力を試せるしな!」
「希望的観測でやろうとするのは、どうかと思うでありますけどね……。モフットの力を見たいっていうのは、わかる気がするでありますよ」
モフットが進化してからまだガチャを回していないからな。
それにそろそろ神魔硬貨を使ってみたい。特にPU・フェス発生クエストは気になって仕方がない。
このまま貯めて他のと交換する選択が賢いやり方だろう。
だが、1枚ぐらい使ってもいいのではなかろうか。そうこの平八は考えた!
シスハ達も呼んで意見を聞いてみると、3人から特に反対意見は出てこない。
「わー! 面白そう! やろうよやろうよ!」
「私も同感ですね。PU・フェス発生クエストは未知の物ですから、1度は試してみたいです」
「異論なし。気になる」
よしよし、満場一致で賛成のようだな。
俺だけじゃなくて、全員PU・フェス発生クエストは気になっていたのか。
「それじゃあ神魔硬貨、投入!」
全員に見守られながら、さっそく神魔硬貨をスマホの画面に当てる。
交換画面が表示されて、一覧からPU・フェス発生クエストを選択。
【神魔硬貨を使用しPU・フェス発生クエストと交換しますか? Yes、No】
当然Yesを選択すると、神魔硬貨が光の粒子になってスマホに吸い込まれていく。
全部吸収されると画面に【アイテムの交換に成功しました】と表示されて、PU・フェス発生クエストがアイテム欄に追加された。
「よし、交換成功だ」
「思っていたよりあっさりしているでありますね」
「もっと派手な演出があるかと思ったのにつまんなーい!」
「交換するだけならこんなものじゃない? それより肝心なのはその後よ」
さて、このアイテムを使ったらどうなるんだろうか。
全員息を呑みながら、アイテム欄からPU・フェス発生クエストを選択する。
【PU・フェス発生クエストを使用しますか? 使用後、このアイテムは消滅します。Yes、No】
やっぱり1回使い切りのアイテムだよなぁ。そう美味しい話はないってことか。
PU・フェス発生クエストは、指定魔物討伐、指定アイテム納品、URユニットバトルの3つの内からクエストが選択される。
俺達が狙うのはこの中のURユニットバトル。これを達成すればURユニットの排出率、ピックアップ率が上がる。
ガチャを回す時のように祈りながらYesを押すと、画面にデカデカと文字が表示された。
【緊急クエスト:URユニットバトル発生。難易度を選択してください】
「おお! URユニットバトルが来たぞ!」
「やりましたね! 1番気になっていたやつじゃないですか! これは幸先いいですよ!」
「でも、1番クリアが難しそうでありますよね。どんな内容なのでありましょうか?」
確かにどんな内容なのかこの前は見れなかったな。
URユニットバトル、一体どんなものなのだろうか。
クエストを始める前に詳細を確認してみよう。
――――
【URユニットバトル】
異次元空間で行われるURユニットとの戦い。
対象ユニットはクエスト発生ごとにランダムで選出。
クリアした難易度でURユニット排出率、ピックアップ率が変動。
倒したURユニットはピックアップ率大幅アップ。
敵ユニットのレベルは自パーティーの平均レベルで決定。
装備、アイテムの持ち込みは可能。一部の装備とアイテムは使用不可。
この空間内での肉体への負傷は受けないが、痛覚などは適用される。
挑戦者側のパーティーがHP全損した場合、観戦所へ送られる。
対象のURユニットを倒せばクエスト達成。
1度クエストを行うと、成否に関わらずクエストは終了します。
――――
「ふーむ、難易度があるのか。高難易度をクリアすれば、相応にピックアップ率は高くなるってところだろうな」
「なら最高難易度一択ですよ! いくら難しいといえ、相手は私達と同じURユニットです! こっちは6人もいるんですから後れを取る理由はありません!」
