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「さっちゃん。」
電話越しに、おかしい、と感じた。だから余計に私はリョウに会いたかった。
「何?どうしたの?」
「もしね、お母さんに会えるなら会いたい?」
どくん。
私の胸が大きく鳴った。母を恋しく思う気持ちは、捨てられてから10年経っても、変わっていなかった。
「会えなくてもいい。」
「どうして?」
優しく諭すように問い掛けられた。リョウがずっと、私にお母さんを会わせたがってたことは分かっていた。そのために一生懸命、病気と向き合ったことも。
「お母さん、もう私に会いたくないから迎えに来ないのよ。それに、ほら。リョウのお母さんみたいに優しかったらいいけど、そうじゃなかったら…ね?」
リョウのお母さんはこんな私にも優しくて、施設によくボランティアに来てくれる。
それを引き合いに出したのは、少しでもお母さんの存在が色褪せるように。
「ねえ、さっちゃん。」
「ん?」
「ごめんね。」
嫌な予感がした。お母さんが私を施設に置いてったあの日みたいに、体中がそわそわと落ち着かない。
「ねぇ、リョウ。会おうよ。今すぐ会おう。」
「ふふっ。さっちゃんどうしたの?もう12時だよ。寮だって門限過ぎて出られないでしょ?それにそっちまで片道1時間かかるし。」
まだ胸がドクドク鳴ってる。
「リョウ。一体、何を考えてるの?」
電話の向こうからもう声は返ってこなかった。泣いているみたいな、そんな音が聞こえた。
「じゃあ2日後に会おう。土曜日だし、久々に朝から晩まで遊ぼうよ。朝10時にそっち行くし。ね、いいよねリョウ。」
電話の向こうでまだリョウが泣いている。私は、こっちの学校に来たことを悔やんだ。私から離れたのに、いつも会いたいと言うのも私だった。
「うん。」
やっと声が返ってきて、安堵する。
「土曜日、絶対よ。」
それだけで電話をきったこと、まだ後悔している。
金曜日の夜、リョウはクラスメートの女の子と屋上から飛び降りた。




