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度肝を抜く失敗

「そ、外の騒ぎが気になるんだけど――ええと、代わりに誰か様子を」


 俺が照れ隠しに頼むより先に、ギリアムが低頭して言ってくれた。


「お任せください。何があったのか、探ってきます」

「いやぁ、ギリアムはあんまり傭兵には見えないわけで」


 ……て、止めようとしたのに、もう行っちゃったな。相変わらず、真面目でやる気に溢れた人だ。そして、ギリアムが出ていった途端、部屋中の仲間がほっとしたように息を吐いて、休憩モードに入りやがった。


 数合わせで連れてきた二等戦士達なんか、早速にして、「ここは俺のベッドだからっ」とか「なにおっ。先に勝手に取るな!」なんて喧嘩まで始めちゃったしな。

 こいつら見かけだけじゃなくて、中身も本物の傭兵とそう変わらないかもしれない。


 問題はネージュとミュウとレイバーグで、この女性三人組が見事に俺の様子を窺っているのだな。


 なんだよ、気になるじゃないか!





「ええと、なんで俺を見つめるわけ?」

 とりあえず、一番近い位置に立っていたネージュに訊いてみた。この魔法少女のコスプレみたいな格好したねーちゃんは、にんまり笑って言ってくれたね。


「ダークロードが無防備な姿をお見せなのが珍しいのと――」


 そこで言葉を切り、さらに顔中に笑みを広げる。どっちかというと人の悪い笑い方だったけど。

「あと見張ってたら、そのうちこっそり、ナオヤ君が陛下の髪を撫でたりするのかなって」


「す、するか!」


 おぉお、やべー。

 確かにちょっと髪を撫でたりしたくなったからな。だって、堂々とそんなことができるのは、今くらいだろうし。普段は照れてできないからなあ。

 ……などと思った途端、レイバーグがしんねりと言う。


「ちょっと今、デレッとしたね!?」

「し、してないわっ。だいたいおまえ、細かいよっ。そりゃマヤ様みたいな綺麗な子が膝の上で寝てたら、俺も多少は意識するがなっ。逆に言えば、それだけだよ」

 どうせ爆睡したマヤ様は恐竜が吠えたって起きないので、俺は遠慮なしに言い返す。

 実は一番堪えるのは、何もいわずに恨めしそうに俺とマヤ様を見比べるミュウなんだけどな……。


 下手に黙って見られていると、余計に肩にプレッシャーが。




「……お?」


 幸い、そこでガタッとドアを開ける音がして、ギリアムが戻ってきた。

 しかし……なんかこの短い間に、えらく顔が引きつってるな。古新聞みたいなひどい顔色になってるぞ。


「なあ、外はどうなってんだよ?」

 俺は未だにざわめきが消えない外を気にして、ギリアムを促す。

 棒立ちしていた彼は、目が覚めたようにぶんぶん首を振った。


「い、いええっ。べ、別に大したことはなにもっ」


 当然だが、俺達……つまり俺とミュウとネージュは、そっと顔を見合わせた。あからさまになんかあったっぽいやんけ。あまりにも態度が怪しいんで、ベッドの占有権争ってた連中まで、こっち見たぞ。


「俺に隠す意味ないだろ? 外はどうなってんだよ? 今の俺はここから動けないんだから、教えてくれよ」

「ほ、本当になんでもありませんっ。全く大したことではっ」

 俺は無言で汗だくのギリアムを見返し、次にミュウを見た。


「ごめん、ミュウが見てきて」

「わかりました!」


「ああああっ、いえ本当になんでも――」

 とか何とかギリアムが言ったが、無視。君、ちっとも動揺を隠せてないから! 

 ちなみに、ミュウはものの数分もしないうちに戻ってきて、即座に教えてくれた。というか、もういきなりの爆弾を落としてくれた。




「大変ですっ。ローズさんが捕まってます!」


「なんですとぉー!?」

 素っ頓狂な声を上げてしまったじゃないか。

 なんでそこで、ローズの名前が出てくるのかとっ。

 俺があわあわしているうちに、ネージュが眉をひそめて言う。


「……もしかして、私達の後からこっそり一人で侵入しようとして、見事に見つかったってことかしらぁ?」

「はあ……そういうことだと思います。囲んでいる傭兵さん達が、『山よじ登って侵入とか、あめーんだよっ』とか、全力で罵倒してましたし」


「うわぁああああ」


 俺は本気で頭を抱えてしまった。

「うううっ……申し訳ありません」

 バレて落ち込んだギリアムが、がっくりと床に膝をつく。さっき黙秘したのは、兄としての責任を感じて、このことは黙っとくつもりだったんだろう。

 実に彼らしい判断である。


 ちなみにこんだけ大騒ぎしてんのに、マヤ様はまだ安らかな顔で爆睡したままである。


 あ、今寝返り打ったせいで、膝におっぱい当たった!


 一人で赤くなった俺は、我ながら焦った声でレイバーグに頼んだ。




「なあ、ベッドからブランケット(毛布)持ってきてくれ」

「ブランケット? そんなもの、どうする?」


「決まってるだろっ。俺の膝の代わりに、それをマヤ様にあてがうのっ。こんなところで膝枕してる場合じゃないし!」



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