表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/405

ガチャに向けて

 乗馬訓練も体験し、次の日からレベル上げの為に狩りを始めることにした。

 新しい狩場を探そうかと思ったけど、早急に目標分のコストを稼ごうとまずはレムリ山で狩りをすることに。

 そして狩りを続けて数日経ち、今日も俺達はリザードマン狩りに励んでいた。

 

「ほっ、りゃ!」


 鍋の蓋で攻撃を受け流しつつ、リザードマンの足に執拗にエクスカリバールを突き立てる。

 そしてバランスが崩れたところで、肩に突き刺し手前に引っ張り転倒させ、立つ暇も与えずに背中の中央に突き刺す。

 あっという間にリザードマンは光の粒子になり、鱗などのドロップアイテムを残して消えていく。


「ふぅ、一段落済んだな」


「相変わらずここのリザードマンは大量に出てくるでありますね」


「だけど移動する手間がないのは助かるわ。魔法を撃ち込むだけで、向こうからやってきてくれるんだもの」


 本日数回目になるリザードマンの集団撃破。

 エステルに遠くから魔法で攻撃してもらい、反応して向かってくるリザードマンの集団を待ち受ける形で狩りをしていた。

 岩山の上で狩りをするのは足場が不安定だから、ゴブリンの森のように突っ込んでいく狩りはしていない。

 次々と岩山のあっちこっちから湧き出してくる上に、比較的強い方だから囲まれるような戦い方は避けている。

 

 それに攻撃すれば勝手に仲間を呼んで向かってくるから、エステルの言うように移動する手間が省けて今のやり方の方が楽だ。

 希少種であるケプールもいるし、魔石集めや高額で買い取ってもらえる皮や鱗も手に入ってやりがいもある。

 お陰様でレベルも1上がって80レベルに到達した。この調子ならすぐに目標であるコスト20は確保できるな。


「魔石狩りが終わったと思ったらレベル上げ。平八は生き急ぎ過ぎだ」


 ルーナが岩に座りながら、槍を片手で肩に乗せてだるそうにしている。

 レベル上げだから強制的に連れ出したけど、だいぶご不満みたいだ。


「ルーナがのんびりし過ぎてるだけじゃないのか」


「そんなことはない。これだから最近の若者は困る」


「ルーナも十分若いでありますよね……」


 幼女に最近の若者とか言われたんですけど……というか、ルーナがぐうたらしている話とまるで関係性がない!

 そういえばルーナって何歳なんだろう。見た目的には10歳前後。しかし吸血鬼だから見た目通りの年齢とも限らない。

 だけどシスハに甘えてる姿は歳相応に思える。うーむ、気になるぞ。


 聞いてみようとルーナを見ると、あからさまに俺から目線を外してそっぽを向き始めた。

 何を聞かれるか察して無視するつもりだな……。

 無理に聞こうとしたらシスハが怒りそうだし、ここは諦めて……あれ、そういえばシスハがさっきから全く会話に入ってこないな。


「……はぁ」


「ため息なんて吐いてどうしたんだ?」


「シスハが狩りで楽しそうにしていないなんて、珍しいでありますね」


 シスハは岩に腰を掛けながら、下を向いてやるせなさそうにしていた。

 狩りをしている最中にこんな風になるなんて、今まで見たことがないぞ。

 リザードマン狩りでも戦闘に参加はしていたから、不調ではないはずだが……。


「あはは……狩り自体は楽しいんです。ですがこうやって皆さんと狩りをすると、自分の力不足を感じてしまいまして……」


「別に気にするほどでもないと思うが……」


「いえ、気にしますよ。大倉さん達に比べると、明らかに私が倒す速度遅いんですから」


「神官なんだから、それで問題ないんじゃないかしら……」


 8体でひと塊のリザードマンを、エステルとルーナに遠距離攻撃で削ってもらい、生き残ったのを俺とノールで処理していた。

 シスハも戦うことはあったけど、1体倒すのにそこそこ時間が掛かるせいか今では回復を優先しているみたいだ。

 問題なく倒すことはできるけど、神官であるシスハじゃ強い敵相手の効率優先した狩りは不向きみたいだな。

 装備も大体回復向けの物を付けているからそれも仕方がない。


 それにノールは平気でも俺が結構攻撃を受けているから、回復優先の方が俺としては助かる。

 ノールやシスハみたいにひょいひょい避けたり出来ないからな……。さっきみたいに攻撃を受け止めてから反撃した方が、下手に避けるよりも安全だ。

 そんな風に考えていると、ルーナがとんでもないことを言い出した。


「平八の武器をシスハに渡したらどうだ? それなら誰でも使えるのだろう?」


「何言ってるんだよ! そんなことしたら俺が無能に――」


「その手がありました!」


「あー! どろぼー!」


 ルーナの言葉を聞いたシスハが、俺の腰にぶら下げていたエクスカリバールを瞬時に奪い去っていった。

 はっや!? 一瞬すれ違っただけで奪い取っていきやがったぞ! こいつプロのスリ師かよ!


