表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/410

偵察カメラ

 セヴァリアの復興を手伝っていたとある日の出来事。

 今日も手伝いが終わって帰宅した後、俺は自室にてある実験を行っていた。

 それはこの前の天井ガチャで出た偵察カメラだ。

 小型カメラを飛ばしスマホで操作する物なのだが、いかんせん画面が小さくて満足に操作ができなかった。

 操作できたとしても画面が非常に見辛くて仕方がない。

 そこで何かいい物はないかと考えていたのだが……ありました。

 

 それは同じく天井ガチャで排出された液晶モニターだ。

 以前は使い道がなく1台目は分解してハウス・エクステンションのポイントにしてしまったのだが、ついに活躍する時がきた。

 試しに部屋に置いてスマホと連動させてみたのだが、なんと小型カメラの映像をモニターに送れたのだ。

 なのでスマホの画面は完全に操作用にでき、モニターを見ながら飛ばすことが可能となった。

 これにより飛躍的に操作性がアップして、今はある程度自由に動かせる。

 家の中からしか使えない欠点はあるけど、これなら十分偵察用として使えるな。


 とりあえず軽くその辺に飛ばして慣らそうと思ったのだが……ドンと勢いよく扉が開いて侵入者が。

 いつも頭を悩ませてくれるポンコツエルフ様だ。


「平八! 遊ぼう!」


「おいこら、勝手に入ってくるんじゃあない!」


「えー、だって暇なんだもーん」


 暇だからって俺の部屋に来ないでくれませんかねぇ。

 というかノックぐらいしろや! プライベート空間なんだぞ!

 そんな俺の言葉をまるで聞く様子もなく、フリージアは興味津々といった様子で液晶モニターを見ていた。


「何これ! 前はなかったよね!」


「ああ、この前の天井ガチャで出た液晶テレビだ。これを偵察カメラと合わせて使えないか試してたんだ」


 そう言ってスマホを操作して偵察カメラを動かし、フリージアをモニターに映してやった。

 偵察カメラは小指の指先よりちょっと小さいサイズで、飛ぶ速度は相当速い。

 反応速度もいいから急旋回や急上昇などもでき、上手く操作できるなら壊されることはまずないだろう。

 試してみたがまるでハエのような感じだったぞ。


「凄い! 私が映ってるんだよ!」


「これなら専用のコントローラーとかなくても十分操作できそうだな」


「えへへ、動かすだけでも面白そう! これで遊ばせて!」


「あー、うん。別に構わないけど」


 これで操作させなかったらわーわーと床を転がって愚図りそうだしな……。

 ラジコンを操作させるだけで大人しくしてくれるならまだマシだろう。

 そんな訳でスマホをフリージアに手渡すと、彼女は目を輝かせて偵察カメラを操作し始めた。

 ある程度操作を教えて練習させたのだが、あっという間に覚えて上下左右自由自在にスマホで偵察カメラを操っている。

 おいおい、こんなあっさり使いこなしてやがるぞ。

 やっぱりURユニットだけあって、ポンコツだとしても基本スペックが高い。

 俺なんて四苦八苦しながら操作できないか試していたのに……泣けるぜ。

 

