表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/414

リシュナル湖

あけましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いしまーす!

 4日後、近くにある村に到着した俺達は、そこに馬を置いて徒歩で目的地までやってきた。


「ここが例の魔物が出てきたリシュナル湖だ。今は引き潮で水位が低い状態だ」


 グレットさん達に案内されてやって来た場所、そこは海辺から少し離れた場所に位置する湖だった。

 あっちこっちに水面から根が見えている木が生えて視界が悪く、泥の地面が道のように顔を出している。


 引き潮ってことはこの湖は海と繋がっているのか?

 普通の状態なら歩く道なんてないんだろうな。

 潮が引く時間帯を狙って来るなんて、そこまで考えて出発時間を合わせてくれたのか。

 さすがBランク冒険者、頼りになる。


「いかにも何かあるって雰囲気の場所ね。この中を移動するのはちょっと嫌だわ」


「今はまだ歩く場所が多い方だ。私達は何度も探索に来ているから、安心してついてきてくれ」


「この程度で嫌がっているようじゃ、冒険者なんてやってらんねーぞ小娘」


「むぅ、いちいち言われなくてもわかっているわよ」


 マースさんに笑いながら言われて、エステルは頬を膨らませて不満そうにしている。

 今まで沼地みたいな場所はあんまり行ったりしなかったからなぁ。

 フロッグマンを倒しに行った時も少し嫌そうにしていたし、こういう場所は苦手そうだ。


「それにしても広そうな森……湖ですね。ここの探索をするとなると骨が折れそうです」


「何か目立つような物はないのでありますか? 例えば守護神の祠とか」


「ない、はずだ」


 うおっ、同行中あまり話さなかったクルーセさんが答えてくれた!?

 もしかしてセヴァリア出身者ってこの人なのかな?

 神殿の関係者じゃないから詳しくはなさそうだけど、探索してみた限りじゃここに祠はないって感じか。

 だとするとなんでディアボルスがこの辺りにいたのか疑問なんだが……また罠じゃないだろうな?

 そんな疑問を感じつつも、さっそくグレットさん達に従ってここの探索を始めることになった。


「俺とアゼリーで先行するから、お前らは後からついてこい。魔導師や神官は水辺にあまり近寄るんじゃねーぞ」


「ここはクロコディルスが生息している地域だ。下手に近付くと危険だから注意してくれ」


「わかりました。ある程度なら私も魔物の位置がわかるので、近付いて来たら知らせますね」


「なんだ、お前水中の魔物の位置までわかるのかよ。……意外にやるじゃねーか」


 マースさんが褒めてきた!? ……褒めてるのかなぁ?

 ここに来るまでの間に地図マップで事前に魔物が来るのを伝えたりしていたが、そのお陰かちょっと俺の評価が上がったのかもしれない。


 とりあえず最初はグレットさん達の動きを見る為に俺達は後を付いていくだけになったが、その前にエステルがヴァイルさんに相談を始めた。


「おじさんと私、どっちが支援魔法をした方がいいかしら?」


「ならお嬢ちゃんにお願いしようかね。君の力も見ておきたいからね」


「ふふ、任せてちょうだい」


「ついでに私も支援魔法をかけておきますね」


 エステルとシスハが俺達全員に次々と支援魔法をかけていく。

 支援をかけ終わった後、マースさんとアゼリーさんが先行して泥の道を進んでいく。

 マースさん達がある程度進んで安全が確保されたら、合図に従って俺達も進む。

 やっぱり探索慣れしているだけあって、グレットさん達の動きはスムーズだな。

 常にヴァイルさんとクルーセさんが援護に入れるように構えているし、何かあってもすぐに対応できるようにしている。


 それからしばらく何事もなく進んでいたのだが、俺が見ていた地図アプリに赤いマークが表示され、勢いよくマースさんに向かっていく。

 慌てて叫んで伝えようとしたのだが、既にマースさんは水際から飛び退いていた。

 

「離れろ! 来るぞ!」


 マースさんの叫び声でグレットさん達は全員臨戦態勢になった。

 何が出てくるかと俺も構えていると、水面から姿を現したの緑色の巨大なワニ。

 もう慣れてきたけど、いつもの例に漏れず4、5mはありそうなサイズだ。


「おおぅ、俺が教える前に自分で気が付くなんて。マースさん凄いな」


「驚くほどでもありませんよ。水辺からしか魔物が来ないなら、そこに注意するだけですからね。まあ、Bランク相応のいい勘をしているとは思いますけど」


 言うだけあってやっぱりマースさんは実力者なんだな。

 だからこそ安心して先頭を任されているということか。

 

