大人の楽しみ2
前回の更新から間が空いてしまい申し訳ありません。
忙しいのと体調不良やらでなかなか書くことができませんでした。
次回からの更新に関しても間が空きそうです。
詳しくは後書きに書かせていただきます。
ノール達との訓練を終えた日の夜、やることも終わり寝ようと思っていると、シスハが声をかけてきた。
「大倉さーん、久々にこれどうですこれ!」
シスハはコップを持ちクイクイと口元に運ぶ仕草をしている。
うーん、飲みのお誘いか。相変わらず酒を飲むのが好きな奴だな。
「酒かよ。明日は特に何もないから別に構わないけど……」
「ありがとうございますぅ! それじゃあ、フリージアさんも呼んで一緒に飲みましょうか!」
えっ、フリージアだと? どうしてあいつの名前がここで上がって……。
と思っていると、バタバタと走る音が聞こえてきて、バンと扉を開けてフリージアがやってきた。
「呼んだ!」
「名前を呼ぶだけで来てくれるので助かりますね。フリージアさん、1杯やりますよ!」
「お酒! わーい!」
シスハがフリージアの肩に手を回しながら誘い、それを彼女はとても喜んでいる。
えぇ……フリージアが酒飲むとかすげー驚きなんですけど。
「フリージアって酒飲めたのか?」
「飲めるよ!」
「飲めるどころか物凄く強いですよ。私も少し前に知ったので、たまに付き合ってもらってるんです」
マジかよ。あのシスハが強いって言うことは相当だぞ。
フリージアも乗り気で参加となり、前と同じようにシスハの部屋に行き酒を飲むことに。
……正直普段でさえ騒がしいフリージアが酒を飲んで平気なのか非常に不安なんだが。
酔ったらとんでもないことしでかしそうだぞ。
そういえばフリージアの召喚石を当てたガチャも、ちょうどシスハと酒を飲んでた時にきたやつだったなぁ。
シスハは喜々として大量の酒瓶を出してきて、お互いにコップに酒を注いで飲み始めた。
俺はチビチビと舐めているけど、シスハとフリージアは豪快にゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる。
「えへへ、シスハちゃんの持ってるお酒って美味しいよねー」
「うふふ、わかってくださるのは嬉しいですね。あっちこっちのお店で飲み比べして吟味した品々です! いやぁ、セヴァリアに行けたおかげでさらに種類が増えましたよ」
「ホント酒が好きなんだな。まあ、お前の選ぶ酒は確かに美味いけどさ」
セヴァリアでも酒巡りをしてやがったのか。
クェレスに連れて行ってくれと言われる時もあるし、あっちこっちで酒集めしているみたいだな。
魔法で作った酒とかもあるようで、キラキラと発光している酒も机に置かれている。
こうやって飲ませてもらうと俺でも美味いと思うのばかりだから、選ぶセンスは抜群だ。
「それにしてもフリージアが酒を飲めるのは意外だったな」
「よく里で果実酒を飲んでたよ! お祝いの時に出る精霊樹の実のお酒が凄く美味しかったんだよ!」
「精霊樹の実のお酒!? 凄く興味をそそられるお酒ですね……飲んでみたいです!」
「私の里に来てくれたら長老に頼んでみるんだよ!」
「是非お願いします!」
「ははは、もしかしたらガチャの高級酒から出てきたりしてな」
「なっ!? その可能性もありましたか! もっとガチャを回しましょう大倉さん!」
ガシッと俺の肩を掴んでシスハが鼻息を荒くしている。
いつも以上にガチャに対しての熱意があるように見えるんだが。
俺としても精霊樹の実の酒とやらは凄く興味深いけどさ。
にしてもフリージアの住んでた里か。
「お前達って元の世界……GCの世界での話ってしたりするのか?」
「あー、たまにしたりしますね。といって、住んでた国が違っていたりするので、共通の話題は少なかったりしますけど。フリージアさんは人の町に行ったこともないそうですし」
「そうなんだよー。だからシスハちゃん達のお話を聞くの楽しいよ!」
「へー、なるほどなぁ」
確かに全員立場も違えば住んでる場所も違うだろうし、意外と話をするのも難しいのかもな。
ある意味この場で同じような立場で集まっているのは本来あり得ないことか。
ゲーム上は同じ軍団に入ってるとはいえ、キャラクターシナリオでURキャラが同じ場に揃う話はあんまりなかったし。
今みたいにシスハとフリージアが揃って酒を飲むなんて、GCじゃ絶対起こりえない。
「ノールちゃん達とも一緒に飲めたら楽しそうなのにー」
