依頼完了
お久しぶりになります。
長期間更新が空いてしまい申し訳ございませんでした。
色々と落ち着いてきましたので、そこそこ更新をしていきたいと思います。
セヴァリアの復興作業もほぼ終わり、町は魔物の襲撃以前の賑わいを取り戻していた。
漁師さん達も商人達や国の支援で新しい船を手に入れ、漁も再開し始めたようだ。
魔物も多少残党が残っていたが、それも冒険者や軍により討伐されて襲われる心配もなくなった。
これでもう俺達がセヴァリアに残って手伝う必要もなくなり、丁度冒険者協会も聖地などで起きた異変の調査が完了したようだ。
そしてようやく報酬に関しても話が決まったと言われ、今日はその話をしようとシスハとセヴァリアにやってきていた。
だが、すぐに冒険者協会には向かわず、まずイリーナさんと会う為にテストゥード神殿を訪れている。
イリーナさんが神殿から離れられないということで、冒険者協会から訪ねて話を聞いたそうだ。
なので俺達もイリーナさん達と話を合わせる為に、協会へ行く前に話を聞きに来た。
相変わらず参拝者が多く神殿の外に人が溢れていたが、神殿の人に庭へと案内されてそこでイリーナさんと会うことに。
久しぶりに会うイリーナさんは笑顔で俺達を出迎えてくれた。
「大倉様、シスハさん、お久しぶりになります」
「こちらこそお久しぶりです。お元気そうでよかったです」
「お忙しい中伺ってしまいすみませんね。私達だけで協会への報告を決める訳にもいきませんでしたので」
「いえ、私共の都合で足をお運びいただいて、申し訳ございませんでした。今も神殿から離れる訳にもいきませんので……」
冒険者協会には結界の維持するのに離れられないと話していたそうだが、恐らくイリーナさんが神殿を離れられないのはテストゥード様の為だと思う。
セヴァリアに結界を張り直した時、力を殆ど使い尽くしていた感じだったからなぁ。
この様子だとあれからテストゥード様が消滅したってことはなさそうだけど、あれからどうなったのか気になる。
「テストゥード様は大丈夫なんですか?」
「はい、私共が祈り続けて容体は安定いたしました。ですが、あれから深い眠りに就かれてしまって……今は外部からの影響も受けやすい状態です。参拝してくださる方々も今は神殿に入ってもらう訳にもいかず、大倉様達とお会いするのもかなり困難かと」
「セヴァリア全体にあれ程の結界を張れば、そうなっても仕方ありませんね。消滅しなかったのが奇跡のようなものですから、長くて数年は回復に専念せざるを得ないかもしれません。協力できることがあればお手伝いいたしますよ」
「そう言って貰えるのは大変ありがたいです。しばらくは私共で努力いたしますが、何かありましたらお願いするかもしれません」
うーむ、どうやら今はイリーナさん達じゃないとどうにもならないみたいだな。
怪我をしているって訳じゃないから、シスハの回復魔法で治るってもんでもなさそうだし。
数年眠ったままの可能性もあるのか。聞きたいことがあったけど、これじゃ話を聞けそうにないな。
仕方がない、今は協会の話だけでもするとしよう。まずはテストゥード様の件だな。
「それで、テストゥード様の件は協会に話したんですか?」
「……いえ、先日協会の方々が神殿を訪れましたがお話はしませんでした。現状でも神殿に沢山の参拝者の方が訪れていて、テストゥード様もお眠りになっています。私共も手一杯の状況ですので、冒険者協会にお伝えするかは神殿が落ち着いてからか、テストゥード様がお目覚めになられてから決めようと思います」
「なら、私達もイリーナさん達の話に合わせておきますね」
「ありがとうございます。そうしていただけると助かります」
やっぱりテストゥード様の話はしていなかったか。今も神殿の入り口までとはいえ、参拝者が沢山来ているからなぁ。
冒険者協会も内密にしてほしいって頼めば守ってくれるだろうけど、何かの拍子に話が漏れる可能性だってある。今は黙っておいた方がいいだろう。
それ以外にも聖地で何が起きたのかの説明など、色々と口裏を合わせておいた。これで冒険者協会で何かを聞かれても大丈夫だろう。
話も終わって神殿での用事は終わったのだが、その前にイリーナさんに一応あのことを聞くことにした。
「イリーナさん、最果ての地と呼ばれる場所を知りませんか? カロンを召喚した時にテストゥード様が呟いていたんですけど……」
最果ての地、カロンちゃんを見てテストゥード様が呟いたものだ。
龍人やエルフがいるような口振りだったけど、その最果ての地とやらにいるのだろうか。
