(4)
俺が校門で二度と会いたくなかった奴に遭遇する少し前の出来事。
二人の内、一人のテロリスト(笑)は校門でオドオドしていた。
声明を出す癖にオドオドって、嫌ならやらなければいいだろとしか思えない。
そんな緊張の中で
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
仲間の悲鳴を聞いてパニックに陥っていた。
「どうする!? 三人を置いてここから離脱するか!?」
しかし、もう一人の、いかにもリーダーという風格を持った男はまだ落ち着いていた。
「奴らはどうせ口を割る、ならば計画は完遂させるしかない!」
いや、この状況で完遂は無理だろ。
そんな中、疑問を口にした男が登校してきた生徒を見つけた。
それは、なんとも印象的な少年であった。
160cmぐらいの身長に、目を覆うぐらいのフードがついたジャージを着た少年だった。
手は、ジャージに突っ込んでいる。
ジャージのチャックは開いていて、中にはYシャツが見える。
ジャージのチャックが鈍く、それでいて紅く光っているのが不安をかき立てる。
だが、リーダー格の男はチャンスだと思った。
何が起こっていようと、ここで人質を取れば動きやすくなる。
足に一発撃ち込めば、黙るだろう。
「銃を構えろ、あの少年を人質にする」
やるしかない。
しかし、オドオドとしていた方は明らかに躊躇っていた。
撃つのに恐怖しているわけではない。
もっと、本能的に恐れている。
銃を構えた瞬間、酷い目に遭うんじゃ無いかと。
いや、テロなんて行った時点でその末路は決まっているんだが。
10m程度離れている所で、リーダー格の男は銃を構えた。
その直後だった。
「俺を秋時千刃だと思ってその玩具を俺に向けたのか?」
迅速だった。
凄い速度でリーダー格の男に肉薄し、ジャージのチャックで手の肉を切り裂いた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
悲鳴を上げた。
「たかだか玩具を持った程度でこの秋時千刃に立ち向かうなよ、この市は正当防衛と過剰防衛の差が無いに等しいんだぞ?」
倒れた男を見下ろして、踏みつけ両肩の骨を折りながら言い放つ。
リーダー格の男は気絶していた。
その方が幸せだっただろう。
気を失った人間に興味を無くした切り裂き魔は、既に銃を地面に落とし完全に怯えきっている男に標的を変えた。
「まだ残ってんじゃねぇか、俺に玩具を向けた馬鹿が。 ほら、さっさとかかってこいよ。 この秋時千刃を目の前にして戦意喪失程度で赦されるわけがねぇだろ。 もしこねぇなら、一方的に抉るぞ?」
言っている事にハッタリは無いのだろう。
歩いてオドオドとしたテロリスト(笑)の方に向かっていく。
攻撃まで後一歩と言うところで。
「時、お前はやり過ぎだ、そしてやる必要がない。
主人公の仕事だ、脇役は引っ込め」
小五振りの再会だ。