23話:翠の少女―救援
Sceneショウキ
俺は、夜、コンビニに行くため、夜道を歩いていた。俺の家からコンビニまでは、少し遠く、大通りに出なくてはならない。そのための近道の路地を軽い足取りで、歩いていた。昼に襲撃を受けて、退治したため、もう今日は無いだろうと思ったからである。
予想は幸いにして、襲撃は無かった。だが、何処からとも無く聞こえる、何かが殴られる(もしくは蹴られる)音に、何だろうと興味を引かれて、近寄った瞬間、俺の理性は弾け飛んだ。人が襲われている。しなの、だ。それが分かったとき、俺は、敵(と見なした)を吹き飛ばしていた。
「しなの、大丈夫かっ!!」
そして、しなのは、その言葉に、今にも消え入りそうな声で答えてくれた。
「だ、だいじょぶ。絶対に、来てくれるって、信じてたから」
俺は、殺気立った瞳を男に向ける。俺のスイッチは、完全に切り替わった。相手が誰だろうと、殺す。
「しなの、其処に座ってろ」
「うん、分かった」
俺は、魔法陣を展開した。足元に展開されたのは、夜の黒い魔法陣ではなく、水色と白銀の魔法陣だった。
「ふん、どこの魔法使いだが、しらねえが、今代の魔法使いはすべて能力を調べてんだぜ。誰だろうが、どんな能力だろうが、俺様が負けるわけがない!」
そんな、馬鹿みたいな(みたいではなく、実際に馬鹿だろうが)笑い声を上げる相手に対し、俺は、呪印を開放した。
俺の右腕に九つの水色と白銀の華が顕れる。それは、有名な呪印。多くの魔法使いが知るもの。
伝説として、色濃く受け継がれている話。
「その華……。っんなバカな!今は、その系統は皆無だぞ!そんな、そんなわけが無い!嘘だ!嘘に、決まってる!!」
現実が受け入れられないらしい。
「『蒼空銀舞』」
敵の足元に咲く透き通った水色の茨が、敵の体を絡めとる。全身をに巻きついて離れない茨。そして、もう一つ魔法陣を展開する。今度は黒色の夜の魔法陣。
「ば、バカな、別の魔法陣、だと。そんなわけが無い、原則に反する魔法使いが存在するわけが無い!ありえない!ありえない!嘘だろ!信じないぞ!俺は信じなっ……」
「五月蝿い『黒劉双』」
途中で、男の言葉を遮り、俺は、魔法を発動する。二本の黒い槍が、敵の肩を貫く。
「まて、やめろ、やめてくれ。俺は、西洞克哉だぞ!あの西洞克哉だ!」
指名手配犯か。まあ、そんなことは知ったことではないが。
「『黒き龍焔』」
黒き炎で相手の息の根を止めようとした。
しかし、そうは行かなかった。
銀色の剣が目の前に降り注いだからだ。
「そこまでだ、少年」
「チッ、『銀十字騎士団』の黒減か……」
俺は、苛立ち混じりの声で言った。
「よく、知っているな。貴様、一体何者だ。我々でも四人がかりでやって逃げられた相手を、こうも簡単に捕らえるとは。おれは、途中で偶然通りかかったが、あの膨大な魔力。只者ではないな。しかし、お前の見た目。トップの魔法使いのどれにも当てはまらない。何者だ」
何者、か。
「俺は、【夜】の魔法使いだよ。単なる一般の」
俺は、自分に見合った回答をした。
「単なる?そんなわけが無いだろう。この男を捕らえられる実力、膨大な魔力。どっちをとっても一級品だ。貴様、師匠の名を言ってみろ」
時間が無いのに、そんなことをしている暇はないんだが。
「すまないが、アイツを介抱しなきゃならないんで、急いでいる」
しなのを見ながら、そう言った。だが、相手は、一歩も譲らないようだ。
「なら、早く言うんだな」
仕方ない。それで解放されるなら言うか。あの人の名を。別段禁止されているわけでもないし。
「【氷の女王】。それが、師匠の名だ」
それだけ言って、しなのをおぶってその場を立ち去る。




