第2回ピックアップガチャ
シスハの部屋で酒を飲み酔い潰れそうになっていたが、ガチャの通知が来たことで俺は覚醒した。
すぐにガチャを回す為に彼女と共に部屋から出て、ノール達を起こしに行く。
酔いは完全に醒めていたが、念の為にシスハに回復魔法を掛けてもらった。それと一応酒の匂いも消しておく。
2人だけで飲んでいたとノール達に知られたら、何か言われそうだからな。
俺はノールとエステルを起こしに行き、ルーナはシスハに任せる。
ノールはペット小屋の中でモフットとまだ遊んでおり、エステルは寝ていたが眠りが浅かったのかすぐに起きてくれた。
そしてルーナもシスハが無事に起こして、深夜だというのに全員居間へ集合した。
「こんな時間に来るなんて、迷惑なガチャでありますね」
「ふぁ……そうね。だけどいつもこのぐらいの時間まで回すのを待っていたから、まだ平気だわ」
「寝ていたのに起こしてホントすまないな」
「……ねむい」
「ルーナさん、やっぱり起こさない方がよろしかったですか?」
「構わない。ガチャをするなら仕方がない。むしろ起こしてもらわないと困る」
朝になってから回すという選択肢もあったが、ガチャの結果次第で何があるかわからない。
最悪魔石を使い切って狩りに行くなんてことも……なので早めに引いておきたかった。
というか朝まで我慢できねぇ!
「それで、今回はどんなガチャなのでありますか?」
「ピックアップガチャだ」
「それってシスハの召喚石を手に入れた時のガチャよね」
「私ってピックアップされていたのですか。うふふ、さすが私ですね!」
シスハが鼻息を鳴らし腰に手を当て、満足気にニヤけている。ピックアップされていたのがそんなに嬉しいのか……。
「想定していたガチャと違う物が来ちゃったでありますけど、大丈夫なのでありますか?」
「うーん、微妙なところだが……とりあえず何がピックアップされているのか見てみよう」
通知でピックアップガチャ開催の表示を見ただけなので、まだどんな内容なのかは見ていない。
そんな訳でさっそくスマホをガチャ画面に切り替えて確認をしてみた。
――――――
ピックアップ対象
UR
・クローエ・アウレリア
・ハイディ・ブリューゲル
・グリモワール『グラ』
・ニーベルングの指輪『神々の黄昏』
・アイムール
SSR
・アダマント系
・グリモワール系
・ニーベルング系
・ブレスレット系
―――――――
「ニーベルングの指輪って、URもあるのでありますか……」
「グリモワールもURの物があるのね……」
「上の2人がユニットだな。クローエは姫、ハイディが魔導戦士だ。アイムールは確か普通のUR武器だったはず」
「URが5個ピックアップですか……。ユニットを狙うには少々厳しそうですね」
前回のピックアップも4個だったけど、さらに増えて5個になってやがる。
それに今回はSSRのピックアップまでされているのか。
アダマント系は、俺の使っている鎧とかのことだと思うが……盾はこの前ポイントに変換しちまったぞ。
どうしてこのタイミングで来るんだよ! これなら変換しないで残しておけばよかったかな……。
結果論だから後悔しても仕方がないけど、悔しい!
