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事後処理

 カロンが去ってしまった後、俺は1人駆け足で港を目指していた。

 町は今も慌しい様子だったけど、魔物はもういないのか戦闘している音などは聞こえない。

 地図アプリにも魔物の赤い点はなく安心していたのだが……青色の点が高速でこっちへ近付いてくる。

 一旦足を止めてその点を待ち構えると、姿を現したのはルーナだった。

 既に戦い終わっているからか武器は手にしていない。


「なんだルーナか。急にこっちへ向かって来るからびっくりしたぞ。よく俺がいるってわかったな」


「当然だ、気配でわかる。さっきの光、あの亀か」


「ああ、無事にテストゥード様の加護が戻ったぞ。これ以上魔物が町に来ないはずだ」


「ふむ、こちらも町中にいた魔物は全部倒した。誰にも見られてはいない。上で見張っているフリージアにも伝えるとしよう」


 おお、さすがはルーナとフリージア。

 港の戦力はノール達で十分だって判断して町の方に来ていたのか。

 離れた場所でも存在を察知するルーナに、目や耳がいいフリージアの組み合わせは相性がよさそうだぞ。

 ……うん? ルーナの奴こっちを見て凄く不服そうな顔をしているな。


「平八、偉そうな奴は帰ったのか」


「……あぁ、戻ってくる前に時間がきちゃってな。よろしく言っといてくれって、笑いながらいっちまった」


「ふん、最後までうるさい奴だ。……見送るぐらいはしてやってもよかったのだが」


「また会おうって言ってたしそう寂しがるなって」


「べ、別に寂しがってなどいない! くっ、さっさとシスハ達のところへ行くぞ!」


 カロンの姿が見当たらないからあんな顔してたのか。

 全く、相変わらずルーナも恥ずかしがり屋だなぁ。

 屋根の上にいたフリージアとも合流してカロンがいないのを伝えると、彼女も凄く不満そうに頬を膨らませた。


「えー、カロンちゃん帰っちゃったんだ……もっとお話したかったのにぃ」


「カロンも話したかったって言ってたぞ。だけどもう会えないって訳でもないから、次に会う機会を楽しみにしておくんだな」


「ほんと! 楽しみにしてるんだよ!」


「その意気だぞ。俺達も頑張らないとな!」


「……嫌な予感がする」


「へ? どうしたのルーナちゃん?」


「別に……」


 ルーナが眉をひそめてジト目を俺に向け、それをフリージアは首を傾げて見ていた。

 ……どうやら何となくだが察しているみたいだな。

 まあ、それは後でじっくりたっぷりと説得するとして、今は港に向かわないと。

 ルーナ達と一緒に急ぎ足で向かい、ようやく海が見えてきたのだが……到着したと同時にノールの叫び声が聞こえた。


「勝どきを上げるのでありますよー!」


『うおおおおぉぉぉぉ!』


 うおっ!? なんだなんだ! いきなり凄い雄叫びが聞こえるんですが!

 声がする方を見ると、ノールが剣を掲げていた。

 それに同調するように、多数の冒険者や軍人っぽい人達が各々の武器を掲げている。

 ちょうど魔物を倒し終えたところだったみたいだが……全員めちゃくちゃ士気高いな。

 というか、ノールが中心になってまとまった軍団にしか見えないんですが。

 ルーナ達もその光景を見て唖然としている中、その軍団から少し離れた場所にいたエステルが俺達に気が付いて声をかけてきた。


「お兄さん、無事に終わったみたいね。さっきの光はやっぱりお兄さん達だったのね」


「あ、ああ……それよりもこの騒ぎはなんだ?」


「うーん、ちょっと説明するのが難しいかも。簡単に言うとノールが頑張ったって感じかしら」


 それからエステルに詳しい話を聞くと、ノール達が港に到着した時、数の多い魔物相手に冒険者や軍人が防戦一方でかなり苦戦していたらしい。

 港を見渡すと堤防はボロボロに崩れて、灯台もあっちこっち穴が空き、船の残骸なのか木の板などが海を埋め尽くしている。

 荒れ具合から見てもかなりの激戦だったみたいだな。

 そんな中ノールは真っ先に飛び出していき、猛威を振るっていたトルネードシャークを一刀両断したそうだ。

 次々と魔物を斬り倒していくノールに鼓舞されたのか、押されていた人達も勢いを取り戻して反撃に転じたとか。

 その結果がノールを中心としたあの集団のようだ。

 

