6話:傷と乙女の心
俺はふらつく体でユキネのもとへ駆け寄った。肩で息をしているユキネ。俺は、一応の応急手当として、止血をし、ユキネを抱えて家に帰った。
「大丈夫か」
俺はユキネに聞いた。途切れ途切れの声でユキネは、
「何とか、大丈夫……かも」
全然大丈夫じゃなさそうな声だった。
「ユキネ、家に着いたからな」
ユキネは、意識を失っているようだった。傷は、もうふさがり始めている。あまりにも早い回復だ。
魔法使いは、回復が早い。理由は、「起源魔力」に通じているからだ。
魔法使いの魔力は、「起源魔力」と呼ばれる自然が生み出す魔力の塊から得ていると推測されている。その「起源魔力」は自然そのものだ。その自然そのものを、少しでも体内に有する魔法使いは、自然の力によって、治癒が早まる。まして、戦いの最中のような、体内に魔力を多く保持していた場合などでは、その回復力は、異常なまで強まる。
ユキネをベッドに寝かせた。ユキネの容態は、落ち着いたようで、今は眠りについている。血は止まっているとは言え、やはり治療は必要だ。俺は、ユキネを治療する事にした。
制服を脱がした。と言うか、新品の制服が一日で使い物にならなくなったな。四着買っといて正解だったか。右の脇腹を治癒するために、俺は、ユキネの右側に座った。
消毒をする。多少しみるのか、時々声をあげるが、疲労のほうが大きいようで、すぐ眠りにつく。そして、消毒し終えると、丁寧に包帯を巻いてやる。
治療が終わると、俺も戦闘の疲労からか、意識が遠のき始める。目の前が暗くなった。
Sceneユキネ
ワタシは、眼を覚ました。焦点が定まらず、何度か瞬きをする。
何が、あったんだっけ?
そう思いながら腹をさする。すると、包帯が巻かれていた。
そうだ。ワタシ、切られたんだ……。
下着姿の上半身を見ながら、考える。
そっか、ショウキが治癒してくれたんだ。
ショウキのことを考えると、傷なんてどうでもよくなった。それは、薄々、自分でも気づいていたことだけど、きっと、ワタシがショウキに恋をしているからなのだろう。
でも、ショウキは、ワタシのことをどう思っているのだろうか。
横を見ると、そこにはショウキが寝ていた。
どくん、どくんと心音が早まる。
ワタシは、ショウキに顔を近づけた。
近づくたび、心音は加速する。今、ワタシはきっと、真っ赤な顔をしているだろう。リンゴよりも真っ赤な。
そして、ショウキの寝息が顔に掛かる距離まで迫った。
そのまま、ワタシの唇を、ショウキの唇へと向かわせる。そして、あと少しでくっつく。
「う~ん」
その声に、ビクン、と飛びのくようにワタシは避けた。そのまま、ベッドから落ちた。
……痛かった。
Sceneショウキ
ドスンと言う音で俺は起きた。何だ?
どうやらユキネがベッドから落ちたらしい。
「何やってんだよ」
「…………」
ユキネは答えない。まあいいか。
「怪我してんだから、おとなしくしとけよ」
俺はユキネをベッドに引き上げて、寝かせる。
「あ、ありがと」
頬を朱に染めるユキネは、年相応の可愛らしい美少女だった。いつもは何を考えているか分からないことも多いが、こういうときは、本当に可愛い。
「眠いから、俺は部屋に戻るわ」