それにしても、グリモワールとニーベルングのURがあるのには驚きだな。
これはやっぱり全部揃えたら何かしらあるのだろうか。
SSRの方もピックアップされているから、ついでに他の残りも手に入ればラッキーってところか。
「平八、回すのか回さないのかどっちだ?」
「回すよ。ガチャ回さずして何が平八か!」
「うむ、まるで意味がわからないがよくわかった」
「結局回すってことでありますね……」
おっと、考え込んでいたせいで、回すか迷っているように思われたか。
UR5つのピックアップは多いけど、その中に2人もユニットが入っているんだ。
URを2つぐらい出せば、どちらか1人の召喚石ぐらい手に入るだろう。
それに今回は前回のピックアップと違って、11連と単発が対象だ。
多く引けるからその分安心感もあるというもの。
「お兄さんの狙いとしてはどっちの子なのかしら?」
「どっちが来てくれてもありがたいんだが……欲を言えばクローエかな」
「能力向上系の方なんですよね?」
「ああ、GCでは各ユニットのステータス大幅向上、スキルのクールタイム短縮ができた。そして本人にもそれなりの戦闘能力がある」
「クローエが来てくれたら、私のスキル後の筋肉痛も和らぐのでありますかね?」
「その可能性はあるな」
俺はクローエを持っていなかったけど、GCじゃURのバフユニットだけあって、とんでもない能力上昇効果があったみたいだからなぁ。
ノールもバフ持ちだから、この2人の相乗効果があれば怖いものなしだ。
ただキャラが姫だけあってか、かなり高飛車な性格だという情報を見たことがある。
仲間として迎え入れたら、ひと波乱起きそうで心配だなぁ。
ハイディは名前の通り魔法を使える戦士だ。ノールが魔法を使えるようになったと思うのが1番イメージとして近いだろう。
URだけあってもちろん強いのだが、クローエと比べちゃうとな……。
「今回はどのような順番で回していきましょうか。ガチャはどのぐらい回すおつもりなんですか?」
「う-ん……クローエかハイディのどちらかが出るまでは回したいかな。ユニットが出た時点で終わりでもいいかもしれない」
「平八にしては謙虚な物言いだ」
「はは、俺はちゃんと引き際という物を理解しているからな! ……ん? そんな目で俺を見てどうした?」
「別に……」
俺は見境なしにガチャを引くような人間じゃないからな。
魔石がいっぱいあるからって、全部使い切るような使い方はしないさ。
今回は戦力増強が主な目的だし、ピックアップに関係ないユニットが来た時点で止めることも考えておこう。
ルーナがジト目で俺を見つめているが、気にしない気にしない。
それよりもどのぐらい回すか決めないとな。
2100個ある魔石を全部使い切るつもりはない。このピックアップで全部ぶち込むのは、リスクが高過ぎる。5つの中からクローエだけを狙うとしたら、全部溶かしても足りないかもしれない。
ボックスみたいなガチャが来た時の為に温存しておきたいから、まずは1000個程度で抑えておこう。
えっと……各3回ずつがちょうどいいかな。5人と1匹だから、これで11連18回、魔石900個の消費だ。
「よし、それじゃあまずは各3回ずつ回していくとしようか」
「魔石に余裕があると、皆同じ回数引けていいでありますね」
「お兄さん達が夜まで頑張って貯めてくれたおかげだわ」
「いやいや、確かに夜までやったけど、ここまで貯まったのは全員で協力したからさ。あとディウスやグリンさん達にも感謝しておかないとな」
今回は俺も頑張った方だが、ノール達も毎日狩りをしてくれ、夜にルーナが手伝ってくれたお陰だ。
こうやってガチャを回せるのも、皆の協力があってのもの。
それにディウスやグリンさんから送られてくる魔石もあった。今度お礼に行かないとな。
ガチャの順番をどうしようか話し合った結果、まずはシスハからとなった。
「うふふ、いつも1番最初に引かせてもらってすみませんね」
「途中でURが出て、引けなくなった! なんて騒がれても困るからな」
「いやですね、もーう。私がそんなことで騒ぐ訳ないじゃないですかー」
片手をパタパタさせて、シスハはまるで冗談を言われているかの反応をしている。
途中で終了して引けなくなったら、絶対騒ぐだろ……。
「シスハと大倉殿の図太さを、私も少し分けて欲しいでありますよ……」
「似た物同士だ。だけど私はそこが好きだぞ」
「そうね。2人共気が合うみたいだし。さっきも……いえ、なんでもないわ」
どうしてそこに俺も入っているんですかねぇ……。
シスハと比べたら、俺は繊細でピュアな心の持ち主なんだぞ。
とても傷つきやすいから丁寧に扱って!
