最強のグリモワール
前回の更新から間が空いてしまい申し訳ございません。
多少落ち着いてきたので今月は大丈夫……なはずです。
ノール達との攻防の末取り押さえられ、ガチャを引くのを諦めさせられた。
くっ、せっかくのUR確定だというのに……まあ、これ以上深追いしたらダメージが大きそうだし、この辺りで撤退するのが賢いか。俺はちゃんと引き際を弁えているからな。
「はぁ……それじゃあ確認といくか」
「はぁ、ようやく諦めてくれたでありますか……。止める身にもなってほしいのでありますよ」
「今回はSSRもURもなかなかの収穫だったわね。新しいグリモワールが楽しみだわ」
「ニーベルングの指輪のURもあるのでありますよ。次はどんな効果になるのでありますかねぇ」
「私の黒衣も強化だ。あの能力が戻れば……」
ユニットは出なかったけど、今回は目ぼしい装備やアイテムは結構出ていた。
グリモワールやニーベルングのURは俺も気になってたし、どんな能力なのか楽しみだぞ。
まずはSRから見ていくとしよう。
――――――
●高級料理(残り10回)
ランダムで1食分の料理を出すことができる。出る品々は至高の味わい。
●高級菓子(残り10回)
ランダムで1回分のお菓子を出すことができる。出る品々は究極の味わい。
――――――
「大倉殿ぉぉ! 大倉殿ぉぉぉぉ! これ、これを!」
「はいはい、そう興奮するなって。菓子の方は食後な」
「了解であります! SRの料理なんて一体何が出てくるのでありましょうか……じゅるり」
「本当にノールは食いしん坊ね」
ノールがぶんぶんと両腕を振って興奮している。
Rの食料でさえ美味いのに、SRの高級料理だと一体何が出てくるのだろうか。
きっと今まで見たこともない豪華絢爛な料理に違いない。
そう期待して高級料理を選択してみると、出てきたのはジュージュと音を立てるステーキだった。
既に一口サイズずつに切られている。大きさは普通……いや、ちょっと小さ目かも。
えっ、これだけなの? 見た目は美味そうではあるが……。
「高級っていうからもっと凄いのかと思ったら、案外普通のステーキだな」
「ノールちゃん! 早く食べてみて!」
「むふふ、悪いでありますねぇ。それじゃあいただきます、でありますよ!」
ノールが意気揚々とフォークを手に取り、一切れの肉を頬張る。
モゴモゴと咀嚼しいつものように美味いと騒ぎ出すかと思いきや、ノールの頬に一筋に涙が流れた。
「ノールちゃんどうしたの!?」
「泣いている。何が起きた」
困惑する俺達を前に、ゴクリと肉を飲み込んだノールは泣きながら叫びだした。
「しゅ、しゅごしゅぎりゅ……。こ、こんにゃのおいししゅぎりゅよぉぉ!」
「そんなに美味いのか? ちょっとオーバー過ぎじゃ……」
「ここまで美味しいそうにされると気になるわね」
「あまりの美味しさに口調が消えていますよ……」
あのノールが一口一口噛締めるように泣きながら食べてやがる。
まさか高級って素材がめちゃくちゃ凄いやつなのか?
一体これは何の肉なんだ……俺達も後で食べてみるとしよう。
よし、次はSRの魔導砲だ。
今は宿にいるから大きそうな物は具現化しないで能力だけ確認しよう。
――――――
●魔導砲
攻撃力+1000
行動速度-50%
移動速度-50%
砲撃手以外命中率低下
――――――
「SRにしては攻撃力が高いですけど、デメリットが多いですね。こんなのまともに使えませんよ」
「魔導砲は砲撃手が使う装備だからな。一応どのユニットにも装備はできたけど、デメリットが多過ぎて砲撃手の専用装備みたいなもんだ」
「SRでこれってことは、UR装備を持ってる砲撃手は凄そうね」
「あぁ……URの砲撃手ユニットのエルスはやばかったなぁ。超々遠距離からの高火力範囲攻撃は脅威だったぞ」
「聞くだけで凄そう! エルスちゃんにも会ってみたいね!」
「ふむ、そいつがいたら狩りは楽そうだ」
魔導砲は名前の通り魔法を使ったデカイ大砲。
これを使う砲撃手は移動速度が遅いから、基本的に後方から砲撃で敵を狙うのが役割だ。
高威力だけどその分攻撃速度が遅くて、射程から外れると移動も一苦労といったなかなか扱い辛いユニットだったな。
だけどURユニットであるエルス・シューデは、めちゃくちゃ射程が長くて火力が凄まじかった。
もし召喚できたらかなりの戦力になってくれそうだが、砲撃させたら狩場がめちゃくちゃになりそうで怖いぞ。
弾がなくなるまで撃ちまくれ、弾がなくなっても撃ちまくれ! とか意味不明なことを言うキャラだったからなぁ。
――――――
●偵察カメラ
スマートフォンと連動して操作できる飛行式の小型カメラ。破壊されても一定時間で再補充される。他のアプリとも連動が可能。悪用、駄目、絶対。
――――――
具現化してみると、窪みのある台座に黒くて丸い物体がはまった物が出てきた。
この指先程度の丸い物体がカメラなのか?
