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スロ~ム~ブ  作者: やあやあやあ


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第一話 

「すいません。今お時間よろしいですか。」「フフフ。私に声をかけるとは運のいいやつよ。」彼はそう言って笑う。「我、いや私、いや僕、そう俺の名は(りっしん)。この名を覚えることを許そうではないか!名前の知らぬ何某よぉ。」どうしよう。僕は頭の様子がおかしい人に話しかけてしまったようだ。僕は少し後ずさる。しかし、そこに逃げ場なんてない。「えっと、今街頭インタビューさせてもらっていましてぇ。」「その前にお前の名を聞かせてもらおうかぁ。何某!」「僕は”おんり”と言います。」「おん…なんだって?」「”お・ん・り”です!」三音なんだから聞き取れやと心の中で悪態をついていた。「おんりねぇ。そりゃ変わった名前だな。フフフ。」笑いやがって、お前の(りっしん)っていう名前も同じくらい珍しいじゃねえかよ。名前を馬鹿にされた僕は彼の瞳をまじまじと見る。しかし、彼はずけずけと僕の心に踏み込んでくる。「それでぇ、オンリ~君。君はどうしてこの我、いや俺に話しかけてきたんだっけ?」「えっと街頭インタビューをさせていただきたく…」「なんだって?」「えっと街頭インタビューを…」「なんだって!」「えっと街頭インタ…」「なんだっ」「ですから!街頭インタビューをさせていただきたいんですけど!」「うるせえよ!フヒッヒ!聞こえてんだよ!」畜生!なんだってんだ。こんなウザったい掛け合いは!こんなんじゃノルマが、貴重な時間が…「おいおいおい!何突っ立てんだ?早いとこインタビューを始めようぜ。我、いや私、違う、そう俺の貴重な時間が無駄になっちまうからな。」僕は深呼吸して心を鎮める。「では早速インタビューをさせていただきますね。あなたに最近起きた印象深い出来事は…」「おいおい。そんなことを聞くために質問したのか?フフフ。違うだろぉ。」畜生!バレた!本来のインタビューは長引いてしまうから適当な質問をして流そうと考えていたのに。彼は僕を見通すような瞳で覗き込んでいる。「私、いや俺はぁ相手の瞳を見るだけで何を考えているかわかっちまうんだよ。フフフ。すごいかい?フフッ、すごいでしょ。そう、せっかく俺の時間を奪っているんだからさ。ちゃんとインタビューをしてくれよ、オンリ~君。」彼の瞳には闇が広がっていた。まるで深淵のような。その瞳を見た僕は追い込まれたように感じていた。彼の心が僕の心を覆い隠していくような、そう僕だけのはずの世界に彼が侵食してくるような。気持ち悪い。「じゃぁインタビューをさせていただきます。こちらをご覧ください。」そう言って僕は目の前に二つのカメを出す。「こちらリクガメです。」「リクガメ…?それがなんだっていうんだ。」「どうですかこの二つのカメは?同じリクガメには見えませんよね。片方は甲羅が小さいが4足が大きく、もう片方は4足が小さいが甲羅が大きい。」「確かに同じリクガメには見えない。でも吾輩…じゃない、俺にはわかるぞ。俺はこのカメが彼らは同胞だって互いに主張しているからなぁ。瞳を見ればわかるぜ。」「あははぁ。そうですか。」僕はそんな彼を一歩引いた目線で見ていた。「それでですね。今からここで1m競争をしたときにどちらのカメが先にゴールするのかお聞きしたいのですよ。」「それで?」「ひとまず答えてください。どちらが勝つと思いますか?この4足が大きいカメか、甲羅が大きいカメか。」「そうさな…えっ?考えるまでもない問いじゃないか?普通に4足が大きいカメが速いんじゃないか?」「ほうほう。わかりました。あなたはこのソウ君が勝つと思うんですね。では…」そう僕が言ってカメを地面に置き、静止させ慣れた手つきで舞台を作り上げる。「今から第八回カメレースを開始します。栄光を掴むのはどっちだ!」周囲から観客が生えてきた。観客が拍手し歓声を上げる。俺は高らかに宣言した彼を見た。彼は自信に満ち溢れていた。「おいおい。何だってんだ?」私、いや俺を置き去りにして彼は司会を進行する。彼の手にはいつの間にか銀色のホイッスルがあった。キン!とした音を皮切りにカメレースが始まった。案の定4足が大きいカメがリードする。そのカメは一直線に真っすぐゴールへと走る。そして甲羅が大きい方のカメはその場で止まっていた。「何やってんだ?」そのカメは4足と頭を甲羅へとしまう。そしてそのカメはその場でゆっくりと回転を始める。回転数はどんどん上がっていく。カメは謎の力で飛び上がりひっくり返る。甲羅を下にしてそのカメはより加速する。地面から煙が上がり始めた。「スピちゃ~ん。頑張って!」観客からの声援も回転の速さが増すとともに大きくなっていく。そしてそのカメはため込んだ加速でゴールへと向かう。4足大きいのカメは後3歩で着くところにいた。しかし、そのスピンガメは目にも止まらぬ速さでゴールへと向かう。そう、今までのリードを返してもらうがごとく!我、いや私、違う。俺は固唾をのんでこのレースの行く末を見ていた。そしてカメはほぼ同時にゴールした。「さて、ビデオ判定です!」どこからともなく大きなビデオカメラが出てきた。そこにはスピンガメが僅差で勝利するさまが映し出されていた。「勝者は大きな甲羅を持つ歴戦タートル”スピちゃん”!」彼の声を皮切りにあたりに大きな歓声が湧き上がる。俺は白昼夢を見ているつもりでその様を見ていた。

続く

読んでくださってありがとうございます。

こちらの作品は2話完結の予定です。

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