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爆死は切ない

活動報告にて二巻の情報を掲載いたしましたので、興味のある方は目を通してくださると嬉しいです。

「はぁ……」


 本日何度目のため息だろうか。

 目が覚めると、俺は自分の部屋のベッドで寝ていた。

 どうやら昨日笑い泣き叫び気を失った後、ノール達がここまで運んでくれたみたいだ。


「はぁ……やっぱ爆死は辛い……」


 ベッドで横になりながらスマホの画面を見ると、残りの魔石は4個と表示されている。

 目が覚めてすぐに爆死は夢だったんじゃないかとスマホを確認したが、4個しか残っていない魔石があのガチャは現実だったのだと俺に教えてくれた。

 はぁ、やるせない、やるせないよ……今日は色々とする予定だったけど、何もやる気がしない。

 既にいつもなら起きている時間だが、それでも俺はベッドの中に潜っている。

 もうずっと寝ていたい。

 

 そんな憂鬱な気分に支配されていると、コンコンと扉の叩く音がした。


『お兄さん、起きてる?』


「寝てるー」


 扉越しにエステルの声が聞こえる。

 いつまでも俺が起きて来ないから、様子を見に来たみたいだ。

 俺が返事をすると、寝てると言ったのに彼女は扉を開けて中へ入ってきた。


「もう、起きてるじゃない」


「寝かせてやってくれ、疲れてるんだ……」


「他人事みたいに言わないの」


 このままそっとしておいてほしいと思ったが、どうやら駄目みたいだ。

 俺は逃げるようにもぞもぞと掛け布団の中へと潜り始めた。


「今日は昨日のことを冒険者協会に報告しに行くんでしょ? それにガチャから出た装備の整理もまだじゃない」


「明日から頑張る……」


「本当に重症ね……」


 エステルが困った声で呟いている。

 こんな姿を見せるのは情けないと思う。

 だけどそれだけガチャのせいで、俺のピュアなハートが傷ついているんだと察してほしい。


 しかしエステルは引いてくれず、寝ている俺の体を掛け布団の上から揺さぶってきた。


「ほら、起きて、お兄さん、おーきーてー」


「あー、揺さぶるのはやめてくれー」


 起きてと言われると、なんだか意地でも起き上がりたくなくなってくる。

 エステルには本当に申し訳ないが、もう少しだけふて寝させてもらいたい。

 掛け布団にしがみ付いて揺さぶりに耐えていると、ついに彼女は揺さぶるのを止めた。

 おっ、ようやく諦めたか?


「はぁ、お兄さんがそういうつもりなら、私にも考えがあるわ。うんしょ……」


「……ん?」


 足元の方で掛け布団の中に何かが入ってくる。

 そして布団が盛り上がり、もぞもぞと上へと近づいてきて……寝ている俺の顔の前にエステルの顔が出てきた。


「ふふ、お兄さんが起きるまで私も一緒に寝るわね」


「……そうか――って、何しているん、ダゥァ!?」


 やる気のなさにそのままスルーしそうになったが、エステルが一緒に寝ていると認識した俺は飛び上がって床に転げ落ちた。


「むぅー、そんな勢いで起き上がらなくてもいいじゃない」


「いやぁ、そう言われてもなぁ……」


「でも起きたのならいいわ。ノール達も心配しているから、早く行きましょう」


 ベッドの上に取り残されたエステルは、転げ落ちた俺を見て頬を膨らませている。

 まさか俺を起こす為にベッドの中へ潜り込んでくるなんて……って、前も潜り込み未遂事件があったか。

 あのままスルーしていたら本当に一緒に寝るつもりだったみたいだから、このままふて寝するのは危なそうだ。


 まあ時間も経ってだいぶ気持ちも落ち着いてきたし、ノール達も心配しているみたいだから起きるとするか。

 我ながら昨日の最期は、さすがに取り乱し過ぎたかもしれないな。



 起きてエステルと一緒に居間へと行くと、ノール、シスハ、モフット、そしてルーナがいた。

 えっ、ルーナ?


