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エステル召喚

「あむ……ん~、美味しいでありますよ」


「そうか、それは良かった」


「本当に今日は食料を食べちゃっていいでありますか?」


「あぁ、お礼だからな。おかわりもいいぞ。働いた分しっかり食え」


「本当でありますか! わーい!」


 白銀のヘルムを被った彼女は、ハンバーグを頬張って嬉しそうにしている。

 爆死してから次の日、俺はノールに昼食を食べさせていた。お礼は何がいいか、と聞いたらガチャの食料が良いというのだ。

 もっと服が欲しいとか、装飾品だとか、そういう女の子っぽい物より食事がいいと。オーク肉は嫌だと言っていたが、食料から出た肉ならいいのな。

 ガチャから出たアイテムは、後日しっかり整理しようと思う。数が多すぎて時間を取らんとやってられん。


「あむ……それで、昨日出た彼女はいつ呼び出すでありますか?」


「うーん、どうしようか」


 悩む、あいつを出していいのか非常に悩むぞ。

 性能評価で言うならば、URの中でも上のほうだ。見た目もかなり良い。しかし性格を考えるとなぁ……実際にやり取りをするとなると不安だ。


「魔導師でありますよね? 一緒に戦ってくれるなら、かなり心強いでありますよ」


「んー、そうなんだけどな……」


 エステルの職は魔導師。火、水、風、土、闇、光、そして支援魔法も使える凄い奴だ。

 是非ともパーティに入ってもらいたい人材だな。


「そうだな。とりあえず呼び出してみるとするか」


 今はまだ宿にいるのだ。ここで呼び出すと人目に付く。部屋で出してしまったら、宿屋の人達にいつ入ったんだと変な疑問を抱かせる可能性もある。

 なので外に行って彼女を召喚しようと決めたのだ。



「おぉ、こんな風に私も呼び出されていたんでありますな。ちゃんと地面で召喚してもらえて、羨ましいのでありますよ」


「その時の事は本当にすまないと思っている」


 街の外に移動し、人気が無い所にまでやってきた。

 そこでスマホを取り出し、アイテム欄からエステルの召喚石選択する。召喚コストは22と表示された。結構ギリギリだな。

 使用しますか? と出たのでタップするとスマホの画面が輝き始め、光が溢れ出す。


「ん……」


 光が人の形になって1人の少女が目の前に現れた。見た目はノールよりも幼げ。

 肩辺りまで伸びている灰色の髪。一部をツーサイドアップにしているのが愛らしい。灰色の肩掛けを羽織りミニスカートの周りにさらに腰巻の前が開いたスカートを着けている。

 背もノールより低く、不釣合いな長さの紅い宝石が付いた杖も持っている。

 

「お兄さんが私のマスターさん?」


「そうですよ。私は大倉平八です」


「私は騎士のノール・ファニャでありますよ」


 少しして目を開くと俺と紅色の目が合った。ちょっと釣り上がり気味の強気な感じだ。そして目を細め笑うと、俺がマスターかと質問される。

 なんだろう、凄く可愛らしい笑顔のはずなんだが、一瞬ゾクッとしたぞ。

 

「ふふ、そう」


 エステルはそう呟き微笑む。

 そして今度は彼女の自己紹介が――始まらなかった。ずっとニコニコと笑いながら俺達を見ているだけ。場の空気が凍っている。


「いや、自己紹介しろよ!?」


「だって知ってるんでしょ? ならいいんじゃないかしら」


 困ったように首を傾げ眉をしかめる彼女。

 つい勢いで素が出ちまったぞ。知ってるけどさ、知ってるけどやっぱりこういうのはやっておこうぜ? 隣にいるノールも言葉にならないのか、おおぅ……と呟いて固まっているぞ。

 

 見た目は幼げ、しかし口調は大人びてるというか掴み所が無い感じが受けてGCでも人気なキャラだった。俺も大好きだ。

 だが実際に話すとなると辛い。なんかいつもの調子を崩される。


「いや、あの、やっぱりお約束という物がありますしね?」


「だって面倒くさいんだもの。それで、お兄さんは私になんの用なの? あとその口調気味が悪いから止めてほしいわ」


 頬を膨らませて怒ったような仕草をしている。

 そして俺の口調が……気味悪いだと!? せっかく初の対面だから丁寧にしているというのに、どいつもこいつも気持ち悪いとはどういうことだ。


「き、気味が悪い……だと……」


「そこは同意でありま――なにふるでありまふかー!」


 ノールがうんうんと首を縦に振りそれに同意している。なんだかノールに言われると非常に腹立たしいので、頬を引き伸ばしておいた。


「まあいい。エステル、俺達と一緒にパーティを組んでくれ」


「どうして?」


 想定外の返事に、一瞬頭が真っ白になった。

 えっ、どうしてって。まさかどうして、とか聞かれると思わなかった。普通このまま手伝ってくれる流れだろ。


「えっと……一緒に魔物とか狩っていただけないかと……」


「なんでそんな畏まった言葉になっているんでありますか」


 くっそ、笑いたきゃ笑えばいい。思わずまた丁寧口調で話しちまったよ。


「うーん、そうね。本当は冒険者なんて嫌だけど、お兄さん面白そうだからいいわ」


 そっぽを向き、頬に指を当て悩んでる素振りを彼女は見せる。凄く演技臭がする動作だなおい。

 一応俺に協力してくれるみたいだが、面白そうだからいいってなんだよ。


「それならよかった。とりあえずよろ……なんで冒険者やるって知ってるんだよ」


「最初に言ったでありますよね? 召喚者の知識と記憶がある程度貰えるって。なので、彼女は最初から分かっていたはずでありますよ。そもそも、私達が大倉殿の同行を拒否するのは、有り得ないのでありますがね……」