「さて、まず最初のガチャ、いきますよ! どっせい!」
ようやく本題であったガチャを開始した。
初番であるシスハは豪快にスマホをタップし、11連ガチャを回す。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀。
【R食料、Rぬいぐるみ、R閃光玉、R弁当箱、Rキャンドル、Rランプ、R香水、R金塊、Rポーション×10、Rカトラス、Rマジックダイナマイト】
「おい、出鼻を挫かれたじゃないか」
「うぐ……まだ1回目、1回目です。焦ってはいけませんよ、落ち着きましょう!」
「まずシスハが落ち着くべきだ」
騒ぐシスハを、ルーナが肩を叩いて落ち着かせている。
最初の1回目からグロ画像出すのは、止めていただけませんかねぇ……。
さらに2回ガチャを回すと、宝箱は金と白だった。
【Rスピーカー、R金庫、SRエクスカリバール、Rぬいぐるみ、SR鍋の蓋、Rボーンネックレス、Rチャクラム、Rお守り、SRトマホーク、R刀、SRマジックシールド】
【Rおやつ、SR祝福の首飾り、R万能薬、SR千里眼、Rキャンプセット、SRマジックシールド、Rトランシーバー、Rアニマルビデオ、Rアイスリング、SRツインサーベル、SSRアダマントアーマー】
「ふぅ、金だけで終わるのだけは避けました……」
「でもダブりなのがなー」
「いいじゃないですか。これで大倉さんの鎧が強化されるのですから」
「そうね。それに、これでピックアップがちゃんと働いてるってわかったわ」
確かにこれでピックアップされていることがわかった。
それにダブりといっても、アダマント系ならシールド以外は重ねられるからいいか。
グリモワールやニーベルング系は重ねられるのかわからないけど……複数装備やハウス・エクステンションのポイントに変換する使い道もあるから問題はないな。
シスハと交代して、2番手のルーナの番だ。
「ふむ、前回はURでダブったから、今回こそちゃんとしたURを出してみせる」
「おお、ルーナがやる気なのでありますよ」
「私の分も頑張ってくださいね!」
「任せろ」
この前のボックスガチャで、ルーナはURを引いているからなぁ。
そのせいもあってか、いつもはやる気も生気も感じない彼女の瞳に、光が宿っている。
まさかまたURを引いてくれるんじゃ……ノールとモフットに続いて、ルーナまで強運の幼女となってしまうのか!
まず1回目、ルーナは11連ガチャを押す。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金。
【R食料、SRエクスカリバール、SR腕カバー、SRオートガードスフィア、SRカオスリング、R万能薬、SRビーコン、R丸太、Rひのき棒、Rロングコート、SR金のメイス】
2回目。
宝箱は、銀、金。
【SRエクスカリバール、SRニケの靴、SR慈愛の指輪、Rスコップ、SR守護の指輪、Rロングソード、Rボーガン、SRスタビライザー、SR修羅の拳、Rマジックポーション×10、Rキャンプセット】
……3回目。
銀、金。
【Rおやつ、SRエクスカリバール、R薄い本、SR芭蕉扇、SRカドゥケウスの紋章、SR命の宝玉、Rメタルウィップ、Rマスク、SRビーコン、R手裏剣、SRウエストポーチ】
「……寝る」
「ちょ、ふてくされるなって」
「ふてくされてなどいない」
「まあまあ、そう不機嫌にならないでくださいよ」
「うぅー」
3回目のガチャを回し終えたルーナは、いつもの生気のない瞳へと戻っていた。むしろいつもより酷いかもしれない……。
スマホを机に置いて椅子から立ち上がり部屋に戻ろうとしたが、シスハに後ろから抱き締められて動き止める。
口を尖らせて不満そうにしてはいるけど、それからシスハの膝の上に乗せられて、頭を撫でながら渋々といった様子で大人しくなった。
一騒ぎあったところで、期待度のノールの出番だ。
「今回は早めなので、安心して回せるのでありますよ」
「何勘違いしているんだ? ノール、俺はお前を信じているからな。絶対UR引いてくれるって、信じているからな」
「だからそうやってプレッシャー掛けてくるの止めてほしいのでありますよ! どうして意地悪するのでありますか!」
「はは、悪い悪い。冗談だよ」