 もう部屋の中だけじゃ満足できないのか、部屋の扉を開けて外に飛ばすことにした。

 廊下を出て少し開いた居間への扉を抜けていき、台所まで飛ばしている。

 そこにはルンルンと料理中のノールがいた。

 ポニーテールで髪を結わき、青いエプロン姿と可愛らしい。

 ……相変わらずアイマスク付きだけど。


「あっ、ノールちゃんだ! おーい!」


「こっちから声を掛けても聞こえないぞ」


「そうなんだ。ノールちゃんが気がつかないなんて、このかめら? っていうの凄いね!」


 この偵察カメラ無音で飛んでるから、知らない間にこうやって侵入してきたら気づくのはまず無理だな。

 その証拠に料理に夢中とはいえノールですら気が付いていない。

 これなら情報収集にはうってつけだな。

 ちなみにこのカメラ、音声まで拾ってくれる優れ物だ。


『むふふー、美味しいのでありますよぉー』


「あいつ料理中もバクバク摘み食いしてやがるのか……」


「今日のご飯も美味しそうだね」


 ノールは作りかけの料理をヒョイヒョイと口に放り込んで幸せそうにしている。

 味見のつもりなんだろうけど、すげー量食べてるぞあいつ……あれで完成した後も食ってるんだから凄いよな。

 特に問題はないから止めるつもりもないけどさ。

 いつも料理を任せてすまないと思っているが、本人としては役得なのかもしれない。

 そんなノールの観察を終え、今度は居間へと戻ってきた。

 するとそこには、ぐったりと椅子に腰掛けているルーナの姿。


「次はルーナちゃん! 眠たそうにしてるんだよ」


「常に眠そうだけどな。至高の寝台にしてから本当に起こさないと起きてくれないし」


「あのベッド凄いよね。私も寝かせてもらったけど気持ちよかった!」


 既にルーナの部屋には天井ガチャで出た至高の寝台を設置してある。

 その大きさなんと縦横4メートルほどの大きさがあった。

 なのでルーナの部屋を少し拡張して設置したのだが、それでも部屋の半分以上をベッドが占めている。

 本人はそれで満足なのか凄く嬉しそうにして、毎日幸せそうに眠っていた。

 シスハやノール達も体験済みで、ルーナと一緒に寝ているそうだ。

 ……俺もいつか使わせてもらいたいが、言い出す勇気はない。


 と、ちょっと違うことを考えている間にフリージアが動いていた。

 座って眠たそうにしているルーナの周りに、偵察カメラをヒョイヒョイと飛ばしている。

 流石にそこまでやるとバレるだろと思っていると、案の定ルーナが反応を見せた。


『むっ?』


 後ろを振り向いていたが既に偵察カメラは移動して、さらにルーナの背後に回り込んでいた。

 それにも反応してまた後ろを振り返ったが、またフリージアがカメラを動かして回り込む。

 そんなやり取りを続けるとルーナもイラついてきたのか立ち上がり、凄い勢いでグルグルと回りだした。

 が、それでも偵察カメラを捕らえられず、凄く苛々しているご様子。


『むっ、くっ……なんだ。うざい』


「おい! 何してやがる! 壊されるぞ!」


「あはは! ルーナちゃんと追いかけっこ!」


 遊んでいるにしても悪質過ぎる気が……というか試し運転でぶっ壊されたくないから、再生するとはいえそろそろ止めていただきたい。

 そう思っているとエステルが居間にやってきた。

 1人でグルグルと回っているルーナを見て首を傾げている。


『ルーナ、何しているの?』


『何かいる。目障りだ』


『あら、虫かしら。刺されたりしたら嫌ね。魔法で退治しちゃいましょう』


『うむ、頼む』


「やばいやばい! 居間から早く逃げろ!」


「了解しましたなんだよ!」


 バチバチと指先から電気を放出し始めたエステルを見て、急ぎ居間から別の部屋に逃げ込んだ。


「ふぅ、危なかった。エステルの魔法にかかったら、いくら偵察カメラでも速攻ぶっ壊されるぞ」


「あっちでビリビリ音がしてるよ……しばらく出ない方がよさそうだね」


 エステルさんの手に掛かったら、視認出来ないとしてもあっさり壊されそうだからな。

 落ち着くまでしばらく待機しておこう。


「それよりも逃げ込んだ先はシスハの部屋か」


「うん。……あっ、シスハちゃんお着替え中だったみたい」


「えっ!?」


 き、着替え中だと!? おいおい、これじゃまるで覗き見しているみたいに……。

 ちょっと罪悪感を覚えながらもチラッとモニターを見ると、鏡の前でワンピースを着て服を確認しているシスハが映っていた。

 ……なんだ、着替え中じゃなくて服を見ているだけじゃないか。


『うーん、これも悪くないけど、やっぱり王都の服の方がいいかな』


「シスハちゃん新しい服を買ったのかな? あの服を着てるの見たことないよ」


「多分な。王都の服と比べてるからセヴァリアで買ったんじゃないか?」


「そっか。シスハちゃん綺麗だからあの服も凄く似合ってるんだよー」


 うーん、まあ、確かに綺麗なのは同意する。

 というかあいつが服を気にしているのは意外だ。

 自分の部屋にこもって酒でも飲んでると思ってたぞ。

 女の子らしいところもちゃんとあったんだな。

 そんなこと考えていると、シスハの気になる呟きが聞こえてきた。


『大倉さんの好み的には、やはりこっちの露出が多い方が……って何考えてるんだ私』


「そうなの平八?」


「べべべ、別に肌が見えてる方がいいなんて思ってないぞ! ホントだぞ!」


「慌てて怪しいー。助平八なんだよー」


 何が助平八だ! こいつまで俺をからかうようになりやがって……これもシスハの影響に違いない!

 頬でもこねくり回してやろうかと思ったが、そんなことしていられない急展開が起きた。


『うん?』


 シスハの声がしたのでモニターを見ると、すぐ近くにシスハが来てこっちを見ている。

 そして逃げ出す暇もなく偵察カメラは摘まれて確保された。


「あっ」


 ジーっとシスハは摘んだ偵察カメラを見ていて、モニター越しだが目に光が宿っていないのがわかる。

 や、やばい……偵察カメラで見ていたのがバレたら殺される!?

