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王都への道中

「はぁ、馬車って退屈ね」


「そだなー、暇潰せる物でもありゃよかったんだが」


 馬車に乗車してから数日程経った。

 俺達を乗せているのは、木製の荷台に布らしき物を張った簡素な造りの馬車。他にも乗客が10数人程おり、2台で王都シュティングを目指している。

 護衛に冒険者も3人いる。シュティングまでは強力な魔物が出る場所は通らない。なので護衛は冒険者数人居れば十分だそうだ。


「それにしても、この子大丈夫?」


 俺とノールとエステル、3人で詰めるように座っている。そして俺とエステルに挟まれる形でノールが座ってぐったりと大人しい。


「うぅ~、なんなんでありますかこれ……頭痛がする、吐き気もであります……。頭がガンガンして、気分が優れないのでありますよ」


「完全に酔ってるな」


 正直この馬車の作りはあまりよろしくない。現代の車に比べたら揺れがやばい。俺も最初の方は酔って吐きそうになっていたが、すぐに慣れた。道は通る場所の草木が取り除かれ、それなりに走り易くはなっている。

 しかしノールは日に日に酷くなり、今日は完全にグロッキー状態。いつ吐いてもおかしくなさそうだぞこれ。


「酔いを治す魔法とかないのか?」


「私は神官じゃないもの。回復系は専門外よ」


 くぅ、魔導師も万能と言う訳ではないのか。てか酔いって回復系統で治るのかよ。

 アル・ラキエの状態異常無効は酔いにも効果が無いらしい。

 

「大倉殿、こないだのガチャで万能薬とか出ていたでありますよね……? あれを1つくださいなのでありますよ」


「ん? 却下だ。酔い止めに万能薬使うなんて冗談じゃないぞ」


「そ、そんなー。可愛い仲間が苦しんでいるのでありますよ? 大倉殿は人情という物が無いのでありますか?」


 弱々しい口調だったが、まだまだ余裕有りそうだな。自分で可愛い仲間とか言ってるんじゃないよ。

 万能薬も何個か出ていたが、酔い覚ます程度に使うなんてとんでもない。


「そうね、良い考えがあるわ」


「おっ、流石エステルだ」


 アル・ラキエをノールから引っぺがし、エステルは手に持っていた杖を振るう。杖の先端から黒いもやもやした物が発生し、ノールの顔面に張り付いた。

 

「な、何をするで……あり……まふ……ぐぅ」


 すぐにノールは力無くうなだれて俺に寄り掛かる。これは……寝ているのか?


「寝かせちゃえば大人しくなるわよね」


「無理矢理過ぎるだろ……まあいいか」


 寝かせちゃえば平気だけど……いいのだろうか。力を失いさらに頭がガクガクと揺れて、うっ、うぅ、とか声が漏れている。

 とりあえずさらに体を密着させて揺れだけは抑えておいてやるか。


「これがあと数日も続くだなんて、考えると憂鬱だわ」


「まー、仕方ないだろう。俺達も寝とくか?」


「遠慮しておくわ。座りながら眠ったら体が痛みそうだもの」


 寝っ転がるスペースも無いし、確かにこのまま寝るのはきつそうだ。

 ノールの体もガクガクと揺れているし、普通にしていたらまず寝るのも困難そうだしな。



「うお……くそ、重いぞこいつ」


「女の子に重いだなんて可哀想じゃない」


 数時間後、日も暮れ始め夕方になった。今日の野営の準備をする為に乗客達が降り自分達の寝る場所などを確保し始める。

 馬車での移動は日が落ちる前には止まり、夜の準備をしていた。思っていたよりものんびりとした移動だ。

 俺達も降りようとしたが、ノールがまだ寝たまんまなので俺が運ぶことにした。背負って持ち上げたのだが、結構重い。鎧着てるせいなのか?


「ゴブリン! ゴブリンが出たぞ!」


 誰かが声を上げた。周囲を見渡すと小さい小人が複数こちらに走って来ているのが見える。

 すぐに護衛の冒険者達が反応し、剣を取り弓を構え迎撃し始めた。


「あら、魔物が出たみたいよ」


「俺達は客として乗ってるし、戦わない方がいいか?」


 雇われて護衛している人達の仕事を、客である俺達がやってしまったら面子が立たないもんな。

 他の乗客が襲われそうになったら助ける程度でいいと思う。それに彼らは銅のプレートを首に提げているCランクだ。

 俺達の助けなんていらないだろう。


「おぉ、やっぱCランクなだけはあるな」


 3人のパーティ構成は剣士、弓、そして盾だ。バランスは良い感じなのか?

 主にゴブリンの攻撃を盾役が受け、その隙に剣士が攻撃。弓は前衛から少し離れ、敵を射抜く。

 次々とゴブリン達は倒され、ドロップアイテムが地面に転がっている。10匹以上は居たが、この冒険者達の相手にはならなかったか。


「……お、おい。なんかヤバそうなのがいるんだが」


「あれは……ミノタウロスね」


 ゴブリンを壊滅させ、一段落した時だ。遠くの方からやたらデカイ物がこっちに走ってきていた。

 頭には2本のぶっとい黒光りした角。手には石製であろう大斧。多分俺の身長程はあるかもしれない。

 そんな斧を持つ生物は当然図体もデカい。軽く俺の倍以上はある。

 それが鼻息荒く、紅い目を光らせこっちに向かって猛烈にダッシュしてきていた。めちゃくちゃ怖いんですけど。

 一応ステータスも見ておくか。

 

 ――――――

●種族:ミノタウロス 

 レベル:40

 HP:2万5000

 MP:0

 攻撃力:650

 防御力:450

 敏捷:30

 魔法耐性:10

 固有能力 無し

 スキル 突進

――――――


 うーん、サイクロプスよりは弱いか? これなら逃げる必要はなさそうだ。それにしても突進ってスキルなのだろうか?


