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グランドーリス

 ディアボルス3体を始末した後、グランドーリスがいる祠のあった場所へと戻ってきた。

 最初に来た時に比べると、あっちこっち壁が崩壊して荒れ果てている。

 俺が逃げる際にマジックダイナマイトとかで爆破したせいか……。

 中央にグランドーリスが鎮座し、その周囲をディアボルス3体が飛び回り、複数ある入り口を見張っている。


「やっぱり警戒しているな」


「仲間を殺られたなら当然だ」


「あれが平八の言ってた魔物なんだね。すっごく大きいんだよぉ」


 俺達はインビジブルマントで姿を隠しながら様子を伺っていた。

 予想通り、外にいたディアボルスが倒されたことは伝わっているみたいだ。

 外の奴らが倒されたら、ここに敵が来るって予想するのは当たり前だよなぁ。


「平八、どうする? これだと攻撃する前に気が付かれるぞ」


「このまま攻撃しちゃおうか?」


「ふざけんな、何の為にコソコソ来たと思ってるんだ」


 念には念を入れて、結構離れた場所からインビジブルマントを被ってズリズリと移動してきたんだ。

 不意打ちで最初の一撃だけ決めればいいんだが……何か注意を引けるものはないか?

 閃光玉とかは俺が逃げる時に使い切っちゃったし、他に注意を引ける物は……あっ、あれはどうだ?

 さっそくリュックから思い付いた物を取り出した。


「これを使おうか」


「それは……」


「ノールちゃんの部屋に沢山あるぬいぐるみ?」


 ガチャのRアイテムであるぬいぐるみ。

 今回取り出したのは、ピンク色をした50センチサイズの丸い物だ。


「そんな物で注意を引けるのか?」


「仕方ないだろ。マジックダイナマイトとかは全部ばら撒いちまったんだよ」


「もし駄目だったらどうするの?」


「その時は……1度退くなりして考えよう」


 一瞬でいいから注意を引ければいい。

 その隙を突いて攻撃をすれば、この作戦は成功したようなものだ。

 ディアボルス達の視線に注意しつつ、ディメンションブレスレットを使いグランドーリスの足元にぬいぐるみを置いた。

 グランドーリスは目で確認しているかもわからないけど、触角がある向きと別の方向に置いたけど気が付いた様子はない。

 今回だけでもこのディメンションブレスレット、めっちゃ活躍しているな。

 離れた場所から攻撃もできるし、物まで置けるなんて凄い便利だぞ。


 ディボルス達は入り口を警戒しているからか、置いたぬいぐるみにすぐ気が付くことはなかった。

 しばらくその様子を窺っていると、ようやくディアボルスの1体がぬいぐるみの存在に気が付いたのか、声を上げて近づいていく。

 いつの間にか置かれていたぬいぐるみに首を傾げ、三叉槍でツンツンと突っついている。

 残りの2体も気が付いたのか近付いていき、同じように三叉槍で突いてぬいぐるみを転がし始めた。


「注意を引けている。やるじゃないか平八」


「い、意外と魔物に受けがいいのか?」


 突然ぬいぐるみが出てきてさらに警戒されるのも予想したけど、ここまで上手くいくとは……。

 よし、あいつらがぬいぐるみに夢中な内に殺っちまおう。


「フリージア、今の内だ!」


「このまま攻撃したら、ぬいぐるみを巻き込んじゃうよ?」


「作戦遂行の為の致し方ない犠牲だ、遠慮なくやれ。……ノールには内緒だぞ」


「了解しましたなんだよ。うぅー、気絶するのやだぁ……」


 眉をひそめて嫌そうにしながらも、フリージアは渋々と矢を弓に番えた。

 そして緑色の矢が輝き始めて、俺がインビジブルマントを捲ると同時に矢は放たれる。

 直後にフリージアは走り出し、ドアノブを壁に突き刺し扉を開いて中へと入っていく。

 洞窟内に入る前ディメンションルームを渡したのは、スキルを使った後に避難してもらう為だった。

 これでフリージアは安全な場所で気絶するから、守ることを考えずに俺達も戦える。


 彼女が逃げていく間にも、放たれた矢は真っ直ぐと飛んでいき、グランドーリスに当たる寸前で上へと直角に軌道を変えた。

 ぬいぐるみに夢中だったディアボルス達も流石に気が付いたがもう遅い。


 緑色にカッと輝いた瞬間、凄まじい轟音を立てながら目の前の空間全体が、上から降り注ぐ緑色の光で満たされた。

 光の1つ1つは矢の形をしているが、量が多過ぎるせいかもはや極太のレーザーにしか見えない。

 上を向き口を開きながら驚く表情をしていたディアボルス達の姿は一瞬で見えなくなり、洞窟内がドドドッと崩壊しそうな音と共に揺れている。

 

 うはぁ……予想はしていたけどすげぇなこれ。

 前に見たフリージアのインベルサギッタは広い森で使ったけど、今回は狭い洞窟の中だ。

 あの量が全てあの空間内に降り注いでいると考えると、めちゃくちゃエグいな。


 いくらステータスが高いとはいえ、1発攻撃力5000を超えるあれを食らえば、グランドーリスでもひとたまりもないだろう。

 地図アプリを見るとその威力を物語っているように、既にディアボルス3体の反応が消えていた。

 逃げる間もなく一瞬で消滅したんだろうな……。

 隣でその光景を見ているルーナも、口を開けて唖然とした表情をしている。


「……あのポンコツエルフのスキル、こんなに凄かったのか」


「ふはは、やったぜ! 俺達の勝利だ!」


 不意打ちをするからには、反撃する暇なんて与えず初手で確実に殺るべきだ!