 マースさんは巨大なワニに怯むことなく向かっていき、目にも止まらぬ速さで脇に滑り込んで脇腹に蹴りを放った。

 ワニは体を横にくの字に曲げてぶっ飛び、泥の地面にゴロゴロと転がる。

 止まったところにアゼリーさんが短剣で切りつけ、さらにクルーセさんが矢を打ち込む。

 ワニが態勢を整えて動こうとしたがその動きは鈍く、その前にマースさんが近付いてさらに拳を叩き込んでいく。

 マースさんの攻撃は特に強烈なのか、1発ごとにワニの巨体が宙に浮くほどだ。

 これは俺達の出番なさそうだな……倒される前にステータスを見ておくか。


――――――

●種族:クロコディルス

 レベル:50

 HP:6500

 MP:0

 攻撃力:1600

 防御力:900

 敏捷:85

 魔法耐性:20

 固有能力 なし

 スキル デスロール

――――――


 マースさん達にボコボコにやられワニがぐったりして動きを止めると、止めとばかりにヴァイルさんが火の魔法を放った。

 リスタリア学院の教師が使ったぐらいの規模だったが、着弾するとワニは光の粒子になって消えていく。

 結局俺達が手を出す暇もなかったな。下手に手伝って連携を崩しても危ないし、慣れるまでは様子見がいいか?


「任せてしまってすみません」


「いや、それは大丈夫なのだが……」


「どうかしたんですか?」


 グレットさんが顎に手を当てて首を傾げている。

 マースさんやアゼリーさん達も戻ってきたが、全員困惑した様子だ。

 今の戦闘で何かおかしなところでもあったのか?


