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大魔石討議会

 セヴァリアでの報告を終えた日の夜、居間にノール達を集め俺は宣言をした。


「これより大魔石討議会を開催する」


 机に両肘を置いて手を組みながらそう言うと、同じく着席しているノール達は呆れたような声で反応を示した。


「また妙なことを言いだしたのでありますよ……」


「どうしたのかしら急に?」


「セヴァリアでの異変が解決したので、やる気を出してしまったみたいですよ」


「よくわからないけど張り切ってるんだね。討議会って何をするの?」


 今日セヴァリアでイリーナさんと話したこと、そして冒険者協会の調査依頼が正式に終了したことは既に伝えてある。

 その流れから大魔石討議会を開催したのだが、多少の困惑は仕方がなかろう。


「セヴァリアでの異変は完全に解決したのはご存じの通りだ。そこでこの平八は考えた、今こそ魔石狩りを再開するチャンスだと!」


「どうしてそんな発想になるのでありますかねぇ。せっかく落ち着いたのでありますよ?」


「落ち着いたからこそ魔石狩りをするんだろ! この前の天井ガチャの屈辱を忘れたのか!」


「お兄さんって意外に執念深い……いえ、意外でもないわね。ガチャに対してだけは本当に諦めが悪いんだから」


「今日の冒険者協会での報告を終えた直後に、魔石狩りをするとか言い出しましたからね。まさかその日の夜に討議会まで始めるとは思いませんでしたよ。こういう時だけは行動力の塊ですね」


 思い立ったが吉日がこの平八のモットーだ! この熱き思いが鎮まる前にやらなければならん! 俺は行動力に定評のある男だからな!


「ふむ……」


「あれ、ルーナちゃんどうしたの?」


 盛り上がる俺を他所に、無言で座っていたルーナが席を立った。

 そして腕を組み考える素振りをしながら自室へ向かい歩きだす。

 ……こいつ、堂々と知らない振りして逃げるつもりか。


「ルーナよ、魔石狩りから逃げるな」


「逃げる訳じゃない。寝るだけだ」


 ルーナは振り向いて立ち止まったが、眉をひそめて物凄く嫌そうな顔をしている。

 どう見ても逃げようとしているじゃあないか。

 仕方がない、ここは少し促して自発的に討議会に参加させるしかないな。


「至高の寝台、随分と気に入っているようだが寝心地はどうだ?」


「……何が言いたい?」


「もし寝具系のピックアップガチャが来たらどうする? 他のSSR寝具もきっと同じぐらい寝心地がいいんだろうなぁ。URもあるかもしれないぞ。けど、ルーナが魔石集めを手伝ってくれないんじゃ、魔石が足りなくて満足に回すのは難しいかなぁ。あー、残念だぁ」


「ひ、卑怯だぞ平八!」


「えっ、俺は事実を言ったまでだぞ。ほら、この前の天井ガチャだって魔石不足で諦めたんだしさ」


「くっ……」


 苦虫を噛み潰したような顔をしているが、ルーナは大人しく着席した。

 けど、実際に俺が言ってることは本当なんだから仕方がない。

 今ここで魔石狩りを改善できなければ、余計なガチャを回すことなんてできないのだ!


「大魔石討議会とか言ってるでありますけど、具体的に何を話し合うつもりなのでありますか?」


「そりゃあ勿論、魔石をどうやって今後集めていくかの方針さ」


「いつものように皆で狩場に散らばって狩りをすればいいと思うのだけれど……お兄さんはそう考えていないのよね?」


「ああ、確かにいつものように狩りをすれば、一定量の魔石は貯まるだろう。だが、今回のセヴァリアのように長期に亘る依頼が始まった場合、そういう狩りをするのも難しくなる」


「まー、思い返してみれば魔石狩りの頻度が極端に少なくなってはいましたね」


「だろ? だからこの機会に1回の魔石狩りの効率をさらに上げるか、魔石狩りの自動化を本格的に狙っていきたいと思っているんだ」


 魔石を貯めるだけならば、長時間魔石マラソンをするだけで解決する問題だ。

 だが、今回のように長期の依頼が入ることは今後も十分に考えられる。

 その度に魔石集めが中断されて重要でお得なガチャを逃してしまうのは非常に惜しい。

 なので優先的にやるべきことは、魔石をいかに少ない時間で大量に手に入れるか、そして不労取得の魔石をどんだけ増やせるかに焦点を当てるべきだと俺は考えた。

 目先の魔石に惑わされず今後を見据えての魔石集めの改善。今はそれに時間を割くのが上策のはず!


「その提案には賛成だけれど、これ以上の効率化は難しいんじゃない? それに自動化だってこの前頓挫したわよね」


「ふふふ、この俺が1度の失敗で諦める訳ないだろう。何事もトライアンドエラー、失敗したならまた別の方法を試すだけさ。それに効率化だってこれ以上無理なんてこともない。今俺達がやっているのは妥協点に過ぎないのだ!」


