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セヴァリアの危機

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます。

書籍7巻が8月30日、明日発売となります。

特典などの詳細は後書きに記載いたしますので、興味のある方はお読みいただけると幸いです。

「むむむ、急いで町まで帰らないといけないでありますよ! でも、今からだと丸一日はかかるでありますよね。それまで大丈夫でありましょうか?」


 テストゥード様の話を聞き、ノールは両腕を組んで唸り声を上げて心配そうにしている。

 が、一方俺は落ち着いていた。

 さっき話を聞いた時はやばいと思ったけど、そこまで心配する必要がないのに気が付いたからだ。


「ふふふ、その心配はない。念の為にリシュナル湖の近くまでビーコンは配置しておいた。電波の届く距離まで行けばすぐにでも帰れるぞ」


 そう、この聖地を訪れる際にイリーナさん達と野営した岸壁に、ビーコンを置いておいたのさ!

 そして岸壁の近くには以前マースさん達と調査に行ったリシュナル湖もあり、そこまでビーコンは繋げてある。

 つまり岸壁まで行けばセヴァリアまでは一瞬で帰れるということだ。

 マリグナントがファルスス・テストゥードを呼び出してからそう経っていないし、魔物が町に押し寄せる前に帰れるだろう。


「おお、さすが大倉殿! 用意周到でありますね! それなら一安心なのでありますよ!」


「霧も晴れているから、もしかすればここからでも届くかもしれないわね。今すぐ戻ればまだ間に合うかもしれないわ。でも、お姉さん達も一緒にビーコンで移動できるかしら?」


 あっ、それを忘れてた。俺達だけならまだしも、イリーナさんも一緒だし、さらには魔物であるテストゥード様とダラまでいる。

 モフットもビーコンで移動できるから魔物でも問題はないはずだが……確認してみよう。

 スマホでビーコンの移動画面を表示して選択画面を開く。

 そこにはイリーナさんの名前もちゃんとあり、テストゥード様とダラの名前も入っている。

 よし、これならイリーナさん達もビーコンで移動できそうだな。

 これでエステルの言うようにここからすぐに移動できればいいんだけど……最悪無理そうでも、ダラに乗って1時間もあればビーコンの使用範囲にはいけるか。


「テストゥード様、イリーナさん、今すぐセヴァリアに戻りますけどいいですか?」


『うむ、こちらからも頼みたい。移動はダラに任せよう』


「いえ、町の傍まで一瞬で移動できる方法があるのでそれを使います。その後はダラにお任せします」


「ま、町まで一瞬……まさか転移の魔法を使えるのですか!?」


「うーん、少し違うけどそんな感じかしら」


 正直ビーコンのことは内緒にしておきたかったけど、既に色々とイリーナさん達に知られてるから今更だろう。

 それに町の危機なのに出し渋っている訳にもいかないしな。

 セヴァリアに戻るという方針が決まり、さっそく移動することになった。

 しかし、それを聞いたカロンちゃんは凄く不服そうに口を尖らせている。


「なんだなんだ、せっかく宴を開こうとしておったのにまだ何かあるのか。これではこのカロンちゃんが戦う為だけに呼ばれたみたいだぞ」


「いやまあ、それは否定できないんだが……すまないな」


「えぇー、カロンさんとの酒盛りを楽しみにしていたのですが……町の危機となればそうも言ってはいられませんね」


「まあよい。ならばそのセヴァリアとやらに行くのも付き合ってやろう。時間の許す限り、お主らの力になってやるぞ」


「わーい! カロンちゃんが一緒なら凄く心強いんだよ!」


 元々一緒に来てくれるつもりだったみたいだけど、フリージアの素直な喜びの声にすっかりカロンも乗り気になったようだ。

 そんな訳で全員ダラの背に乗って、そのままビーコンでセヴァリアまで行こうとしたのだが……ちょっとした出来事が。


「ほほう、空飛ぶ魚類の魔物に乗るとは。なかなか愉快そうではないか」


 カロンちゃんがどっこいしょとダラの背中に乗った途端、ダラは全身をブルッと大きく震わせて尻尾も天を向いている。

 その反応にイリーナさんは心配そうに声をかけた。


「ダラ、どうしたの?」


『その龍人に怯えているようだ。力の差を感じ取ったのだろう。少し気を抑えてくれ』


「ふむ、特に威圧などはしとらんのだがな。このカロンちゃんから溢れ出す息吹のせいかもしれん」


 あー、息吹ってことはもしかして固有能力に反応しちゃっているのか?

