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祠への出発

 ルーナ達との話し合いと護衛に行く準備を終えて、イリーナさん達との待ち合わせ場所であるテストゥード神殿へと向かった。

 馬小屋が近くにある協会で合流した方がいいと思ったけど……出発前に何かあるみたいだ。

 神殿に到着するとイリーナさんと他にも3人、神殿の人が入り口に集まり待っていた。

 既に準備は整っているようだ。待たせちゃったか。


「お待たせして申し訳ございません」


「いえ、お気になさらないでください。緊急とはいえ、私共も無理を言ってお願いしていますので」


「それで、移動の方はどうしましょうか? イリーナさん達は馬車に乗るんですよね?」


「いいえ、移動に関しては私達にお任せください。おいで、ダラ」


 イリーナさんが名前らしき単語を呟いて手を合わせた瞬間、神殿の向こう側で巨大な物体が飛び上がった。

 全体が青い平たく横長のシルエットに、細長く鋭利な尻尾を上下させてそれはこっちへと飛んで来る。

 あれって……エイじゃねーか!? めちゃくちゃでけぇぞ、横の長さだけでも5m以上はありやがる。

 というか空を飛んでいるんですが……何だよあれ。スカイフィッシュ並にUMAだろ!


 エイはゆっくりと飛びながら、イリーナさんの近くへと降りてきた。

 

「紹介いたしますね。この子は私と同じくテストゥード様に仕えている、カエルムライアのダラと申します」


 イリーナさんが合図するように手を向けると、応えるようにエイは宙返りをした。

 その後も地面に体が着くことはなく、その場で浮いている。

 どうなってやがるんだ……なんて、俺が唖然としていると。


「な、なんでありますかこの子は! 可愛いのでありますよ!」


 ノールが叫び声を上げてエイに近寄り、体に触ってはしゃいでいる。


「ノールさん、最初にそこに反応するんですね……。まずは浮いてることに驚きましょうよ」


「凄く大きくて強そうね。魔物なの?」


「魔物ではございません。テストゥード様の遣いです」


「……魔物、ですよね?」


「ですから、魔物ではなく遣いです! ダラは昔から神殿に住む、テストゥード様の遣いなんです!」


「そ、そうですか」


 俺の言葉にズイっと顔を近づけて、イリーナさんは怒鳴ってきた。

 す、凄い剣幕だ。守護神の遣いが魔物って言われるのは我慢ならなかったのか?

 どう見ても魔物だと思うけど……これ以上言っても気を悪くさせるだけだし止めておこう。

 それよりもだ、このタイミングで呼んだってことはつまり……。

 

「えっと、それで……この遣い様に乗って目的地に向かうってことですか?」


「はい、ダラには普段から私達の移動を手伝ってもらっているんですよ。定期的に行っている祠巡りも、ダラにはお世話になっているんです」


 イリーナさんが体を優しく撫でると、見た目ではわからないが、エイは胸ビレを揺らして喜んでいるようにも見える。

 やっぱりこのエイに乗って移動するのか。

 ……どう見ても魔物にしか見えないけど、大人しいしイリーナさんの言葉も理解していそうだな。

 魔物だとしても、ただの魔物ではなさそうだ。


「モフットと同じで、人懐っこい子なのでありますかね」


「テストゥード様って存在からの影響は受けていないみたいだから、眷族ってところかしら」


「この子に乗って目的地に向かうのですか。結構強そうですし、道中は私達の出番はなさそうですね」


 モフットは影響を受けたのに、普通に町の中で活動できているから、このエイには特別な何かがあるってことか?

 それにシスハの言うように強そうだし、一応ステータスを見ておこう。

 

 ――――――

 ダラ ●種族:カエルムライア 【状態】眷属

 レベル:85

 HP:18万6500

 MP:5600

 攻撃力:3800

 防御力:2600

 敏捷:225

 魔法耐性:60

 固有能力 浮遊 精神感応

 スキル テールスピア ポイズンテール

――――――


 つよっ!? つ、強くない? 本当に俺達の出番なさそうなんですが。

 ダラ、ディアボルスよりもずっと強いぞ……。

 迷宮のボスや大討伐の核の魔物並の強さはありそうだ。

 ……ん? この状態って項目、ディアボルスにもあったよな。

 同じく眷属ってなっているのは、テストゥード様の遣いって意味なのか?