「うおっ!? ルーナがこの時間に起きてるなんて珍しいな」


「むぅ、顔を見てすぐにその反応は失礼だ」


「うふふ、ルーナさん、大倉さんのことが心配だったみたいで早起きしたんですよ」


「べ、別に心配だった訳じゃ……余計なことを言うな」


 思わず窓の外を見て、今が朝か確認してしまった。

 俺の反応にルーナは若干怒っていたが、シスハの一言で顔を逸らして恥ずかしそうにしている。

 まさかあのルーナが俺の為に昼前から起きているなんて……そんなに昨日の俺の最期が酷かったということか。


「大倉殿、ようやく起きてきたのでありますね」


「おう、エステルに起こされた。心配させたみたいでごめんな」


 ノールがテキパキと動いて机に食器を並べている。

 なんだか良い匂いがするし、これから朝食か。俺が起きてくるのを待っていたみたいだ。

 待ってくれていたのに、ふて寝していたのは悪いことしちまったな。


「立ち直ったようで良かったのでありますよ。モフットまで心配しているのでありますよ」


「まだ若干引きずってるけどな……」


 モフットが俺の足元に近づいてきて、プーと鳴きながら足を叩いている。

 まるで落ち込むなと言っているみたいだ。

 ウサギにまで心配されるとは……。


「それにしても、平八がガチャであそこまでなるとは思わなかった」


「私もあそこまで狂った姿は初めて見ましたよ。まさかガチャで気を失うなんて」


「私とエステルは、1度大倉殿がガチャで呼吸が止まるのを見ているでありますからね……。それでも昨日のは驚いたでありますが」


「そうね。ここまで本格的に爆死したのは初めてだから、仕方ないとは思うけど」


 なんだかんだ、今までは大量の魔石を使うガチャの時はお目当てを引き当てていたからなぁ。

 今回は確定で中身も豪華だったのに逃したのも合わさって、正直かなりショックだった。

 運の良いノールやモフットもいるし、最初にURを引けたのもあって絶対引けるなんて思っていたぐらいだ。

 どうやら俺は、ガチャの恐怖というものを忘れていたのかもしれない。

 まあ、元の世界で同じような状況でボックスガチャが来ても回していただろうけど。


「はぁ……まあ昨日は気絶しちゃったけど、そういつまでも爆死を嘆いていても仕方ないか」


「気絶するほどショックを受けた割には、だいぶあっさりしていますね」


「ははは、この世界に来る前にも何度も爆死は味わっていたからな。やらかした直後は壁や机に頭打ち付けたくなるけど、次の日になれば憂鬱な気分で過ごす程度だ。それに今は爆死を分かち合える仲間もいるし。なっ、シスハ」


「そこで私を指名で呼ばないでくださいよ……。そんな物は分かち合いたくありません。まあ、確かに悔しくはありましたけど……」


 シスハに親指を立ててアピールすると、眉を寄せて凄く嫌そうな表情をしている。

 爆死仲間同士、仲良くやろうぜ。シスハだったら俺と一緒に床でのたうち回ってくれそうだし。


 彼女達と会話していると、気持ちが少し楽になってきた。

 もう終わってしまったことは仕方がない。失った機会と魔石は惜しいけど、嘆いているだけじゃ先に進めないもんな。

 この屈辱は次のガチャで絶対に晴らしてみせるぞ!


