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3人で原石集め

 エステル達の装飾品を頼んだ日から数日後。

 装飾品は既に完成しており、エステル達の手に渡っている。

 受け取る直前にエステルの首飾りには俺の、ルーナのブローチにはシスハの魔力を注ぎ込んだ。

 魔光石みたいに特殊な効果などはないけど、本人達が凄く喜んでいたから良かったよ。

 やはり魔法で加工する店に頼んで正解だったな。

 

 加工が終わるまでの間に魔元石の追加報酬も決まり、冒険者協会で1500万Gも受け取った。

 あの石1つでそこまで貰えるとは……魔法関連の物って金払いが良いんだなぁ。


 そして色々と落ち着いたところで本日は、ノールとの約束どおりに俺とノールとシスハでルゲン渓谷へ原石集めに来ていた。

 

「むふふー、やっぱり宝石集めの方が楽しいでありますよ!」


「凄いですねノールさん、大量じゃないですか。……あっ、岩塩が混ざっていますね」


「ホントこっちになるとご機嫌だな。魔石集めも同じぐらい楽しそうにやるべきだと俺は思うんだ」


「それは無理であります!」


 両手に原石と岩塩を抱えたノールが、嬉しそうに後ろ髪を揺らしながら俺のところへと戻ってきた。

 ルゲン渓谷へ来る前にゴブリンの森で黒オーク狩りをしたけど、その時とテンションが全く違うじゃないか。

 魔石狩りもハイテンションでやってもらいたいところなのだが……それは無理かな。

 それでもノールがいるだけで効率は段違いだからありがたい。

 魔石は1100個を超えたので、この調子なら2000個は十分行ける範囲だ。

 

 相変わらず岩塩も採ってきているみたいだが……まあ、いいか。

 最近俺達の間で肉を食べる際に、岩塩を板状にしてその上で焼くのがブームになっている。

 ほどよく塩味が効いて、そのまま食べても美味い。

 ここの岩塩は質が良さそうだし、俺としても沢山確保しておくのは賛成だ。


「気になっていたのでありますが、シスハはいつの間にか剣を使うようになったのでありますね」


 俺が思考にふけっている間に、ノールはシスハのマジックブレードに興味を示したみたいだ。

 よっぽど気に入ったのか、シスハは太ももにホルスターを付けて収納している。見た目がエロい。

 すぐ手に取れる位置に装備している辺り、殺る気に満ち溢れているな……。

 パッと見はただの短い棒だから、不意打ちでやられたらたまったもんじゃないぞ。


「うふふ、お気づきになりましたか。ラピスを斬るのにこれがちょうどいいんですよ。小さいのなら杖や素手で砕いたり、プロミネンスフィンガーで爆殺できるんですけどね」


「元々あれだったでありますけど、もう完全に神官じゃないでありますよね……」


「いえいえ、それほどでもありませんよ」


 シスハはニヤリと笑い満足気に答えているが、ノールは若干呆れた様子。

 普通でも杖や格闘で神官とは思えない状態だったのに、ガチャの装備で握った物を爆破したり、レーザーの剣まで扱うようになってしまった。

 だんだんいけない方向にシスハを強化している気がしてきたのだが……頼りになるからいいか。

 回復がおまけみたいな感じだな。


「それより大倉殿は大倉殿で、さっきからそれに乗って何をしているのでありますか?」


 やっと突っ込んでくれましたか。

 実は今までの話している間、俺はずっと浮遊している銀色の薄い円状の物体に座って話をしていた。

 これは薄く引き伸ばしたセンチターブラで、その上に乗っかって安定させる練習をしていたのだ。

 アピールするように左右をスイスイと移動して、クルクル回転などもしてようやく反応してくれた。


「修行じゃよ。これもセンチターブラのちょっとした応用だ」


 ノールとシスハがラピス狩りをしている間、俺はずっとセンチターブラの練習をしていた。

 攻撃だけじゃなくて、こうやって乗ったり盾にだってできる。

 ガードはまだゴブリン相手にしか試していないけど、いつかはこれを応用して色々できるようにしたい。

 移動は魔法のカーペットがあるから不要だが、高低差があるところならこうやって乗っかって移動できれば楽だし。


「ほえー、凄いでありますね」


「攻撃、防御、そして人を乗せられるなんて活用方法が豊富ですね。さすがはUR装備です。問題は使用しているのが大倉さんということのみでしょうか」


「お前な……」


 ぐぬぬ、シスハめ……まだ懲りずにいらぬことを言うか。

 俺が1番センチターブラを上手く使えるんだ! 思い知らせてやる!


