ノール達との模擬戦
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます。
1月30日に書籍8巻が発売となりました。
クライマックスとして色々と改稿しております! カロンちゃんの挿絵もあったり!
特典などの詳細は後書きに記載いたしますので、興味のある方はお読みいただけると幸いです。
いつも通りの1日の始まり、居間で朝食をとっている時に俺はノールにある頼みごとをした。
「ノール、特訓でちょっと模擬戦の相手をしてくれないか?」
「えっ」
テーブルを囲んで食事をしていたノール達は、皆動きを止めて驚いた様子で俺を見てきた。
床でシャクシャクと葉物を食べていたモフットも、ブー!? と鳴き声を上げてこっちを見ている。
おい、いつものことだがどうしてここまでの反応をするんだ。
「急にどうしちゃったのでありますか?」
「いやぁ、最近俺も少しぐらい戦えるようになってきたし、どれぐらいいけるか自分でも知りたくてな」
普段から魔物相手に戦ってるとはいえ、基本狩りだから強い魔物と戦うことはあまりない。
そもそも1人で戦うこと自体がまずないから、俺自身の今の技量がどんなものかもわからない。
以前特訓してくれってノールに頼んだ時は、まず魔物の相手をして腕を上げろと問答無用で魔物の相手をさせられたが、今ならノールにも相手をしてもらえるはずだ。
それを口にした途端、シスハが不機嫌そうにしながらトントンと机を指で叩き始めた。
「私を完封したからって調子に乗ってますね。乗ってるんですよね。勘違いしてもらっては困りますがあの時本気出してません。私が本気を出せば勝てないにしてもああ簡単には負けませんよ。あの時は素手でしたし加減だってしてましたからね。それにいくら思考を読まれていたとしても対処する方法は――」
「はいはい負け惜しみ乙」
「シスハちゃん凄く早口なんだよ」
「よっぽど悔しかったみたいね」
めちゃくちゃ早口でまくし立てるとか、相当あれが悔しかったんだろうなぁ。
俺の煽りにぐぬぬと顔を赤くしていたが、エステル達の指摘に黙り込むと咳払いをして誤魔化している。
「……おっほん、別に悔しくはありません。ですが私に勝ったからってノールさんとやるのはどうかと思いますよ。自分で言うのもなんですけど、私とノールさんじゃ実力の差は桁違いですから。真っ向勝負じゃ私でも瞬殺ですよ」
「それでも私はシスハと戦いたくないでありますけどね……。絶対タダではやられないって、何かしてくる気がするのであります」
「うふふ、本気でやるんでしたら、その日の悪夢に出てくるぐらいに悪あがきをさせてもらいますよ」
ニヤけながら話すシスハにノールが身を引いている。
俺もセンチターブラで拘束して勝てはしたが、シスハもムキになってただけで本気だったか怪しいからなぁ。
ガチでやられてたらもっと泥沼の戦いになっていたかもしれない。
「けど、一度ぐらいお兄さんもノールと手合わせしてもいいかもね」
「むぅ、そうでありますねぇ。マリグナントみたいな魔人との戦いもあったでありますし、そろそろ対人経験も必要でありますよ」
「あっ、そうよ。ならノールだけじゃなくて私達ともやってみましょうか」
「エステル達とも?」
「ええ、私達は全員戦い方も違うし、軽く手合わせするだけでも経験になると思うわ。人とだけじゃなくて、魔法を使う相手と戦うことも少ないでしょ?」
「まあ、言われてみれば確かにそうだけどさ……」
「なら決定ね。実戦に近づけるよう武器とかも用意しましょうか」
あれー、ノールと模擬戦するだけだったはずなのに、エステル達とまで戦うことになってるぞー。
あれよあれよという間に話は大きくなっていき、最終的にエステル、フリージア、ルーナ、ノールと模擬戦をすることになった。
模擬戦の準備をして人のいない町の外の平原へ移動し、各々いつもと違う武器を手に慣らしている。
モフットも一緒に来ており、シスハに抱かれてプープー鳴きながら俺達を応援しているようだ。
ノール達のUR装備ありで模擬戦をされたら洒落にならないので、刃を落とした鉄製の武器を用意して、俺も普通のバールのようなもので戦うつもりだ。
実力測定も兼ねているので、武器と防具以外の装備は使用禁止だ。
寝ていたルーナも起こして連れてきたが、鉄製の槍をブンブンと振り回して今にも寝そうな顔をしている。
「やれやれ、模擬戦か。つまり平八をボコればいいのだな」
「おいおい、俺をボコる目的でやるのは勘弁してくれ!」
「冗談だ。私は攻撃しない」
模擬戦だからある程度加減はしてもらいたい!