同時にスマホにも通知が届き【偵察カメラと連動しますか?】と表示されたのでYesを選択。
すると窪みにはまっていた黒い物体が浮かびだして、スマホの画面が切り替わり俺達が映っている。
スティックタイプの操作ボタンと上下のボタンも表示されていて、それを使って自由にカメラを動かせるようだ。
「おぉー、こりゃ便利だぞ。これなら安全な場所から相手を確認できて先手が取れる」
「魔人との戦いの時にあったら便利だったかもしれないわね」
「ですが悪用ってところがちょっと気になりますねぇ。大倉さん、何がとは言いませんけどしちゃいけませんからね」
「やらねーよ!」
誠実が形となったようなこの平八が悪用などするものか! ……うん、絶対にするつもりはないぞ。
それよりも、これをスマホで操作するのは地味に難しいな。
画面が小さくて細かい操作は相当慣れないと無理だ。
せめてタブレットサイズだったら操作も簡単なんだが……別途でコントローラーが欲しい。
センチターブラみたいに壊されても補充されるみたいだし練習しておこう。
――――――
●至高の寝台
天上の寝心地を味わえるベッド。疲労回復精神安定、入ってすぐに眠れる安眠機能付。
――――――
説明文を見た途端、ルーナが目をキラキラと輝かせながら叫んだ。
「平八!」
「はいはい、これはルーナの物な」
「ありがとう!」
「こんなに活き活きとしたルーナを見れるのは珍しいわね」
「うふふ、とても可愛らしいですねぇ。嬉しそうなお姿を見ると私も嬉しいです」
「よかったねルーナちゃん! たまにでいいから私も一緒に寝かせてほしいんだよ!」
至高の寝台を貰えたルーナはとてもいい笑顔をしている。
寝ることに関しては本当に妥協しないな。こんなに生気に溢れた顔を見るのは久しぶりだぞ。
SSRだけあって効果が凄そうだ。疲れた時は俺も使わせてほしい。
帰宅したらさっそくルーナの部屋に設置してやらないとな。
――――――
●ミラーシールド
防御力+300
魔法抵抗+70
一定確率で魔法攻撃を反射する。
――――――
表面が鏡のように反射するタワーシールドだ。
「鏡みたいな盾でありますね。すぐ割れちゃいそうなのでありますよ」
「能力的にも魔法を防ぐのに特化しているみたいだからな。普段はあまり使えそうにないか」
「魔法抵抗が高い上に反射まであるのは凄いですね。エステルさん、試しにやってみましょう」
「あら、それじゃあシスハが持って試してみる? 私も新しいグリモワールを試したいから、全力全開で撃ってみようかしら」
「遠慮いたします……一瞬で消し炭になりそうです」
「ふふ、冗談。反射なんてされたら危ないから私も嫌よ」
魔法特化の盾だけど、エステルの魔法で攻撃されたら防ぎ切れずに蒸発しそうだな。
この盾があったとしても絶対に攻撃を受けたくないぞ。
――――――
●朧の指輪
装備者を認識し辛くし、気配と足音を消す。効果の発動は任意で制御可能。
――――――
くすんだ黄色の宝石が付いた指輪だ。指輪でこの能力はかなり使えるぞ。
「これはなかなか有用そうだな。不意打ちするのにもってこいじゃないか!」
「またそういう発想を……でも、インビジブルマントと合わせて使ったら絶対見つからなくなりそうでありますね」
「これを使えばルーナちゃんに悪戯できそう!」
「……狩るぞ?」
「ご、ごめんなさい……」
牙をむき出しにしたルーナに睨まれてフリージアは素直に頭を下げた。
インビジブルマントだけならルーナも気がつくだろうけど、この指輪まで使われたらさすがに察知できそうにないな。
狙撃が得意なフリージアに持たせたいが、普段は悪戯とかに使いそうだから渡すのは止めておこう。
――――――
●マジックブースター
MPを消費して移動速度をアップさせる。目指せスピードスター。
――――――
