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初めての装備屋

「討伐とクチバシの回収も終わったことだし、依頼主に証明書貰いに行かないとな」


「そうでありますな。ところで依頼主は誰なのでありますか?」


 ワシ戦士長の討伐を終え、ビーコンで街へと戻ってきた。帰ってきたら勿論ビーコンは回収だ。

 納品対象のクチバシも手に入れたし、早速届けに行くとしよう。

 ワシ戦士長のクチバシは、他のワシ戦士の黄色い物と違い少し赤みがある。討伐する際に巻き込んだワシ戦士のクチバシや剣も一応回収はしておいた。


「えーと、ガンツの装備屋って所のポーラさんって人だな」


「ワシのクチバシなんて何に使うのかしらね」


 確かにこんなの装備屋の人が何に使うんだろうか。そういえば俺まだ装備屋とか行ったことないな。

 ガチャ産のとどれぐらい差があるのか気になるが、装備してステータス確認したら分かるのだろうか。


「いらっしゃいませ! ガンツの装備屋へようこそ!」


 道行く人に聞きながら、ガンツの装備屋へと到着した。剣と盾が書かれた看板のあるそこそこの大きさの建物だ。

 店の中は剣や盾、鎧などの武器防具がずらりと並んでいる。それと雑貨屋に有った物よりも丈夫そうな袋やら冒険者向けの品物ばかりだ。


 入ってすぐに、金髪のお若い女性が元気よく挨拶をしてきた。美人で人当たりも良さそうだ。やはりこの世界は美形が多いな。

 まさかとは思うけど、この娘がガンツとかごつい名前の人じゃないよな?


「本日はどのような装備をお探しでしょうか?」


「あー、いえ、私達依頼されたアイテムを納品に来ただけでして」


「依頼品? ……あっ、おとーさん! 例の依頼の品物が来たってー!」


 依頼品を納品に来たと言うと、彼女は大声で店の奥へと叫んだ。


「本当か!? ってそいつらEランクじゃねーか。冷かしなら帰ってくれ」


「お父さん! せっかく来てくれたのにそんな態度失礼でしょ! 父が失礼なことをしてホントすいません!」


「あっ、いえ、お気になさらず」


 すぐにドタバタと足音がして、坊主頭の厳つい大男が出てきた。これがお父さんか……全く似てないな。

 それにしても、ここでも突っ込まれたか。やはり相応のランクじゃないと信用されないよね。

 

「それで、本当にワシ戦士長のクチバシを持ってきてくれたんですか?」


「はい、こちらでよろしいのですよね? ご確認ください」


「わぁ! 本当にワシ戦士長のクチバシだ! ほら、お父さん、見てみなよ!」


 ワシ戦士長のクチバシを彼女に渡すと、それはもう喜んでいる。この喜びようからして、この人がポーラさんか?


「うぉ、マジで持ってきてたのか……疑っちまってすまねぇな」


「いえ、おっしゃるとおり私達はEランクですので仕方ないですよ」


 まあ仕方ないよね。討伐ランクBだし。

 この人達は昨日の試合は見ていなかったようだな。


「そうか……よくあんな依頼引き受けてくれたな。本当なら5万Gでも安い依頼なのによ」


「えーと、たまたまこちらの事情と一致したとか……そんな感じです、はい」


 5万Gだと……今回の報酬10分の1かよ!? 

 今度からは適当な依頼受けるとしても、値段低いのは少し考えるか。相場崩壊の原因になって恨まれても嫌だし。

 あんなに喜んでもらえると、悪い気はしないんだけどさ。

 

「本当にありがとうございます! はぁー、まさか本当に手に入るなんて……夢みたいです」


「その、失礼ですがなんであんなに低い報酬金額にしてしまったんですか?」


「うぐっ……」


 うっとりと戦士長のクチバシを眺めていたポーラさんが、俺の問い掛けに変な声を出して反応した。なんなんだ?


「あー、そのな。そこにいる俺の娘が勝手に依頼してきちまってだな。金が無くてあんなとんでも依頼をしちまったんだよ。どうしてもって言うからしばらく出していたんだが、そろそろ取り消そうとは思っていたんだ」


