(8)
学校合宿の班はあっさり決まってしまった。
時が他の人からの勧誘を全て断り続けていたから自動的に一人足りなかった俺たちの所に割り当てられたのだった。
時は俺と一緒だって言うことをどう考えてるのだろうか。
そんな事を考えながら、部室に向かった。
俺たち、自由部は最近特に活動していない。
やることなんて元から無かったが、裕也の補修と姫の学級委員としての仕事が起て続いていたからである。
俺と亜織だけじゃ特にやることなんてないからな。
まあ、一方的に罵られてるんだが。
全員が部室に揃うのは一週間ぶりかもしれない。
「大和、実際あの転校生と想像武器を使用して戦ったら勝てるの?」
裕也は少し真面目に聞いてきた。
まあ戦力差がわからないと困るよな、コイツの性質上。
「想像武器があれば確実に勝てるよ。 想像武器を使わなくたって、正々堂々戦えれば勝てるかもしれないけどな」
不意打ちされたから一歩的にボコボコにされたんだけどな。
「なるほどね。 つまり、通常時の大和と同じぐらいのスペックか」
ついでに、俺は裕也と亜織に想像武器の事を説明した。
裕也は「流石天壌市って所だね」って笑いながら言うし、亜織は「私もついた嘘が全て現実化する能力が欲しいわ」とかふざけた事を言った。
普通に受け入れてもらえた事を感謝するべきなんだろうけど、何か違う。
おはようって言ってごきげんようって言われるぐらい違う。
よくわからないが、感謝するべきではないと思う。
まあ、こいつらに感謝することなんて何も無いが。
「そんなことより合宿だよ、問題は。 時と同じとか、絶対ふざけたことになるわ。 どうするつもりなんだよ」
裕也に少し怒りを込めて聞いてみたら、予想外の人物が回答した。
予想外というより、想定外か。
「安心しろ、俺は人前でお前を戦うつもりはない、お前が吹っかけてこない限りだが?」
自由部の部室にYシャツの上からジャージを羽織った男がやってきた。
「ふざけんな、朝っぱらの事をまず謝れ」
開口一番でこの言葉が出た。
裕也と姫は少し驚いてる。
亜織は普通に寝てるが。
「朝っぱらってなんのことだよ?」
普通にしらばっくれやがった。
くっそ。
「あぁ、ならもういいよ。 そんなことより、何しに来やがったてめぇ」
どうにも、冷静では無い気がする。
最悪に備えて、想像出来るぐらいの安定は残しておかないとなんだが。
そう、ここでの戦闘に備えて。
「安心しろ、ただの雑談だよ?」
嘘くせぇ。
というより、信じられない。
朝っぱらの不意打ちが不安になる。
こんな硬直状態を打ち破ったのは、寝ていた暴言魔だった。
「そこでなにをやっているのかしら、邪魔くさい。 どうせなら部屋に案内した方が色々とらくだとは思わないのかしら? 中二はやはり頭が足りてないのかしら」
「余計に言い過ぎだ!」
「事実を言われて声を荒げるなんて…… 夢ばっか見ずに現実を見たらどうかしら?」
畜生。
キレたいのに、凄くキレたいのに助かったからなんにも言えねぇ。
完全な意味で。
「あー、もういいよ。 とりあえず入れよ時」
声をかけるために時の方を向いたら、一人増えていた。
「できれば、私も混ぜてほしいな♪」
ジャージ切り裂き魔の次は拳銃狂いの登場だった。