「前向きなのは良いことなのでありますよ。ガチャならまたやる機会があるのでありますし、これでも食べて元気を出すのであります!」


「おっ、さっきから良い匂いしていたのはこれか。ノールが作ったのか?」


「そうでありますよ! 少しでも大倉殿に元気を出してもらいたかったのであります!」


「そうか……ありがとうな」


 食器を置き終えたノールが台所から料理を運んでくる。

 今回はステーキにキノコソースの載ったものが出てきた。

 美味しそうだけど、朝からステーキは重くないか……まあせっかく作ってくれたんだし、野暮なことは言わないが。


 たけのこはどうしたのかと聞くと、どうやら料理の仕方がわからなかったらしい。

 ノールが生で食べてみたが、えぐみがあって出すのは止めたようだ。

 一応マジックバッグのおかげで取れたての状態のはずだが、茹でてアク抜きしないと駄目そうだな。

 魔物が落とした物に取れたてとかあるのかが疑問だけど。


 今度一緒にたけのこ料理でも作ろうとノールと約束し、とりあえず今回はキノコソースのステーキを味わった。

 美味しゅうございました。


「さてと、腹も膨れたしまずは昨日出たアイテムの整理でもしようか」


「回した回数は多いけど、今回はあまり新しい物が出なかったわね」


「ハウス・エクステンションのポイント変換と、協力してくれる人に渡す装備の補充ができたと思っておきましょう」


 今日は竹林での出来事を冒険者協会に報告に行くつもりだが、その前に昨日のボックスガチャの整理をしておこう。

 お目当てはでなかったけど、色々と出てはいたからな。


 まずはURだけど誰も使えないフリージア専用の弓からだ。


――――――

●ディバインルクス

 攻撃力+1900

 射程延長『大』

 命中補正『大』

 自動回収

 行動速度+30%

――――――


 全体的に白くてごつい長弓と、透き通った黄色い矢じりの矢が入った筒が出てきた。

 これがURユニットの弓兵フリージアのUR武器。

 フリージアは遠距離から高火力の矢を連射できる、純粋な遠距離ユニットだ。

 ルーナも遠距離の高火力としては強いけれど、連射力を考慮するとフリージアに分があると思う。


「はぁ……この弓カッコいいなぁ。専用URじゃなければ……」


「立派な弓なのであります。これが使えないのは惜しいでありますね」


「URならハウス・エクステンションで変換すれば高ポイントだけど……もしフリージアが召喚できた時のことを考えると残したいわね」


 使えないURなんて宝の持ち腐れだけど、後々のことを考えるとポイント変換する訳にもいかない。

 でもこれをポイント変換できたら、ハウス・エクステンションで色々追加できるんだよなぁ……悩んじゃう。


――――――

●ブラドブルグ☆2

 攻撃力+2800

 HP吸収

 自動回収

 自動追尾

 行動速度+20%

――――――


「おお、私の武器が強化されたぞ。なんだか立派になった気がする」


「良かったですね、ルーナさん! 私の武器も早くダブらせて、強化してくださいね大倉さん!」


「嫌だ! ダブりを期待するなよ!」


「そういえば、これでこの中でまだ武器が強化されていないのはシスハだけなのでありますね」


「その杖も強化されたら攻撃力が増すのかしら」


 やっぱりURは1つ重ねただけで攻撃力が跳ね上がるな。

 行動速度上昇まで付いてやがる。ルーナの一撃がさらに強くなったと思うと、かなり頼もしいな。

 これでシスハ以外は皆武器が星2になったか。シスハの武器も強化してあげたいけど……URのダブりはもうノーサンキューです。


――――――

●ドレインアーマー

 防御力+350

 ダメージ量に合わせてHP吸収。

――――――


「うーん、新しい鎧か。でも今回のガチャでアダマントアーマーがもう1つ出たからな……どうしよう」


「一応持っておくべきだと思うのであります。敵の攻撃を吸収して回復できるなんて、便利そうでありますよ」


「この間の護衛依頼の時みたいに、私がいない時のことを考えると回復手段として持っておくのが無難でしょうか」


 全体が緑色で所々赤い筋が入った不気味な鎧が出てきた。

 同じSSRでも強化されたアダマントアーマーに比べると今は使う気がしない。

 だけど前回シスハ達と別々に戦うことがあったから、いざって時に残しておいた方がよさそうだ。


――――――

●グリモワール【ルクスリア】

 闇属性魔法の攻撃力+100%

 攻撃対象の状態異常抵抗を低下させる。

――――――


「ふふ、新しいグリモワールよ。今度は闇属性みたいだわ。これで色々と捗りそうね」


「何を捗らせるつもりだ……。それにしても、全部で何冊あるんだろうな」


「うーん、あとは光属性だけだから1冊かしら?」


 今度のグリモワールは、表紙にヤギが描かれた紫色の本だった。

 ついに残すは光属性だけか……全部揃ったら何かあるのだろうか。

 というか、闇の魔法で捗るって何に使う気だよ!


