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第二回アイテムガチャ

 イリーナさん達と別れた後来た通知、それはガチャだった。

 俺達は急いで帰宅し、待機していたルーナとフリージアにそのことを伝えた。


「わーい! ガチャ! 初めてのガチャなんだよ! 平八、早く回そうよ!」


「待て待て、ガチャではしゃぎたくなる気持ちはわかるが落ち着け!」


 フリージアがスマホを握り締め、部屋の中をうろちょろと動いてはしゃいでいる。

 祠の戦いでダウンした後、ルーナが親切に世話をしたみたいですっかり元通りだ。

 一方そんなフリージアの面倒を見たルーナは……椅子に座っているシスハに抱き付き、胸元に顔を埋めていた。


「ルーナさんお疲れみたいですね」


「うむ……疲れた。しばらくシスハで癒させてくれ」


「うふふ、満足いくまで甘えてくださっていいんですからね!」


 なんともうらやまけしからん光景だ……ルーナにだけ許された特権だな。

 お疲れのルーナはそのままシスハに任せて、走り回るフリージアを落ち着かせて席に着いた。

 帰宅後部屋に戻っていたエステル達も居間に呼び、ようやくガチャを回す準備が整う。


「今回も魔石はたっぷりあるから、安心して回せるわね」


「ああ、前に貯めた分がまだまだ残っているからな」


「だからって魔石を使い過ぎたら駄目でありますよ!」


「はは、それはガチャの内容次第だな。それじゃあいくぞ!」


 前回のピックアップからだいぶ経っているのもあり、現在の魔石は1732個。

 この数なら例えボックスガチャだろうがコンプガチャだろうが、目玉の物を確実に手に入れられる。

 へへっ、今回のガチャはなんじゃらほい!


