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海の守護神の加護

 大魔石討議会から翌日、俺達はさっそく狩場探しの下見へと来ていた。

 本日来ている場所はセヴァリア方面にある海岸だ。


「さーてさて、魔石狩りの時間だ」


「また悪夢の日々が始まってしまったのでありますね……」


「今回は狩場探しが目的だからまだ始まってすらいないけどね。まずは狩りやすい魔物探しかしら」


「狩りをするルート構築も必要ですからね。狩場を隅々まで調べていきませんと。久々に満足いくまで魔物を殺れそうです!」


「探検楽しみなんだよー。ルーナちゃんも来ればよかったのにー」


 ルーナも魔石狩りに同意してくれたが、狩場が決まるまでは自宅待機させていた。

 ずっと連れ回したらいざ本番って時に寝込みそうだしな……吸血鬼で強靭なはずなのに寝不足で倒れられたら困る。

 実際狩場の下見は俺達だけでも平気だし、時間もかかりそうだから無理に連れ回す必要もないだろう。


「それで、狩場の探索には例の称号を使うのでありますか?」


「ああ、ルート構築を考えるのに必要のない戦闘はできるだけ避けたいからな」


 今回の狩場探索にセヴァリアを選んだのは単純に新しい狩場の探索もあるのだが、それ以上に新しく手に入った称号が理由だった。

 以前貰った守護神の救済達成報酬ってやつに含まれていた、称号【海の守護神の加護】だ。


【海の守護神の加護】

 防御力+30%

 水中移動速度+50%

 水中呼吸

 本人とパーティメンバーよりレベルの低い海洋系魔物を非アクティブ化する。


「ククッ、この称号のおかげで狩場を探索し放題なのは助かるぜ。テストゥード様に感謝しないとな!」


「守護神様もこんな使われ方されるとは思っていなかったでしょうね……」


「大倉さんですからね。使えるものは何でも使う鬼畜ですから仕方ありません」


 鬼畜とは失礼な! こんな探索向けの称号貰ったんだ、そりゃ狩場の下見に使わない訳がないだろ!

 けど、魔物の非アクティブ化の効果ばかりに目がいったけど、それ以外の効果もかなりのものだ。

 泳ぐ速度に水中呼吸なんてあるとか、俺だけしか効果がないとはいえ水中でも活動ができるようになる。

 使いどころが難しそうだけど、水中で探索することがあったら効果的だな。


「へー、この称号があれば泳ぐのも楽そうね。私は泳ぐの自体苦手だけれど」


「うっ、私も泳ぐのが苦手なので、ちょっと羨ましい称号でありますよ」


「水遊び大好きなんだよ! 泳ぐ時教えてあげる!」


「こんな称号があったとしても、泳げないと使えませんもんね。大倉さんは泳げるんですかねぇ?」


「俺を舐めてもらっちゃ困るぜ。地元じゃ海人平八と呼ばれていたんだぞ」


「ほお、ならいつか泳ぎで勝負したいところですね。私は10分以上は潜っていられますよ」


「相変わらずシスハは多芸なのでありますね……」


「これぐらい当然ですよ。私は神官ですからね」


 素で10分以上も潜水できるとか超人過ぎるだろこいつ……一体どれだけ芸達者なんだ。

 だが、俺だってそれなりに泳げる。この称号さえあればシスハにだって負けはしないぞ!