 一方的にやられる痛さと怖さを教えてやったぜ!

 ……多少祠のあった場所が荒れちゃうけど、そこはエステルさんに頼んで修復してもらおう。

 

 もはやグランドーリスが倒れるのを待つだけ。

 そう暢気に後始末のことを考えていたのだが……ルーナが声を上げた。


「いや待て、あのデカ物動いている。逃げるかもしれないぞ」


「嘘だろ!? 畜生! 絶対に生かして帰すな!」


 地図アプリを見ると、この理不尽な矢の雨の中をグランドーリスは動いていた。

 ドンッと壁にぶつかる音が何度も聞こえ、あの場から逃げ出そうとしているみたいだ。

 冗談じゃない! この攻撃の中で動けるとか化け物かよ!


「や、闇雲に暴れ始めたぞ!」


「それに何か出している。霧に触れるだけで肌が痛い」


 降り注ぐ緑色の光に紛れて、紫色の霧が周囲に漂い始めた。

 ルーナはマントで口を覆って吸わないようにしている。

 うぐ……これスキルの噴霧か?

 言われてみるとさっきから鼻と喉がムズムズするような……毒は無効化できても、体の中が溶け始めてるのかもしれない。

 

「とりあえず吸わないように――うおぉぉ!?」


 霧に気が付いた直後、グランドーリスが俺達のいる入り口へと体当たりを仕掛けてきた。

 グラッと足元が揺れ、壁を粉々に砕きながら突き進んでくる。

 そしてある程度進んで止まると、通路に向かって紫色の液体をビュッと飛ばして流し込んできた。

 慌てて俺はルーナを抱き寄せ、聖骸布で身を包みそれを防いだ。

 ジューと溶ける様な音と共に煙が上がり、ドロドロした物が纏わり付くのを感じた。


「うげぇ……ルーナ!」


「任された!」


 合図と共にルーナは飛び出し、真紅の槍を投擲した。

 紅い閃光を迸らせる槍はグランドーリスの体に深く突き刺さり、インベルサギッタが継続中の空間へと押し返す。

 アンゴリ遺跡でもお世話になったけど、ルーナのスキルであるカズィクルには強いノックバック効果もある。

 グランドーリスが今みたいに突撃してきた時に押し返す為、ルーナにスキルを使ってもらう準備をしてもらったんだ。


「平八、大丈夫か?」


「ああ、おかげ様でな。今の内に回復しておこう」


 聖骸布の上から食らったのに少し腕が痛む。

 噴霧も少し吸っているから今の内に回復しておこう。

 グランドーリスが再び矢の雨の中へ戻っていくのを確認して、俺はポーションを飲んでルーナは血を飲んだ。


「やはり血は直飲みがいい。温もりがない」


「我慢してくれ……それより反動は平気そうか?」


「うむ、問題なさそうだ」


 ルーナの吸血衝動もこれで抑えられるなら、今後は事前に血を入れた小瓶を用意しておけば、スキルの使いやすさがグッと増すな。

 迷宮とかに潜る際は準備するようにしておこう。

 

 回復を終えた後、グランドーリスの様子を確認すると未だに健在だ。

 ルーナのスキルのおかげで向こう側の壁に吹き飛んだみたいだが、また動き出して暴れ回っている。

 インベルサギッタが発動している内に倒す為、俺はディメンションブレスレットでエクスカリバールを体に突き刺し、ルーナも槍を投擲して地道にダメージを増やしていく。

 さっきと同じようにグランドーリスが2回目の突撃をかましてきたが、スキルの再使用時間が経過していたルーナがカズィクルを食らわせてまた後方に飛ばす。

 その一撃でようやくHPが尽きたのか、グランドーリスは降り注ぐ緑の矢に撃たれながらだんだんと萎んでいき、最後には光の粒子になった。


「ふぅ……倒したか。フリージアのスキルだけで倒せないかと期待していたけど甘かったか」


「あのポンコツのスキルを食らいながら、私のスキルに2回も耐えた。普通に相手せずに済んでよかった」


 インベルサギッタを食らいながらあそこまで反撃してくるとか、まともに戦っていたら無事じゃ済んでいなかったな。

 洞窟内で相手できて逆によかったと思うべきなのだろうか。

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