戦場跡地
少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
色々と忙しく更新が空いてしまい申し訳ございませんでした。
Aランク昇格について話し合ってから数日後、俺達はある狩場へとやってきていた。
王都から東南に進んだ場所にある、細長い石が無数に置かれた場所。
以前王都周辺で魔石狩りの候補として訪れた、ゴーストが湧く狩場からさらに遠くへ進んだ場所だ。
ここも人の上半身の形をした白いゴーストが、数十体フヨフヨと浮いて彷徨っている。
この場所がクリストフさんに教えられた、魔人が関わっている噂のある場所の1つだ。
「大倉殿、本当にこんなところに神魔硬貨があるのでありますか?」
「それを確かめるために来たんだろ。……正直あんまり気は進まないが」
「以前狩りをした場所と同じようなところね。規模はこっちの方が大きいけれど」
王都から比較的近い場所だから来てみたが、やっぱりゴーストがいるから気が乗らないなぁ。
今もケケケッてゴーストの笑い声が聞こえてきて体がブルっちまうぜ。
俺は幽霊とかホラー系が苦手なんだよ。この世界の幽霊は物理で殴れるからマシだけどさ。
ゴーストを初めて見るであろうフリージアとルーナは、マジマジと観察している。
「ふよふよと何か浮いてるね。あれが魔物なの?」
「霊体の類。……ふむ、邪念を感じる」
フリージアは全く物怖じせず、ルーナは渋い顔をしているな。
邪念か……ただの魔物として湧いてるのかと思っていたが、やっぱりそういうのがこの場所に染み付いているのか?
この場所と魔人との関係だが、聞いた話だと200年の戦争で激戦区になった場所の一部らしい。
そんな墓地のようなところにゴーストが湧いているとなれば、無関係とは思えない。
ルーナが邪念を感じるとか言ってるし、魔人の怨念めいた何かがありそうだ。
そして邪念や怨念、幽霊などが関わる話題で1番頼りになる存在あろうお方が、胸を張って不敵な笑みを浮かべていた。
「ふっふっふー、霊体と言えば神官の出番。つまり私の独壇場ですね」
「自信満々そうだけど、お前除霊とかできるのか?」
「当然ですよ、プロですから。あそこにいるゴースト達でお見せいたしましょう」
そう言ってシスハは腰を低く落として構え、叫び声を上げ始めた。
「はああああぁぁぁぁぁ!」
シスハの体が青く発光していき、右足にだんだんと光が集束していく。
おいおい、こいつは一体何をするつもりなんだ?
毎度お馴染みのことだけど叫び声まで上げてやがるし……ロクでもないことをやるに違いないぞ。
エステル達も同じ感想を抱いているのか、シスハを見て生暖かい目を送っていた。
ついにシスハの準備は整ったのか、さらに大きな雄叫びを上げて前方に向け飛び上がった。
「てりゃああああぁぁぁぁ!」
空中で回し蹴りのように右足を払うと、集まっていた青い光が波のように広がって飛んでいく。
瞬く間に狩場全体に光は達して、光に触れたゴーストは悲鳴を上げて光の粒子になって消える。
シスハは華麗に着地すると満足げに息を吐いて、どうだと言わんばかりのドヤ顔だ。
「ふっ、これが秘儀アセッションアンデッド、相手は昇天します」
「確かに凄いんだけどさぁ……叫ぶ必要あるのか?」
「気合あらずして除霊はできませんからね。確実に昇天させるという祈りが必要なんですよ」
「あれが祈りとは思えないけれど……シスハなら納得しそうだわ」
「神官はそんなものだ。奴らは恐ろしい……本当に恐ろしい」
ルーナが何かを思い出しているのか、体を震わせて青い顔をしている。
まさか神官ってシスハみたいな奴ばかりだったりするのか?