【アイテムガチャ開催! SSR以上排出率大幅アップ!】


「えー、アイテムガチャかよ。俺としては戦力強化にユニットか装備系ガチャを希望したいのだが……でも大幅アップかぁ」


「うーん、確かに便利な物が出てきますけど、面白みに欠けますよね。ですがSSR以上大幅アップ……」


 俺とシスハは顔を見合わせて、ゴクリと喉を鳴らした。

 どうやら同じことを考えていそうだな……。


 SSR以上大幅アップという文面、なんと甘美なことか。

 いつもならただの排出率アップしか書いていないのに、今回に限って大幅アップ。

 まさに射幸心を煽ってジャブジャブしてしまいそうな謳い文句だ。


 問題はノール達の反応なのだが……チラリと視線を向けてみると、ノールは両手をグーにしてぶんぶんと上下に振り、エステルも微笑んでいる。

 おっ、どうやら反応は良好みたいだな。ノール達にしては珍しい。


「アイテムガチャは良いガチャであります! モフットのペット小屋を出してくれたガチャなのでありますよ!」


「そうね。それにハウス・エクステンションを出したのもこのガチャだもの。きっと役に立つアイテムが出てくるはずよ」


 言われてみると、大幅アップという誘惑以外にも、前回のアイテムガチャは結構有能な物が出てきた。

 その中でも特にハウス・エクステンションは大当たりだったからなぁ。

 王都にも自宅を買おうと検討していたし、この機会にもう1個確保したいところだ。

 グランドーリスとの戦いで閃光玉とかも使い切ったから、これで補充するのも悪くはない。


 それにハウス・エクステンションですらSSRなら、URのアイテムは一体どうなるのだろうか。

 ぐぬぬ、ユニットや装備だけじゃなく、アイテムまで使える物が多いから困るぞ。


「それにしても、全部終わってからガチャが来るなんてタイミングがいいですね」


「イリーナさんが祈ってくれたおかげだな! これもティストゥード様の加護に違いな……ど、どうかしたのか?」


 俺がイリーナさんの名前を出した途端、微笑んでいたシスハは真顔になって頬を引きつらせている。


「……別に、なんでもございませんよ」


「そんなにあのお姉さんがよかったのね……」


 エステルまで表情を暗くして、下を向きながらブツブツと呟き始めた。

 ふ、踏んではいけない地雷を踏んじまったみたいだな……この話題を出すのは今後控えよう。

 俺は誤魔化すように今回のガチャの割り振りを発表することにした。


「よ、よし。それじゃあ今回はルーナとフリージアが3回。残りは2回ずつ回すとしよう」


「わーい! 平八太っ腹なんだよ!」


「ふむ、良い心がけだ」


 今回は特にルーナとフリージアは頑張ってくれたからな。

 アイテムガチャってことで回数は少なめだが、これで計16回、魔石800個も使えば十分だろう。


「それじゃあ、フリージアからどうぞ」


「ありがとう! えへへ、これがガチャなんだ! ずっと回すのを楽しみにしていたんだよ! それじゃあいっくよ!」


 部屋を走り回るぐらい楽しみにしていたせいか、フリージアはずっとウズウズと体を動かしていた。

 我慢できずに騒ぎ始めたら困るし、初めてのガチャってことで一番槍を任せるとしよう。

 

 俺からスマホを受け取ったフリージアは、スマホを天にかざして目を輝かせ声を漏らしている。

 うむうむ、大変素晴らしいガチャへの姿勢だな。

 もしかすると平八サイドに引きずり込めるやもしれん。

 

 それからフリージアは机にスマホを置くと、えーい! と声を上げてガチャをタップした。

 画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金、白、虹。

 ……は?