「ノールはめちゃくちゃ酒に弱いから絶対飲ませるなよ! お菓子に入ってた酒で酔ったからなあいつ!」
「それは弱いって言うのもわかりますけど、ノールさんだと大量に食べてそうなので、それも原因かもしれませんね」
あー、言われてみれば確かに大量に食べていたような……それでも酒に弱いのは間違いないだろう。
もし飲ませるならシスハ同席の上で、すぐに回復魔法で酔いを覚ませるようにしないとな。
そんな会話もしつつ、途中でつまみを用意したりして長々と酒盛りを続けた。
ガチャから出た高級酒である純米大吟醸をシスハは一気に呷っている。
「ぷはぁ! やっぱりこのガチャで出たお酒は格別ですね!」
「美味しいねぇー。果樹酒以外にも色々とお酒ってあるんだね」
「お前らの飲みっぷりが怖いぞ。よくそんなゴクゴクと飲めるな」
「これぐらい普通ですよぉー。ねぇ、フリージアさん」
「うん! 平八もどんどん飲もうよ!」
シスハは結構顔が赤くなって酔いが回ってきてるけど、フリージアは全く顔色も変わらずに平然としている。
こいつら2人でどんだけ酒飲むつもりだ……もう20本以上も瓶が空になってやがるぞ。
止まる様子もなくシスハはさらにグラスに酒を注ぐと、カラカラと中に入った氷を鳴らしながら頬杖を突いてうっとりとしている。
「はぁ、こうやって飲んでいますと、カロンさんからいただいたお酒が気になってきますねぇ」
「カロンちゃんのお酒私も気になる。どんなお酒なんだろうねぇ」
「龍神の酒なんて想像もできないな。ちゃんと保管してるのか?」
「当然じゃないですか! この家が吹き飛んでも壊れない結界を10重にして張ってありますよ! 盗人が入っても絶対に取られません!」
「いくらなんでもやり過ぎだろ! というか家を守ってくれよ!」
10重の結界とかどんだけ厳重な保管をしてやがんだよ! その結界でまず家を守れ!
でも、カロンちゃんがくれた酒は間違いなく貴重な物だからなぁ。大切に保管してるのはいいことか。
飲み会は深夜まで続き、とうとうシスハは顔を真っ赤にして机に倒れこんだ。
「ヒック、えへへ……もっと飲みまふよー」
「シスハちゃん、そろそろ止めた方がいいと思うよ。回復魔法も使えなくなっちゃう」
「マジか、先にシスハが潰れやがった……。フリージア、お前凄いな」
「そうかな? まだまだ私は飲めるけど、シスハちゃんが寝ちゃいそうだし止めよっか」
フリージアもシスハとほぼ同じ量を飲んでいるはずなのに、全く顔が赤くない。
酒豪だ、こいつ酒豪エルフだ! いや、むしろエルフだから酒に強いのか?
けど、何だか妙に落ち着いている気がする。
もしかして酒が入ると逆に大人しくなるタイプだったりしてな。
それはいいとして、このだらしない顔して寝そうな神官様をどうにかしないとな。
「おい酔っ払い。そんな訳で今日はお開きだ」
「あぁん! 取っちゃやだ! まだ飲みまふー!」
「ちょ!?」
うつろな目でさらに酒を注ごうとしていたシスハから酒を取り上げると、バッと俺に抱き着いてきた。
そのまま酒を奪いにくるかと思いきや、俺の胸に頬ずりをしている。
「おま、放せ!」
「えへへ……まだ私は飲んで……すー」
「……寝ちまった」
シスハはそのままズルズルと下がっていき、俺に抱き着いたまま寝息を立て始めた。
……前は俺が先に意識が飛びそうになってたけど、今回はシスハが寝ちまったか。
寝ているシスハを眺めていると、フリージアがジトーとした目で酒を飲みながらこっちを見ているのに気が付いた。
こいつがこんな目を向けてくるの初めてだぞ!
「平八ニヤけてる。やっぱり助平八なんだー」
「べべべ別にニヤけてねーし! ほら、片づけるぞ!」
「はーい。シスハちゃん、おやすみー」
シスハをベッドに寝かせて、酒瓶とコップを片付け彼女の部屋を後にする。
……ある意味フリージアの意外な一面を知る飲み会となったのだった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
前書きに書いたように、次回以降の更新もしばらく間が空いてしまいます。
書籍8巻でストックがなくなり、次巻に向けての作業にとても時間がかかっております。
ここからweb版との展開も大幅に変わりますので、書籍の作業が終わったらwebの方もじっくり書くつもりです。
進捗次第でwebも更新いたしますので、可能なら月に1回程度は更新はしたいと思っています。
お待たせして大変申し訳ございませんが、しばらくお待ちいただけると幸いです。
 