 そんなやりとりをしつつ、称号を海の守護神の加護に変更して海岸の下見を始めた。


「ここってサハギンがいる海岸よね」


「ああ、海岸で場所も広いしサハギン達の移動速度もそれなりだ。ここで釣り範囲狩りをするなら、俺とノールとルーナの3人で釣り役ができる。シスハは回復に専念して、エステルが殲滅。フリージアはエステルの護衛兼釣り漏らした奴を倒すって感じだな」


「おー、そう聞くとちゃんと狩りの仕方を考えているように聞こえるのでありますよ」


「平八ってたまに凄いよね!」


「ガチャが絡んでいますからねー。大倉さんはこういう時だけは頭が回りますから」


 ぐぬぬ、まるで普段は俺の頭が回らないかのような言い草だな……。

 まあいい、とりあえず今回の狩場探しはサソリの洞窟に代わる釣り範囲狩りできる場所を探すのが目的だ。

 釣り範囲狩りの条件はまず対象の移動速度がそこそこ速いこと。遅いと釣るのに時間がかかるし、かといって速過ぎると釣りをするどころじゃなくなる。

 次に誘導した魔物はエステルによる魔法での範囲攻撃で殲滅するから、当然それで仕留め切らないといけない。なので可能な限り魔法抵抗が低い魔物を選ばないといけないのだが……今のエステルさんならある程度の魔法抵抗は問題ないと思う。

 エステル自体の火力が上がっているし、グリモワール『セプテム・ペッカータ』もあるからごり押しも可能だ。

 問題はMPの消費量が多そうだから、エステルに負担がかかり過ぎないか注意する必要もある。


 今回の下見に選んだ海岸はゴツゴツした岩場がある広い海岸。

 ここは手足のある青い魚の見た目をした魔物、サハギンの湧き場所だ。

 二足歩行で手に三叉槍を持ち岩場をうろついたり、海を泳いでいる個体もいる。

 そしてサハギンの希少種は赤い見た目で一回り大きくなったドンサハギンだ。


 ――――――

●種族:サハギン

 レベル:50

 HP:2万4000

 MP:0

 攻撃力:1500

 防御力:1800

 敏捷:65

 魔法耐性:30

 固有能力 なし

 スキル 刺突

 ――――――

 ドンサハギン ●種族:サハギン

 レベル:60

 HP:7万8000

 MP:850

 攻撃力:2800

 防御力:2500

 敏捷:90

 魔法耐性:40

 固有能力 滴る表皮

 スキル 剛力刺突 アクアスピア

 ―――――


 サハギン達がうろつく中を堂々と歩いて行くと、こっちを見た途端慌てて離れていく。

 今の俺達は90レベルを超えているから、サハギン達より圧倒的に上だ。

 希少種であるドンサハギンすら逃げていくぐらいだ。これが海の守護神の加護の力か。


「テストゥード様の称号の効果、凄いでありますね。本当に魔物が攻撃してこないのでありますよ」


「これなら探索もしやすくなりそうね。セヴァリアのどこかに迷宮があるか探すのもいいかもしれないわ」


「引き潮の時に洞窟が出てくる場所もあるそうですし、どこかに財宝でも眠っていませんかね」


「お宝! 探すの楽しそう! 今度皆で探索しようよ!」


 確かに魔石狩りのことばかり考えていたけど、普通の探索にもこれは有用だな。

 セヴァリアは昔からある町みたいだし、近辺に隠されたお宝や発見されていない迷宮もあるかもしれない。

 そんな希望を抱きつつも海岸を見て回りながら、ちょくちょくサハギン達を倒して強さや湧き場所などを確認していく。

 半円状の地形の岩場は盛り上がった地面により複数に分け隔てられて、そこにサハギン達が湧いて外の岩場に出てきていた。

 釣り狩りをするならその湧き場所に入ってサハギン達をおびき寄せて、エステルにまとめて魔法で葬ってもらうのがいいだろう。

 サソリの洞窟よりも湧き場所が一目瞭然でわかりやすい狩場かもしれない。


「湧き場所も一定間隔だし釣りをするのに悪くはなさそうだな。ドンサハギンがちょっと強いけど、これぐらいなら問題ないか?」


「うーん、そうね。固有能力のせいか魔法が効き辛いけど、グリモワールを使えば何とかなるわ」


「ふむ、釣り最中に槍を投げてくるのも注意した方がいいかもしれませんね。このサハギン達、なかなか戦い応えがありますよ。油断してるとすぐに剛力刺突もしてきますし、大倉さんは要注意です」