ちなみに模擬戦ではあるが、今回はそれぞれ俺の勝利条件を決めることになっている。
ガチでやられたら瞬殺されてお話にならないから仕方がない。
「むー、やっぱり自分の弓じゃないと違和感あるんだよぉ」
「お前の弓でやられたら絶対に死ぬから止めてくれ」
フリージアが木製の弓と矢で慣らしているが不満そうだ。
こいつの本来の弓と矢で射られたら軽く死ねる。
元の世界の銃で撃たれるよりも遥かにヤバイ威力してそうだからな……。
「刃は落としたでありますが、これで斬り付けて本当に大丈夫なのでありますか?」
「ご心配なく。私の支援魔法があれば、この程度の武器なら当たっても攻撃を弾けます。魔法抵抗もありますので問題ありませんよ」
「防具も着用してるから、素のノールの攻撃力でもお兄さんにダメージはないはずよ」
試しにとシスハがノールに斬り付けるように言うと、確かに鉄の剣は彼女の体に触れず表面を滑るように弾かれた。
これならある程度実戦に近い武器で安全に戦える。
防具の方はいつも通りの物を着けているから、万が一があったとしても怪我はしないはずだ。
……しかしだよ、マジでこの4人を俺が相手をするの?
URユニットと1対1での戦い4連戦とか、もうこれボスラッシュみたいなもんだろ。
「自分から提案したことだが、流石にノール達相手に4連戦はきつくない?」
「そこもお任せください。私の回復魔法で疲労も吹き飛ばしてあげます。本当はリベンジしたかったですが、支援魔法に集中するので残念です」
「とか言いつつ実はまた負けるのが嫌なんだろ」
「はーい、さっさと始めますよー」
俺の言葉を無視してパンパンと手を叩いてシスハは始まりを告げた。
……こいつ、実はちょっと図星だったりしたのか。
今度は死に物狂いで襲ってきそうだから、俺も相手はしたくないのが本音だけど。
とりあえず最初のお相手はエステルさんとなった。
勝利条件は離れた場所からスタートして、エステルの魔法を対処しながら近づいて体に触れることだ。
「まずは私からね。お兄さん、頑張って私の体にタッチしてね」
「そう言われると凄くやましいことするみたいだから止めてくれ」
「ふふ、そういう意味でも私はいいのだけれど」
頬に手を添えながら顔を赤らめて言わないでくれ!
エステルも手加減として、グリモワールどころか杖すら持たずに戦ってくれるみたいだ。
いくら俺でもこの勝利条件にこれなら勝てるだろ。
「近づいてタッチするだけならすぐ終わりそうだな」
「魔導師と1対1だからって甘く考えない方がいいでありますよ。それに相手はエステルでありますからね」
……確かに、いくら手加減してもらってるとはいえ相手はあのエステルさんだ。
杖のない状態でも普通の魔導師と比べたら遥かに強いと思う。
お互いに距離を取って、大体20メートルぐらい離れた位置に着いた。
この距離なら全速力で5秒もせずに近づけるはず。
「始め、であります!」
ノールの合図と共に俺は駆け出した。
当然エステルも動き出し、彼女の周囲に次々と魔法陣が展開される。
まずはいつも通りの火の球が飛んできたが、これは慌てずにそのまま回避。
魔法はゴブリン迷宮のゴブリンメイジで相対したことあるけど、エステルのはその比じゃないぞ!