 鼓舞されたのもあるけど、急に反撃に転じられるようになったのはノールの固有能力の影響が大きそうだ。

 ノールがいるだけで全員にバフがかかる時点でかなりの戦力増強になる。

 GCのメインストーリーで敵としてノールが出てきたりしたけど、あのステージは悪夢でしかなかったからなぁ。

 本人もめちゃくちゃ強いのに、一般ユニットですら攻撃力と防御力が上がって相当な脅威だった。

 俺達もノールの固有能力にはかなり助けられているし、改めて強さを認識させられたぞ。


「まあ、ノールの強さをわかっていたからこっちに向かわせたんだけどさ。短い間でこの場にいる人を人心掌握してやがる」


「ノールちゃん凄い! 皆キラキラした目で見てるんだよ!」


「さすがノール。ところでシスハは……ん?」


 キョロキョロと周囲を見ていたルーナが声を上げた。

 彼女の見ている方を俺も追って見てみると、ペコペコと頭を下げたり、両手を合わせて祈っている集団を発見。

 その中心には微笑みを浮かべるシスハの姿が。


「ありがとうございます! ありがとうございます! おかげで助かりました!」


「いえいえ、当然のことをしたまでですよ。私は神官ですからね」


 シスハの言葉を聞いた冒険者風の男性は、おぉ……と感動の声を上げるように両膝を突いて両手を合わせている。

 あそこまで感謝されているなんて、一体何をしたんだろうか。


「完全に崇められているように見えるんだが……」


「シスハも凄い活躍だったもの。負傷した人達をあっという間に全員治して、戦っている最中もこの場にいる人皆を回復していたわ」


 あー、それであんなに感謝されているのか。

 神官だから回復するのは当然と言えば当然なんだけど、シスハだとその考えをつい忘れちゃう。

 けど、シスハも本来ならこういう時こそ真価を発揮する回復役なんだよな。

 俺達だけだと人数が少ないからわかりにくいけど、シスハは同時に何人も回復できる最上位の神官だ。

 この場には3、40人ぐらい人がいるが、彼女の力ならこの人数でも相当な速さで回復できたはず。

 その上に自動回復や防御力上昇の支援魔法やらも使えるから、集団戦において相当心強い存在だろうな。


「ノールもシスハも人数が多ければ多いほど強味が増すからなぁ」


「そうね。私はスキルの反動であまり攻撃できないから、ずっと支援魔法をしていたわ。ウミニュウドウとかいう大きな魔物は仕留めておいたけれど」


 おいおい、さらっと言ってるけどウミニュウドウも結構ヤバそうな魔物じゃなかったっけ?

 スキルの反動も多少マシになっているとはいえ、エステルも頑張ってくれたんだな。

 支援魔法だってあるとないじゃパワーがダンチだし。


 勝利に沸いている人達を見ながらそんな話をしていると、俺達に気が付いたのかノールもこっちへやってきた。


「大倉殿! 来ていたのでありますか!」


「おう、大活躍だったそうじゃないか」


「ノールちゃんはやっぱり頼りになるね!」


「それほどでもないのでありますよ。港にいた人達皆が頑張ってくれたおかげなのであります」


 お互いに肩を叩き喜んでいる人達を見てノールは笑っている。

 うんうん、セヴァリアが無事に済んだのもあの人達が頑張ってくれたおかげだ。

 ここにいる全員で掴んだ勝利に違いない。

 シスハも拝んでいた人達を落ち尽かせたのか、ようやくといった様子で戻ってきた。

 ててっと早足でルーナは近付くと、見上げながら声をかける。


「シスハ、お疲れ」


「ルーナさん! 労いの言葉ありがとうございますぅ!」


「今回はちゃんと神官らしいことしていたようだな」


「いくら私でもこの状況だったら回復優先になりますよ。怪我人だけで済みましたけど、何人も重傷の方がいましたので。住民の方々は漁師の方達のおかげで事前に逃げていたようですので、そこまで酷い被害は出ていないはずです」


