落ちた馬車
アーデルベルさんの家に招かれてから数日後。
朝早くからクェレスを出発し、護衛依頼が始まった。
出発前にマイラちゃんが見送りに来てくれて、エステル達と別れの挨拶を交わしていた。
いやぁ、あの子良い子ですわー。
今回もノールとエステル、シスハと俺で2頭の馬に乗って、アーデルベルさん達の馬車を前後で挟みながら護衛をしている。
勿論俺はシスハの後ろ。乗れないものは仕方ない。
「結局帰りも大倉さんは私の後ろなんですね。センチターブラの練習をするのもいいですけど、乗馬の練習もしてくださいよ」
「いやぁー、だって練習する機会がないだろ? それに乗ることも少ないし」
「全く、そうやって開き直ってはいけませんよ。今度ノールさんに頼んで指導してもらいましょう」
「うへぇ、ノールは勘弁してくれ。あいつ結構スパルタなんだぞ……」
止めて下さい、死んでしまいます。
ノールに教えを請うと、本当に厳しいからなぁ……。
まるで我が子を崖から突き落とすライオンだよ。
「それにしても、帰りは何事もなく帰れそうですね」
「トレントの異変は解決しているから、今回は大丈夫だろう」
クェレスに来る時はトレントが道を塞いでいたけど、異変を解決しているから帰りは何も問題は起きないはずだ。
それでも油断はできないから、地図アプリで周囲を警戒しながら移動はするけど。
「このまま王都に戻ったら、この前話していたように家の購入を検討するんですか?」
「前向きに検討はしているぞ。ただ、やっぱり王都の物件は高いからなぁ……。今後を考えると、慎重に選んだ方がいいだろう」
「ビーコン用と割り切って、安い家を購入してもよさそうですけど……。やはりある程度生活できるような家が好ましいですよね」
王都に家を買うのは良いのだが、どの程度の家を買うのか悩む。
ハウス・エクステンションがなくても住める家か、それともビーコン用に小さな家にするか……。
大きな家だと、普通に億超えそうだからなぁ……。流石にそこまで手持ちの金はないぞ。
色々と吟味して、それから考えるとするか。
それに王都に着いたら、ディウス達と会って魔石狩りなどの意見を聞きたい。
グリンさん達にも意見を聞きたいし、戻ったら忙しくなりそうだな。
「王都の家で、ルーナさんと2人っきりで過ごしたいですね。私しか頼れない状況にして……ぐふふ」
「……危ない雰囲気がするからそれは却下な」
「どうしてですか!」
シスハは口元を拭う素振りをして、ゲスい声を出している。
こんな奴を幼女と2人きりの家で過ごさせてはいけない、と俺の本能が囁く。
既にルーナはシスハなしではいられないような状態なのに、これ以上依存させてどうするんだ……。
●
日も暮れ始めたので、本日の移動は終了。
前回の護衛依頼の時と同じように、アーデルベルさん達と少し離れた位置にテントを張った。
それから焚き火を囲んで食事をしていると、アンネリーちゃんがエステルのところへやってきて、楽しそうに雑談をしている。
一方俺はノール達とくだらない話をしていたのだが……。
「ノールさん、今度大倉さんに乗馬の指導をお願いします」
「むむっ、乗馬でありますか。任せるのでありますよ!」
「止めてぇ! ノールは嫌だ、ノールだけは嫌だ!」
おいおい!? さっそくそれを言うのかよ!
頼まれたノールも妙に張り切ってやがる……何をされるかわかったもんじゃないぞ。
「どうしてそんなに嫌がるのでありますか! 大船に乗ったつもりで任せてほしいのであります!」
「泥船の間違いかな? ノールは厳しいから嫌だ」
「そんなことないのでありますよ。軽く足腰が立たなくなる程度までしかやらないのであります」
「十分やり過ぎだからな!」
軽く足腰が立たないとか矛盾したようなこと言うな! 足腰立たない時点で軽くねーよ!