もしかするとその場所に俺が元の世界へ帰るための手がかりもあるかもしれない。
イリーナさんが何か知っていればいいのだが……。ゴクリと唾を飲み込み、俺の言葉を聞いて考える素振りをしているイリーナさんの答えを待つ。
「最果ての地、ですか……そのような場所に聞き覚えはありません。ですが、心当たりはあるかもしれません」
「本当ですか!?」
「テストゥード様が眠りにつく前にお話をしてくださった話です。かつてテストゥード様は、聖地の先にある荒れ狂う大陸と海を渡りこの地にやってきたそうです。ですので、その荒れ狂う大地が最果ての地と呼ばれる場所なのではないでしょうか」
「聖地の先にある海を渡った大陸ですか……」
「はい、聖地は私共がその地に行かないようにする為のものでもあったそうです。魔物もこの地とは比べ物にならない程強いと仰られていました」
「そんなに強い魔物がいる大陸があるんですか。是非とも行ってみたいですね」
ぐふふと笑ってシスハは愉快そうな笑みを浮かべている。あのテストゥード様が強いとか言う魔物がいる大陸とか行きたくないんですけど……。
うーむ、海を渡った聖地の先にある大陸か。行くとしても普通の船じゃ無理そうだし、当分先の話になりそうだな。ガチャで海を渡る乗り物でも出てくれればいいのだが……。
有益な情報も手に入り、今度こそ神殿から帰ろうとすると、イリーナさんは笑顔で見送りの言葉をかけてくれた。
「大倉さん、シスハさん、これからも神殿へいらしてくださいね。中へお招きできるのは大分先になってしまいますが、またあなた方とお会いしたいです。冒険や大倉さん達のお話を沢山お聞かせください……特に大倉さんのお話を」
「ほほぉ、随分と期待されちゃってますね大倉さん」
「えっ!? い、いや! イリーナさん、からかわないでくださいよ!」
「ふふ、すみません。しばらく会えないと思うとつい」
こうしておかしそうに笑うイリーナさんに見送られ、俺達は神殿を後にした。
ふぅ、あのイリーナさんがあんな冗談を言ってくるなんて驚いたぞ。お茶目なところもあるじゃあないか。
なんて感想を抱いていると、シスハがジロリとした目を俺に向けながらため息を吐いた。
「やれやれ、油断のならない人ですねぇ。あの目、まだ大倉さんを諦めていませんでしたよ」
「そんな諦めていないなんて大袈裟な……。まだ俺を神殿に誘おうとしてたってことか?」
「あー……まあ、そんなところです。もしまた神殿に行くことがあっても、絶対に私かエステルさんを同行させてくださいね」
さっきの言葉は冗談っぽかったけど、半分本音でもあったのだろうか。
ある意味テストゥード様を救った感じでもあるし、ずっと神殿にいてもらいたいって考えはあり得るか。
……聖地を破壊した責任を取れ言われたらどうしようかと思ったぞ。
カロンちゃんの攻撃で小島が真っ二つに割れたからなぁ。あの後聖地は一体どうなったんだろうか。
とりあえずシスハの忠告に従って、また神殿に行く機会があったら彼女かエステルに同行してもらおう。
次に向かった先は今日セヴァリアに来た目的であった冒険者協会だ。
到着して中へ入ると、いつものように支部長であるベンスさんの部屋に案内されて、対面するように席につく。
そしてこれまたいつものマシンガントークが始まった。
「大倉さん、シスハさん、わざわざ来てもらってすまないね! 冒険者協会としてようやく調査が終了したから、やっと報酬の話を伝えられるよ! いやぁ、あなた方には復興の支援も手伝ってもらって頭が上がらないよ! 特にシスハさんの回復魔法には助けられたからね! あの人数の怪我人をあっという間に治療して――」
「あ、あの、お話を遮って申し訳ないのですが、調査の話を……」
「あっ、ごめんごめん! また話がそれちゃうところだったよ!」
「相変わらず支部長は話し出すと止まらない方ですねぇ」
黙って聞いていたらいつまで続くのかわかったもんじゃないぞ。
いい人なんだけど軌道修正しないと話が逸れ続けていくのがなぁ。
「おっほん、調査結果の方だけど、神殿から聞いた話と併せて大倉さん達の話は本当だって結論に至ったよ。まだ詳しい調査は続けていくつもりだけど、とりあえず大倉さん達に支払う報酬は3億Gだね」
「えっ!? 3億G!?」
「それはまた随分と高額ですね。……良いお酒買い放題じゃないですか」