「だって……ワシ戦士長のネックレス作ってみたかったんだもん……」


 彼女は顔を赤くしてもじもじとしている。こりゃ可愛らしいな。

 うん、仕方ないんじゃないか。親父さんもこんな娘さんだから、きつく言えなかったんだろう。

 この世界で5万Gってそこそこ高いみたいで、気軽に出せる金額じゃないようだし。

 それにしてもクチバシのネックレスって、どんな物になるんだろうか……。


「ま、まあお役に立てたようなら良かったです。えーと、そろそろ証明書をいただいてもよろしいですか?」


「あっ、はい。少々お待ちください」


 なんとも言えない空気が漂い始めたので、話を切り替えた。

 ポーラさんは慌てて奥に方へと走って行く。


「それにしても、随分と珍しい装備してるな」


「そうですか?」


 彼女がいなくなって、特に話すこともないなーと思っていると親父さんが声をかけてきた。


「お前さんのなんか特にな。これ鍋の蓋だろ? なんでこんな物使ってるんだ。なんならお礼に良い盾をやるぞ?」


「この蓋案外硬いんですよ。でも、せっかくですので頂いてもよろしいですか?」


「おう、そうだな……これなんてどうだ?」


「おふ……け、結構重いですね。ありがとうございます」


 一応あの報酬額のことを気にしていたようだ。タダで盾をくれると言うので、どの程度の性能か見るように1つ貰っておくかな。

 親父さんが店に飾ってある盾1つ手に取り俺に手渡してきた。丸い形をした盾だ。

 鍋の蓋に慣れた俺には少々重く感じる。


「そっちの騎士さんの剣見せてもらっていいか? 職業柄珍しそうな剣は見てみたいんだ」


「むふ~、いいでありますよ。私自慢の一品であります!」


 先ほどからちらちらとノールの方を見ていたが、どうやら彼女の剣が気になっていたようだ。

 ノールはなんだか自慢げに剣を親父さんに渡す。


「なんだこりゃ……今まで見たこともないぞ。見事な刀身、それに肌触り……そしてこの軽さ。これは一体どこで手に入れたんだ?」


 剣を鞘から抜いて、白銀の刀身を裏表と確認していく。食い入るように確認する姿は、どうやらレギ・エリトラに魅了されているかのようだ。夢中になって刀身を撫でたりしている。

 見ているこっちとしては、なんだか危ない人に見えるぐらいうっとりしてるおっさんが目の前に。

 

「あ~、それはちょっと……」

 

 ガチャ産の武器だなんて言える筈がない。エステルの杖もそうだが、分かる人が見たら喉から手が出るぐらい欲しがりそうだ。

 まあ彼女達専用の装備だから、他人が扱ってもあのアホみたいな攻撃力は発揮されないだろうけど。


「いや、すまん。答えられないならいいんだ。見せてもらって言うのもなんだが、あまり他人に見せない方がいいかもな。ちゃんと鑑定したら、迷宮のボスが落とすドロップ品すら超えてるかもしれん」


「そ、それ程なんですか?」


「あぁ、見た目だけでも欲しがる奴がいるだろうさ。大切にするんだぞ」


「えへへ、なんだか剣を褒められると照れるでありますな」


 迷宮にボスなんているのか。それに鑑定か……能力値などが見えるのかもしれないな。また貴重な情報が手に入った。

 親父さんは満足そうにノールに剣を返す。彼女は、だらしなく口を半開きにして照れ臭そうに笑っている。

 いつも自慢げに剣と盾を持っていたし、褒められたのが嬉しいようだな。

 

「この店の武器はあなたがお作りに?」


「半分は俺が作った物で、もう半分は買い取った魔物のドロップアイテムを俺が手入れした物だ」


「あっ、装備の買取もしているんですね」


 店の壁には斧やら剣やらそれはもう沢山飾ってある。よくわからん皮に包まれた物やら様々だ。

 魔物のドロップアイテムも、ちゃんと装備として活用されているんだな。

 それと買い取りもしているのか。雑貨屋でも買い取ってくれるだろうけど、装備屋で1度ガチャ産のR品を売ってみるのもいいな。


「これ買い取ってもらったりできますか?」


 ――――――

●ボーンナイフ

攻撃力+100

攻撃速度+15%

 ――――――


 爆死祭の副産物であるR品を取り出す。

 正直弱過ぎて使う気にもならん。だからと言って捨てるのも勿体ないしな。


「骨のナイフか。随分と質が良いな……2万Gでどうだ?」


「それで買い取っていただけるならお願いします。まだ余ったのがあるんで、今度持って来てもいいですか?」


「おう、こんな質の良い物を売ってくれるのなら大歓迎だぞ」


 マジか。なんだか騙しているようで悪い気がしてくるけど、これで質が良いのか。

 SR以上の品は売る気がしないが、R品は今後装備屋に売ることにしようかな。


「すいません~、遅くなってしまいまして~」


 丁度やり取りが終わった頃に、ポーラさんが書類を持って帰ってきた。

 これで無事依頼の終了か。それにしても装備か……あっ、そういえば前回のガチャキャンペーンからだいぶ経つな。

 そろそろ次のキャンペーンが来てもおかしくない……今度は早めに魔石集めをしておかなければ。

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― 新着の感想 ―
頼むから次の鬼畜狩りはノールとエステルに配慮して優しくしてやってくれよ……
[良い点] チートし過ぎないところがいい感じ
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