神魔硬貨
洞窟探索を終えて俺達は帰宅した。
帰る際に湧き場所も元に戻し、ある程度の地形の変化なら魔物が湧くのに影響がないこともわかった。
トラップに使う程度の魔法なら魔素の消費も問題ないようで、エステルさん曰く今回の実験でかなりデータは得られたみたいだ。
「ふぅ、今回は意外に大変な冒険だったな。満足したかフリージア?」
「うん! 凄く楽しかった! 大満足なんだよ! ありがとう!」
フリージアは本当に満足そうにいい笑みを浮かべている。これでしばらくは欲求不満にならずに済むはずだ。
ルーナも楽しんでいたようだが、帰宅して早々に部屋に戻って寝ている。相変わらずブレない奴だなぁ。
シスハは発見した金貨を机の上で積み上げて満足げだ。
「ほほぉ、金貨180枚の収穫ってところですか。なかなか実りのある洞窟探索でしたね」
「1枚貰ってもいいかな? 皆でお宝を発見した記念品にしたい!」
「どうぞどうぞ。残りも記念かつ非常時の資金としておきましょうか。いつかお宝専用コレクションルームを作ってもよさそうですね」
シスハもあんまり金貨自体に興味はなさそうだな。強欲なのか無欲なのよくわからん奴だ。
フリージアはお宝を発見した事実に喜んでいたが、同じことを思っているのかもしれない。
そんなやり取りをしている中、エステルは洞窟の最深部で発見した魔光石を確認していた。
机の上に魔法陣を展開して、中心に黒い宝石を置き両手をその上でかざし目を瞑っている。
「エステル、何かわかったか?」
「そうねぇ……正直なところ、あまり解析は進んでいないわ。周囲の魔素吸って魔力に変換して放出するのはわかったけど、それだけなのよねぇ」
「聞く限りじゃ魔物が発生する要素がありませんね」
「ええ、これ単体じゃ効果を発揮しないか、使い方が合ってないのかも。マリグナントが使っていたのと比べて、古くて機能が劣っている可能性もあるけれど。全く別物かもしれないし、考えたらきりがないわね」
確か前に冒険者協会で黒い魔光石を調べてもらって、魔素を吸収して放出する機能があるのは知っていた。
今回の魔光石は完全な状態の物だけど、エステルが調べてもそれ以上はわからない、と。
これだけじゃなく最深部で浮かび上がった魔法陣も、スマホのカメラアプリで撮影しておいた。
魔光石を引き抜いた後、エステルが地面に魔力を流してみたら、再度魔法陣が浮かび上がったからだ。
案の定宝石がないから何も起こらなかったが、間違いなく魔物を発生させるのに関係している。
エステルは魔光石だけじゃなく、スマホでその魔法陣の写真も確認していた。
「魔法陣から何かわかることはないのか?」
「うーん、そっちも今はお手上げね。まだ解析は続けるけれど、実験とかしてみないとね。ちょっと楽しくなってきたかも」
「やはりエステルさんも魔導師だけあって、こういう物に知的好奇心がくすぐられるのですね」
「ええ、実物があるのにわからないなんて悔しいもの。じっくりと隅々まで調べ尽くしてあげちゃうわ」
エステルは頬に手を添えて悩ましそうな声をしているが、どこか楽しそうにしている。
結局マリグナントを倒したものの、黒い魔光石に関しては何もわかってなかったからな。
まだあいつの仲間も残っていて今後も同じことが起きる可能性もあるし、是非とも解き明かしてほしいものだ。
うーむ、だけどすぐにわからないのは非常に残念だな。
「これで魔石集めが捗るかと思ったけど、そう上手くはいかないか」
「どうせロクなことを考えてなさそうでありますね……。今度は一体何を思いついたのでありますか?」
「いやぁ、この宝石を使って魔物を発生させられるなら、自動魔石狩りの拠点を作るのに役立ちそうだろ。マリグナントが使ってたのと同じなら、湧くのも早そうだしな。……いや、むしろ希少種だけ湧かすこともできるんじゃないか? おい、そうなったら凄いぞ!」
「とんでもない妄想をして盛り上がっているのでありますよ……」