「偶然なのか聖地と呼ばれていた場所の濃い霧がなくなっていたらしくてね。例の離れ小島が真っ二つに裂けていたって聞いて驚いたよ。一体どんな戦いがあったのか想像もつかない。そんな相手がこの町まで来ていたらどうなっていたか、想像しただけで恐ろしいよ……本当に大倉さん達がいてくれてよかった」
詳しく話を聞いてみると、聖地での戦いが本当にあったのか確かめる為、冒険者や協会の人達が船で調査に行ったそうだ。
いつも濃い霧に覆われているから半分形だけの調査のつもりだったらしいが、行ってみたらあの霧がなくなっていたらしい。
そのまま聖地へ向かってみたら、無残に裂けた聖地だった島があり、そこに住んでいた眷属である魔物達がせっせと島を直していたとか。
島に近づこうとしたら眷属のシーエンジェルに恐ろしい威嚇をされて、慌てて逃げ帰って来たって話だ。……バッカルコーンされたのか。
と、そんな感じで俺達が聖地で戦った魔人の話は本当だったと信じてもらえたそうだ。
さ、3億G……今まで結構稼いできたつもりだけど、そんな大金提示されたらブルってくるぞ。
「正直あれ程の異変を解決したんだから、3億Gでも足りないぐらいだよ。それと他にもできることはさせてもらいたいと思っているんだ。素材や情報を優先して提供したりね。それとクリストフさんとも話し合ったけど、Aランク冒険者への推薦も考えているんだ」
「私達がAランク冒険者に?」
「うん、大倉さん達の活躍はもうBランク冒険者の範疇じゃないからね。冒険者協会としてもこのままにしておくのは惜しいって考えかな。まだ僕とクリストフさんの間での話だけど、近い内に冒険者協会全体として話も持ち上がると思う。詳しい話はクリストフさんから聞くといいよ。大倉さん達は王都に戻るつもりなんだよね?」
「はい、セヴァリアの復興も済んで魔人の調査も一応終わりましたので。個人的にまたセヴァリアに来ることはあると思いますけどね」
「今回で大仕事は終えましたし、しばらくは自由な冒険をしていたいものですねぇ」
3億Gだけでも俺としては十分だと思うけど、素材や情報を優先的に回して貰えるのは非常に助かるな。
それとAランク冒険者への推薦か……冒険者として最高ランクの立場になれば、かなりのメリットはあるはずだ。
けど、それと同時に色々とややこしい依頼などが増えて、行動が制限されるかもしれない。
立場が上になるってことは相応にやるべきことが増えそうだし。
もしこれでAランクに上がることになりそうなら、一度エステル達と話し合ってから決めた方がいいだろう。
「あとこれはお願いなんだけど、今回の報酬は王都の協会で受け取ってもらってもいいかな? 払えないことはないんだけど、あの騒動で色々と入用でね……」
「大丈夫ですよ。そんな大金を使うこともありませんし、それを持って王都まで帰るのを考えたらむしろ助かります」
「本当に大倉さん達は懐が深くて助かるよ! 何かあれば協力させてもらうから、また是非セヴァリアに来てもらいたいよ!」
マジックバッグがあるからどんな大金でも簡単に持ち運びできるけど、一応これは秘密にしてあるからな。
別にお金をすぐに使うって訳でもないし、貰えるのであれば王都でも問題ない。
復興がほぼ完了したとはいえ、セヴァリアはまだまだ慌ただしくなりそうだからな。
普通の依頼を受けている冒険者達へ報酬として渡す現金も必要なはずだ。
大金は大人しく王都の冒険者協会で受け取るとしよう。
ベンスさんに依頼達成の証明書と報酬の手形を貰い、冒険者協会を後にした。
「ふぅ、これで本当にセヴァリアでやることも終わりか」
「そうですねぇ。やっと肩の荷が下りたってとこでしょうか。これからどうします?」
「うーん、最果ての地やらAランク昇格やら色々と話に出てたけど、とりあえずしばらくは好きなことを自由にやりたいな」
「好きなことを自由にって……ガチャしかないですよね? この前天井ガチャやったばかりじゃないですかー」
「おいおい、忘れたのか? 天井ガチャでも我慢したあの苦痛を! あの時もっと石があればURが沢山手に入ったんだ! ユニットだって……自由な時間ができた今、本格的に魔石集めを再開する絶好の好機! 妥協のない揺るがない意志で石を集めるのだ! 石だけに!」
「は? ……ごっほん、つまらない戯言はいいとして、確かに天井ガチャで我慢したのは惜しかったですねぇ。最近魔石自動化とかも目指していましたし、この機会に本格的に考えてみるのもありかもしれませんね」
くっくっく、ようやく長きに渡ったセヴァリアの異変も解決して自由になったんだ!
この前の天井ガチャの屈辱を晴らす為にも、気合を入れて魔石集めに専念するぞ!
 