 敵にしかデバフの影響はないはずだけど、それでも怯えちゃうみたいだな。

 それに加えてカロン自身がめちゃくちゃ強いし、自分の上に乗ってきたらそりゃ怖がるよね。

 

 どうにかカロンが力を抑えたおかげかダラの震えも止まり、さっそく俺はビーコンを使った。

 地図アプリ上に表示されている岸壁に設置したビーコンを選択すると、一瞬で視界は昨日訪れた岸壁に変わる。

 よし、距離も問題なく霧の影響もなかったみたいだな。

 そのまま連続してビーコンを移動していき、あっという間にセヴァリアの見える場所までやってきた。

 イリーナさんは目を見開いてきょろきょろと周囲を見渡し唖然としている。


「こ、ここは……セヴァリア!? 本当にもう到着したのですか!」


『魔法も使わず一瞬でここまで移動できるとは……このような術が存在していたのか』


「ほほう、お前様達は面白い物を持っておるな。時間があればじっくり色々と見たかったぞ」


 興味深そうにはしているけど、テストゥード様とカロンちゃんは全然驚いてないな。さすが守護神様と龍神だ。

 なんて感想を抱いていると、ノールが声を上げた。


「大倉殿! 町から竜巻が出ているのであります! 既に魔物が襲撃しているかもでありますよ!」


「えぇ!? そんな馬鹿な! いくらなんでも早過ぎるだろ!」


「とにかく町へ急ぎましょう! ダラ、お願い!」


 巨大な黒い竜巻が町から空に向かって伸びているのが見える。

 おいおい、ビーコンを使って帰ってきたのになんでもう魔物が町に来てるんだよ!

 一息つく暇もなく、俺達はダラに乗ってセヴァリアに向かった。


「あの竜巻、一体何なのかしら……方向からして海の方?」


『あれはトルネードシャークによるものだ。まさかこれほど早くこの地にやってくるとは……恐らくだが、我が分体を呼び出した輩の仕業だ。我が力を使って海から魔物を町に呼び寄せていたのだろう。海にあった祠も既に破壊されているようだ』


「むむっ、だからこんなに早く魔物が……陸地の魔物もやってくるのでありましょうか?」


『その心配はない。陸の魔物は縄張り意識が強い。そうすぐに町までくる個体は少ないだろう。それに内陸にある祠は殆ど無事のようだ……むぅ? 妙に強大な守りの力が働いている祠が……』


「あっ、そこは私とエステルさんお手製の結界を張った場所かもしれませんね」


「ふふ、あそこの祠ならどれだけ魔物が来ても破られることはないわ」


 前にディアボルス達に破壊された加護の中継地点になっていた祠か。

 テストゥード様が驚くぐらいに守られているとは……それならあそこは破壊される心配はなさそうだな。


 それにしてもファルスス・テストゥードを呼び出した輩となると……マリグナントか。

 加護が消えて大騒ぎになっているかもしれないとか言ってた気がするが、そうなるように準備してやがったのかよ。

 やられた後まで厄介事を残していくなんて、本当に最悪な奴だな。

 海の祠もあいつが事前に破壊してた可能性だってある。

 俺達の知らないところでどんだけやらかしてやがったんだ……自滅だったとはいえ、あの場で仕留められて本当によかったぞ。


 町の近くまで来たので地図アプリを確認した。

 すると町中にはいくつもの赤い点が表示されている。

 それを複数の青い点が囲むように対峙していた。

 この点は恐らく魔物と戦っている冒険者や軍人だろうな。

 魔物から逃げるように移動している多くの青い点は、避難している市民達のはずだ。

 港にはかなりの数の魔物と人が集まっている。ここが魔物の上陸地点か。


 ……あっ、神殿の方まで魔物が来てやがる!?

 港からそこまで行ったとは思えないし……まさかこれもマリグナントの仕業か!