「魔石大量獲得のチャンスですからね。興奮するのも仕方ありませんよ」
自由な場所で自由自在に魔物を発生させられる。
これ程魔石集めをするのに理想的な道具があるだろうか。
もし希少種の発生まで操れるようならとんでもないことだ。
夢のような環境を考えていると、フリージアが聞き捨てならないことを言いだした。
「魔石が沢山手に入るようになったら、もう狩りしなくてもいいんだよね? 成功してほしいんだよー」
「おいおい、何寝ぼけたことを言っているんだ?」
「ふぇ?」
「たとえ魔石自動化が成功したとしても狩りはやるぞ。自動で魔石を集めつつ、さらに俺達自身が魔石を集める。そうすれば夢のガチャライフが始まる、そうだろう?」
「そんなー、狩りをせずに遊べると思ってたのに……」
「まあ、多少頻度は減るだろうから、自由な時間は増えると思うぞ。ガチャだって回せば生活が豊かになるしな」
「結局大倉殿は何があってもガチャ思考でありますねぇ。ある意味感服するのでありますよ」
「ははは、よせやい。照れるじゃねーか」
俺のガチャに対する熱意に感服するとは、良いことを言うじゃあないか。
ノール達から冷ややかな目線を向けられている気がするけど、感服されているんだから思い違いだろう。
何とも言えない空気が漂う中、話を逸らすようにシスハは積まれた金貨とは別に置かれていた黒い硬貨を指で摘まみ上げた。
「それにしてもこの黒い硬貨は何なんですかね。素材が全く分かりませんよ」
「金貨と一緒に入っていたから通貨ではありそうね。けど、何でできてるのかわからないのは気になるわ」
「魔導具だったりしないのでありますかね?」
「それはないと思うわ。魔法の気配は微塵も感じられないもの」
「不思議な物もあるんだねぇー。ねぇねぇ、これもガチャに関係あったりしないのかな? 当ててみたら何か起きるかもよ!」
「そんなことある訳な――」
「あっ! 光ったんだよ!」
フリージアがスマホに黒い硬貨を当てると、ほのかにだが発光し始めた。
えっ、スマホに反応しているのか? 続いてスマホが振動して画面に文字が表示された。
【神魔硬貨を使用しアイテムと交換しますか? Yes、No】
「うおっ、マジで関係あるのかよ!? それにアイテムと交換だと?」
「さっきまでただの硬貨だったのに、スマホに触れた途端魔力に似た力を発し始めたわ。一体何なのかしらこれ……」
「神魔硬貨なんて大層な名前ですね。よっぽどいい物と交換できなきゃ拍子抜けですよ」
これは神魔硬貨っていうのか。名前からして結構凄そうな物だな。
どうしてこんな物が洞窟にあったのかも疑問だが、それよりもアイテムと交換できるっていうのが気になるぞ。
そんな凄い物と交換できるとは思えないけど確認してみるか。
Yesなどは選択せずに、アイテム交換一覧という項目があるのでタップしてみた。
――――
【交換可能アイテム】
・【SSR】PU・フェス発生クエスト
・【SSR】コストダウン
・【SSR】スキルアップ
・【SSR】緊急召喚石
・プレミアムチケット
・【SSR】装備強化権
・【UR】ユニット強化権
・URアイテム確定チケット
・UR装備確定チケット
・URユニット確定チケット
――――
……えっ?
「うおおおおっ!? めっちゃ豪華だぞ!」
「す、凄い物ばかりでありますね……強化権まであるのでありますよ」
「ああ! これは凄いぞ! URユニット確定チケット一択だろ!」
「つまり新しい子が来るってこと!? 凄いお宝だったんだよ!」
おいおいおい、ヤバくないかこのラインナップ!? GCでもこんな豪華なアイテム交換なんてなかったぞ!
特にプレミアムチケットから下が凄過ぎる! URユニット確定チケットとか、何百連とガチャを回したおまけとしてもらえるぐらいの物だ。
あの洞窟の真のお宝はこの神魔硬貨だったのか……こりゃぁとんでもない物だぞ。
ぐへへ、URユニット確定チケットなんて、本当に貰っちゃっていいんですかい?
