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雪夜の魔法  作者: 桃姫
夜の魔法――The night pall went down calmly――
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5話:「夜の魔法」

 男が突如目の前に現れた。その男の周りの空間が歪んだように見えた。何の能力かは分からない。だが、危険なのはよく分かる。

「まずは、貴様から狩ろう」

 男は、手をユキネに向けた。不気味な笑いと共に、男が手を振る。

「危ないっ!」

 俺は、かつての親友が俺にしてくれたようにユキネを庇う。しかし、俺はユキネを庇えなかった。男は斬撃を放った。そこまでは予想通り。だが、その斬撃は、空間を曲がりくねり、俺を避け、ユキネを襲ったのだ。

 吹き出る鮮血が俺の頬につく。ドクドクとユキネの腹から血があふれ出す。

 これは、まずい。

 そして、俺の意識が切り替わる。憎悪、恨み、怒り、恐怖、その他、様々な感情に身を委ねる。あの時のように。

 だが、その中で、ユキネを助けなくてはならないという意思が働く。

 意識がはっきりする。


 そして、世界は歪む。黒く、不気味に。


 これこそ、俺の魔法。全てを包む「夜の魔法」だ。俺と男は、もはや、世界の表にはいない。

「な、何だよ……、こりゃあ!」

 俺は、静かに唸るように言う。

「お前は、俺を怒らせた。後悔しろよ」

 そう、俺に魔法を使わせてしまったこと。それがコイツの間違いだ。

「黒星天」

 黒い天に、あらゆる星が浮かぶ様を示す魔法。それが、ここの名。

「ここは、世界の裏側。現実から離れた空間だ」

「ふん、ここで、戦おうってか?いいのか?外にいる仲間は死んじまうぜ」

 男の声は、震え、強がりを言っているようにしか聞こえない。

「ここは、外での一秒が六十時間になる。簡単に言えば、ユキネが死なないようにここで戦う事にしたんだよ」

 まあ、もっとも、他人に俺の魔法を見せないという理由もあるんだが。

「はは、はははは、ハハハハハハ、ハッアハッハ。つまりこういうことか?てめえは弱いから、長い間戦闘できるようにして、何とか勝とうって」

 この男は馬鹿だ。暗転魔法(空間転移、もしくは、空間創設魔法の総称)を使える魔法使いが、弱いはずが無い。

 そんなことも分からないこの男は、本当に愚かだ。

「死ねぇぇええ!!」

 男が滅茶苦茶な斬撃を飛ばしてくる。俺は、あえて避けない。

「ハハッ!どうだ、避けられないだろ!雑魚が俺に歯向かいやがって!」

 土煙が上がり、俺の姿が見えなくなる。

 俺に斬撃は当たっていない。別に軌道を読んだとか、認識をずらしたとか言う理由は無い。ただ、本当に、その場を動かなかっただけだ。

 曲がりくねると言うことは、使い手の意識で動かしていると言う事だ。あの動揺した状態から、興奮した状態へと、意識が変った不安定な精神状況であれほどの数の斬撃を操りきれるはずがないのである。だから、下手に避ければ、逆に斬撃が当たっていた。それが分かっていたから、何もしなかったのである。

 土煙が薄れ始めたので、俺の姿が奴にも認識できるようになったはずだ。そして、俺は、術を作り上げる作業を終わらせて、奴の方を見る。それとほぼ同時に奴は声をあげた。

「バッ、バカな!あれほどの斬撃を受けて、無傷だとっ……!」

 男の顔は驚愕に満ちていた。そして、その後やってくる畏怖の感情。

「空間歪曲ぅう!」

 男は叫び、男の姿が消える。おそらく、俺達を追っていたときにも使っていた魔法だろう。

「これで、姿は見えまい!」

 確かに見えない。だが、それは何の障害にもならない。この世界において、雑音は無い。気配と言うものが、感じられるほどに、この世界では集中できる。

 気配を辿れば男の居場所は分かる。

 声のした方向とは違うが、おそらく、気配のほうが正しい位置なのだろう。空間歪曲。その言葉から連想するに、空間を歪曲させ、あたかも自分がいないかのように見せる。空間が歪曲しているから、声が空気を伝わるのも歪曲し、方向が変る。しかし、気配は偽れない。

 そして、俺は、完成させた魔法を発動する。

「『影切』序章」

 序章の名の通り、始まりに過ぎない。黒い影が刃の形に固まる。

「な、何故ここが分かったんだ!」

 喚く男。そして、男に刃が刺さる。

「はっ、ははっ、何だ!どんな技かと思えば、俺に傷一つねぇぞ!」

 そう嘲笑する。だが、気がつく。自分の周りに展開していた魔法が消えていることに。断ち切られたことに。

「《影切》中章」

 影が四方へ散る。そして、いくつにも分岐し、空を駆ける。その様は、まるで流星のよう。在りえなくとも幻想的な。

 そして、散った影が、一気に男のほうへ集まり、男を縛る。

「何だよ。何だよ、これは!?」

「《影切》終章」

 そして影が作った、夜の剱の影によって、男は刺される。

 トドメをさしたのだ。

 ……。…………。………………俺は、勝った、のか。戦っている最中のことは、感情的になりすぎて、記憶が曖昧だ。

 だが、勝ったなら、急いでユキネの元へ向かわなくては……。


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