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熊のぬいぐるみは少しおもたかった。
「ここを押すらしい。」
そういって、おじいさんは熊の手を押した。
急に音が鳴り出す。誕生日のあの歌だった。おもちゃ特有の高い音で音楽が鳴りきり、それから懐かしい声がした。
「お誕生日おめでとう、さっちゃん。生まれてきてくれてありがとう。これからもずっとそばにいるから、幸せになって。」
涙が溢れた。優しい声。
あんたがいなくちゃ、リョウがいなくちゃダメなのに。
馬鹿な兄弟。
もどってきてよ。
どれも喉に引っ掛かって言葉にならなかった。おじいさんが優しく、私を抱きしめた。
「愛してる。」
カチャッ。
テープの止まる音がした。
愛しい私の兄弟は声だけ残して逝ってしまった。
おじいさんが私に言った。
「これは、幸せになるしかないな。」
私は頷いて熊を抱きしめた。