具現化させると白い筒状の物体で、後ろ側は噴射口のようになっている。まるでスラスターみたいだな。
「名前的に魔法の攻撃力を上げるのかと思っていたけど違うのね。残念だわ」
「面白そうなアイテムだね! 使ってみたい!」
「室内だとやばそうだから今度外で試すか」
――――――
●ヘイトアブソーバ
装備者に対する敵意を大幅に増加させる。
防御力+400
――――――
出てきたのは中指を立てた手が描かれたシールだ。
もう見た目だけで喧嘩売ってるんだが……。
「盾役の為の装備か。これで魔物のヘイト管理はしやすくなりそうだが……俺だけ狙われるのはちょっと怖いな」
「何情けないこと仰ってるんですか。盾役をするならビシッとしてください。回復魔法はちゃんといたしますからね」
「あー、頼む。シスハの回復なしに盾役とか無理だ」
俺が安心して盾役ができるのもシスハの回復あってのもの。
いつも対抗心剥き出しで色々と言い合う仲ではあるが、お世話になっているから頭が上がらないな。
まあ、お互い本心から言い合ってる訳じゃなくておふざけみたいなもんだけどさ。
――――――
●解放石
ユニットと専用装備を一時的に☆5まで強化できる。使用後、このアイテムは消滅する。
――――――
「うわー、このアイテム凄そう! 私達もカロンちゃんみたくなれるんだね!」
「これも召喚石のように一時的なのね。ピンチの時に私達の誰かを強化するってところかしら?」
「1度でいいから味わってみたいですねぇ。私は使われる機会はなさそうなので残念です」
一時的とはいえ、ノール達を☆5に強化できるのは心強いな。
緊急時に使うことになりそうだけど、そうなると対象はノールかエステルか?
シスハは自分で言ってる通り回復役だから、申し訳ないけど候補には上がりそうにないな。
さて、ここからはお楽しみのURタイムだ!
――――――
●立体地図アプリ
ありとあらゆる場所が立体状に表示される地図。人物などの対象の動きも一定範囲内ならリアルタイムで表示される。
――――――
試しに起動してみると今俺達がいる宿が表示された。
今までの地図アプリだと上から見た平面に青い点が映っているだけだったが、このアプリだと立体状に建物内部が表示されている。
各部屋の中まで再現されて、内部にいる人が今どこで何をしているか細かい動作までわかるぐらいだ。
さすがにどんな人なのかまではわからないけど、全身が青くなっていて敵意の有無は相変わらずわかる。
操作すると360°自由自在に動かせてズームも可能。
建物だけじゃなく町全体の表示に切り替えもできて、ある程度ズームすると建物は勿論そこにいる人達が表示された。
縮小時まで人が表示されたら地図が青色で埋まりそうだからな。ちゃんと考慮はされているか。これ、ヤバいアプリだな。
「ついに地図アプリも3Dの時代か。これでようやく高低差まで見れるようになるぞ」
「おお、凄いのでありますよ! 建物が1つ1つちゃんと映ってるのであります!」
「歩いてる人も1人1人動いてるよ! 見てるだけでも面白そうだね!」
「家から出ずに外の様子が見れる。楽そうだ」
「これはまた悪用できそうなアプリですねぇ。偵察カメラと組み合わせたらえげつなさそうです」
「これでさらに事前に相手の情報を手に入れられそうね。迷宮探索も楽になりそうだわ」
ここまで詳細に表示されるとなると戦略の幅も広がりそうだ。
位置は前からだけど、それに加えて相手の動作がわかるなんて相当有利になる。
偵察カメラと合わせるのもよさそうだな。
――――――
●サイコホーン
攻撃回避【大】
命中補正【大】
行動速度+50%
使用者の感覚を大幅に強化し、周囲の動きや思考を把握できる。
――――――
具現化されたのは黒い1本の角。
うーん、まさか、これを頭に付けて使うのか?