「返せ! 俺のエクスカリバール返せよ!」


「ちょっとだけ、ちょっとだけ借りるだけですから! すぐ返しますって!」


 返せと詰め寄ると、エクスカリバールを胸に抱いてシスハは後ずさる。


「大倉殿、貸してあげてもいいじゃないでありますか」


「お兄さん、ずっと取られる訳じゃないんだから、少しぐらい貸してあげましょうよ」


「……ちょっとだけだからな」


「ありがとうございます!」


 渋々貸すと言うと、シスハは満面の笑みでエクスカリバールを振り上げながら端っこの方にいるリザードマンに向かっていく。

 別に貸すのは構わなかったけど、無理矢理パクられたからつい取り返そうとむきになってしまった。

 それにしてもだ……。


「傍から見てると変人にしか見えないな」


「ふふ、お兄さんもいつもあんな風に見えているのよ」


「格好のおかしな大倉殿はもっと変でありますけどね」


 黄金のバールのような物を振りかざしながら走っていく姿を見ると、完全に不審者だな。

 普段俺はあんな感じになっているのか……ノール達とだけ狩りをしているからいいけど、他の人がいる時だと少し恥かしいかも。


 近づいてきたシスハに気が付いたのか、リザードマンは叫び声を上げようと口を開こうとしている。

 しかしその前に、シスハの姿がぶれて消えた。

 どこへ行ったのかと思いきや、次の瞬間にはリザードマンの喉元にエクスカリバールをブッ刺しているシスハの姿が。

 彼女はそのままリザードマンを地面に引き摺り倒すと、凄まじい速さで体にバールを振り下ろしていく。


 こえぇ……というかエグイ。俺がいつもやっていることだけど、第3者目線で見るとここまでエグイとは……。

 仲間を呼ぶ暇もなくあっという間にリザードマンは息絶えて光になっていく。

 そしてスキップをしながら上機嫌なご様子でシスハが戻ってきた。


「これ凄いですよ! リザードマンが一瞬で倒せちゃいました! ヘンテコな武器だと思っていましたけど、欲しくなってきちゃいましたよ!」


「お、おう……とりあえず返そうな」


「あん! もう少しぐらいよろしいじゃないですかー」


 シスハの手からちょっと強引に奪い返すと、まだ物足りなさそうにクネクネ体を動かして不満を垂れている。

 今の俺にはこのエクスカリバールしか強い武器がないんだ。持っていかれたら困るぞ。


「はぁ、私のヴィーティングも1度強化できたらいいのですが……」


「元々シスハの杖は回復用なんだから、お兄さんみたいにSRの武器を強化してみたらどう?」


「あっ、それいいですね。最近マジックブレード使っていますから、それを強化いたしましょう」


「専用の武器以外にも、何かしら強化して持っておくのもよさそうでありますね」


 ノール達は元々専用のUR装備を持っているから、他の武器を使おうなんて思わないもんなぁ。

 シスハは戦闘用として色々使ってはいたけど、それでも本格的に武器を重ねたりはしていなかった。

 ノール達なら色々な装備を使えこなせそうだし、重ねやすいSRを副装備として携えておくのは良そうだ。


「私は自分の槍以外使いたくない」


「私も自分の杖以外は使いたくないわね。ルーナも拘りがあるのかしら?」


「いや、投げた後取りにいくのがめんどくさい」


 エステルはルーナの返事を聞いて、笑顔のまま固まっている。

 本当に筋金入りのめんどくさがり屋だな……。だけどルーナの戦い方を考えると、自動回収の付加されていない武器は扱い辛いのもわかる。

 もし使わせるとしたら、自動回収の付いている武器じゃないと駄目だろうな。


「そういうことを考えると、次のガチャが待ち遠しいでありますね」


「おっ、乗り気だな。だったらもっと魔石集め――」


「しない! しないであります!」


「ちっ」


 これで少しでも次のガチャに意欲的になったかと思ったが、さすがに簡単には乗ってこないか。

 まあ、ここでレベル上げをしながらでも魔石は手に入るから十分だけどな。


「そういえば次はどんなガチャが来るのかしら。お兄さんは魔石2000個を目標にしていたけれど、これはどのガチャを想定した数だったの?」


「そりゃもちろんBOXガチャだよ。絶対底引きできる数まで貯めて、母数が変わった時に備えて余分に確保してあるんだ」


「そういうところだけは用意周到でありますよね……」


「はは、そう褒めるなよ」


「褒めていないのでありますけど……」


 前回の屈辱を晴らす為にボックスガチャを底引きできる数に加え、想定外のことに備えて多めに余裕を持たせている。

 だから俺としては、またボックスガチャが来てほしいんだけど……。


「ですがボックスガチャじゃない場合も考えられますよね? 次のガチャは何が来るかわからないのですし」


「まあな。だけどこの数があれば、大体のガチャでお目当てのURが1つや2つは出ると思う。コンプガチャが来たらちょっとわからないけど」


「これだけあっても確実じゃないのか。ガチャというのは恐ろしいのだな」


 ボックスガチャ以外だとしても、これだけの数があればURは複数狙えるはずだ。

 2000個あれば11連40回分。ガチャの回数にして440回分も引けてしまう。

 これからレベル上げをしながら魔石も貯まっていくから、さらに回せる回数は増えていく。

 ふふ、ここまで完璧にガチャの準備が整っていると、もはや怖いものなんてない。

 あー、早く次のガチャ来ないかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