47話:【終焉】の始まり
俺が、ビルに突入した時、ビル全体が揺れるような感覚がした。もう、始まったのか。
「急ぐぞ!」
「分かってる」
「はい、翔希様」
三人で、エレベータに乗り、最上階を目指す。
ガコン、と言ってエレベータが止まった。自動で開いた扉の奥、そこに親友が居た。
久々に見た、その顔は、左目に眼帯をしていたが、昔とあまり変わっていなかった。
長い朱みがかった髪に、漆黒の瞳。整った顔立ち。ところどころ破けたローブの下に見える体。大きく突き出した胸。細くくびれた腰。
随分と成長していた。
「大分綺麗に育ったな。久しぶりだ、ミクリ」
「そっちは、相変わらずのボケーとした顔だな。ショーキ」
久しぶりに再会した親友。そして、その後ろに監禁されている佐薙。
「篠宮君」
「よぉ、佐薙。助けてやるからジッとしとけよ。【黒減】、ウィンディア。佐薙を頼む」
「分かった、そいつは任せる」
「了解しました、翔希様」
二人が佐薙のもとへ向かうのと同時に、俺は、呪印を解放する。
左腕に九つの華が咲く。
「その呪印……【氷華】……?!」
ミクリの顔が驚愕に染まる。
「氷の女王の弟子と言うのは、やはり本当だったのか」
【黒減】もそう言った。
行くぜ!
「氷結流技、氷の墓標!」
巨大な氷が、そこに墓をつき立てるかのように勢いよく振り下ろされる。
だが、左手でたやすく払われた。
「暗黒流技、漆黒の嵐」
闇の竜巻が、幾重にも重なって迫る。が、コレもたやすく左腕で払い飛ばす。
左手、で?そういえば、あいつは、何で右手を使わない?利き手を使わなくても十分だということを示してる……?違う。あいつ、もしかして、右手が使えないのか。
何故。ユキネか。ユキネが、右手を潰してくれたのか。
「ちっぃい、終焉流技、漆黒の流星群」
「黒氷奥義、無限の氷龍」
黒い星屑たちと、幾匹もの氷と夜の龍がぶつかり合う。衝突の衝撃で、凄まじい衝撃波が飛ぶ。火花が飛び散り無数の気流が渦を巻く。
「うおぉぉぉおおおおお!!」
「うらぁぁぁあああああ!!」
俺とミクリの声が重なり合い、響きあう。
そして流星が消え去る。同時に龍も霧散した。引き分け、か。意識が暗転する。