ノール式育成方なら、嫌でも乗れそうになるだろうけど……怖過ぎる。
俺がそう怯えていると、アンネリーちゃんの笑い声が聞こえた。
「エステルの言っていた通り、大倉さん達って楽しそうだね」
「ふふ、そうでしょ。見ていて飽きないわよ」
ん? もしかして俺達のやりとりを見ていたのか?
それで楽しそうだって思われるなんて……全部ノールのせいだな。
「大倉さん達のパーティって、大倉さん以外女の子なんですか?」
「あー、そうだね。ここにいる4人で全員だよ」
「えっ、ル――むぐっ!?」
「息を吐かせる間もなく口を塞いだでありますね……」
シスハがルーナと口を滑らせようとしたから、すぐに後ろに回り込み口を手で塞いだ。
絶対やるだろうと思って身構えていたけど、本当に口走りやがったな。
俺の行動にアンネリーちゃんは首を傾げていたが、特に追及はなかった。
「へぇー、そうなんですか。……エステル、頑張ってね」
「ええ、ありがとう」
今の質問からエステルに頑張れって、一体なんだ?
エステルも笑顔で頷いている……以心伝心か?
言葉にせずとも伝わるほど、仲良くなっていたとは。
それともこの前屋敷で何か話でもしたのか?
「大倉殿、そろそろシスハが危ないのであります」
「ん? あっ……」
エステル達のやりとりに思考を巡らせていると、ノールがちょんちょんと指先で肩を叩いてきた。
言われてシスハを見ると、俺の手を掴んで必死に剥がそうとしている。凄く苦しそう。
すぐに手を放して彼女を解放した。
「ぶはっ! はぁ……はぁ……。大倉さん、私の口塞いだまま考え込まないでください……。せめて鼻は押さえないでほしいです……」
「すまんすまん。うっかりしていた」
どうやら口と一緒に鼻も押さえていたみたいだ。
俺が頭を掻いてシスハに謝っていると、ノールが彼女の肩に手を置き親指を立ててグッジョブしている。
「どうかいたしましたか?」
「シスハも私と似たような扱いになってきたでありますね。仲間なのでありますぅ」
「そ、そんなことありませんよ。そうですよね、大倉さん!」
「うーん、難しいところだな。むしろノールより酷いまである」
「そんなぁ!?」
シスハの方が色々と異性として意識することは多いけど、やらかし具合ではノールを超えている気がする。
どちらも気さくで同じタイプだけど、微妙に違う部分があるよなぁ。
●
依頼開始から6日後。
魔物と何度か遭遇はしたが、問題なく対処して順調に進めた。
クェレスから王都まで、既に半分の距離は通過しただろう。
これなら今回は何も起こらず護衛を終えられる、と思っていたのだが……周囲を確認する為に見ていた地図アプリに気になる反応があった。
「……ん?」
「どうかいたしましたか?」
「地図アプリに複数の青い反応がある。少し先の方で停止しているぞ」
「周囲に魔物はいないんですか?」
「ああ、いない。襲われている訳じゃなさそうだ。だけど一応警戒はしておこう」
これから俺達が通ろうとしている街道上で、青い点が停止している。
青い点だから俺達と敵対するような相手じゃなさそうだけど、このまま進むのは危険かもしれない。
なのでエゴンさんに言って馬車を止めてもらい、ノール達にどうするか相談をしてみた。
「人がいるのでありますか?」
「人なのかわからないけど……敵ではないはずだ」
「こんな場所で止まっているなんて、何かあったのかしら?」
「とりあえず様子を見た方が良さそうですね」
アーデルベルさん達を連れたまま進むのは危ないと、全員の意見が一致。
ノールとエステルを馬車の護衛として残し、俺とシスハで止まっている青い点へ向かうことになった。
しばらく進んで、ようやくその現場が見えてきたのだが……馬車が地面から空に向かって斜めに生えている。
「あっ……馬車が凄いことになっていますよ」
「うわぁ……あれ、どうなっているんだ」
地面に大きな穴が空いていて、そこに馬車の後ろ半分が落下していた。
その周囲には人が数人おり、その内の1人は周囲を警戒するように見張っている。格好からして、俺達と同じ冒険者だ。
このまま声を掛けたらエゴンさんの時のように怪しまれるから、ヘルムは脱いでおこう。
向かってくる俺達に気が付いたのか、見張りをしていた男性が剣を引き抜いて戦闘態勢を取った。
「何者だ!」
「あ、怪しい者じゃありません! 冒険者です!」
声が聞こえる位置まで近づいて、片手を挙げながら冒険者協会のプレートを見せて敵じゃないと知らせた。
男性は少し前のめりになって俺達のプレートを確認すると、驚くように目を見開く。
「B、Bランクの冒険者……す、すまなかった!」
「いえいえ、気にしないでください。それよりも何があったんですか?」
男性は銅色のプレートを首からぶら下げていた。銅色ってことは……Cランクか。
他にも4人の男性がいて、その内の1人は手や頭に包帯を巻き座りながら辛そうにしている。
冒険者のように防具とかを着けていないから、この人は依頼主で、護衛依頼の最中だったのかな?