ノールは後回しになって、全員に期待される中ガチャを回すことが多いからなぁ。
それだけ彼女のガチャ運を信用している証でもあるのだが。
UR抜きでSSRの獲得率だけ考えても、多分モフットと争うぐらいには出しているはず。
その証拠に、今回し始めた1回目も……あっ、白だ。
【Rポーション×10、SRニケの靴、Rクロムヘルム、SRエクスカリバール、Rトランシーバー、Rナイフ、SRスパイクシールド、SRゴージャスシューズ、Rホットリング、SR高級アイマスク、SSRグリモワール『イーラ』】
勢いに任せて、ノールがさらにもう1度11連を引くと、今度は金だった。
【SR鍋の蓋、Rぬいぐるみ、Rアイスリング、SRビーコン、SR高級ランプ、R布の服、R銅のレギンス、SRハイポーション×10、R煙玉、R望遠鏡、Rエストック】
「大倉殿、次は単発10回でいいでありますか?」
「どうぞどうぞ」
「ありがとうございます、でありますぅー」
ここで単発でいくのか。やっぱりノールは単発教がお好みみたいだ。
俺としては1回分損するから微妙なところなんだけど……。
そう思いながらノールが次々と回していく単発ガチャを見守る。
【R掃除機】【SRエクスカリバール】【Rおやつ】【SSRニーベルングの指輪『ラインの黄金』】【SRフランシスカ】【R万能薬】【SSRディメンションブレスレット】【SR方天戟】【SRゴールドブレスレット】【R食料】
「むぅー、まあまあでありますかね」
「SSRが3つも出てるのにまあまあって、嫌味でしょうか?」
「平八が期待するだけはあるようだ。少し血と一緒に運を分けてくれ」
「えっ、ちょ!? 噛んじゃ駄目でありますぅ!」
無残な結果で終わったシスハとルーナが、ノールを恨めしそうな表情で見ている。
見ているどころか、ルーナがノールの背後に回りこんで、肩に手と顎を乗せて今にも噛み付きそうだ。
まさか単発で2個もSSRを出すとは……URは出なかったけど、やっぱりノールのガチャ運は驚異的だな。
ノール達が落ち着いた辺りで、今度はエステルの番だ。
「それじゃあ、次は私ね」
「クローエ達も来てほしいけど、エステルからしたらグリモワールも狙いたいところか?」
「ええ、それはもちろん。あとは光属性のグリモワールだけだから、このURの物がそうだと思うのだけど……」
今回は目玉のピックアップに、URのグリモワールが入っている。
火、水、風、土、闇のグリモワールは揃っているから、これが最後の1つなのだろうか。
全部揃えたら何かあるかもしれないし、俺としてもなかなか興味深いぞ。
エステルは落ち着いた様子で11連ガチャをタップする。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金。
【Rボーンネックレス、SR守護の指輪、Rポーション×10、SRビーコン、SRエクスカリバール、Rハードカバー、Rボーンナイフ、Rショルダーパッド、SR厚い本、SRショルダーバッグ、SRニケの靴】
再度エステルが11連ガチャをタップするが結果は……金。
【Rおやつ、SR天使の衣、SR鍋の蓋、R万能薬、SRビーコン、Rぬいぐるみ、SR慈愛の宝玉、SRコロナリング、SR方天戟、R寝袋、R催涙玉】
「むぅー、私も金止まりだわ」
「エステルも私の仲間になってくれ」
「そうなっちゃいそう。私っていつもこうなのよね。運が良いのか悪いのかわからないわ」
2連続で金止まりだったエステルに、ルーナが嬉しそうに声を掛けている。
1人だけ金で終わったのがよっぽど悔しいんだな……。
ルーナに不安を煽がれたせいか、少し浮かない表情でエステルはスマホをタップする。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金、白、虹。
「えっ……やった。初めてのURかしら?」
「うおおぉぉ! よくやったエステル!」
「ふふ、もっと褒めてくれてもいいんだからね」
URを引いたエステルは、片手の拳を握って小さく掲げた。
思い返してみると、今までエステルってUR引いたことなかったな。
いやぁ、喜ばしいことだ。
「中身、中身はなんなんですか!」
「くっ、なんということだ……でもおめでとう」
「これでクローエかハイディが来てくれるといいのでありますが……」