 で、でも、シスハは天井ガチャで確認した時しか偵察カメラを見ていない!

 もしかしたらこれが偵察カメラだってわからない可能性も――。


『…………そこにいるの、誰ですか?』


「ひぃ!?」


「あばばばば……」


『悪用するなって言いましたよね、大倉さん。今そっち行きますから――』


 プツン、と音がして偵察カメラの映像が途切れた。

 バレてるバレてる! 来ないでくださいお願いします!


「どうするんだよ! やばいぞ! 殺られるぞ!」


「あわわわわ……マジだ、マジで怒ってるよシスハちゃん!」


「俺は逃げるぞ! 後は任せたフリージア! スマホを渡すんだ!」


「そんな酷いよ! 私も一緒に逃げる!」


「おい馬鹿放せ!」


 ビーコンで家から急いで逃げようとしたが、フリージアがスマホを放してくれない。

 涙目で震えるフリージアと醜く争っていると、バンッと勢いよく扉が開いた。

 背後に青いオーラを立ち上らせたシスハがバキバキと拳を鳴らし、青筋を立てて凄い形相でこっちを見ている。

 あまりの恐怖にその場で腰が抜けて尻餅を突き、フリージアも俺に抱きつきながらブルブルと震えていた。


「覚悟はよろしいですか?」


「ごめんなさい! ごめんなさい! 勝手に部屋を覗いてごめんなさい!」


「すみませんでしたぁぁぁぁ! お許しください! 命、命だけはどうか!」


 フリージアが土下座で床に頭を擦り付けて、泣きながら何度も謝っている。

 すぐに俺も同じように土下座して頭を床に擦り付けた。


「問答無用……って、あれ? フリージアさんもいたんですか」


 殺気立っていたシスハだったが、フリージアの姿を見てポカンとした顔をしている。

 するとドタドタと足音がして、エステルとルーナも部屋にやってきた。


「シスハ、どうした?」


「凄い剣幕だったけれど、何かあったのかしら?」


「えーっと、それがですね……」


 ポリポリと頬をかきながら、シスハはエステル達に経緯を説明した。

 それに乗じて俺達も必死の言い訳をして、着替えを覗いた訳じゃないと訴えかける。

 ルーナ達の証言も合わさったおかげで、何とか弁解はできたようだ。


「なるほど、確かに外からビリビリ聞こえてましたから、あのタイミングでしたら着替えを覗いてはいないみたいですね」


「はい……申し訳ございませんでした」


「ございませんでしたなんだよ……」


「全く、仕方のない人達ですね。とりあえず今回は未遂ということにしてあげましょう。ですが、本当にやったらぶち転がしますからね、大倉さん」


「はい、肝に銘じておきます……」


「お兄さん、私のが見たかったらいつでも言ってくれていいからね」


「あっ……そこはノーコメントで……」


 ウィンクしてエステルがチラッとスカートの裾を掴んでいる。

 う、うーむ、シスハ達の前で返事に困るようなこと言われてもちょっと……。

 とりあえず許されて助かった。覗きなんてしないと俺は心に誓ったぞ、絶対にな! 命が惜しい!

 これで一件落着と、さっきまで震えていたフリージアも笑みを浮かべていた。


「よかったね平八、許してもらえたんだよ」


「許さない。ポンコツ、私にちょっかい出したのは貴様か」


「あっ……ごめん! ごめんルーナちゃ、んんんんー!?」


 ルーナに体を押さえ付けられ、カプリと首を噛みつかれてフリージアはその場に崩れ落ちた。

 今回はちょっとやり過ぎたからな……反省としてこのぐらいは仕方がない。

 止めなかった俺にも非があるから反省はしておかないと……。

 

「皆ー、何をしているのでありますかー。ご飯ができたのでありますよー」


 ノールの呼ぶ声によりこの騒動は終結した。

12月26日にコミック版3巻が発売いたします。

表紙の可愛らしいノール達の後ろにいる平八の姿を是非ご確認いただけると……!


ちょっと早めのクリスマスガチャをしたら天井にまでいってしまいましたorz

天井があって本当によかったです! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「今日のシスハのあれ、なんだったのだろうか?」 「どうしたの?お兄さん」 「エッ、エステル!!何でもないぞ!今日のノールの作ってくれるご飯は何か考えてただけだぞ?」 「ふーん、まぁい…
[一言] シスハさんも基本的に平八のヘタレ力は信用してると思うので、 一瞬評価がガン落ちして、フリージアで復帰した感じでしょうね そう言う意味で裏切り者が嫌われるのと同じ感じかなと言うのもありますね …
[一言] シスハ、もといヒーラーを怒らせてはいけない。 何故ならパーティーの生殺与奪はヒーラーが握っていると言っても過言ではないからだ((((;゜Д゜)))))))
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