――――――

●水蜘蛛

 水面に浮いて自由に移動できる。

 気分は忍者。

――――――


「奇妙な形をしている。足に付けるのか?」


「ああ、これで水面をスイスイ移動できる訳だ」


「今まで水辺などは行きませんでしたが、これがあれば移動の役に立ちそうですね」


 丸い浮き輪のような物が2つ出てきた。

 真ん中には足を固定するようにベルトが付いていて、これで水面を移動できるらしい。

 いつか使う機会がありそうだけど……こういうのって水の上に出た途端、前か後ろにひっくり返りそうで怖いな。


――――――

●スパティウム

 視認できる対象と使用者の位置が入れ代わる。

 1度使用すると一定時間使用できない。

――――――


 次に出てきた物は片手で握れる大きさのボタンが付いた棒だ。

 説明には入れ代われると書いてあるので、さっそく椅子を離れた場所に置いて見つめながらボタンを押してみる。

 すると一瞬で景色が入れ代わって椅子があった位置に俺は立っていた。

 そしてさっきまで俺が居たところを見ると、そこには椅子がある。


「うおっ、地味にこれ凄いな」


「物を一瞬で移動させられるのね。使い方によってはかなり有用じゃない」


「いいな。それがあれば動かなくても移動ができる。私にくれ」


「駄目だ! というか、1回使ったらしばらく使えないみたいだからそれは無理だろ」


 これがあれば緊急時にすぐ何かと入れ代わって回避できそうだし、なかなか便利そうだ。

 まあ使用制限があるみたいだから、ここぞって時に使うものだな。


――――――

●破城槌

 攻撃力+3000

 行動速度-250%

 対物特効

――――――


 実体化させてみると、2メートル以上ある長さのハンマーが出てきた。


「破城の名に相応しい大きなハンマーですね」


「攻撃力は凄いけど、行動速度の低下がな……。とりあえず持ってみるか。どれどれ……おっ、重い……」


「私にも持たせてほしいのでありますよ!」


「ほ、ほい……」


「ぶほっ!? お、重いのであります……」


 試しに持ってみると、めちゃくちゃ重い。床をぶち抜きそうなぐらい重い。足がガクガク震えてきた。

 ノールが持ってみたいというので渡すと、受け取った途端彼女も足をガクガクさせて落とさないように耐えている。


 これ重過ぎるだろ……行動速度もかなり落ちるし、戦闘じゃ使えそうにないな。

 対物特効があるし、元々物を壊す為の物なのか。これさえあれば迷宮の扉もぶち破れたり……今度試してみよう。


 最後に毎回恒例の、ダブり装備の強化だ。


――――――

●エクスカリバール☆36

 攻撃力+3990

 行動速度+225%

 状態異常:毒(小)

 木特効:ダメージ+10%

●鍋の蓋☆27

 防御+1550

●アダマントアーマー☆4

 防御+1400

 防御速度+20%

――――――


「いやぁ……なんと言うか……」


「もうこれがあればURの武器はいらないんじゃないかしら? 鍋の蓋も立派になったわね」


「昨日エクスカリバーが出ていたとしても、結局エクスカリバールのままだったかもしれませんよ……」


「これに私の武器が負けていると思うと、少し悔しい」


「ある意味、今までの努力の集大成なのでありますね……」


 エクスカリバールがそろそろ未知の域に到達してしまいそうだ。

 ルーナのブラドブルグも今回重ねたから強化はされたが、それでも俺のエクスカリバールが上回っている。

 武器が強化されていくのは嬉しいけれど、それがバールなのはちょっと……地味に鍋の蓋もノールのアル・ラキエに追いつきそうだ。


 シスハの言うように昨日エクスカリバーを当てていたとしても、これじゃバールのままだったかもな……。

 そう思うと爆死した悔しさも薄れるけど、いくら強くてもバールだと思うとやっぱり残念だ。

 いつの日か俺の装備がまともになる日が来ることを願って、これからもガチャをしていこう。

 

 ああ、次のガチャはいつになるかなぁ……。

活動報告にて2巻の情報を掲載いたしましたので、興味のある方は目を通してくださると嬉しいです。

大切なことなので後書きにも書いてしまいました。申し訳ありません。

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