7話:とある魔法使いの秘めたる会話
Scene EXTRA
あたしは見てしまった。偶然だった。ただ、帰りに校門を出たとき、あたしの狙っていた魔法使いの気配を感じた。
それを追っていたら、クラスメイトの少年が魔法を使っていたところだった。
一瞬、世界が黒く歪に歪んだ。少年と魔法使いが消えた。
そう思ったのも束の間、少年だけが現れ、編入生を抱え、走っていった。
あれは、魔法。
そっか、「彼」も魔法使いなのか……。
「で、どうなんだ?その、篠宮という少年の実力は?」
「分からないわよ。黒いのに呑み込まれたと思ったら、すぐに出てくるし……」
「ふむ、その黒い歪みと言うのは、もしかして、暗転魔法の一種かもしれないな」
暗転魔法……。確か、すんごい難しい魔法だった気がする。理論は覚えていないけれど。たしか、構築摂理がどうとかってやつ。
「そんな、すっごい術が使えるんなら、何であんたは知らなかったの?あたしはともかくとして、あんたなら、他の凄そうな奴くらい目星つけてんでしょ?」
あたしは、他の魔法使いなんて知らないけれど、コイツは「銀十字騎士団」だ。大方の魔法使いは把握しているはず。特に強い魔法使いは。
「いや、少なくとも、篠宮という奴を聞いた事がない。しかし、何者だ?」
「ただの少年で少し魔力が強いだけとか?」
稀に数合わせのために、そう言った人間が魔法使いのパートナーに選ばれることがあると聞く。あれが、暴走による魔力の奔流だったなら納得できなくも無い。
「いや、それだとしたら、暗転魔法を使える理由が分からん」
「あれが、暗転魔法じゃない場合は?」
「忘れたのか?こちらのターゲットは、お前と互角か、少し格下だろ。一瞬で、そいつを倒したんだ。暗転魔法じゃなくとも、かなり強い魔法を使わなくては出来ない。つまりは、どっちみち、お前と互角かそれ以上の奴ってことだ」
「そ、そっか」
そういえば、コイツが、あたしでも倒せて、戦闘慣れできるように同等の魔法使いをターゲットに選んだんだった。
「まあいい、これからは、お前に見張ってもらうとする。同じ学校らしいからな……」
「え、あっ、うん。分かった」