「なん……だと……」


「初めてのガチャでURって……」


「凄い強運ね……」


 1発でURを引いたフリージアを見て、全員唖然としている。

 そんな困惑した空気を感じ取ったのか、フリージアは不安そうにノールへ声をかけた。


「ノールちゃん、これって凄いの?」


「凄いなんてものじゃないのでありますよ! それが1番このガチャで当たりなのでありますよ!」


「そうなんだ! やった!」


「ポンコツエルフにしてはやる。おめでとう」


「えへへ、ありがとうなんだよー」


 ルーナのパチパチと軽い拍手を受け、フリージアは頭を掻いて照れている。

 ……褒められてはいるけど、ポンコツエルフ呼ばわりされているところは気にしないんだな。


 さてさて、それじゃあ出てきたアイテムを見ていこうか。


【R食料、SR気象情報アプリ、R粘着玉、Rデコイ、R風船、Rキャンプセット、Rぬいぐるみ、SRエクスカリバール、R酒、SR万能シャベル、UR女神の聖域】


「知らないURだな……」


「アイテムガチャでありますし、アイテム系のURなのでありますかね?」


「そうだと思うけど……URのアイテムってどんな効果があるのかしら」


「ハウス・エクステンションでさえSSRですからね。きっと凄い効果だと思いますよ。フリージアさんのお手柄ですね」


「えへへ、それほどでもあるんだよー」


「ふむ、この調子で次も頑張れ」


「任せて!」


 褒められて気を良くしたのか、フリージアは意気揚々とガチャをタップしていく。


【R食料、SR高級酒、SRビーコン、Rトランシーバー、SSRエアーシューズ、Rマジックペーパー、SR爆裂券、R釣竿、Rぬいぐるみ、R眠り薬、R煙玉】


【SSR合成箱、Rおやつ、SR鍋の蓋、SR厚い本、SR希少鉱石、R催涙玉、SR警報機、SRエアーロープ、R金塊、Rポーション×10、Rキャンドル】


「あー! URじゃなかった……」


「それでもSSRでありますから、凄いのでありますよ!」


「そうなんだ。やった! ガチャって楽しいね!」


 無邪気な笑顔を振りまいて、フリージアはスマホを掲げている。

 くっ、なんて奴だ……。確率大幅アップ中とはいえ、3回共SSR以上を引き当てるとは。


「もしかすると……これはあれですか?」


「……ああ、フリージアもノール系っぽいな」


「似た者同士、ガチャの結果も似てくるのかしら? お兄さんとシスハも……」


 まさか、まさか初のガチャでURを引くなんて……ノールが初めてガチャを引いた時とデジャブるぞ。

 あの時は俺が大爆死したけど、ノールが初めてかつ単発のガチャでUR、しかもエステルの召喚石を引き当てたからなぁ。

 これはフリージアも幸運勢と見ていいだろう。

 今後もそのガチャ運を存分に振るってもらいたい。


「それじゃあ次は私だ。ポンコツに負けない結果を出してみせよう」


「頑張ってルーナちゃん! 応援してるんだよ!」


「……調子が狂う」


 ルーナはキリッと目を鋭くして張りあうようにフリージアに視線を向けたが、わーわーと声援を送られたせいか気だるそうな顔に戻った。

 フリージアを相手にしていると、冷たい吸血鬼様でも毒気を抜かれるみたいだ。

 そのまま淡々とガチャをタップした結果。


【R粘着玉、SR鍋の蓋、R栄養剤、SRビーコン、R万能薬、SR爆裂券、R薄い本、SR忘却薬、R消臭剤、Rトランシーバー、R食料】


【SRエクスカリバール、R煙玉、SR希少鉱石、Rマジックダイナマイト、R食料、SSR装備強化権、Rキャンプセット、Rデコイ、R掃除機、R金庫、R寝袋】


【Rデコイ、Rポーション×10、Rマジックダイナマイト、SSR緊急召喚石、Rおやつ、SR厚い本、SR極大金塊、Rぬいぐるみ、SRショルダーバッグ、Rイヤープラグ、Rコンロ】


「負けた……が、SSR2個ならマシか」


「さすがルーナさんです!」


「さすがルーナちゃんなんだよ!」


「……ありがとう」


 それなりに良い結果だったからか、ルーナは頬を赤くして少し自慢げにしている。

 冷めた雰囲気をしているが、こういうのはちゃんと嬉しいんだな。


「うふふ、それでは私ですね! この流れに乗ってURを必ず出しますよ」


「とか言って、いつもお前で流れが断ち切れるからなぁ……」


「大倉さんだってそうじゃありませんか! 黙って見ていてください!」


 自信満々そうなこと言ってガチャを回すと、大体酷い結果だからなぁ。

 全く、少しは己というものを省みてほしいものだ。

 シスハは口端を吊り上げて、神官がしてはいけない歓喜の表情でガチャを2回引いた。


【SRエクスカリバール、SR高級酒、R薄い本、SR高級香水、R万能薬、Rマジックペーパー、SR厚い本、Rぬいぐるみ、Rおやつ、SRホールドトラップ、SRビーコン】


【R煙玉、SR千里眼、SR脱出装置、SR時計アプリ、R食料、SR爆釣竿、Rマジックダイナマイト、Rデコイ、Rトランシーバー、R薄い本、SRウエストポーチ】


「あっ、あっ……」


「ほら見ろ。ここは俺がやるべきだったな!」


「くぅ……無念です」


 シスハは拳を握り締めて、机をドンドンと叩いている。

 大幅アップ中でも通常運転なところは流石だな。

 そんなシスハの次はエステルの番だ。


「この流れで次は私なのね。あまりガチャには自信がないのだけれど……」


「前回フリージアを出したのはエステルでありましたよね。自信を持つのでありますよ!」


「エステルちゃんのおかげなんだ! ありがとなんだよ!」


「どういたしまして。それじゃあ自信を持って回してみるわね」


 ノール達に励まされて、エステルは小さくガッツポーズをしてガチャを2回引いた。


【R閃光玉、SRエクスカリバール、SR希少鉱石、R万能薬、SRビーコン、R粘着玉、Rリンスー、SR忘却薬、Rぬいぐるみ、SR全自動掃除機、SR極大金塊】


【SRエクスカリバール、SR爆裂券、R食料、Rマジックポーション×10、R発炎筒、Rマジックダイナマイト、Rボディソープ、R固形燃料、Rおやつ、Rイヤープラグ、SR脱出装置】


「むぅ……やっぱり駄目ね」


「ま、まあ気にするな! ガチャなんてそんなもんさ!」


「……大倉さん、エステルさんには優しいんですね」


「……う、うん? な、なんのことかなー」


 しょんぼりと肩を落としたエステルを励ましていたら、なぜかシスハがジッと見つめてくる。

 べ、別に特別エステルに優しくしている訳ではなくてだな……。

 追求されても答えに困るので、ささっとノール達にスマホを手渡した。


「次は私とモフットなのであります!」


「ノールさん達は本命ですからね。期待しておりますよ」


「うむ、毎回良い結果を残している」


「そうね。もう1つぐらいURが出てほしいわ」


「ノールちゃん! 頑張ってね!」


 今回はノールとモフットの共同体制のようで、同時にガチャをタップしていく。

 結果は金、白、白。


【R食料、R閃光玉、SRエクスカリバール、Rぬいぐるみ、SRビーコン、SRホールドトラップ、Rポーション×10、SR高級アイマスク、SR高級鍋、SR催眠ライト】


【SR調味料セット、R煙玉、R固形燃料、SSRディメンションホール、Rマジックポーション×10、Rキャンプセット、SR脱出装置、SRビーコン、R万能薬、R万能薬、SRエアーロープ】