「1対6なら確実に勝てると思うけど、そんな甘い設定なのかしら。相手が1人だけなんてどこにも書いていないから、もしかしたらURユニット以外の敵役もいるんじゃないかしら?」
「このガチャがそんな優しいと思えん。裏があるに違いない」
「肉体への負傷がないっていうのは安心でありますね。URユニットが相手となれば、絶対にタダじゃ済まないでありますよ」
「どんな強い子達がいるのか楽しみ! 早く見てみようよ!」
うーむ、大体はどんな物なのかわかったけど、肝心のクエストがどういう風な戦いになるのかわからない。
シスハが言うように相手が1人の可能性もあるし、エステルが言うようにモブユニットみたいな敵が一緒に配置されるのも考えられる。
1人だった場合はレイドボス級にステータスが上がって、複数だったら相性のいい敵キャラがいそうだな。
装備やアイテムの持ち込みまで可能となれば、生半可な難易度じゃないのは確かだ。
ある意味危険がないのは救いだな。痛みがあるのは嫌だけど、怪我をしないならそれぐらいは受け入れよう。
難易度選択があるようだが、一体どんな風に分けられているのだろうか。
ちょっとワクワクしつつクエストの難易度選択欄を開いて、今回選ばれたURユニットを確認した。
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【緊急クエスト:URユニットバトル 期限:残り7日】
・初級:【気高き王女】クローエ・アウレリア
・中級:【孤独な死霊術師】マルティナ・エロディ
・上級:【完全無欠のメイド】マルグリア・ハリウス
・超級:【キャノンハッピー】エルス・シューデ
・修羅級:【狂英雄】オルベリス
・神話級:【天地開闢の神龍王】カロン
――――
「ほほぉ、英雄オルベリスでありますか。私でも知っている有名人なのでありますよ! 1度手合わせしてみたかったのであります!」
「クローエさんは前にピックアップされてましたね。確かお姫様でしたっけ?」
「あっ! カロンちゃんもいるんだよ! カロンちゃんにしようよ!」
「ふむ、あの龍神とはまた会いたいが……勝てる気がしない」
「神話級だものね。ここはお兄さんに選んでもらいましょう。この子達がどんな強さなのかわかるのよね?」
「あ、ああ……一応把握はしているけどさ」
「なら勝てそうな相手で、今1番来てほしい子を選ぶのが無難ね」
うわー、うわぁ……この中から相手を選ぶのは結構しんどいぞ。
倒した相手のピックアップ率が上がるとなれば、欲を言えばカロンちゃんを倒したい。
が、神話級とかいう難易度だし、名前の前に付いてるのは称号だよな?
俺達がこの前緊急召喚でカロンちゃんを呼んだ時は、確か【神世の龍王】だったはず。
だけどこのクエストでは【天地開闢の神龍王】、どう考えてもさらに強化されている。絶対に勝てる気がしない。
とりあえず対象キャラクターを整理してみよう。
クローエは姫ユニットで、味方のバフが得意、本人はそんなに強くない。
マルティナは死霊術師ユニットで、敵にデバフをかけつつ盾役のアンデッドを呼び出せる。本人の戦闘力は同じく低い。
上記の2人は他のユニットがいるのが前提のキャラクターだから、このクエストでも複数の敵キャラクターと一緒の可能性が高いだろう。
マルグリアはメイドユニットで、味方へのバフ、体力回復、本人もそれなりに強い。
エルス・シューデは砲撃手ユニットで、超遠距離と超広範囲の超高火力の攻撃を得意とする。絶対に戦いたくない。
オルベリスは英雄ユニットで、その名の通り英雄的強さを実現したユニットだ。カロンちゃんにはさすがに劣るが、個として最強クラスの強さを持っている。
高火力の攻撃力と物理魔法両方の防御力が高く、近距離での火力は圧倒的だ。
スキルは一時的にあらゆる攻撃を遮断するもので、GCをやってた時はスキルの時間切れまでよく逃げ回っていた思い出がある。
うーむ、確実に勝てそうなのは上級辺りまでなのだが、一体どれを選べばいいのだろうか……。