近くには3頭の馬も倒れている。馬車が落ちた衝撃で怪我をしたのかもしれない。
残りの3人の男性は冒険者の風貌をしており、1人は怪我をしている男性に付き添い、あとの2人は穴に入って馬車を持ち上げようとしている。
「道を進んでいたら、突然地面が陥没したんだ。多分タルパの仕業だな」
「タルパ? 魔物ですか?」
「ああ、稀に出没する魔物なんだ。大して強くはないんだが、地面の下を掘って進むから、こういう風に突然陥没して被害が出るんだ。はぁ……参ったな……」
聞いたことのない魔物だ。地面を掘って進むとなると……サンドワームみたいな奴か?
馬車が落ちるぐらい深い穴を掘るなんて、結構デカそうな魔物だな。
冒険者の男性は落ちた馬車を見つめながら、大きなため息を吐いている。
うーむ、このまま見過ごすのはかわいそうだ。
そう考えていると、今度はシスハが声をかけた。
「あそこで座られているのは、依頼主の方でしょうか?」
「あ、ああ……頭や手足を打っちまってるんだ。一応手当てはしてあるけど、だいぶ痛むみたいで……」
「他に怪我をされた方はいらっしゃいますか?」
「俺達は平気だ。……代わりに馬が数頭動けなくなっちまった」
「そうですか。でしたら、私が診させていただいてもよろしいですか? 治療いたしますよ」
「あ、あんた! やっぱり神官なのか!」
「はい、神官ですよ。大倉さんは馬車の方の対処をお願いいたします」
「おう、任せておけ」
おぉ、シスハが珍しく神官として役立とうとしている。
それなら俺は言われた通り、穴に落ちた馬車をなんとかするかな。
馬車の方を見ると、今も2人の男性が雄叫びを上げて頑張っていた。
「うおおぉぉ! ああぁぁっっ! ……はぁ、はぁ……だ、駄目だこりゃ!」
「ビクともしねぇぇ!」
ファイト、1発! なんて今にも聞こえてきそうな叫び声だが、馬車は少し持ち上がる程度。
2人共筋肉ムキムキのマッチョマンなのに、それでも動かすのは無理そうだ。
「あの、よろしければ私もお手伝いしましょうか?」
「あぁ? 誰だ?」
「通りすがりの冒険者です」
おふ、怖い声で返事をされた。だいぶ気が立っているみたいだな。大柄で見た目も怖いぞ。
馬車が落ちてどうにもならない状態だから、無理もないか。
「私も護衛依頼でこれからここを通りたいんですよ。だから手伝わせてください」
「て、手伝うって言われてもな……」
「あんちゃんBランクみたいだけど、1人加わった程度じゃどうにもならねぇよ」
「やってみないとわかりませんよ。やるだけやらせてください」
「あ、ああ……それじゃあ頼むよ」
了承も得たので、俺も穴の中へ入って馬車を持ち上げることにした。
うーん、依頼主が商人なのか荷台に物を乗せるタイプの馬車か。
持ち上げる前に大きな荷は降ろしたみたいだけど、少し荷物が残っている。
馬車自体はアーデルベルさんのお高い馬車より、一回りぐらい小さい。
この程度なら俺でも何とかなりそうだ。駄目だったらノールさんをお呼びしよう。
「よっこらせっ、と」
荷台の底を掴んで、上に押し上げるように力を入れる。
すると、馬車はあっさりと持ち上がった。
そのまま押し込み地面の上へと動かして、穴の中から馬車を出した。
良かった、俺でも持ち上げられる程度の重さだったわ。
レベルも上がって装備を充実したし、俺もだいぶ強化されているんだなぁ。
「じょ、冗談だろ!? ひ、1人で持ち上げやがった!」