 呆れたようにノールは説明してくれた。

 そういえばそんなこと言っていた記憶があるような。つまり、エステルは分かっていてやっていたと? どこまで分かっていたんだ……やだ、なんか怖い。

 それにしても拒否は有り得ないか。俺が召喚者だからか?


「ふふ、どうかしらね。とりあえずよろしくね、お兄さん」


 意味深に微笑みながら挨拶をされた。

 やだ、何この娘。やっぱり怖いんだけど。



「お帰りなさいませ。あれ……そちらの方は?」


 召喚を終え、俺達はまた宿に戻ってきた。ガチャの為の狩りに疲れたので、しばらくは狩りをしない予定だ。

 宿に入ると、いつも受付をしてくれる宿の女性が出迎えた。


「今日から一緒のパーティになった娘です。2部屋借りようと思うのですが、部屋空いてますかね?」


 エステルを前に出して紹介をしておく。平気か? と思ったが彼女は素直にお辞儀をして挨拶をした。良かった、案外素直な奴なのか?

 挨拶も終えたし、早速部屋を借りようと思う。ノールとは2人だったから1部屋で借りていたが、もう女性2人だ。

 これなら彼女達を同じ部屋にして俺は1人部屋でいいだろう。流石に女性2人と男1人では同じ部屋は辛いだろう、俺がね。


「はい。それでしたら――」


 宿屋の女性が早速部屋を選び返事をしようとする。だが、それは途中で遮られた。


「あら、私はいいわよ同室で」


「私もそのままでいいのでありますよ」


 ……こいつらは一体何を考えているんだ? もう金の余裕も有るんだ、無理に全員で固まる必要は無い。


「いや、女2人になったんだからそっちは2人で泊まりなさいよ。俺1人で泊まるからさ」


「そんな、ズルいでありますよ! 1人で1つの部屋に泊まるなんて!」


「えぇ、そうね。それはとってもズルいと思うわ」


 ちょっと何言ってるのかわからない。なんだよズルいって、どういう事だよ。エステルは面白そうに笑いながら便乗してるし。

 男女が一緒の部屋に泊まる事の方がやべーよ。ノールは残念系で顔も見えんからどうでもいいけど、エステルは止めてくれ。

 見た目は凄く好きなキャラなんだ……性欲はなんとかお風呂でセルフしているが、何か有ったら欲が出ちまうかもしれない。


「そういう問題じゃ……じゃあ3部屋借り――」


「ねぇお姉さん。この宿に3人部屋ってないの?」


 ズルいと言うなら部屋を3部屋借りればいいじゃない。俺はそう思い借りようと言おうとした。

 だが、それをエステルに遮られる。


「ベッドは2つしかありませんが、片方が大ベッドになっている部屋ならございますよ」


「じゃあそこでお願いできる?」


 女性が説明をし、エステルが了承してしまった。今すぐ変更するように言わないと。

 しかし、本当にこのチャンスを逃していいのか俺? 美少女2人と同じ部屋なんだぞ? と悪魔的な囁きが聞える。大ベッドってことは、ノールとエステルが同じベッドで寝るのか。見たいぞ、かなり見たい。

 それに2人がどんな会話するかも気になるし……いや、やっぱ駄目だ。ここはビシッとエステルに言って訂正させるのだ。


「おい!? 何勝手に――」


「あら、別にいいじゃないの。それに、お兄さんだって嫌じゃないでしょ? それとも……嫌なの?」


「いえ、その、嫌じゃないです……」


 背が低い彼女が、上目遣いで聞いてくる。やばい、これはやばい。なんという破壊力なんだ。止めてくれ、それは俺に効く。

 結局俺は言い返すことが出来ずに、そのまま了承してしまった。


「ふふ、そうよね。……私を出そうか悩んでいたの――たっぷりと後悔させるんだから」


 鍵を借り、部屋へと向かう。その途中、エステルが何かを呟いていたが、後の方は俺には聞こえなかった。

 しかし、とてつもなく背筋がゾクッとしたのは気のせいだろうか。


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― 新着の感想 ―
エステルの働きが素晴らしい♪ これからは是非とも主人公をいじってくださいw これで少しでもノール達が不憫な鬼畜狩りに晒されないよう祈るばかりです(切実)
[良い点] エステルの性格イイですね
[気になる点] まだ全部は見ていないのでわかりませんが、R,SR,SSRのキャラは出ないのですか? 個人的には、そのくらいのキャラもいて欲しい…
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