「こういう時だけ正論っぽいこと言いだすでありますね。ガチャが目的じゃなきゃ感心するのでありますが……」


「そこまで言うからには案があるってことですよね? まさか何も考えがないのに言い出したりはしないでしょうし」


「それを皆で考える為の討議会だろうが! ……まあ、それは無責任過ぎるから一応案自体は考えておいたぞ」


 全員で議論しつつ案を練りたいところだが、0から考えるのは難しい。

 ゆくゆくはノール達にも魔石狩り案を提供してもらいたいところだが、今回は基本になる案を俺が出して問題点をエステル達に見直してもらうのがいいだろう。


「魔石自動化は難しいからとりあえず置いておくとして、まず魔石狩りの効率に関しては新しい狩場を探すしかないな」


「結局そうなるのでありますか……けど、新しい狩場を探すとして、今より効率のいい場所なんてあるのでありましょうか?」


「今の主な狩場はゴブリンの森とサソリの洞窟ですよね。洞窟はエステルさんとノールさんに任せて、残りの私達で森へ行くのがいつもの流れですか」


「それで普通の狩りなら皆で狩りをすれば大体1日50個程度ね。これ以上効率的な場所にするのなら、どんな狩場が候補になるのかしら?」


 現状魔石狩りを行っているゴブリンの森とサソリの洞窟は、これ以上効率を上げるのは厳しい。

 狩りのルート構築も完全に出来上がって、もはや改善の余地は殆ど残されていない。

 効率を上げられたとしても誤差範囲の数にしかならないし、根本的な解決は無理だ。

 だから本格的に魔石狩りの効率を上げるのを考えたら、狩場を変えるしか方法はない。


「単純に改善点を考えるのなら、範囲狩りの効率を上げられる場所だな。サソリの洞窟だと釣り役1人が限界だから、希望を言えば3人ぐらいで魔物を釣って狩れる狩場を探したい」


「北の洞窟は狭いでありますからねぇ。2人以上での釣り役は難しいのでありますよ」


「ああ、だからそこそこ広くて魔物を釣りやすい狩場を見つけたい。だけどその分、攻撃するエステルの負担が大きくなるのが問題なんだが……」


「あら、お兄さんの頼みだったらその程度の負担、喜んで引き受けちゃうんだから」


「あっ、うん。ありがとうございます」


 うっ、欲望に塗れた俺の案にそんな満面の笑みで答えられると心苦しい。

 いくら受け入れて貰えてるとはいえ、やり過ぎたらまた以前のようにエステルが暴れ出すかもしれないから、そこは程々にしておかないとな……。


「で、もう1つ魔石効率を上げる方法としては、金で誰かを雇うとかか」


「雇う、でありますか?」


「ああ、今回のセヴァリアの異変を解決して3億Gも手に入ったからな。この資金の一部を利用して、他の冒険者に魔物討伐の依頼を出すのも1つの手だろう。勿論ガチャ装備も貸し出しでな」


「うむ、それがいい。他人任せが1番だ」


「ですが色々と難しそうな話じゃないですか? ガチャ装備を安易に貸し出すのもどうかと思いますし……」


「そこはじっくりと話し合って条件を決めていけばいいさ。とりあえず今の俺達なら、金でそういうこともできるってことが言いたいってことさ。……へっへっへ、やっぱり金の力は偉大だぜ」


「平八が凄く悪い顔をしているんだよー」


 元々稼ぎはそれなりにあったけど、大々的に依頼を出せる程じゃなかったからな。

 ここまで大きな元手を手に入れたんだから、この資金を有効的に使って他の冒険者達に希少種狩りをやってもらいたいところ。

 けど、魔石を手に入れるにはガチャ産装備をしつつ、仲間意識を構築しないといけないのが問題だ。

 金を払って依頼することで、その仲間意識を構築できるかの実験など試していきたいところ。

 それが可能なら一気に複数の冒険者に依頼して、魔石集めの数を底上げすることもできる。

 俺達自身での狩りも限界があるだろうし、やはり数の暴力で解決するのが重要だな。


 ぐへへと笑いながら成功した時のことを考えていると、エステルが頬に手を添えて不安そうな表情で俺を見ているのに気が付いた。

 むっ、どうしてそんな顔でこっちを見ているんだ?

 

「お金で魔石集めができるようになったら、それはそれで心配よねぇ。お兄さん、際限なくお金を使って狩りを頼みそうだもの」


「そ、そんなことないぞ?」


「その反応怪しいでありますねぇ……」


 他の冒険者に依頼できるとなれば、課金感覚でどんどん金を使いそうなのは否めないが……うん、そこは鋼の意志で我慢するとしよう!

 それに金を使ってでも魔石集めをしたいというのも、一応ちゃんとした理由もあるのだ。


「まあ、何はともあれ今後はガチャ最優先ってことだ。真面目な話をしておくと、最果ての地に行くとしたら戦力的に足りてないだろうしな」


「テストゥード様が言ってた場所でありますか。そんなに凄い所なのでありますかね?」


「あのテストゥード様が強い魔物がいるって言っていた場所ですからねぇ。ファルスス・テストゥード級の魔物がその辺にいる地かもしれませんよ」


「そんな大陸あったらどうしようもないじゃない……。けど、最果ての地に行くのならファルスス・テストゥードを私達だけで倒せるぐらい強くなってからの方がいいかもね」


「ふむ……行きたくない。私は家で静かに寝ていたい」


「えー、私は行ってみたい! 知らない場所に行くのって楽しそうなんだよ!」


 最果ての地に行くとしたら、確実に今の俺達じゃ戦力が足りそうにない。

 エステルの言うように、ファルスス・テストゥードを自力で倒せるぐらい強くなるのが最低ラインだと思う。

 だからこそ、今は魔石を集めてガチャを回すのを最優先にするべきなのだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最果ての地 グランドラインみたいですね
[一言] ノエルとルナの姓と名は何ですか
[良い点] タイトルから外れないガチャを起点とした話が良い [一言] 寝具系ピックアップガチャに期待。 最強のグリモワール並の威力がありそう。
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