「支援魔法を貰ったにしても、私達の力が強くなり過ぎてない? マースの蹴りも異常だったし」


「あ、ああ、いくらなんでもあんなに吹っ飛ぶとは思わなかったぞ。小娘かと思っていたけど、お前凄いな」


「あれぐらいどうってことないわ。それに支援魔法はおまけみたいなものだから」


「これでおまけ……」


「お嬢ちゃんと甘く見ていたが、ただの魔導師じゃないようだ……」


 あっ、そういうことですか。

 強化されたエステルさんの支援魔法も凄いけど、俺とノールのバフが全員にかかっている。攻撃力と防御力65%増しは伊達じゃない。

 ディウス達と一緒に戦った時もかなり驚いていたもんな。


 そんな騒ぎがありながらもしばらく湖を探索し続けたが、特に発見することはなかった。


「今のところ変わったところは見受けられないな。やはり偶然ここを通っただけなのだろうか?」


「どうでしょうか……ここもかなり広そうですので、何かあるとしてもなかなか見つけ辛そうですね」


 ある程度回って地図アプリもそれなりに埋まってきたけど、この湖はかなり広い。

 生えている木で先も見えないし、進める場所も限られているから移動も一苦労だ。

 探索できるのも潮が引いている時だけみたいだし、あまり奥に進む訳にもいかない。

 元々数日かけて調査する予定だったけど、日数全部使っても何か見つけられる気がしないぞ。

 このまま闇雲に探していいのか考え込んでいると、エステルがある提案をしてきた。


「ねえお兄さん、調べてみるなら湖の中心はどう? 相手は空を飛ぶ魔物なんだから、普通はいけないところに何か仕掛けていたかもしれないわよ」


「あの魔物はかなり嫌らしいからなぁ。クェレスでも森の奥にいたし、ここでも歩いていけないところで何かやってる可能性はあるか」


 確かにこういう場所で中心をまず調べるのは常道か。

 それにディアボルスの今までのやり方を考えると、そういう行きづらい場所で何かしている可能性が高い。

 そんな俺達の会話を聞いていたグレットさんが会話に参加してきた。


「そうは言ってもリシュナル湖の中心に行くのは危険だ。干潮時に探せば行ける道も見つかるかもしれないが……辿り着けたとしても水が引いている間に戻れるかわからない」


「船で行くにしてもクロコディルスが居やがるからな。船になんか乗ったらいいエサだぜ」


 やっぱり時間がネックだよな。探索中に潮が満ちてきたらどうにもならない。

 地上なら脅威じゃないクロコディルスも、水中で相手をしたらロクに反撃できないぞ。

 船で行くっていうのも、あの巨大ワニがいる水面を移動するのも怖い。

 クロコディルスはどうにかなるとしても、もしそこでディアボルスが何か仕掛けてきたら危険過ぎる。

 探索に危険は付き物と言え、進んで危ない橋を渡るのもバカらしい。

 どうにか安全に行けないか悩んでいたのだが……またエステルが声をかけてきた。


「それじゃあ普通に歩いていければいいのよね。お兄さん、湖の中央はどの方向なの?」


「えっと、あっちだと思うぞ」


 地図アプリである程度地形はわかったから、中心の方角も大体わかっている。

 俺がその方向を指差してやると、エステルは黄色いグリモワールを手に杖を構えた。

 えっ、ちょ、何をするつもりなんですかエステルさん!


「えいっ!」


 豪快に杖で地面を付くと、ゴゴゴと周囲が振動し始めた。

 グレットさん達も何事かと慌てているが、お構いなしに湖から地面がせり上がってくる。

 それがどんどんと湖の中心に向かって伸びていき、あっという間に俺の背丈の倍以上ある高さの道ができ上がった。


「これで水中に入ることなく湖の中心まで歩いて行けるわよね。歩きやすいように泥も固めておいたわ」


「またとんでもないことやり始めたのであります……」


「この前見てわかっていましたが、魔法が凄いことになっていますよ……お仕置きされないように気をつけませんと」


 そうだよ、初めからエステルさんに頼めばよかったんじゃないか!

 高さだけじゃなくて、幅も10m近くありそうだ。しかもそれがずっと奥まで伸びている。

 ここまでの魔法を使っておいて、本人は全く負担を感じていないのか笑っているぞ。

 それを見てシスハが震えているが……今お仕置きされたら一体どんなことされるのだろうか。

 

 見慣れていた俺達でもあまりの光景に驚いていたが、それ以上に初めて見たグレットさん達は唖然としていた。


「おいおい、いくらなんでもこれは……」


「とんでもないことをするパーティとはこういうことだったのか……」


「い、一体何者だ君は! ここまでの魔法を詠唱もなしで行使するなんて!」


「このぐらい普通よ、そんなに驚かないでちょうだい」


 同じ魔導師であるヴァイルさんは驚いているけど、それ以上に興奮気味だ。

 この人から見てもエステルの魔法は凄まじいみたいだな。

 というか、それよりもグレットさんが気になること言ってないか……とんでもないことするパーティだって思われてるのか俺達!


 落ち着いたところで、エステルが作った道を進んで湖の中央へ向かうことにした。

 進んでいる途中クロコディルスが周囲をうろちょろしていたが、水面と直角に作ってあるせいで登れないようだ。これで安心して進めるな。

 ある程度進むと道が途切れていたが、また同じようにエステルが杖で地面を突くと、水面が盛り上がって道ができあがっていく。


「次々地面を上げてるけど、魔力は大丈夫なのか?」


「ええ、強化されたおかげで効率もよくて消費が少ないもの。これに魔力も貯め込んであるしね」


 そう言ってエステルは腕に付けている銀色の腕輪を見せてきた。

 月の雫か。随分と前に手に入ったアイテムだけど、知らない間に使っているんだろうな。

 エステルが魔力切れしないのはこれのお陰なのか。


「そのアイテムを手に入れてだいぶ経つけど、どのくらい魔力を貯めてあるんだ?」


「そうね、300万は超えているわ」


「300万!? いつの間にそんな貯め込んでたんだ!」


「休みの時や帰宅してからちょくちょくね。自然回復で無駄になっちゃう分を貯めてあるの。あっ、無茶はしていないから心配しないでね」


「……そうか、いつも色々とありがとな」


「ふふ、どういたしまして」


 まさかそんなに貯めてあるとは思わなかったぞ。

 今のエステルのMPが6700なのを考えると、途方も無い量だ。

 休みの日までこういう時に備えて貯め込んでおいてくれるとは、エステルには本当に頭が上がらないな。

 エステルの普段からしてくれていた努力に感謝しつつ、俺達は湖の中央を目指した。

本当は年内に更新したかったのですが、ちょっと寝込んで遅れてしまいました……。

皆様も健康に気をつけて、よいお正月をお過ごしください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