「それでも軽く倒している辺り、さすがシスハでありますね……。確かに鎧サソリよりも釣りには気を使いそうでありますよ。足も速いでありますし。……白身でも落ちないでありますかね」


 称号の効果でサハギンは俺達を見ても逃げ出して攻撃はしてこないが、こちらから攻撃すると反撃をしてきて周りの奴らも一気に襲いかかってくるようだ。

 シスハはドンサハギンが繰り出したスキルである剛力刺突を、突き出された槍の先端を足で踏み潰しマジックブレードを首に突き刺して倒したりしていた。

 あの速さの突きを、矛先を踏み潰してそのまま攻撃するとか恐ろしい奴だな……。


 それはいいとして、エステルも問題なくサハギンを倒せるから、ここは魔石狩りの候補に入りそうだな。

 セヴァリアの調査であっちこっちの狩場を回った時、ここみたいに狩場になりそうな場所はチェックを入れておいた。

 へっへっへ、他の用事で来てもそれだけで終わらせないのがこの平八だ!

 他にもいくつか候補地があるから、後でそこも回って効率を考えて狩場を吟味するとしよう。

 

 これからの魔石狩りに期待を膨らませていると、フリージアが黙って眉を寄せ不満そうにしているのに気が付いた。


「どうかしたのか?」


「うーんと、釣り漏らしたの倒すのが大変かなって。平八達がバラバラにサハギンを連れてくるんだよね? エステルちゃんの傍から離れられないし、物陰になってるところも多いから見辛い! 高い場所があれば楽だけどないし……どうしようなんだよー」


 あー、言われてみれば湧き場所の区切りになっている岩のせいで、エステルの待機場所にしているところからだと見えないな。

 釣り漏らしが外に出てこなかった場合、射線が通らなくてこれじゃ射抜けないか。

 エステルの待機場所の近くに高所もないし、位置を変えると今度は魔物の誘導が面倒になりそうだ。

 最悪フリージアはエステルの護衛だけでもいいんだけど、効率を考えたらフリージアにもある程度魔物の処理はしてもらいたい。

 釣っている最中に何かあればすぐ矢でフォローもしてもらえるだろうし、いい方法はないだろうか……。

 と、考えていたのだが、我らがエステルさんがすぐに手をパンと叩いて反応を示した。


「あら、それなら私が作ればいいじゃない。えいっ」


 そう言ってエステルが杖で地面を突くと、ゴゴゴと地響きと共に岩が盛り上がって高い円柱が出来上がった。

 柱の壁には足場も設置されていて、フリージアならジャンプして柱を登れそうだ。


「これなら海岸全体を見渡せるんじゃないかしら」


「凄いんだよエステルちゃん! 登ってみるね!」


 フリージアは足場に飛び乗ってヒョイヒョイと柱のてっぺんまで登っていき、下を見渡してはしゃいでいる。

 あそこからなら岩場全体を確認できそうだし、エステルの待機場所の近くだから護衛の問題もない。


「高台がないなら作ればいいだなんて、エステルさんぐらいしかできない力技ですよね……」


「こうやって改善案を出し合っていくことで更なる効率が望めていくんだ。ノール達も見習うんだぞ!」


「いいこと言っている気がするでありますが、魔石集めのためっていうのがまた何とも……一応私達も色々と改善点を考えるでありますかね」


 うむうむ、こうやって皆で意見を出し合っていくことが効率の改善に繋がるのだ。

 皆はガチャの為に、ガチャは皆の為に! 妥協なき魔石集めを目指して日々努力していこう!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今後得られる称号が楽しみです。 引き潮時の洞窟にも期待。
[一言] ノエルとルナの姓と名は何すか
[一言] 多芸過ぎるシスハさん。神官だからの理由で全てが納得させられるシスハさん。 その勢いでメインヒロインレースもぶっちぎるんだ!
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