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雪夜の魔法  作者: 桃姫
黒の魔法――The night darkness deepens more and more――
37/51

37話:闇の胎動

 オレの動くときがそろそろ近づいてきたらしい。いよいよ、夜のとばりは、降りた。

 【終焉】の刻はもうじき訪れる。

 世界に終わりを告げさせ、新しい世界を創る。それが、オレの役目だ。

 迎えよう、新たな【始まり】を。降ろそう、この世界に【終焉】と言う名の幕を。

 オレを止めるのは、【輪廻】か【黒減】か【雷帝】か、それとも、【夜】か。どれがとめに来ようとも、オレは止められない。

 滾る力が、右半身に迸る。

 【黒羽】が俺の右半身を覆う。

 さあ、宵闇は、ますます濃く、世界を黒く塗りつぶすばかりだ。


 この【終焉】の魔法使いを、ショーキ、お前は、止められるか。


 バンッと勢いよく扉が開かれた。

「誰だ?」

「みん、お前、こんなところで何をやっている」

 足元に【黄昏】の魔法陣を展開させた舜だった。

 京堂舜。「銀十字騎士団」で俺とペアの魔法使いだ。【典烙】の魔法使い。魔法使いの実力としては、龍輝といい勝負だろう。

「僕の事典に異常を感知してきてみれば、君がいた。それはすなわち、みん、お前が犯人と言うことでいいんだな?」

 事典、か。厄介な。

「犯人、なんの?」

「爆破未遂、だな」

 ほう、そこまで感じ取れるのか。

「僕の事典が、この周囲で、ものすごい炎の圧縮魔力を感じた。しかし、みん、お前は、何者だ?お前は水嵐の魔法使いと聞いていたが?」

 そう言えば、そう名乗っていたか?

「そして、僕の事典も水嵐だと感知している。その時点で、確実に、君は水嵐の魔法使いだった。まさか、複数の魔法を保有するのか?」

 複数の魔法と聞いて、この間龍輝から聞いた幼馴染の親友を思い出す。

「ハッ、残念。オレの魔法は一つだけだぜ」

 【黒羽】が俺の右半身を舞う。その瞬間、舜の顔が驚きに歪む。

「まさか、お前、」

「そう、オレは、【終焉】の魔法使いだ」

 その瞬間、無数の爆炎が舜を包む。

「ガァッ」

 部屋の向かいまで吹っ飛ぶ舜。


 片付いたか……。オレは、作業を再開しに掛かる。

「うっさいな~!何事よ!」

 そのとき、九重が部屋に入ってきた。

「なんなの、さっきからバンバンバンバン!」

 そうして、横を見た九重。舜の姿が目に入ったのだろう。

「どういうこと、みんみん」

 オレは笑う。

「答えて、みんみん!」

 九重は、右腕に黒い渦と円の取り巻く呪印を顕わにさせる。【輪廻】の呪印、か。

 一般の魔法とはプロセスが異なり、「起源魔力」から魔力を取り寄せない【輪廻】。その仕組みは、未だに謎だが、今は関係ない。【輪廻】はそこまで攻撃に特化していない。

「消えろ、九重」

 オレの爆炎が九重を襲う。

「結ぃ!」

 九重が声を上げる。その瞬間、爆炎が、消えた。

「くっ、【輪廻】の魔法か」

 魔法陣が展開された様子もない。あの魔法は一体何なんだ。

「雅、来て、【時空剣(レリファス)】!」

 空中から突如、一本の剣が現れた。召喚系の魔法か?【輪廻】はどれだけ万能なんだよ!

「チッ」

 【終焉】の魔法により、無数の黒い岩が九重に降り注ぐ。

「切り離して!」

 九重が剣を振るう。岩が全て消え去った。

 何なんだ、【輪廻】の魔法ってのは……。


 しかし、倒す準備は、整った。作業完了。パチンと指を鳴らすオレ。

「消え去れ。【終焉の灯火】」

 九重の周りを含めたこの部屋そのものが、揺れる。

「なっ、何?地震?」

 違う。仕掛けは簡単だ。部屋を通るガス管のあちこちに時限式の魔法を仕掛けた。そして、それは徐々に熱を持ち、いずれ、発火する魔法。

 ドゴォン!そんな爆破音と共に、一室が崩れ落ちた。


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