24話:銀十字の魔法使い―困惑
Scene龍輝
「氷の女王、だと……」
俺は、戦慄していた。畏怖、恐怖、疑問。様々な思考が頭の中を飛び交う。
伝説上の人物。そう、そんな人物の名が普通に出てきたこと、そして、実在していたことに戦慄した。
最強の氷魔法の担い手と呼ばれる「氷の女王」。その魔力保有量は、かの始まりの魔女に匹敵するほどだと言われている。
しかし、実在するかの真偽はいまだに不明である。
未だ、誰も、その姿を見た者はいないとされているからだ。だから、魔法使いは、誰しも、話は聞いたことがあるが、信じていないのだ。
それに、少年は、夜の魔法使いと言った。夜は闇系統の魔法だ。系統属性的には、近いが、氷の女王は、氷だ。別系統系の魔法使いが師匠になることは、まず無い。だから、少年の言う事は、信じられない。
少年についての考察は、ひとまず置いて、この場に置かれた指名手配犯を連行することにした。
「銀十字騎士団」の本部は、とある会社の地下室に隠されている。おれが連れて来た指名手配犯は、本来なら、すぐ消していたのだが、少年の情報を聞き出すためだけに、連れ帰ったのだ
「ん?おい、龍輝。そいつ、西洞って奴じゃん。なんで、生かしてんだ?」
俺に話しかけてきたのは、同じく「銀十字騎士団」所属の、三縞九重だ。一応、生物学上は女という分類に当たる。
「ちょっと、聞きたいことがあってな」
「ふへ~、めっずらし~!いつもなら、すぐ殺すのに」
心底面白いと言う顔で、聞きたい事は何かと思っているのが感じ取れた。
西洞が目覚めると、おれは、九重と共に事情聴取を開始した(基本的に《銀十字騎士団》はツーマンセルなのだ)。
「で、奴は何者なんだ?答えないと即死ぬぞ」
脅すと、奴は、即座に答えた。
「ひっ、し、知らねえよ。俺は、女を襲っただけだ。そしたら、あいつが割り込んできて、俺様に氷の魔法を使って、動きが止められて、そしたらよ!ありえねえことに、別の黒い魔法で肩貫かれたんだ!!」
その情報を聞けて、よかったよ。とそんな心にもない礼を良いながら、銀の剣で貫いた。
「わっぷ、きったな。ちょっ、服汚れた~。汚された~。龍輝、新しいの買って~」
目の前で人が殺されたのに動じない感性はやはり、おかしい。まあ、殺した本人であるおれが言えたことではないが。
しかし、二つの魔法を使う少年、か。興味深い。深く探りを入れる必要がありそうだな