「おいおいおい……どうなってやがるんだよ」
見ていた男性達が、口を開けて驚いている。
あー、この人達に比べたらヒョロヒョロの俺が持ち上げたんだから驚くよな……。
つい1人で持ち上げちゃったけど、この人達と一緒に持ち上げた方がよかったかも。
「治療終わりましたー。大倉さんの方はどうですかー」
「こっちも終わったぞー」
ちょうどシスハも治療を終えたみたいで、こっちへ小走りでやってきた。
よし、これで人助けは完了だな。
「大倉……あっ、前にディウス達とやりあった奴か!」
「あぁ、あの大倉か!」
どの大倉でしょうか……。
ディウスの名前が出てきたから、俺達なのは確定的に明らかか……。
その話を知っているってことは、この人達も王都によくいる冒険者なのかな?
「いやぁ、本当に助かった。ありがとな」
「いえいえ、自分達の為にやったようなものですから」
馬車を持ち上げようとしていた大柄の男性がお礼を言ってきた。
雰囲気的に、この人がこの冒険者パーティのリーダーみたいだな。
「しかし参った。タルパがここを通ったとなると、この先も陥没する可能性があるぞ。あんた達も進むなら注意した方がいい」
「そうなんですか……。どうしようか」
「それならエステルさんにお任せしてみてはいかがでしょうか?」
「あっ、その手があったか」
パッと見ても地面に変化がないから、どこが陥没するのかわからない。
だが、エステルなら魔法でどうにかしてくれるかもしれない。
さっそく俺達はアーデルベルさん達の所へと戻り、事情を話してさっきの冒険者達がいた所まで移動してもらった。
「へぇー、こんなことになっていたのね」
「ああ、どこに穴があるかわからないから、魔法で探してみてくれよ」
「ふふ、任せて。それぐらいお安い御用なんだから」
さっそくエステルに頼むと、自信満々な表情で杖と黄色のグリモワールを手に持った。
……このまま任せて大丈夫なのだろうか。
そんな心配をしていると、馬車からアンネリーちゃんが出てきた。
「エステル、魔法を使うの?」
「ええ、結構大きいのを使うわ。お兄さん達の近くにいるのよ」
「はーい! 楽しみー!」
馬車の中から俺達の様子を見て、魔法を使うと察したのか。
アンネリーちゃんがいれば、危ない魔法は使わないだろう。
声援を受けたエステルは、いつもよりやる気に満ちた表情で杖を構えた。
「えいっ!」
いつもより気合の入った声で地面に杖を突き刺した。
直後、グラッと一瞬周囲が揺れたかと思うと、あっちこっちの地面が次々と音を立てて沈んでいく。
街道があった場所に大きな穴が出現し、繋がるようにそこら中に伸びる線状の穴まで出てきた。
全部合わせたら数百mはありそうな長さだ。
「うおぉぉ!? な、なんじゃこりゃぁぁ!」
「ま、まさか……タルパの通り道を全部陥没させたのかよ……」
その光景を見ていた男性の冒険者達は、驚きの声を上げていた。
うわぁ……本当に穴だらけになっているぞ。
このまま進んでいたら、俺達も同じように馬車が穴に落ちていたかもしれないな。
「す、凄い穴ですね。街道以外にもあったみたいですし、避けて進んでも陥没していたかもしれませんね」
「こんなに穴を開けるなんて迷惑な魔物ね。とりあえず穴は埋めておきましょうか。んー、えいっ!」
またエステルが杖を地面に突き刺すと、陥没した地面が盛り上がって次々と穴が塞がっていく。