と浮かれていたが、エステルの一言で現実に引き戻される。
「お兄さん、落ち着いて。交換枚数を見たら絶望しちゃうわよ」
「えっ、交換枚数?」
落ち着いて画面を見てみると、アイテム名の横に交換必要枚数が表示されていた。
――――
【交換可能アイテム】
・【SSR】PU・フェス発生クエスト 1枚
・【SSR】コストダウン 1枚
・【SSR】スキルアップ 1枚
・【SSR】緊急召喚石 2枚
・プレミアムチケット 3枚
・【SSR】装備強化権 15枚
・【UR】ユニット強化権 30枚
・UR装備確定チケット 50枚
・URアイテム確定チケット 50枚
・URユニット確定チケット 250枚
――――
「250枚だとぉぉぉぉ!? ふざけるなぁぁぁぁ!」
「私達が見つけたのは4枚だけ……交換できるのはプレミアムチケットまででありますね」
「実質交換は不可能なレベルですねぇ。UR装備やアイテムの交換すらハードルが高いですよ」
「残念だねぇ。もっとお宝探しをしないといけないんだよ!」
馬鹿じゃないのぉぉぉぉ!? 交換レートがおかしいだろレートが!
2番目に多い50枚からぶっ飛び過ぎだ! もっと段階を刻め!
……はぁ、下の方のアイテムは諦めた方がよさそうだな。
あの洞窟で4枚は見つけたけど、他にどこにあるか全くわからない。
交換できるとしたら装備強化権辺りで、貯め込んでユニット強化権ってところか。
「このPU・フェス発生クエストっていうのは何なのでありましょうか?」
「PUっていうのはピックアップの略で、フェスはフェスティバルの略だな。ということは……」
ガチャのピックアップやフェスをするためのクエストってところか。
おっ、詳細も見れるようだから確認しておこう。
――――
【PU・フェス発生クエスト】
以下の3つからランダムにクエストが発生する。
・指定魔物討伐
・指定アイテム納品
・URユニットバトル
達成することで特定装備やアイテム、ユニットのピックアップ+フェスティバルが開催されます。
URユニットバトルで勝利すると、URユニット排出率アップ+高確率ピックアップのチャンス!
――――
「これはまた興味をそそられるものですね。特にURユニットバトルっていうのが気になります」
「狙った時にガチャのピックアップができるのはありがたいわね。けど、こんなに条件がよくなるユニットバトルっていうのは、相当難易度が高そうよ」
「名前からして私達と同じような存在と戦うのでありましょうか? この人数ならどんな相手でも勝てそうでありますが、1対1で戦ったりするのでありますかね」
「カロンちゃんともこれで会えるのかな! けど、戦いになるのはちょっと嫌だね……」
ほほぉ、これは割と使えるのではなかろうか。
いつ来るかわからないフェスを待つんじゃなくて、自分達でそのタイミングを選べる。
これなら自然発生のガチャフェスをスルーして待つのもありだな。
神魔硬貨のレートも1枚だから、交換しやすいのも助かる。
特にURユニットバトルは絶対にやってみたい。URユニット排出率アップだけでもガチャを回す絶好の好機だ。
ただ、エステルが言うようにこんだけ条件がいいと難易度が高そうだなぁ。
カロンちゃんとかが相手として出てきたら絶対に勝てないぞ。
あれこれ考えるのも、神魔硬貨をこれからも見つけられたらの話ではあるけどさ。
見落としがあるかもしれないから、またあの洞窟を徹底的に探してみようかな。
「ガチャに関わる硬貨なんて、一体どこの物で誰があそこに隠したのでありましょうか?」
「何にしてもこれは1度保留した方がいいわね。神魔硬貨の出所がわからないと集めようがないもの。情報を集めればどこにあるかもわかりそうだしね」
まさか隠された硬貨でガチャのアイテム交換ができるとは……あの洞窟にいた存在は一体何者なんだろうか。
神魔硬貨はしばらく交換しないで、どこで使われていた物なのか詳しく調べる必要があるな。
魔石だけじゃなくて、他にも集めないといけない物ができちまったじゃねーか!




