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俺が魔族軍で出世して、魔王の娘の心を射止める話(の予定)  作者: 遠野空
第四章 ダークプリンセス、魔王に喧嘩を売る
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ダークプリンセス、魔王に喧嘩を売る――その8

 



 ――その8



 紅茶と、クリームたっぷりのケーキなどがテーブルの上に並び、俺の口の中はよだれで溢れてきた。なにせこっち来てから、甘い物ってほとんど食べた記憶がないからなー。

 メイドさん達も低頭した後に素早く撤収し、後は食べるだけだと思うが、お二人共なかなか手を出さない。

 それでも、誰かが先に食べ始めるまで我慢して待とうと思っていたところ――いきなりマヤ様が話した。



「父上、しかしなぜあのようなもったいをつけたのです? さっさと四名を片付ければよかったのでは。いえ、放っておいてもどうせマヤがそうしていましたが」

 正直過ぎる意見を聞いて、俺と陛下はしくも同じタイミングで苦笑した。

 慌てて表情を引き締める俺をちらっと見やり、陛下は楽しそうに告げる。

「ナオヤがあの四名の詰問にどう答えるか興味があったし、それに、予が四名に肩入れするような素振りを見せた時、おまえがどう反応するかも知りたかったのだ」

「……ほう? それで、ご満足頂けましたか?」

 マヤ様の問いかけに、陛下は魅力度千パーセントの笑顔で頷いた。

 この方、凄みのある顔と笑顔の差が激しいな!

「満足したとも、愛する娘よ。主君のために命を賭け、最後まで後悔の念を見せないナオヤの態度、あっぱれであった。そして、そんなナオヤをあくまでもかばうマヤの態度も大いによし。我慢して芝居を続けた甲斐があったというものだ」


 ――そうそう、危うく礼を失するところだったぞ。


 陛下は最後にそう付け加えると、なんと正面の俺の方を向いて、深々と頭を下げた。


「娘の誘拐を阻止してくれたことに礼を言おう、ナオヤ・マツウラ。予は、おまえに大きな借りができたようだ。万が一、誘拐が成功していれば、娘は拷問の末に殺されていたであろう……重ね重ね礼を言う。此度こたびの働き、余すところなく見事だった!」


 いきなりのことに焦った俺は、それはもう馬鹿みたいに両手を振り回した。

 脳裏にちらっと疑問の欠片みたいなものも浮かんだのだが、その時は本当に意識すらできなかった。

「いぇええええ、とんでもない。元々、臣下が主君のために命を賭けるのは当たり前のことでありあり……え~、ありましてその」 

 最後に舌を噛みそうになり、俺は頬が熱くなってとにかくぺこぺこ頭を下げた。

「と、とにかく過分なことです、はい」

「ナオヤに余り難しい言葉遣いをさせてはいけませんぞ、父上」

 横目で俺を見やり、マヤ様が悪戯っぽく笑う。

「長いセリフを言わせると、すぐにトチります故」

「こら……おまえも礼を言うのだ、マヤ」

 陛下はわざとらしく難しい表情を見せ、マヤ様を睨んだ。


「おまえのことだ、どうせきちんと礼は言っておらぬであろう。今ここで、ちゃんと礼を言いなさい。相手が臣下であろうと、命を助けてもらった者に対する、それが礼儀というものだ」

 ま、魔界を治める魔王陛下が、娘に礼儀を説くかーーーー!

 今この瞬間、俺のRPG的魔王に関する概念が吹っ飛んだねっ。驚きのあまり、遠慮するのも忘れちまった。

 そしてさすがのマヤ様も、陛下に対しては素直だった。可愛らしく唇を尖らせながらも、一応、俺の方を向き肩に手を置いた。


 ……つか、肩に手?

 そのまま、そわそわと薄赤い視線がさまよい、何か言いかけて結局また唇を閉ざし――最後にやっと、やや赤い顔で声に出した。

「よ、よくやったぞ、ナオヤ。マヤは今回のおまえの働きに満足している……今後も励むがよい」

「あ、はい。それはもう」


 ていうか、なんで俺が頭下げてんだ、おい。


 我ながら首を傾げつつ正面に目を戻すと、陛下は端整な顔に何と言えない表情を浮かべていた。叱りたいのだが、どうもタイミングを逸したような、そんな顔つきである。

「すまぬな、ナオヤ。マヤは性根は優しい娘なのだが、昔からどうも素直になれない子でな。大目に見てやってくれ」

「いきなり何を言われます、父上!?」

 わ、マヤ様が照れてるよ……すげー。

 ていうか、初めてみるな、こんな姿。


「あー、いえ。俺は元々、そう大したことやったつもりもないですし」

 ふと疑問が湧いて、俺は勇気を出して陛下に尋ねてみた。

 これだけフレンドリーなら、多少の質問はアリだよな、うん。

「あのー、ちなみに俺がもし命令遵守で、あくまで砦の攻略に向かっていた場合、陛下はどうなさいましたでしょう?」

「ふむ、その時は――」

 陛下の微笑がぶっつりと消え、ふいにぎすまされた刃のような目で俺を見た。

 な、なぜか目が真紅に染まってんですが!?

「その時はナオヤ、この王宮に戻った時点で、予が直々におまえの首をもぎ取っていたであろうな」


 ――あ、腕に鳥肌立った。


「娘の命を軽視し、あくまで命令を遵守するような不埒ふらち者は、予がただではすまさぬ」

「な、なるほど!」

 なるほどじゃないっ、ぶるった、そりゃもう俺は死ぬほどぶるっちまった。

 なんか実際に圧力を感じるような目つきで、テーブルの下に隠れたくなったほどだ。やはり、魔王陛下は魔王なのだなぁ……と。

「しかし、こうしておまえの本性を知った今、予はおろか、マヤもおまえに対して大いなる信頼を抱いたことであろう。後で個人的な頼みもあるが……ひとまず、皆で語り合おうではないか」


 待望の、ケーキ馬鹿食いの時間がきました!


 と思ったが……個人的な頼み? 魔王陛下が俺みたいな下っ端にぃ? なんか、すげー嫌な予感がするんだが。





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