間髪を入れずに次々と飛んでくる火の球を横に移動して避け続ける。
たまに火が体を掠めるが、シスハの支援魔法のおかげでダメージはない。
ぐぅ、避けはできるが前に進めん! 弾幕が厚過ぎる!
それでも少しずつ前に進め――。
「どわぁぁぁぁぁぁ!?」
突然前から強い衝撃を受け後方に吹き飛ばされた。
そのまま地面に叩きつけられるかと思いきや、ぼふんと柔らかい感触が全身を包み優しく地面に落ちる。
エステルの方を見ると、ニコニコと笑ってこっちを見ていた。
どうやら助けてくれたらしい。
しかし今の攻撃は一体なんだ! 見えない何かに吹き飛ばされたぞ!
……いや、見えない魔法となれば、風魔法か。だけどどこから飛ばした?
魔法陣は全部ちゃんと見ていたけど、どれも火の球が出てくるやつで見落としていない。
前から攻撃を食らったってことは、エステルのいる方から飛んできたはずだ。
ということは……魔法陣なしの風魔法か?
今助けてもらったであろう魔法も魔法陣が展開されてないようだし、魔法陣なしでも魔法は使えるのか。
つまりこれ見よがしに展開している魔法陣は囮で、油断しているところを見えない風魔法で飛ばされた、と。
完全にやられたな。畜生め!
吹き飛ばされて振り出しに戻ったが、ちょいちょいとエステルが手招きをしていたので再度駆け出す。
また火球による攻撃が始まったので避けつつ、今度は魔法陣だけじゃなくてエステルの動きにも注目してみた。
いつもかけ声1つで魔法を使っているが、口が動いてないところを見ると完全に無詠唱のようだ。
次にどこか動かす部分がないか見ていると、片手の指がクイっと動いているのが見えた。
それを合図にするように魔法陣が現れて火の玉が出てくる。
……なるほど、指を動かすのを引き金にして魔法を使っているのか。
予備動作を確認したところで火の玉を避けつつ進むと、指が動いたのに魔法陣が出てこない瞬間が訪れた。
今だ! と全力で横に飛び込んで転がると、さっきまで俺がいた場所にボンッ、と不可視の攻撃がぶつかって地面が軽くへこんだ。
エステルの方を見ると目を見開いて軽く驚いていた。
そこからは同じように火の玉を避けつつ、不可視の風魔法を避けエステルに近づいていく。
近くなればなるほど風魔法の頻度も増えたが、来るタイミングがわかれば当たっても踏ん張って耐えられる。
息も絶え絶えになりながら走っていき、ようやく俺はエステルに辿り着いて肩に手を置いた。
「はぁ……はぁ……や、やったぞ!」
「あら、捕まっちゃった。お兄さん頑張ったじゃない」
エステルは頬に手を添えて恥ずかしそうにモジモジとしている。
……俺があれだけ必死になって進んだのに、エステルさん全く疲れた様子すらないんですけど。
そもそも範囲魔法どころか火と風の単発魔法しか使ってないし、手を抜かれてるってレベルじゃない。
一応勝利条件を達成したとはいえ、凄い敗北感がある。
「まずはエステルを突破したでありますね。途中から動きがよくなったでありますが、何か気が付いたのでありますか?」
「ああ、エステルが魔法を使う時に指を動かしてるのに気が付いてな。それで魔法陣の出ない魔法でも来るタイミングがある程度読めた」
「目先の魔法よりもちゃんと私の方を見ているなんて、お兄さんも成長したわね」
「……ははは、それほどでもないさ」
「大分手加減してもらってるんですから、調子に乗っちゃ駄目ですよ」
言われなくてもわかっとるわい!