UR出たのはいいのだが、問題はその中身だ。
ピックアップ中だから、あの5個の中のどれかが当たる確率が高い。
だけどいつものパターンだと、早く出ると大体ハズレなんだよなぁ。
URを引いた喜びの余韻を残しながら、エステルがさらに画面をタップして出てきた中身を見守る。
【Rトランシーバー、Rウィンドロッド、SRマジックブレード、Rティアラ、SRビーコン、SRニケの靴、SR爆裂券、Rジャンクリング、SRエアーロープ、SSRグリモワール『アワリティア』、URフリージア】
えぇ!? フ、フリージアだと!?
ピックアップをすり抜けて出てきやがった……マジかよ。
「あら、フリージアだわ。ピックアップ対象じゃないけど、ユニットが出たから目標達成かしら?」
「そうですね。だいぶ早く出てくれましたし、魔石の消費が少なく済んでよかったですね」
「はぁ、これでとりあえずガチャ終了でありますね。いやはや、良かったのでありますよ」
「もう終わりなのか。今回はSSRすら引けなかったから残念だ」
ノール達はもう終わる気まんまんなご様子だ。だけど……これで終わりでいいのだろうか?
きている……流れが、着実な流れが! ここは続行するべき、そう本能が訴えている。
というか、俺まだ1回も引いてないんですが。このまま終わる流れにされてなるものか!
「あの、終わろうとしているところ申し訳ないのですが……ガチャ回したいんだけど」
「何を言っているのでありますか! もうユニットは出たのでありますよ!」
「まだピックアップのURが出ていないじゃないか! この流れで狙うべきだ! 最初にクローエかハイディのどちらかが出るまでって言っただろ!」
「ユニットが出たら終わってもいいとか言っていたような……」
「やっぱり1度も引かずに終わるのもね?」
「引けなかったら私が騒ぐかもとか言ってましたけど、大倉さんだってそうじゃないですか……」
このまま終われば、ピックアップを引いていないとしても勝利で終わる。
だけど……見ているだけで終わりなんてやっぱり辛い。俺だってガチャ回したい。
せめて、1回でいいから引かせてもらいたいです。
「残りのお兄さんとモフットの分だけ回したらどう? このまま終わらせたら、お兄さんが発狂しちゃうかもしれないわ」
「あー、それもそうでありますね」
「このまま不完全燃焼にしておくのも、確かに危なそうですよね。大倉さん、それでどうですか?」
「ありがとうございますぅ!」
エステルの口添えのおかげで、俺とモフットも3回ずつ回す許可を賜った。
本当にありがてぇ、ありがてぇよ……。
最初に決めた順番だと次はモフットだったので、そのまま続行することになった。
「それじゃあモフット、いくのであります!」
「今回は歩かせないんだな」
「私と遊んで疲れちゃっているでありますからね」
夜だっていうのにペット小屋の中で走りまわっていたからなぁ。
ノールが抱き抱えているモフットの目の前にスマホを持ってきて、前足で11連ガチャのボタンを押させる。
モフットは眠たいのか、ブーと鳴きながらポンポンと連打した。
そして一気に3回ガチャを回した結果、金1回、白2回だ。
【R食料、Rおやつ、SR守護の指輪、Rショートスピア、SRマジックブレード、SRエクスカリバール、Rサンダーロッド、SRバタフライグリップ、R万能薬、Rポーション×10、SR芭蕉扇】
【Rぬいぐるみ、SR方天戟、Rロングソード、SRショルダーバッグ、SRカオスリング、SR守護の指輪、Rクロムアーマー、Rアニマルビデオ、R消臭剤、SSRアダマントシールド、SSR蛇腹剣】
【R煙玉、SRビーコン、SR仕込み杖、Rマジックポーション×10、Rボーンナイフ、SRマジックブレード、Rトランシーバー、Rキャンプセット、SR厚い本、SR鍋の蓋、SSRパワーブレスレット】
「URが出なくても、さすがモフットね」
「3回で3個もSSRを出すなんて、ノールさん共々どんだけ運がいいんでしょうか……」
「モフット、私にもその運を分けてくれ」
「むふふ、よしよしなのでありますぅー」
幸運のウサギは伊達じゃないか……。URは出なかったけど、SSRが3個も出てきやがった。
ガチャを終えたモフットは、そのままノールの膝の上でパタリと横になって寝ている。
本当に良い仕事をしてくれた。俺も負けないぞ!