能力的に考えると角というよりアンテナみたいだな。
「説明文の通りなんだろうけど、最後の説明が妙に胡散臭いアイテムだな。周囲の動きや思考って言われてもなぁ」
「とりあえず、試してみたらどうですか?」
「そうだな。使えば、どんな物かすぐわかるか」
シスハに促され、さっそく額にサイコホーンを付けてみた。
直後、俺の頭に様々な情報が流れ込んでくる。
こ、この冴え渡るような感覚! これがサイコーホーンの力なのか!
むむむっ、強く流れ込んでくるのはこの思考は……ノールだ!
「ノール、今肉を食べたいと思っているな!」
「おお!? その通りであります!」
「フリージア、外に出て遊びたいと思っているな!」
「うん! 凄い、考えていることがわかるんだね!」
「……そんなの私達でもわかる」
「これ、本当にわかっているのですかね……」
「判断に困るわね。後日ちゃんと試しましょうか」
ノールとフリージアの雑念があまりにも強過ぎてよくわからなかった。
実際、ただ俺が思い込んでいるだけで、本当に思考が読めているかもよくわからない。
その能力抜きでも回避と命中補正は強いから、後日改めて実験してみよう。
――――――
●グリモワール『グラ』
使用中は常にMPが消費される。
攻撃、支援魔法などを吸収しMPに変換できる。
MPを50%多く消費することで、次の攻撃、支援魔法の効果を2倍にする。
――――――
橙色の本で表紙には3つの頭を持つ犬のような生物が描かれている。ケルベロスってやつか?
能力はデメリット付きだけどなかなかエゲつない。
受け取ったエステルは嬉しそうに微笑んでいる。
「ふふ、ようやくURのグリモワールが手に入ったわ。ちょっと魔力の消費量が多くなりそうだけど、効果は十分強いわね」
「敵の魔法を吸収して魔力に変換できるのも強力ですね。問題は、魔法を使う魔物があまりいないことでしょうか?」
「それでもかなり強いけどな……ん? 何か表示が出てきたぞ」
スマホの画面に【全てのグリモワールを消費して、【グリモワール『セプテム・ペッカータ』】に変換できます。各シリーズの強化率は反映されません】と表示されている。
「これって……つまり、グリモワールが全部揃ったってことだよな? それを使って別のグリモワールにできるのか」
「ほほぉ、複数の物を消費して新たなアイテムになるなんて強そうじゃないですか」
「グリモワールって全部で何個あったのでありますか?」
「今回出たグラで7個目よ。SSR6個にUR1個を消費するんだから凄く強くなりそうね。けど、1つにしちゃうと他に魔法を使える子が来た時にちょっと困りそうだわ。お兄さん、どうする?」
うーん、確かに複数人で魔法が使えるなら、各自に得意な属性のグリモワールを渡すのもありか。
今でもルーナが闇魔法を使えるからルクスリアを持たせられる。
だけど、槍で戦う方が強いし、魔法を使うメリットがあんまりないな。
無理にグリモワールを使わせても仕方がない。
ガチャで他のユニットを召喚できたとしても、7つ分も分散させて使うようになるとは思えない。
なら、変換してエステル1人に使ってもらった方が遥かに戦力強化になりそうだ。
「今はエステルしか使わないんだし、現状の戦力強化のために変換しよう。7個もエステル1人で使うのは大変だしな。それにガチャを回してれば、またグリモワールも集まるだろ」
「ふふ、私のことを思ってくれるなんて嬉しいわね。それじゃあ、変換しちゃいましょうか」
別の属性使うたびに鞄からグリモワールを入れ替えて大変そうにしていたからな。
セプテム・ペッカータにすれば1つになるだろうし、そういう部分でも変換した方が良さそうだ。
Yesを選択すると、【イーラ、スペルビア、インウィディア、アケーディア、ルクスリア、アワリティア、グラを消費し、セプテム・ペッカータに変換いたしました】と表示された。
そして目の前に現れたのは、黒い表紙に各グリモワールの表紙にいた生物が全て描かれた本。
――――――
●グリモワール『セプテム・ペッカータ』
使用中は常にMPが消費される。
使用者のMP回復速度を上昇させる。
攻撃、支援魔法などを吸収しMPに変換する。
全属性魔法の攻撃力+150%
攻撃対象の状態異常抵抗を一時的に低下させる。
攻撃対象を30%の確率で一時的に混乱させる。
攻撃対象の視覚を30%の確率で一時的に失わせる。
攻撃対象の嗅覚を50%の確率で一時的に失わせる。
攻撃対象の行動速度を30%の確率で一時的に低下させる。
MPを50%多く消費することで、次に使う攻撃、支援魔法の効果を3倍にする。
――――――
「1つの装備にどんだけ能力詰め込んでんだよ! というかかなり強化されてないか?」
「各属性攻撃力100%だったのが150%になっているわね。それにグラの能力も2倍から3倍になっているわ」
「エステルの攻撃が3倍……スキルと合わさったらどうなるのでありましょうか……」
「ふむ、考えただけで恐ろしい」
「エステルちゃんの魔法もっと見てみたい! 今度試してみようよ!」
「ふふふ、そうね。どこかで試し撃ちをしてみましょうか」
最強のグリモワールを胸に抱いてエステルは凄く嬉しそうだ。
とんでもない装備が完成してしまったんだが……消費したグリモワールの数を考えたら妥当か?