しかし魔法っていうのはやはり恐ろしいな。
正直後衛の魔導師は1対1ならそこまで脅威じゃないと思ったが、あの距離すら詰めるのにここまで苦労するとは思わなかった。
エステルほど連射してくる魔導師はそう多くいないだろうけど。
しかしこんな単純な魔法ですら、組み合わさるとこうやって苦戦をさせられるのはいい教訓になったかもしれない。
まあ、エステルが本気だったら初手で俺やられてるけどね。
少し休憩を挟み、次の相手はフリージアだ。
「次は私だね! 絶対に勝つんだよ!」
「エステルに比べたらまだフリージアの方が簡単にいけそうな気がする」
「そうでありますかねぇ……」
エステルの弾幕に比べたらフリージアの矢なんて可愛いもんだ。
フリージアの出してきた勝利条件は、武器で攻撃を1撃当てること。
ここは平原だから木の上に登って逃げもできないし、最悪矢を無視して強行突破で攻撃すればいい。
ふふ、フリージアには悪いがすぐに終わらせてやろうじゃあないか!
またエステルと同じように距離を取り、ノールの合図によって模擬戦開始。
その直後、矢が飛んできて俺の握っていたバールのようなものに直撃し、手から弾かれてクルクルと宙を舞って地面に突き刺さる。
……へ?
「わーい! 私の勝ち!」
「いやいやいやいや! それはなしだろ!」
「えー、だって武器落としたじゃん!」
おいコラ! 武器を弾き飛ばすとか反則だろ!
こいつ勝利条件を武器での1撃にしたのはそういう魂胆か!
勝利だとはしゃぐフリージアを黙らせて、武器を拾って再度スタートした。
フリージアは不満そうに頬を膨らませ矢を射ってくる。
嫌がらせのようにヘッドショットされ、スコンと小気味のいい音と共にヘルムごと頭が仰け反る。
鍋の蓋で防ごうとすれば足元を狙われて転倒させられ、肩とかを射られバランスを崩したところで弾き飛ばされたりもした。
おかげで走る速度も落ちていき、逆にフリージアは後方に走りずっと射ち逃げだ。
少しでも距離が詰まればまたバールのようなものを弾き飛ばされ、取りに戻っている間に距離を離される。
武器を後ろに隠して弾かれないようにして近づいても、攻撃しようと前に出した瞬間を狙われた弾き飛ばされた。
ぶち切れて投擲すれば空中で迎撃されて、カコンと俺の頭にバールのようなものが飛んでくる。
このポンコツエルフ! 絶対に許さねぇ!
予備動作はエステルよりも遥かにわかりやすいが、矢の速度が尋常じゃなく速くて回避できない。
どんなに派手な動きで転がり回っても、未来予知のごとく矢が先回りで飛んできて被弾する。百発百中だ。
そんな攻防をしばらく繰り返し、俺はその場で跪いて降参した。
「無理、無理です! ギブアップ!」
「わーい! 今度こそ私の勝ち!」
「やはり大倉さんにはまだフリージアさんの相手は早過ぎましたか」
こいつ、なんて嫌らしい戦い方してきやがるんだ!
無理やり強行しようにも頭を狙ってきてグワングワンするし、攻撃しようとするタイミングで武器を弾き飛ばされる。
こんな状態で武器での1撃とかムリゲー過ぎるわ!
だけどこれ、模擬戦じゃなかったら頭を射抜かれるわ、武器は弾き飛ばされるわで勝負になってないわ。
要するに急所への1撃の精度が高過ぎるから、それを考えて動かないと勝てないってところだな。
勝ったからかお祭り騒ぎのように喜ぶフリージアを見ると凄く腹立たしい。
……俺を見てシスハも同じことを感じてたかもしれないな。もうあのネタでからかうのは止そう。
お次の相手はルーナだ。
「お手柔らかに頼むぞ」
「うむ、任せろ。私は動かないし攻撃もしない。1歩でも動かせるか1発攻撃を当てたら勝ちでいい」
「おいおい、いくら俺でもそこまで弱くはないぞ」
俺の言葉にフッと軽く笑って、ルーナはその場から動く気がない。
マジで動かずにやるつもりなのか? 俺が弱いのは認めるけど、1歩ぐらいは動かせるぞ。
ノールの開始の合図と共に、ルーナ目がけてバールのようなものを振り下ろす。
すると彼女の着ていたマントの裾が動いて俺の攻撃を防いだ。
な、なんだと!? それを使ってきやがるのか!