 これのおかげで影響を受けず、町の中でも普通に活動ができるのかね。

 

 「それでは出発いたしますね。落ちないように気をつけてください。ダラ、お願い」


 とりあえず足の確認も終わり、問題の祠に向けて出発する為にエイの背中へ乗り込んだ。

 ステータスからわかるように、俺達4人とイリーナさん達4人の計8人が乗っても、ダラはビクともしない。

 俺達を乗せたダラはみるみる神殿上空へ飛び上がり、ある程度の高さで町の外へ向けて移動を始めた。


「お、おぉう……結構高くまで飛べるんだな」


「そうね。これなら道中で魔物の相手をしなくて済みそうだわ」


 馬での移動と思っていたら、まさか空飛ぶエイで移動することになるとは。

 というか、この周辺の魔物は飛ぶ魚類系が多いのだろうか?

 スカイフィッシュもいたし、トルネードシャークとかいうのもいるみたいだし。

 まあ、おかげで思っていたより行き帰りが楽そうだからいいか。

 ……あっ、ビーコンどうやって設置しよう。

 センチターブラに包んで、イリーナさん達に気が付かれないように落とすしかないかな。


「気持ちがいいでありますねー。フリージアも一緒だったら喜びそうでありますのに」


「あいつは連れて来ない方がいいだろ……」


「はしゃぎ回って大変なことになりそうですからね……」


 魔法のカーペットでも大変だったのに、このエイに乗せたらどうなることやら……。

 速度はカーペットよりは遅いけど、その分高度があるから落ちたら大怪我しそうだ。

 ……あいつならこの高さから落ちても平然としてそうだけど。

 そんな俺達の会話を聞いていたのか、イリーナさんが話を振ってきた。


「フリージアという方は、この前あなた方と一緒に来ていた方ですか? 小さい子もいらっしゃいましたよね」


「あっ、はい。あの2人はちょっとした知り合いなんですよ」


「そうでしたか。お2人とも緊張したご様子でしたが……」


「い、いえ、気にしないでください。ああいう場所の雰囲気に慣れてなかっただけですよ」


 あの時はテストゥード様の影響を受けて、ルーナとフリージアは神殿に入るのを警戒していたからなぁ。

 そのせいで何かあったのかと、心配させちゃったみたいだ。


「そうですか……もしよろしかったら、またあの子達を連れて神殿にいらしてください。その時はフリージアさん達にもダラを紹介いたしますね」


「本当でありますか! 絶対に連れて行くのでありますよ!」


 イリーナさんの提案にノールが自分のことのように喜んでいる。

 うーむ、このエイに乗せてもらえたら、フリージアは喜ぶだろうな。

 だけどあの神殿の近くに行ったら2人共また警戒しそうだし……眷族にならなくても、ダラみたいに影響を受けない方法があればいいのに。

 それからしばらく、イリーナさんが声を掛けながらダラを誘導し目的地に向かっていたのだが。


「あの、シスハさん。少しお聞きしたことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


 突然イリーナさんがシスハに声を掛けた。


「はい? 何でしょうか?」


「お見受けしたところ、高位の神官様でいらっしゃいますよね?」


「うふふ、バレちゃいましたか。やはり私の体を通して出るオーラは隠せませんね」


 ニヤリと笑い、シスハがドヤ顔で胸を張っている。

 この言動の時点でとても高位の神官なんかに見えないんだが……むしろイリーナさんの方が高位の神官に見えてくるぞ。

 こんなこと言い出すなんて、回復魔法を使える者同士で何か感じるものがあるのだろうか。


「先日、神殿を訪れていただいた時からもしかして……と、思っていたんです。一体どれ程の修行を積めばそれほどの……シスハさんはどの方に信仰を捧げていらっしゃるのでしょうか?」


「……秘密です。ですが、揺らぐことのない意思で、毎日祈りは捧げていますよ。いちにちいっさつがモットーです」


「いちにちいっさつ……ですか? 私には何かわかりませんが、シスハさんも深い信仰心をお持ちなのですね。私もあなたを見習って、もっと努力いたしますね!」


「うふふ、頑張ってくださいね!」


 イリーナさんが胸に手を当てて、目を輝かせてシスハを見ている。

 止めて、純粋な人をやばい方向に誘導しようとするの止めたげて! こんな奴を見習っちゃいけない!

 というか、さらっと危ないこと言ってなかったか? いちにちいっさつって……。


「どうかいたしましたか? 私の信仰対象が何か気になっちゃいましたか?」


「……いや、いい。嫌な予感しかしない」


「つれないですねー。少しぐらい興味を抱いてくださってもいいんですよ? まあ、秘密ですけどね」


「自分で言っておいて教える気はないのでありますね……。私、気になるでありますけど」


「私も嫌な予感しかしないけど、気にはなるわね……」


 聞いちゃいけないことを聞いたような気が……。

 なんともいえない雰囲気のまま、俺達は大きなエイの背に乗って目的地へと向かうのだった。

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