【SRエクスカリバール、Rランプ、SR高級座布団、R発炎筒、SSRハウス・エクステンション、SRショルダーバッグ、SR忘却薬、Rトランシーバー、R食料、SR厚い本、SR計算機アプリ】


 そして……最後に虹が来た。


「おいおい、マジでUR出したぞ」


「SSRとURを出すなんて……相変わらずノールさんもモフットさんも凄い強運ですよ」


「2人共凄いんだよ! シスハちゃん達が期待通りだね!」


「ノールとモフットは本当に安定しているのね……。しかもハウス・エクステンションが出ているわ」


「うむ、やはりノール達の運は凄い。私に分けるべきだ」


「ち、血を吸っちゃ駄目でありますからね!」


 ルーナのジトッとした視線を受けて、慌ててノールはモフットを抱いて離れていく。

 フリージアといいノールとモフットといい、どうしてこうも運がいいのか……。

 ノール達のおかげでURが増えていくから、それはそれでありがたいんだけどな。

 よし、それじゃあURの確認をしよう。すり抜けてユニットでも出てきてくれたら嬉しいのだが。


【R閃光玉、SR高級香水、R食料、SRビーコン、SRハイポーション、Rポーション×10、SR希少鉱石、Rぬいぐるみ、SR鍋の蓋、R万能薬、URユニット強化権】


「こ、これは……」


「名前からして私達の強化アイテムでありますか」


「大倉さん! これは是非私に!」


「シスハ、これは話し合ってゆっくり決めましょう、ね?」


「ヒィ――は、はい……」


 シスハがガシッと俺の肩を掴んでアピールしてきたが、満面の笑みを浮かべるエステルに威圧されて大人しくなった。

 このUR……名前からしてノール達の強化用アイテムだよな?

 これは誰に使うか非常に悩ましいところだ。

 後でじっくりと話し合って考えるとしよう。


「さて、ついに俺の番が来たか!」


「……大倉さん、ここで終わりでよろしいのでは? このままなら綺麗に終われますよ?」


「ふざけるな! 綺麗に終わるとかそういうのはどうでもいいんだよ! 俺はガチャを回したいんだ!」


「大倉殿も相変わらずでありますね……」


 前回といい、どうして俺のガチャを飛ばそうとしやがる!

 はっ、ここでビシッとURを出して、格の違いというものを教えてやろう。

 この俺の圧倒的ガチャ運をもってしてな!


 人差し指に祈りと想いを乗せ、俺は力強くガチャをタップした。

 そして2回引き終えた結果は――金。2回続けて金、金だ。


【R食料、R眠り薬、R閃光玉、SRエクスカリバール、SR高級ランプ、Rマジックダイナマイト、SR腕カバー、Rキャンプセット、Rマジックペーパー、SRショルダーバッグ、SRボードゲームセット】


【SRエクスカリバール、SR高級酒、SR鍋の蓋、SR爆裂券、SRビーコン、SRハイポーション×10、SR極大金塊、SR水筒、SR高級香水、SRウエストポーチ、SR厚い本】


 あのさぁ……どうして? どうしてSRしか出ないんだよ!

 ちくしょう、大幅アップだっていうのにこの結果は認められないぞ。

 あれだな、2回しか回せなかったのが悪いんだ。

 もう1回やればきっとSSRが……。

 

 そう思いガチャをタップしようとしたのだが、ポンポンと肩を叩かれた。

 振り向くとそこには眩しい笑顔のフリージア。


「元気出して平八! SRでも十分凄いと思うんだよ!」


「イヤミかコノヤロー!」


「やめへ! やめへよへいはちー!」


「止めるのであります! フリージアがかわいそうでありましょ!」


 何がSRでも十分凄いだ! URとSSR出した奴が言うんじゃねー!

 思わず聞いた瞬間フリージアの頬をこねくり回してしまい、即座にノールに止められた。

 ……いやまあ、一応慰めてくれたみたいだからかなーり弱めだったんだけどさ。

 

 なお、このやり取りをしている間にスマホはシスハ達により回収され、ガチャを回すことは叶わなかった。

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