俺はセンチターブラ禁止だけど、ルーナの血染めの黒衣は防具だからありだった!
驚きながらも何回も振り下ろして攻撃をするが、全てマントが動いて防がれる。
鉄も貫けるとか言ってたけど、マジで鉄以上に硬いぞ!
フワフワと風でなびいているのにこの硬さかよ!
「ふっ! くっ! この!」
何度攻撃しても防がれ、横や後ろに回り込んでも正確にマントで攻撃を弾かれる。
くそ! 後ろに目でもあるのかよ!
攻撃を当てるのは無理だと悟って、動かそうと全身でタックルしようと突っ込んだ。
が、その瞬間腕にマントが巻き付いてきた。
「へっ――ぐへ!?」
そのまま宙に放り投げられて地面に叩きつけられる。
うぐぅ……タックルまで防がれるのかよ!
懲りずに何度か攻撃しつつ、色んな方向からタックルを仕掛けたが、ことごとく防がれて投げ飛ばされ俺はズタボロにされた。
「はぁ、はぁ……ま、参りました……」
「びくとりーだ」
「流石ルーナさんです!」
「流石ルーナちゃんだね!」
無表情でルーナはピースしている。
本当に1歩も動かずに、自分から攻撃すらしてこなかった。
というか用意した槍すら使ってもらえない。
近接戦闘メインのルーナ相手とはいえ、ここまで実力差がかけ離れていたのは地味にショックなんだが……。
チラッっと次の相手のノールを見ると、俺の視線に気が付いたのか腕を組んで悩ましそうにしている。
「最後は私でありますか」
「ルーナに手も足も出なかった時点で、ノールの相手とか確実に無理だと思うんだが」
「うーん、そうでありますねぇ。それじゃあサイコホーンや他の装備もありの全力で試してみるでありますか?」
「それがいいかもしれませんね。ぐふふ、思考が読めても勝てない相手というのを思い知るべきです」
おお! サイコホーンとかを解禁したならワンチャンあるかもしれない!
シスハが嫌らしい笑みを浮かべて俺を煽っているが、サイコホーンとかを使えばいくらノール相手でも食らいつけるはずだ!
さっそくサイコホーン、センチターブラ、ディメンションブレスレットを装備して最後の模擬戦へと挑む。
ノールへの勝利条件は1撃有効打を取ることだ。
距離を取らずにお互いすぐ届く位置について、シスハの合図で勝負が始まった。
サイコホーンを起動させ、同時にセンチターブラを2つ展開する。
おお、この全能感、今の俺なら全てを凌駕できるぞ!
まずは様子見とセンチターブラを飛ばしてけしかけたが、それと同時にノールが突っ込んでくるのを感じ取った。
慌ててセンチターブラで進路を妨害したが、剣と盾でセンチターブラを弾かれて一気に肉薄される。
突進してくるのがわかったから逃げようとすると、ノールは一気に加速してきて盾で思いっきり弾き飛ばされた。
ゴロゴロ転がりながらも弾かれたセンチターブラを引き戻して死角からノールにぶつけようとするが、それも綺麗に剣で弾き飛ばされる。
その間に俺は立ち上がってノールに迫り、バールのようなもので攻撃していく。
思考を読み取りながらあの手この手と攻撃の仕方を変えていくが、瞬時にノールは思考が切り替わって防がれてしまう。
逆にノールの攻撃してくる思考を感じ取って防ぐと、一気に詰め寄られて盾で弾き飛ばされる。
来るのがわかって押し返そうにも、完全に力負けしてしまう。
ぐぅ、攻撃が来るのがわかって反応もしているのに、それ以上の速さで攻撃されるから避けられねぇ!