「港だけじゃなくて神殿にまで魔物が来てやがるぞ!」


「えっ!? し、神殿にもですか! 早く向かいませんと!」


『待て、イリーナよ。その前に彼らに話がある』


「わ、わかりました……」


 今すぐにでもダラに頼んで神殿へ向かおうとしていたイリーナさんだが、テストゥード様に止められて肩を落とし黙り込んだ。

 テストゥード様はイリーナさんの腕の中から降りると、俺をジッと見て話しかけてきた。


『すまないがお主らの中から町の防衛に人員を割けないだろうか。力も多少は戻り我も戦うことはできる。神殿にはイリーナの護衛として2人程付いてきてもらい、その他の者達で町に入り込んでいる魔物を倒してもらいたい。町を襲っている魔物は手強いのが多い。頼む、今戦っている者達を助けてやってくれ』


 ペコリと小さなテストゥード様は頭を下げている。

 おいおい、守護神様に頭を下げて頼まれるとは……魔物だとしてもこの町に住む人達のことを考えているんだな。

 確かに今のテストゥード様が一緒なら、神殿に全員で行く必要はない。

 二手に分かれて町に上陸している魔物を倒してもらえば被害は少なく済む。

 どうやって分けようか考えようとしたのだが、その前にカロンが口を開いた。


「ならば同胞達で魔物を倒せばよかろう。亀と娘は私とお前様で神殿とやらに送り届けてやるぞ」


「確かにカロンさんなら安心して守護神様達を任せられますが……」


 シスハがじろりとこっちを見ている。


「悪かったな俺が不安要素で!」


「おほほ、何も言ってませんよ」


「はっはっは、案ずるな! このカロンちゃんが付いておるのだぞ! 何があっても問題なっしんぐだ!」


「意味不明な自信だが、この龍人なら信用できる。任せていいだろ」


「うむうむ、ドンと信用するがいい!」


 ポンポンとルーナの頭を撫でてカロンはご機嫌な様子だ。

 いつの間にか俺まで神殿行きに選ばれてしまったが……人選としては悪くないか。

 カロンがいればたとえ神殿に何がいても、力でねじ伏せられるだろう。

 少人数で動くならこれ以上心強いものはない。

 

 そしてノール達は5人も揃っていればその辺の魔物じゃ向かうところ敵なしだ。

 シスハもいるから負傷者の治療もできるし、被害も最小限に食い止められる。

 だけど、一応ルーナとフリージアには姿を見せないでもらいたい。


「ノール達は普通に戦うとして、ルーナとフリージアはなるべく姿を隠してくれ。お前らなら気配消しつつ戦えるよな?」


「うむ、余裕だ」


「久々の闇討ちだね! お任せなんだよ!」


「お、おう。だけどなるべくでいいからな。襲われそうな人がいたら助けるの優先だぞ。もし正体がバレたら俺が何とかするからさ。これもついでに持っていけ」


「わーい! 透明マントだー!」


 バッグからインビジブルマントを出してフリージアに渡した。

 攻撃すると姿が少しの間見えちゃうけど、これがあれば多少は動きやすくもなるだろう。


 長話をしてる訳にもいかないので、方針が決まり次第すぐにノール達を町中に降ろして分かれた。

 そして俺とカロンとイリーナさんとテストゥード様で、ダラの背に乗って神殿を目指す。

 このまま無事に到着して終わればいいのだが……。

いつもお読みくださり誠にありがとうございます!

前書きにも書きましたが、こちらにも書かせていただきます!

書籍7巻が8月30日、明日発売となります。

大筋は大体webと同じですが、加筆としてシュトガル鉱山の坑道の奥へ進んだり、ルーナとフリージアの留守番の様子などが追加されております。

ルーナ達の貴重な入浴シーンの挿絵も!


それと特典に関してですが、今回は早期購入者特典として小冊子が付いてくるようです。

内容は【Girls Corps シスハ編】とタイトルのまんま、シスハのキャラクターシナリオとなっております。

GCのシスハシナリオに平八が入り込んで……な感じで、シスハの信仰する神や所属している教会やらが出てきます。

大体二万五千文字程度の長さです。

シスハに興味ある方は是非お読みいただけると嬉しいです。早期購入特典ですのでお早めに!


それともう一つアンケート特典がありまして、こちらは【Girls Corps ルーナ編】となっております。

内容はシスハ同様、GCでのルーナのキャラクターシナリオです。

廃墟となった町で深い眠りについていた吸血鬼と平八が出会う……と、何か始まりそうな感じですがルーナの性格的に……。

ルーナの本気の一部が読めますので、是非アンケートに答えてお読みいただけると……。

こちらは大体二万文字程度となっております。


それでは長々と書かせていただきましたが、この辺りで宣伝を終えたいと思います。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!



追記

記載を忘れておりましたが、小冊子が貰える店舗に関しましてはGCノベルズ様の公式ホームページにてご確認ください。

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