条件提示
「ふふん。ようやく得心がいったわ。なるほど、わざわざわたしに会いに来るわけね」
「待てこらあっ」
俺がぶちまけた後、しばらく魂が抜けたような顔で黙り込んでいたレージが、ここで猛然と抗議した。
「なんだよ、詳しい事情は知らなかったが、そんな用事だったのか! ふざけるなよ、おまえらっ。おい、サクラっ」
ガミガミ怒鳴った後、レージはサクラを見る。
「今こそおまえの短気を生かす時じゃないか! 暴れまくってこのロクデナシどもに、ブレイブハートの底力を見せてやってくれっ」
「い・や・よ」
「おおっ」
即答されて、レージが仰け反った。
「な、なんでっ」
「なんでって――今やわたしは、レイモンはおろか、ヒューネルやユメにまで疑われているのよ。自分を疑って見張りまでつけてる人達のために、どうしてわたしがここで死闘しなきゃいけないの!」
ぎらっとレージを睨むと、気圧されたようにレージが黙り込んだ。
むう。このレージって人、なんか親近感湧くな。俺と似てるような気がする。
「いや……き、気持ちはわかるが……しかしっ」
ようやくレージが反撃した。
「それじゃ、まさか協力する気か」
「そうね……ただ協力するのも馬鹿らしいわね」
サクラはなんだかめんどくさそうに独白した。
というか、こいつもしかして、ユメ達に疑われてヤケを起こしてないか。態度がすげー投げやりなんだけど。
「いいことを思いついたわ」
俺が考えている間に、サクラがようやく顔を上げる。
「ここは一つ、ナオヤの度量を見て決めましょう。どうやら、魔界の重鎮でもあることだし」
「重鎮て……俺、ついこの前まで魔界で絶賛、肉の盾として戦わされてて――いでぇええええ」
「これ、ナオヤ!」
隣にいたマヤ様に足を踏まれ、俺は思わず前屈みになった。だから、気安くそういうことするなと!? この人は、自分のクソ力を全然意識しないから、たまらんっ。
「余計なことは言わずともよい。過去がどうあれ、今は本当に重鎮なのだ」
「うぅう……今はひたすら足が痛いです」
みんなが見てなきゃ、うずくまって靴下脱いでるよ! 絶対、運がよくてもアザにはなってる気がする。下手すりゃ骨にヒビが入ったかも。
「ふぅん、ナオヤも大変ねぇ」
おまけに、完全に他人事みたいな口調でサクラが言いやがる。
これだから美人はようっ。
「――話は戻るけど、条件によっては協力してもいいわよ。確かにわたしは、ユメを倒す手段を知ってるしね」
「なんと!」
「きゃあっ」
「おい、サクラああっ」
マヤ様とネージュとレージが、一斉に声を上げた。
ちなみに、レージの悲痛な声が一番大きかった!
「だから、場合によっては協力してあげましょう。みんなに思われてる通り、わたしは人間を相手に暴れまくれるなら、それで満足ですしね」
「おいっ、そんな投げやりなっ。仲間だろ!」
レージが宥めるように言う。
自分が助かるためというより、かなりサクラを心配している感じだった。
「ちょっと疑われたからって、そんな簡単に出奔するなよ」
「文句があるなら、終始わたしを疑っていた、レイモンやヒューネル達に言いなさい」
サクラがまた、きっぱりはっきりと言い返す。
「それに、どうせユメを相手にしちゃ、奇跡でも起きない限りは勝てないのよ。かつて人間達の最後の希望だったブレイブハートとしては、こっちに味方するのが筋かもしれないわねぇ。ナオヤ達のところで死に場所を見つけるのもいいでしょう」
横目でレージを見やり、サクラは実に皮肉な物言いをした。
俺はこの時思った。
こいつ……少なくともレージは嫌ってないなと。だって、なんだかレージを困らせて、面白がってるように見えるもんな。
「ただし、さっき言ったように条件があるわ。それを受け入れてくれるなら、協力するってこと」
考え込んでいたら、サクラがびしっと話を戻した。