当然GCにこんな機能なかったけど、アイテムを揃えて超絶レアな物に変わるとか、実装されてたら間違いなくやばいやつだよな……。
全部のグリモワールの能力に全属性魔法の攻撃力アップ、さらには1回だけだが威力を3倍にする能力まである。もはやスキルみたいなものだ。
MPに余裕があればずっと3倍状態にできるってことだし、完全にぶっ壊れアイテムだぞ!
これだけでエステルさんがとんでもなく強化されちゃったぞ。頼もしいな!
次は同じく気になっていたニーベルングの指輪だ。
――――――
●ニーベルングの指輪『神々の黄昏』
攻撃速度+10% 移動速度+10% 攻撃力+50 防御力+50 一定確率で魅了状態を付加 状態『第3日』
PTボーナス:攻撃速度+50% 移動速度+50% 敏捷+30 魔法耐性+20 HP回復速度上昇 MP回復速度上昇
――――――
「ニーベルングの指輪もURが出たでありますね。これで4つ目なのでありますが……これもグリモワールみたいに1つになってほしいでありますよ」
「これもシリーズ物っぽいんだが……おっ、表示が出てきたぞ」
【全てのニーベルングの指輪を消費して、【ラインの乙女】に変換できます。各シリーズの強化率は反映されません】
この表示が出るってことは、ニーベルングの指輪は全部で4つだったのか。
「おお! 乙女でありますよ! まさに私に相応しい名称なのであります!」
「まだ自称乙女を口にするのか……」
「自称じゃないのであります! 私はどこからどう見ても乙女でありましょ! もう! 早く変換するのでありますよ!」
プンプンと怒るノールに促されYesを選択。【ラインの黄金、ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏を消費し、ラインの乙女に変換いたしました】と表示された。
――――――
●ラインの乙女『PT共有』
攻撃速度+80%
移動速度+80%
攻撃力+500
防御力+500
魔法耐性+30
HP回復速度上昇
MP回復速度上昇
スキル回復速度上昇
スキル持続時間延長
――――――
変換した指輪は元のニーベルングと変わらず金の指輪だが、能力がこれまた凄いことになっている。
「指輪1つでこれはまたとんでもない能力になりましたね。PT共有ってことは全員に適用されるってことですかね?」
「全体的に強い能力値だけれど、特に気になるのはスキル関連ね。スキルが強化されるアイテムなんて凄く珍しいわ」
「スキル回復速度上昇でありますか……反動も少なくなってくれるのでありますかね?」
「それなら嬉しい! もう気絶したくない!」
どの能力もかなり強いが、やはり気になるのは、スキル回復速度上昇と持続時間延長だな。
スキル回復速度上昇次第で今後スキルが使いやすくなりそうだぞ。
これで新アイテムは確認し終えたから、後はダブったアイテムの強化か。
まずはルーナの防具からにしよう。
――――――
●血染めの黒衣☆2
HP+1000
攻撃力+300
防御力+1000
ダメージ吸収
HP自動回復
間合い延長【中】
――――――
やっぱりURの強化率は凄いな。1つ重ねただけでここまで強くなるとは……。
さっそく調子を確かめているのか、ルーナは血染めの黒衣をバサりと羽織っている。
「ふむ、どうやら黒衣に真の能力が戻ったみたいだ」
「真の能力?」
「うむ、見せてやろう。私の黒衣は本来こうやって使う物だ」
真の能力、だと? そういえば確認を始める前に、あの能力が戻ればとか呟いていたな。
これから何をするのか腕を組んで立つルーナを見ていると、マントに異変が起きた。
端っこの方があからさまに不自然に動き出し、ビシッと勢いよく伸び始める。
離れた机の上に置いてあったコップに絡みつくと、それを持ち上げてルーナのもとに戻ってきた。
「動いてるのでありますよ!?」
「どうなってるの、ルーナちゃん!」
「この黒衣は私の血で染めてある。だから本来なら自由に動かせた。呼び出されて動かなくなっていて困っていた。貧血になりかけながら作ったのに……」
「強化されてその能力が戻ったってことね。お兄さんのセンチターブラやカロンの剣みたいな物かしら?」
「……このマントが最初から本来の能力だったら、近づけなかったかもしれませんね」
ルーナのマントにあんな能力があったとは。確かに、この能力が最初からあったら、シスハが近付いてもグルグル巻きにされてたかもな。
……今コップを運んできたのを見ると、この能力の目的は移動せずに物を引き寄せられるとかじゃないよな?