あはは……やっぱりエステルはすげーや。
数十mはある穴の道を一瞬で埋めやがった。
「すごーい! エステルの魔法はいつも豪快だね!」
「ふふ、もっと褒めてくれてもいいのよ」
「うん! 褒める!」
いつもの調子でもっと褒めてと言ったエステルに、アンネリーちゃんがよしよしと頭を撫でた。
エステルは気分が良さそうに頬に手を当てて微笑んでいる。
ほぉ、あの台詞を言った時はそうするとお喜びになるのか。
「あっ、あそこで何か飛び跳ねているのでありますよ」
「あれは……タルパだ! さっきので飛び出してきたのか!」
ノールが何か発見したのか声を上げた。
指を差している方を見ると、少し離れた所で黒い物体が地面の上でもがいている。
エステルの魔法で地面に打ち上げられたのか。
あれがタルパ……黒く短い毛、鋭く伸びた前足の爪、細く伸びた赤い鼻。
モグラじゃねーか! だけど2mぐらいはありそうな大きさだな……。
あそこまで大きいと、モグラだとしても強そうだぞ。
また土の中に戻られて穴を増やされても困るし、ここで始末はしておきたいな。
「ささっと倒してくるのでありますよ!」
「ちょ、待てよ!」
ノールは剣を引き抜いて、タルパの方へと走っていく。
おいおい、また1人で突っ込んで……まあ、そこまで強い魔物じゃないって話だから平気か。
もがいているタルパに接近したノールは、剣を引き抜いてそのまま斬りかかる。
一撃でモグラは真っ二つになり、光の粒子になって消滅した。
あ、呆気なさ過ぎる……。
「……話に聞いていた通り、あんた達デタラメなパーティだな」
「あはは……」
さっきお礼を言ってきた大柄の男性が、呆れた声で俺に声を掛けてきた。
話に聞いていたって……どんな話が広まっているのだろうか。
「今回は本当に助かった。あんた達も護衛依頼の途中だったのに、すまなかったな」
「いえ、とんでもないです。それより馬車は大丈夫でしたか?」
「ああ、多少傷んではいるけどゆっくりと進めば問題はないさ。依頼主には悪いが、少し遅らせてもらうつもりだ」
彼らの護衛対象である馬車は落下しているから心配だったが、どうやら大丈夫みたいだ。
「馬まで治療してくれてありがとな。今度王都で会ったら礼をさせてくれ」
「お礼なんていいですよ。えっと……」
「ああ、自己紹介してなかったな。俺はCランク冒険者のドルフだ」
「あっ、どうも。ご存知かと思いますが、私は大倉平八です」
ドルフさんが手を差し出してきたので、お返しにその手を握り返した。
おぉ、こんなところで王都の冒険者の知り合いが増えたぞ。
お礼……それならこの人達にも魔石狩りに参加して! ……いや、さすがにそれは無理か。
ディウスのことも知っているみたいだし、そこから関わりが深まれば頼みたいな。
軽くドルフさんと言葉を交わした後、俺はノール達の所へと戻った。
「大倉殿、あの人達は大丈夫だったのでありますか?」
「大丈夫みたいだ。馬もシスハが治療したおかげで動けるようだし」
「足が折れてる馬もいましたから、あのままだったらどうにもなりませんでしたね」
「シスハもたまには神官として活躍してくれるのね」
今回は稀に見られるシスハの貴重な神官シーンが見れたな。
「うふふ、私はいつだって神官として立派に働いているじゃありませんか」
「はは、またまたご冗談を」
シスハの冗談を聞き流して、俺達は王都を目指してまた進み始めた。




