(5)
「うん、お前まさか山か。 久しぶりだな、少し待ってろ、この馬鹿を抉るまで?」
久しぶりに会った小学校の頃のクラスメイト、秋時千刃はまったく揺るぎもせずに馬鹿だった。
秋時千刃。
燃える様な赤髪と人を抉るような瞳。 そして、正義の名を騙る戦闘狂。
小学生の頃から何も変わっていない。
まるで、心の中を巣食う思い出のように。
トラウマのように。
「やりすぎだと言ったんだ、時。 既に戦える状況じゃないってわからないのか?」
テロリスト(笑)は完全に恐怖に陥ってる。
廃人になりそうだ。
まあ、学校にマシンガンを持ってきて犯行声明を出した時点で未来なんて無いが。
それでも止める。
これはやっちゃいけない事だ。
まだ戻れる。
まだ、実際には一人も殺していないんだから。
俺が知っている限りだが。
「時、お前はあの日を同じ事をやり続けてるのか?」
これだけは譲れない。
あの日だけは、譲らない。
時の価値観が歪み、俺の生き方が修正されたあの日だけは。
時は止まった。
テロリスト(笑)の所に向かうのを辞め、俺と向き合った。
過去と、対峙した。
「あの時は間違ってねぇ、最善を尽くして最高の行為を行って最低な結果だっただけだろ?」
何を言ってやがる。
明らかに、時の頭に血が上っている。
触れてはいけない所に触れている。
「なら、お前はあの日、あれじゃない選択は出来たのか?」
俺に問いかけてくる。
違う、それはお前の決める事だろ。
俺じゃなく、お前の選択だろ。
最高をひたすら選んだ、お前の間違いだろ。
これは
お前の精神的外傷だろ。
俺というレンズで見ている過去だろ?
過去は、自分だけの物で自分で解決する物だろ?
言おうとした瞬間だった。
「それに、戦いを辞め、自分の姉に言われる筋合いの事じゃねぇよな?」
一瞬、俺は飛びかかりそうになった、それぐらい痛い所をつかれた。
そして、その隙もつかれた。
凄まじい速度、それこそハンマー以上とすら思ってしまうような速度で俺に飛びかかってきた。
自分の気持ちを抑えつけたせいで、対応に遅れた。
時は、身体を捻り俺の首を狙ってきた。
「くっそ!」
思いっきりしゃがみ、なんとか一発目はかわした。
が、結果の先送りでしかない。
しゃがんだ状態から、二発目はかわせない。
左手を首筋に当て、一撃を防ぎ反撃を狙おうとした。
しかし、ミステイク。
それを見越した時は、俺の左手首の脈を狙ってきた。
殺られる。
直観した。
こいつは、小学校の時から何も変わってない。
創造を使い、せめて一撃を報いろうと思った瞬間、
ババンッ!
銃声が二回響いた。
テロリスト(笑)なんかじゃない。
二人の首筋の皮一枚だけを剥ぐ精密過ぎる射撃だった。
俺も時も、戦闘を中断し銃弾の主を見るしかなかった。
そして拳銃を二丁持っていた人は、とても会いたくなかった、俺達のクラスに副担任としてやって来る事が決まった人
「これ以上ここで戦闘するなら、ここに転がってる人達も含めて牢屋に連れて行きますよ♪」
神藤表梨さんだった。