「お前達! ここは俺達が時間を稼ぐから逃げるんだ!」


 護衛の冒険者達が叫び、乗客達に逃げるように促す。御者が馬車に乗り、野営の準備をしていた老若男女の乗客達も慌てながら荷台に乗る。冒険者の1人も、乗客達の護衛をする為にそれに付いて行った。


「エステルさん、ノール起こせない?」


「ふふ、私の睡眠魔法の効果は凄いのよ。ちょっとやそっとじゃ起きないわ」


 俺達はというと、地面に転がしていたノールを起こそうと頬を軽く叩いていた。パシパシと叩いても、うぅ、程度にしか反応しない。

 随分と深い眠りについているな。こういうところに優秀さを発揮しなくてもいいんだぞ。


 ノール無しでミノタウロスと戦おうとも思えないので、仕方なく万能薬をスマホから取り出す。乗客達も逃げ、冒険者も戦っているので見てる人は誰もいない。堂々と出しても問題無しだ。

 万能薬は瓶に入った透明な液体だった。

 これを飲ませればいいのか? 寝ている相手に液体を飲ませる……つまり口移しだな!

 と一瞬考えたがする勇気も無いので、とりあえずノールの口に瓶を突っ込んでみた。

 

「っ、ガボ、ぶへっ!? ごっほ、ごほ……な、なんなんでありますか!?」


「おう、さっさと起きるんだよ。ミノタウロスが来たから俺達も戦うぞ」


 苦しそうに咳をしながら、彼女は目を覚ました。何、何? と周囲を見ているが、問答無用で剣と盾を持たせ立たせる。


「逃げろって言っただろ! 何やってるんだ!」


「私達も一緒に戦いますよ。一応冒険者なので」


「戦うってお前等EとFランクじゃないか。俺達でさえ時間稼ぎが精一杯だ。後で俺達も追い付くから、お前らも早く行け!」


 盾の冒険者が攻撃を受けながら、戦士は足を攻撃し時間稼ぎをしていた。俺達は駆け寄り、武器を構える。

 早く逃げろと言われたが、それも仕方ないだろう。だって俺達のプレートEだしな。普通だったらただの足手まといにしかならない。


「支援するわよー」


「行くでありまーす!」


 冒険者達を無視し、エステルは杖を振るい俺達と冒険者2人に身体強化魔法を施す。

 ノールは元気よく飛び出し、盾が防いでいたミノタウロスの大斧を剣で弾き飛ばした。


「な、なんだあの娘……」


「それじゃあ私達も行きましょう」


 その光景を見て、冒険者2人は口を開けて唖然としている。筋肉ムキムキの盾役がなんとか受けていた大斧を、体が華奢の女の子が弾き飛ばしたんだ。そりゃびっくりするよ。俺はもう見慣れたけど。

 

 俺達が戦いに参加してからは、それはもう一方的だった。俺とノールのバフ、そしてエステルの支援魔法が付加された冒険者達も見違えるような動きとなりミノタウロスを蹂躙。

 盾兵は攻撃を防いでもビクともせず、剣士の一撃も易々とその皮膚を切り裂いた。ノールの攻撃に四肢を捥がれ、最後にはエステルの魔法で身動きを取れなくされて総攻撃。


「ミノタウロスがこんなあっさりと……」


「あっ、逃げた奴らを呼び戻さないと!」


 護衛の人達はミノタウロスを倒せたことに驚いていたが、すぐに逃げた人達のことを思い出す。まだそれほど経ってはいないので、そんなに遠くには行っていないだろう。道は草木が無い地面が1本続いているので、これを追えば迷うことなく追い付けるはずだ。


「なら、私がひとっ走り追い掛けてみるでありますか?」


「あー、そうだな。とりあえずこれ履いて行け」


「おぉ! いいのでありますか!」


「前にあげるって約束したしな。頼んだぞ」


「任せてくださいでありますよ!」


 バッグからニケの靴を取り出し、ノールに手渡す。俺のと違い白色のスニーカーだ。これ全部色一緒なのかと思ったが違うのな。彼女には白い方が似合うだろうと思い、これを渡すことにしていた。

 嬉しそうに受け取ると早速履き替えて、エステルに支援魔法を貰い馬車の逃げた方向へと走っていく。


「馬車なんかよりずっと速いわね」


「あいつ馬車乗らないで走った方がいいんじゃないかと思ってきたぞ」


 走るノールの速さはチーターかよお前は……と言いたくなるぐらいだ。一瞬で豆粒程の姿になった彼女を見て、冒険者も俺達も唖然としていた。 


●ノール・ファニャ    

レベル 24        

HP 2260

MP 310

攻撃力 530

防御力 355

敏捷 81

魔法耐性 30

コスト 15

●エステル

レベル 15→16

HP 600→610

MP 1500→1520

攻撃力 400→415

防御力 120→125

敏捷 12

魔法耐性 40

コスト 22

●【団長】大倉平八

レベル 23

HP 890

MP 155

攻撃力 315

防御力 255

敏捷 47

魔法耐性 10


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― 新着の感想 ―
[良い点] 平八の行動理念がガチャを回すことだけってかのがイイよね純粋で
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