 やはりあれだけの魔物を相手にしてたら、全員無傷で済んだりはしないか。

 それでもシスハの回復魔法で怪我は治せただろうし、人的被害は抑えられたはずだ。

 魔物も人を襲うよりも、テストゥード様の御神体の破壊を優先していたのかもしれない。

 住民を追いかけたりしているのは見かけなかったし。

 その行く手を阻んでいた人達に対してだけ、魔物も反撃したのかな。


「ところでカロンはどうしたのでありますか?」


「あー、ルーナ達にはもう話したんだけど、街にテストゥード様の加護が戻った後時間がきちゃってな」


「もう帰っちゃったのね。せめて別れる前にお礼を言いたかったのだけれど」


「カロンさんがきてくれなかったら、あの魔物を倒せませんでしたからね。宴でとことん飲み明かそうと思っていたのですが……」


「残念なのでありますよ……。沢山美味しい物を食べてもらいたかったのでありますが……」


 ノール達もカロンが帰ったと聞いてどこか落ち込んでいるようだ。

 というか、ノールまで宴を開くのにノリノリだったのかよ。

 歓迎会と称してとんでもない量の料理を出してきそうだが……カロンちゃんだったら喜んで食事もノールと張り合いそうだな。

 宴をしてあげられなかったのは本当に申し訳なく思えてくるぞ。

 そうしんみりと感じていると、フリージアが元気な明るい声で切り出し始めた。


「大丈夫だよ! カロンちゃんといつかまた会えるもん! ね、平八!」


「ああ、そうだな。これが最後って訳でもないんだ。俺達が頑張ればいつかきっと会えるはずだ」


「……私達が頑張れば? それって要するに」


「ガチャですね」


「ガチャでありますか!?」


 そう、シスハ正解! 頑張るってことはつまりガチャってことさ!

 ノールの驚きの声だけでなく、ルーナもやはりか、と言いたそうなジト目でこっちを見ている。


「別れ際にな、カロンちゃんに言われたんだ。これからもガチャに励め、と。これはもう期待に応える為にも、徹底的にガチャをするしかないじゃないか!」


「な、なんてことを言い残していったのでありますか……。うぅ、そんなこと言われたら頑張るしかないのでありますよぉ」


「嫌な予感は正しかった。……あの龍神の頼みなら断る訳にもいかん」


「わーい! ガチャを回すの楽しみなんだよ!」


「ガチャを回すだけじゃなくて、魔石集めをしないといけないってことなんだけれどね」


「うふふ、最近は異変解決に向けて調査とかばかりでしたからね。魔石集めを再開するのが楽しみですよ」


 うんうん、カロンちゃんの残してくれた言葉のおかげでノール達もやる気だな!

 異変も解決できたし、しばらくの間本格的に魔石集めを検討しないと。

 それにガチャだけじゃなくて、そもそもカロンちゃんを召喚するには圧倒的にコストが足りない。

 緊急召喚石のおかげでコストを踏み倒せたけど、正式に呼ぶとなればそうもいかん。

 この辺りの問題も解決しないといけないからなぁ。先は長いぞ。

 

 まあ、それを考えるよりもまずは目先のセヴァリアだな。

 異変は終息したとはいえ、魔物に襲撃されて少なからず被害は出ている。

 もう魔物が町に入ってくることはないと思うけど、復興に色々と協力をしないとね。

 瓦礫の片付けや怪我人の治療やら、できることは沢山あるからな。


 そう考えを巡らせていると、突然スマホが振動した。

 こ、これはまさか!

 慌ててスマホを確認すると、画面にはデカデカと期待通りの物が表示されていた。


【守護神の救済達成報酬:魔石1000個、プレミアムチケット×3、SSRコストダウン×3、SSRスキルアップ×3、称号『海の守護神の加護』獲得】


 豪華過ぎる報酬に思わず叫びそうになったが、続く表示を見て呼吸が止まりそうになった。


【天井ガチャフェスティバル! 110回ガチャを回すごとに必ずURを排出!】


 ひょ!? 天井、だとぉ!?

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