それになんでかわからないけど、思考してない攻撃までありやがる。
もしかしてノールもこっちの思考を読んでるんじゃあないか?
「お前もまさかエスパーか」
「エスパーというのはよくわからないでありますが……大倉殿は動きが単純過ぎるのでありますよ」
このままだとボコられる一方だと、センチターブラを5個展開し、俺自身も加わり攻勢に出た。
液体状にして拘束しようと試みたが、液体状にした瞬間盾を振って吹き飛ばされ、他の4つのセンチターブラも全て避けられて防がれる。
思考を読んでセンチターブラを回避させているはずなのに、ノールの思考にない攻撃で次々と弾かれていく。
まさか無意識で攻撃しているのか!?
一気にサイコホーンを酷使したせいで頭が痛んでくるが我慢だ!
センチターブラの猛攻に俺も紛れ込み、ノール目掛けてバールのようなものを振り下ろすが盾で防がれた。
が、思考でそれを読んでいた俺は盾に当たる瞬間ディメンションブレスレットを使い、手から先をノールの背後に飛ばす。
よし、これで決まりだ! と思った瞬間、俺の飛ばした手からバールのようなものがノールの剣により弾き飛ばされ、そのまま盾で俺は押し倒されてた。
起きようとするが頭に剣を向けられる、ノールが終了を告げた。
「――ここまで、でありますね。もう限界でありましょ?」
「うごご……降参だ」
もうマジ無理……一気にサイコホーン使ったから頭がいてぇ。
そのまま大の字に寝転んで、ヘルムを脱ぎ捨ててシスハの治療を受けた。
「うはー、シスハの言った通り自惚れが過ぎてたな。足元にも及んでねーや」
「まあでも、初めての手合わせとしては上出来なんじゃないですかね。私とだったらいい勝負できると思いますよ」
「サイコホーンありでだけどな。てか思考読んでも避けられないわ、背後から手だけ飛ばして攻撃しても防ぐわ、ノールはどうなってやがるんだよ」
「大倉殿の動きを見てればそれなりにわかるのでありますよ。ディメンションブレスレットを使う時、動きが不自然でありましたからね。手の内を知ってるからちょっとズルかったでありますな」
サイコホーンで思考は読めたけど、俺の反応速度以上の速さで攻められたら対処できないんだな。
反応できても、ノールの突っ込みながらのシールドバッシュのような攻撃はどうにもならない。
それと思考を読み切れないのは、そこまで強く攻撃するって思考せずに動いているのかもしれない。
呼吸するのに息を吸うぞ! と思わないように、無意識に近い攻撃にはサイコホーンでも読み切れないんだ。
シスハが言ってたのはこういうことなのだろうか……。
くぅ、今回はエステル以外にはまるで歯が立たなかったが、いつか必ず対等に戦えるようになってやるぞ!
いつもお読みくださり誠にありがとうございます!
前書きにも書きましたが、こちらにも書かせていただきます!
書籍8巻が1月30日に発売いたしました。発売中でございます。
ノールの中の人が出ていたり、カロンちゃんも登場したり、色々と設定も明かされております。
晴野しゅー先生の可愛いイラストも巻末にありますので、是非ご確認いただけると嬉しいです!
今回もアンケート特典として【Girls Corps フリージア編】があります。
精霊樹へ行くためにエルフの里へ行き、そこで番人をしているフリージアと出会って……と、ポンコツじゃないフリージアの姿……でもやっぱりポンコツです。
巻末にあるURLからアンケートにお答えいただき読んでくださると嬉しいです。
大体二万文字程度となっております。
コミック版の方もついに素敵な神官様が登場しましたので、是非お読みいただけると!
それでは長々と書かせていただきましたが、この辺りで宣伝を終えたいと思います。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!