……いや、そんなまさかな。こんな奴ばかりだったら世紀末のような世界になっちまうぞ。
シスハのおかげでゴーストが丸っと消滅したので、何かあるか墓地の探索を始めた。
「ここが戦場の跡地ってことは、あの長い石は墓石代わりなのかもな」
「そこが魔物の湧き場所になるなんて、怨念でもこもっているのかしら。例の魔光石を使った可能性もあるわね」
「何かあったのは間違いない。瘴気に近いものを感じる。ただの魔物の湧き場所ではない」
邪念だけじゃなくて瘴気も感じるのかよ。ゴーストがいる時点でまともな狩場じゃないとは思っていたが……。
冒険者協会でも人気のない狩場で、冒険者ですら近寄らない場所だって話だ。
理由は不気味な場所ってだけじゃなくて、希少種であるデスナイトが強いのもある。
ここにもデスナイトが湧くみたいで、一度に五体とか出てきて危険度が以前の狩場の比じゃない。
そんなデスナイトを目の前で、光の宿った拳でシスハがバラバラに砕いているんだけどさ。
1発殴っただけでバラバラに弾け飛びやがったぞ。結構デスナイトって強かったはずなんだが……。
「ふぅ、この魔物が希少種でしたか。なかなか怨念がこもっていましたが、私の敵じゃありませんでしたね」
こいつは一体どこまで武闘派なんだ。だけど、ちょっとこれは朗報かもしれない。
デスナイトはどんな攻撃でもHPが残る固有能力に、ダメージカットのスキルまで持っていた。
それを全部無視して瞬殺できるとなれば、この狩場はシスハさえいたら魔石狩りの場として悪くないぞ。
何十体もいたゴーストを一撃で全滅させて、デスナイトすら即死だ。
なんで今までこういう狩場を試そうと思わなかっ……シスハが神官だってことを時々忘れるせいか。
シスハのおかげで魔物が湧いた途端に即死するので、安全に墓地の探索を始めた。
だが特に目ぼしい物は見つからず、仕方ないので地図アプリで確認してみると……一点だけ奇妙な点が浮かび上がる。
この狩場の隅っこ付近に置かれた、一際大きな四角い巨石。その下に大きな空洞があるのを発見した。
「この石の下に空間があるみたいだぞ。退かして確認してみるか」
「ええ!? それお墓なんだよね? 暴いちゃうの?」
「そう言われると気が引けてくるんだが……どうしようか? 地図アプリの表示を見ると、そこそこ広い空間だな」
「ここは魔物が湧く狩場扱いで、協会からも特に何も言われてないからいいんじゃない? 何かありそうなら調べてみないとね」
「ふむ、魔人の墓なら一緒に硬貨が添えられていそうだ」
「そうなったら本格的に墓暴きでありますね……。あまりいい気分はしないでありますよ」
「まあ、確認するだけならいんじゃないでしょうか。もし誰かの墓で神魔硬貨などがあるようなら、一旦手を付けず協会に報告しましょう。神官としてお祈りも捧げておきますよ」
確かに墓暴きしているみたいでいい気分にはならないが、元々調べるつもりでここに来たしな。
エステルの言うようにここは狩場扱いで、クリストフさんに教えてもらった時に注意なども特にされていない。
この巨石の下を確認するぐらいならいいだろう。神官であるシスハのお墨付きだし、本当に誰かの墓なら祈ってもらえば多分許されるはず。
さっそく俺が巨石を持ち上げてみると、その下には石造りの階段が地下へと続いていた。
「わー、秘密基地みたい! 奥に何があるんだろ!」
「お墓にしては手が込んでいるでありますよ。よっぽど重要な人物が眠っているのでありましょうか?」
「ここはゴーストもすぐに湧くし、デスナイトまで出てくるから調べる人がいなかったのね。ただのお墓かもしれないけど、海の洞窟みたいな拠点の可能性も否定できないわ」
「魔物が出る墓地で墓暴きをする奴など滅多にいない。隠し場所としては最適だ」
「……邪気や怨念の類はあまり感じられないので、そういう意味での危険はなさそうです。呪いなどあっても私が丸っと浄化しちゃいますけどね」
魔人との戦場跡地に地下へと続く階段か……怪しい臭いがプンプンするぜ。
海の洞窟の件もあるし、魔人との関係性がありそうな場所は確認しておかなければ。
ゴースト系の魔物が湧くのも、この中に元凶があるかもしれない。
俺の意思を確認するように、エステルが首を傾げながら聞いてきた。
「お兄さん、どうする?」
「とりあえず中を見てみるか。こういうのを見つけるためにここに来たんだしな」
「やったぁ! また冒険なんだよ! 最近は探索する機会が増えて楽しいね!」
墓地の地下に行くって言うのに、フリージアは楽しそうにしている。
墓暴きとか気にしてた癖に切り替えの早いやつだ。
けど、こういう雰囲気の暗い場所だとその明るさがちょっと助かるぞ。