心なしかルーナが凄く嬉しそうにしているように見えるんだが。
最後に恒例のエクスカリバール強化の時間だ。
――――――
●エクスカリバール☆61
攻撃力+6390
行動速度+350%
スキル付加【黄金の一撃】
状態異常:毒(小)
木特効:ダメージ+10%
●鍋の蓋☆45
防御力+2700
防御速度+20%
●アダマントアーマー☆6
防御力+2200
防御速度+30%
●マジックブレード☆12
攻撃力+750
攻撃速度+20%
防御無視攻撃付加
――――――
「テストゥード様との戦いで助かったけど、この強化を見ると思うところがあるな……」
「エクスカリバールは相変わらずでありますが、鍋の蓋も地味に強くなってきたでありますね」
「うふふ、マジックブレードも順調に育っていますね。早く大倉さんのエクスカリバールに追いつきたいです!」
「いいないいなー。私も何かSRの装備を育てたいんだよ!」
「一体どこまで強化できるのかしら。でも、やっぱりURとかに比べると能力の付加や上昇値は少ないのね」
「うむ、私の黒衣はかなり強化された。自由に動くだけで満足だ」
SRはダブりやすいから数を重ねて強化できるけど、URを4、5回重ねたらエクスカリバールでも追い抜かれそうだ。
これでもし上限があるならその内追い抜かれそうだが……今は強化されてるエクスカリバールを使うしかないか。
武器でも防具でもいいから、そろそろカッコよくてナウい装備が欲しいぜ。
さて、これで確認も終わったな。今日は色々とあって疲れたけど、ようやく1日が終わったって感じがする。
全員無事に済んだからこそ、こうやってガチャを楽しめた。
召喚石で来てくれたカロンちゃんには本当に感謝をしなければ。
あっ、そういえば、シスハにカロンちゃんからの贈り物を渡さないと。
「そうそう、カロンからシスハに渡しておいてくれって言われた物があったんだよ」
「えっ、カロンさんからですか?」
カロンちゃんから受け取った金色の壷をシスハに渡した。
チャプチャプと中から音がし、それで何が入っているかすぐに察したみたいだ。
「これはお酒、ですか?」
「ああ、お前にご馳走してやるつもりだった酒らしいぞ。約束は守るって渡されたんだ」
俺の言葉を聞いたシスハは黙って考え込む素振りをすると、思い立ったように口を開く。
「これはカロンさんと次に会うまで大切に保管しておきましょう。一緒に飲む約束でしたからね」
「へぇー、お前ならすぐに大喜びで飲みだすかと思ってたぞ。たまには良いこと言うんだな」
「し、失礼な人ですね! 私だって多少の常識は弁えていますよ! 普段はあえて破っているんです」
「余計タチが悪いだけじゃねーか! わかっててやるなよ!」
普段から非常識な言動ばかりしてるけど、わかっててやってたのかよ!
根は良い奴なんだろうが、こいつは本当にどうしようもない神官様だな。
「ふふ、シスハが言うようにカロンと再会するまで待つのがいいと思うわ。私は飲めないけどね」
「私も飲んでみたいでありますが、お酒には弱いのであります……。でも、カロンと一緒に楽しみたいでありますね」
「私も一緒に飲みたい! お酒の強さには自信があるんだよ!」
「ふむ、酒を飲むかはともかく、あの龍神にはまた会いたい。その時は宴とやらを開いてやろう」
ノール達もカロンとまた会いたいみたいだな。
俺も約束しちまったし、カロンを正式に呼べるようこれから頑張らないと。
……ぐへへ、この様子ならノール達も魔石狩りに賛成せざるを得ないだろうしな!




