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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第11話 悪意が見過ごせないのは元大人のお節介からだよ

「模造剣を弾き飛ばし壊したのは、ユニタスじゃなくて私ですね、先輩」


 専科棟の校舎。人通りが少ないそこに、ユニタスたちはいた。

 音もなく上級生の背後へと立ち、アディはにこやかな笑みを浮かべた。

 身体強化で、近づく前から彼らの会話を聞いていた。


「クストス家三男か、なんの用だ」


 ――分っかりやすい、三人組だな。


 目の前の三人、初対面で全員の名前は知らないが、どこか見覚えがあるような気もする。

 不機嫌に発言した上級生は多分物言いからして、アディと同格の家の人間だ。


「先輩が勘違いをなさっているようなので、反省を込めて、名乗りを上げに来ました。

 私が来た以上、ユニタス――彼が代わりを務める必要ありませんよね?」


 上級生たちの前、ユニタスは両手を床に、膝をついていた。下を向いていて、その表情が見えない。

 これが初めてとは思えない状況だった。


 ――一人で抱える前に、頼れよなぁ。


 外見的には、大きな怪我が見られない。大事になる前で、アディはホッとした。


 ユニタスの魔力の巡りがさっきより悪いのをその目で確認する。

 実技授業で見た、アディのもう一つの違和感はユニタスの体調だった。

 考査での疲労が残ったまま、ユニタスはここでリンチになるところだったのだろう。


 ――後でマーレに診てもらうか。


「クストス君には関係ないことです」


 三人のうちの背が低く、まるっとした男子生徒がなぜか威張っていた。


 ――ああ、不良の方で有名な先輩たちか。ヒロインに絡む雑魚モブの。


 会話の中で、アディはようやく思い出した。


「そうでしょうか。 リウィドゥス先輩、ですよね?

 "模造剣を破損するような未熟者には、危険性を指導してやらねばならない"と、私には聞こえてましたけど」


「その通りだ。部外者は引っ込んでいてもらおうか。私は今から、この少年に身の程を教えてやるのだよ」


 大まかに二通りあるアディの噂と評価。リウィドゥスの発言と模造剣の爆発条件、それらから見当をつけて、アディは再度ハッキリと主張する。


「なるほど、身の程をですか……。

 入学後ほとんどの実技を欠席し、生徒会長と王子殿下の独断で実技考査は中断。

 分不相応にもその後、腰に王子の剣を差した腰巾着が、この度、模造剣を破壊しましたよ。ああ、私ですね。

 なので、その指導を受けるべきは、私だけになりますねぇ」


 ――噂だけ聞けば、利権にぶら下がったヘタレだよな。


 うんうんと頷いて、アディはリウィドゥスとその取り巻き二人を見た。


 フィデスとの実技考査。アディの作った濃霧の中を見通せなかった、大半の者の間で出回っているアディを貶める噂。

 それを今、引き合いに出したのだ。


「クストス家三男ともあろうものが、平民を庇ってなんになる?

 そんなことをしても、君の評価は変わらないぞ」

 

「確かに、リウィドゥス先輩の実力には目を惹くものがありますよ。

 一年Aクラスの実技は、さっき終わったばかりです。

 それなのに、模造剣の件をご存知なのはさすが侯爵家の跡取り、お耳が早い。

 けど正確な情報が、まだ伝わっていないようです。惜しいですね?」


 相手は同格とはいえ長子で、こちらは三男。そして残る二人が喋らないのを見ると、アディより家格は下らしい。


「情報は鮮度だけじゃなく、正確性も必要不可欠ですよ。

 間違いとあれば、後で先輩が困るかと思いまして、名乗りを上げに来たのです。

 本当に、私は関係ないでしょうか?」


 アディの事細かな主張に対し、リウィドゥスは言葉を詰まらせた。

 ひくひくと顔をひきつらせてなかなかにご立腹な様子だ。


 けれど、特に後ろの二人はずっとどこか余裕そうな態度だ。

 それがアディは気にくわない。何かあると言っているようなものだ。


 ――悪さがバレてないと思ってるガキか?


 アディはヘイトを稼いで、さっきよりなぜか調子が悪そうなユニタスの隣に立った。


「《ディスペル》」


「……ア、ディ?」


 アディの詠唱により、ユニタスがようやく言葉を発した。

 かなりその声が掠れている。やはり、何かされていたらしい。


「軽口、叩く仲だろうが。俺に気を遣うな」

 

 アディは視線も投げずに、前だけを見て返事をする。

 ユニタスが何かを話そうとして、咳き込んだ。鼻を突く鉄の香りに、アディは眉根を寄せ、胸の内が冷えていくのを自覚した。


 ――下級生に破られる程度の魔法しか、使えないくせに。


 リウィドゥスたちは、魔法が切れたのを察して舌打ちする。

 しかし、口から血を溢すユニタスの様子を見て、ニヤニヤと下品に笑っていた。


「クストス家三男坊、そこの平民がどうなろうが、俺らが困ることなどないだろうに。

 はっ、正義感だけは確かに立派だな」


 ――間に合ってないじゃん、俺。


 アディは目の前の男へと、苛立ちを抑え切れず拳を握る。

 断れない立場を利用したやり方は卑怯だ。さらに、簡単に命を害そうなどと。


「侯爵家ともあろう方が、困る困らないなどと、小さいことを。

 私とのことで、矛先を間違えないでくれません? 妬けてしまいますよ」


 左手で眼鏡の中央を調整し、アディはリウィドゥスをじっと睨み付けた。

 口許を隠して、そのまま詠唱をする。


「《プロヴォーク》」


 ――来い、へし折ってやるよ、クソッタレが。

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