「さて、ついに真打登場という訳だ」
「大倉殿はガチャに関してだけは、いつも自信満々でありますよね……」
「ふふ、それがお兄さんらしくていいじゃない。頑張ってね」
ようやく俺の番が回ってきた。
最後を飾るからには、やはりURを引いてビッと終わらせてやりたい!
そう意気込みを胸に、俺は11連ガチャをタップした。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金。
【R万能薬、SR鍋の蓋、SRビーコン、Rぬいぐるみ、SRエクスカリバール、SRマジックブレード、SR幸福の指輪、Rボーンリング、SR賢者の石、SR金のメイス、R食料】
「ぐっ」
「意気込みだけじゃやっぱり出ませんよねー」
「私と一緒に爆死しよう」
「爆死仲間に引き摺り込もうとするんじゃあない! 次、次でUR出すからな!」
ルーナが俺に微笑み掛けながら手招きしている。
そうやって人の足を引き摺ろうとするの止めてください!
ルーナの誘いをお断りするように、俺は力強くスマホをタップした。
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀、金。
【R食料、SR鍋の蓋、SR守護の指輪、Rおやつ、SRマジックブレード、SRビーコン、Rランプ、Rスパタ、SRニケの靴、Rサンダル、SR命の宝玉】
「ほ、ほあぁぁ!」
「だから止めた方がいいって言ったのでありますのに……」
「でもまだ1回残っているわ。次こそ引けるかもしれないわよ」
「お、おう……そうだな」
べぇ……やべぇ……。2回連続金止まりだ。
このままじゃせっかくもらったチャンスが台無しだぞ。
せめてSSR、SSRさえ来てくれれば……!
「ふぅー」
乱れた心を落ち着かせて、俺は目を瞑った。
心頭滅却、雑念を捨て、ガチャだけを考える。イメージするのは、常にURを引く自分。
……よし、いいぞ! いざ行かん!
画面に宝箱が映し出される。そして宝箱は、銀。
【Rおやつ、Rスパタ、Rぬいぐるみ、Rトランシーバー、Rポーション×10、R寝袋、R薄い本、Rブーツ、R鋼の鎌、R籠手、R刀】
「うっ、うわぁぁぁ!」
「平八、仲間だ」
「うぐっ……ぐぬぬ……もう――」
「もう1回というのは駄目でありますよ」
「そこを、そこをなんとか! お慈悲をください!」
「駄目なのでありますぅー!」
最後でグロ画像だとぉ! ルーナと仲間どころか、むしろ俺の方がひでぇじゃないかよ!
ノールにもう1度引かせてくれと懇願してみたが断固拒否され、俺はスマホを没収された。
くっそ、くっそぉぉ! ……でもまあ、ガチャも回せたし、フリージアが出てくれたからいいかな。