「いけ、センチターブラ!」


「えっ――きゃぁ!?」


 乗っていたセンチターブラから飛び降り、それをシスハに向けて飛ばした。

 当たる直前で円状から液体の状態にし、シスハの全身に纏わり付かせる。

 そしてすぐに締め付けながら硬化させて動きを封じた。


「うぐっ、くるし……な、何をなさるんですか!」


「はは、いいザマだな! 馬鹿にした罰だ!」


「何をやっているのでありますか……」


 ははは、不意打ちとはいえこの俺がシスハの動きを封じたぞ。

 未熟とはいえそれなりの強度があるはずだから、もう脱出は不可能だ。

 締め付けるようにしているので若干苦しそうにしているが、馬鹿にした分反省してもらいたい。

 本当に苦しいなら謝ってくるだろうし、そうしたら解除して……。

 

 そう思ったところで、シスハに纏わり付いていたセンチターブラにヒビが入った。

 それからビキビキと音を立てて、どんどんとヒビは全体に広がっていく。

 は? えっ、まさか……。

 

「――ふんっ!」


「ああ!? 俺のセンチターブラがぁぁ!」


 シスハの掛け声と共に、センチターブラは砕け散って光の粒子になって消えた。

 嘘だろ!? あれを力ずくで砕いたのかよ!


「ふぅ、まだまだ強度不足でしたね。私を拘束したければ、この3倍は強化してください」


「くっ……いつかギャフンと言わせてやるからな!」


「遊んでいないで、今日の成果を確認するのでありますよー」


 シスハは髪を振りほどいて、勝ちましたと誇ったような表情をしている。うぜぇ、超うぜぇ!

 俺じゃシスハを手玉に取ることは無理なのだろうか……。

 四つん這いになって落ち込んでいる俺を無視して、ノールは今日手に入れた原石を並べて見比べている。

 もう突っ込みを入れるのにも疲れたというか、慣れたのかな。


「うーん、今回もビビッと来る物はないでありますね……」


「ノールの好みだと……青がいいのか?」


「おぉ、よくわかったでありますね」


 私服に青系が多い気がしたから言ってみたが当たった。

 俺の勘も捨てたもんじゃないな。


「だけどあまり時間を掛けて選ぶのは申し訳ないのであります。そろそろ決めないと……」


「いや、じっくり選んでくれて構わないぞ。なんならモフット用のも選んだらどうだ?」


「えっ、いいのでありますか!」


 青系統の宝石を指で摘まんで見比べているが、ノール的にどうも微妙らしい。

 俺から見れば十分良さそうに見えるけど、彼女の勘は稀に冴えているから任せた方がいいだろう。


「大倉さんがそんなこと言うなんて、何か裏がありそうですね」


「いやぁー、実はエステル達の宝石を頼んだ店に原石を売ったら、良い値で買い取ってもらえてな」


「お金稼ぎもするつもりなのでありますか」


 エステル達の装飾品を受け取った後、不要になった原石を買い取ってもらえないかと聞いたら、目を輝かせて是非! と買い取ってもらえた。

 流石にあの量だと1度に買い取りは出来なかったみたいで300万G分だけ売ったけど、貯めこんでちょくちょく売れば良い稼ぎになる。


「この前の魔元石でもだいぶ貰えましたし、依頼も数をこなしていますからお金もだいぶ貯まっていそうですね」


「ああ、自宅もあるおかげで消費も少ない。そろそろ王都にも拠点を構えてもいいかもな」


「おお! 新しいお家を買うのでありますか!」


「まだ決まった訳じゃないけどな」


 自宅が手に入るまでは宿での出費がそれなりにあったが、今はそれがなくなった。

 ブルンネで家を買ってから大きな買い物もしていないし、クェレスでキノコや魔光石などでもだいぶ稼いだから、王都にも1つ拠点として家を買ってもいいかもしれない。

 そうすればビーコンを室内に置いて王都への移動も楽になる。

 それに見つからないように隠してはいるけど、町の近くは人も多くてビーコンが見つかる可能性が他の場所よりも高い。

 ハウス・エクステンションがないから本拠地は変わらずブルンネにするつもりだが、一応増やすか検討しておこう。


「それじゃあ資金集めも兼ねて、もっとラピスを狩るでありますよ! ……ついでに岩塩も集めるであります」


「結局岩塩集めしているじゃねーか!」


「あはは……やっぱりノールさんは相変わらずですね」


 小声で岩塩も集めると言いながら剣を握り直し、結んだ後ろ髪を左右に振ってノールは走っていく。

 ……なんだか後姿を見ていると、まるで尻尾を振っている犬だな。

 俺とシスハは苦笑しながらも、剣を振りかざしながら駆けるノールの後を追い一緒に狩りを再開した。

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